16年度の卒業生   作:Ray May

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刑苦 p5

-◆◇◆-

 

 

 みなちまへ

 

 まず あやまります

 

 わたしの とぱーずくんが みんなをきづつけてしまって ごめんなちい

 

 いまは かれは とてもおちついていて しばらくは でてこないとおもいます

 

 かれは わるいひとじゃなくて ちょっと せいぎかんがつよいだけです

 

 わたしを まもろうとして ちょっと あばれちゃうだけなんです

 

 ですので あんまり おびえないであげてくだちい かれも ほんとうは いいこで

 あそびがだいすきな あかるい こ なのです

 

 

 ・・・・・

 

 

 づっと かんがえていました

 わたしは これから どうするべきか

 

 わたしは そとのせかいに でたいけれど

 でちゃうと みんなに めいわくを かけてしまいます

 

 だれかと なかよくなりすぎると なにかのきっかけで

 また きづつけちゃうかもしれなくて

 

 それが こわくて でも そとにも でたくて どうすればいいのかわからなくて

 づっと づっと あたまがいたくなるくらい かんがえてました

 

 

 ・・・・・・

 

 

 でも わかりました

 それなら それで いいんじゃないかって おもいました

 

 わたしは ひとりでいきていけば いいんだって おもいました

 

 あこがれます いろんなひとに

 ゆめみます いろんなことを

 わたしも あの ひろいひろばで はしってみたかったです

 

 かぺらちゃんと みざーるちゃんと ひすいちゃんと いっしょに

 もういちど かけっこ してみたかったです

 でも そんなのは ちっちゃいことで わたしが ちょっと がまんすればいいだけです

 それで みんながしあわせになれるなら わたしは それでしあわせです

 

 

 ・・・・・

 

 

 だから

 だからね

 これで おわかれ

 これで ちいご です

 

 かぺらちゃん あんまり おこっちゃ だめだよ

 ひすいちゃん あんまり こわいかお しちゃだめだ

 みざーるちゃん あんまり むちゃしちゃ いやだよ

 

 だいじょうぶ わたしは だいじょうぶ わたしは ひとりでも いきていける

 みんなも わたし ひとりいなくたって だいじょうぶ

 

 だって わたしは はじめから じゆうだもの

 どこえだって いけるもの

 

 ありあまるじゆうは いつだって このてのなかにありました

 わたしは どこへでもいけるつばちを いつでも もっていました

 

 ・・・だから

 だから

 ありがと

 ありがとう

 ほんとうに いままで ありがとう

 

 

 ・・・・

 

 

 

 

 

 ちようなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その。

 手紙を、読み切って。

 

 私は、ぐしゃ、と、強く、握っていた。

 

 同じように、両隣で呼んでいた、タマちゃん先輩とマックイーンさんも。

 言葉を、失っていた。

 

「――あの、」

 

 私は。

 震える声で、言っていた。

 

「あのッ……バカッ……!!」

 

 そして――

 そして、私たちは、駆け出した。

 

「おい! マック!! 今すぐ先生とみんなに連絡や!! 動ける奴みんな集めて来ぃ!!」

「はい!! ですがタマモさんは!!」

「ウチは別のとこの――っておい、ミザール!!」

 

 二人の会話を振り切って。

 私は、走り出す。

 

「一人で行くな!! ミザール!! ミザールッ――!!」

 

 彼女の呼びかけを背後に置いて。

 前へ。ただ前へ、走り出す!!

 

「はぁ、はぁッ……!!」

 

 学園の敷地から出て。

 どこへともなく、走る。

 その間、脳裏に浮かぶのは。

 あの子の手紙の内容の、一部一部。

 

 ――大丈夫、私は大丈夫。

 ――私は、一人でも、生きていける。

 

「違う……」

 

 ――だって、私は、初めから自由だもの。

 

「違うっ……」

 

 ――有り余る自由は、いつだって、この手の中にありました。

 

「違うッ――!!」

 

 違う、そんなの違う。

 

 そんなの自由じゃない。自由なんかじゃない!! そんなの、そんなの、どうにも出来ない状況に諦めて、自由って単語を、体のいい言い訳に使ってるだけじゃないか!!

 

 なんで、なんでそんな風に考えるんだ。なんで、なんで待ってくれないんだ! 待っていてくれれば。ただそこにいてくれれば。きっと、いつか、絶対に、私たちが、なんとかするのに。

 

 なんとかして、あげられるのに!!

 

 どうして。

 どうして、自分で全部決めて、勝手に、どこかに行っちゃうんだよ――!!

 

 ――大丈夫、私は大丈夫。

 

「……駄目だっ……」

 

 ――私は、一人でも、生きていける。

 

「駄目だっ……!!」

 

 ――私一人いなくたって、大丈夫――……

 

「そんなの嫌だ――絶対に、嫌だッ……!!」

 

 四人じゃなきゃ、駄目なんだ。

 

 一人でも欠けたら、駄目なんだ!!

 

 君がいなくちゃ。君がここにいなくちゃ。

 

 何もかも、駄目なんだ。意味が無くなっちゃうんだ。

 

 私の夢は――みんなの夢は!!

 終わってしまうんだ!!

 

 だから。

 だから。

 だから――ッ!!

 

「――ッ!!」

 

 

 怒号に似た叫びは。

 橙色に染まり始めた空に、無常に、溶けていった。

 

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