……そんな風に。
我武者羅に走ったところで、簡単に、人を見つけられるはずがない。
手掛かりも、それを手にするための手段もなく。
私は、学園に戻るしかなかった。
……もう、辺りは薄闇に沈み始めてる。
間もなく、誰かを見つけるのなんて、至難の業になるだろう。
「…………」
……駄目なのか。
やっぱり、駄目なのか。
夢を叶えるには。
四人一緒になるには。
彼女を、助け出す、には……
もう、
全部、
手遅れなのか……
「……」
そうして。
学園の敷地内。
正門を、潜った時。
「――」
……私は。
それを、見ていた。
「――はっ?」
「よーやく帰ってきましたわね!」
頓狂な声を上げる私に――まず、応じたのはマックイーンさん。
いや、そこにいるのは、彼女だけじゃない。そこには……
何人もの人と。
何人もの、ジャージ姿のウマ娘と。
……一台の。
見覚えのある、黒塗りのワゴン車がある。
「え……え!? ま、マックイーンさん!? これ、一体どういう……」
「お前のとこの担当クンだよ」
答えたのは。
彼女の背後から現れた、茶髪ポニーテールの男性――
西崎さん、だった。
「俺らが呼びかけるなり、ちょっと行ってくるとか言って飛び出してな。しばらくしたら、あんなごつい車に乗って戻ってきてよ」
「しかも車内。すごいことになってますわよ。まるでちょっとした秘密基地ですわ」
ど……え? で、でも、状況がつかめない。なんてったって、そんなものを、トレーナーさんは……
「……前々から気になってたのですが。一体あなたのトレーナーさん、何者なのです……?」
「い……いや。それはもう、私も聞きたいくらいで……」
「まぁー、こんな状況なんだ。細かいことはいいじゃねぇか」
そう言って、西崎さんは前に出てきていた。
「――コハクちゃんの捜索だろ? 協力するぜ。スピカは動ける奴が多いからな」
「へ……」
「そうですよ、ミザールさん!!」
その言葉を皮切りに。
飛び出してきたのは、スペシャルウィークさん。
……と。
見慣れた、何人もの、人たち。
「お友だちを助けに行くんでしょう!? 協力させてください! きっと役に立ちますよっ!」
「そーだよっ。ボクだって、障害レースは結構自信あるんだから。追跡なら任せてよねっ」
「私も、速さなら負けないわ」
「へっ、ゴルシちゃんの捕獲術が炸裂する時が遂に来たようだな……腕が鳴るぜ!」
「そんな武術、初耳ですけれど」
「……まぁ、アタシたちは、おっきなレース控えてるから。サポートに回るけどね」
「俺も全力で協力してーけど、背に腹は代えられねーからな……すまねぇ!」
「……」
スペさん、テイオーさん。
スズカさん、ゴルシさん。
マックイーンさん、スカーレットさん、ウオッカさん……
チームスピカの、みんな。
「せやで、自分」
しかも。
それだけじゃ、ない。
「ウチらも協力するで。オグリもたまたま手空いとったから、協力してくれるっちゅう話や」
「……出来れば、こんな形で再会したくなかったけれどな。協力させてくれ」
「……」
タマちゃん先輩に。
オグリさん。
「もちろん、協力するのは俺らだけじゃないぜ?」
そこで。
西崎さんの視線が、別の方向へ向く。
「そうだろ、南坂!」
「えぇ」
そこから歩いてくるのは――ウェーブのかかった、長めの髪の男性。
……南坂さん……と。
「カノープスも、ちょうど手が空いていたところなんです。ぜひ協力させてください」
「おう! ターボも協力するぞ!」
「模擬レースのよしみもありますからね」
「うおー! いつもと違う訓練! 燃えてきますよーっ!」
「訓練じゃないけどね」
「……」
ターボさん、イクノさん。マチタンさん、ネイチャさん。
チームカノープス、さん。
「ミザール君」
しかも。
しかも……呼びかける声は、まだ、あった。
いつもの、威厳ある佇まいで。
その人は、私の傍に、歩み寄ってくる……
「リギルでも、動ける人員を用意した。決して多くはないが……いないよりはマシだろう?」
「はっ。不本意だが、『皇帝』サマの『ご命令』じゃしょうがねぇ」
「そう言って結構ノリノリだったじゃねーかさっきまで」
「はは。もー泣きそうな顔してるじゃん。しっかりしな?」
「『暴走』したら任せろ。今度は完全に抑え込んで見せる」
「シー! いざとなったら、エルが人ごみごと吹き飛ばしてあげマース!」
「ふふっ、あんまり出来ないことを言うもんじゃないですよ」
「……」
シリウスさん、ナカヤマさん。
シービーさん、ブライアンさん。
エルさんに、グラスさん……
チームリギル、さん……
「――言うまでもねーけどな」
そして――
腰の辺りを、軽く叩かれる、感覚。
「あたしらだって、いるぜ?」
「計画の遂行は、完全になされなくてはなりません。たった一人でも欠落することは、この私が許しません」
「……」
カペラちゃん。ヒスイちゃん。
「そういうわけだ、バカウマ」
締めとばかりに。
やってきていたのは、トレーナーさんだった。
その手には、籠のようなものが抱えられている。
「――よし、みんな聞いてくれ!」
それを地面に置くと、彼は言っていた。
「全員、二人一組、無理なら三人一組でいい、グループを作ってくれ! そのうちのリーダーに、通信役として無線機を渡す。通話は別途通話用の機器があるから、話しやすい部分に装着してくれ。全員の無線は俺が『ここ』で取りまとめて中継する。指示があったらそれに従って速やかに動くように――いいか、
どんな手を使っても、今日中に見つけ出すぞ!」
『――はい!!』
「……み」
そんな、彼の呼びかけに応じて。
みんなが、動き出す……
「みん……な……」
……あぁ。
そうだ。
何を、勘違いしていたんだ。私は。
私は、一人じゃない。
私は、一人で、戦ってるんじゃ、ない……
私には……
仲間が。
みんなが、
いるじゃないか――……
「――ったく、ホンマに自分は」
呆れたように言うのは、タマちゃん先輩だった。
「いっつも一人で勝手に突っ走るんやからなぁ」
「……う」
痛いところを突かれて、思わず口籠る。それに柔らかく微笑んだ彼女は――
「――ほら」
私に。
手を、差し出していた。
「行くんやろ? ……捜しに!」
「……」
……私は。
込み上げてきた涙を、目を強めに閉じることで、引っ込めた。
……そして。
「――はい」
その手を、
取っていた。
「――そのつもりです!!」
――行こう。
みんなと共に、捜しに行こう。
必ず、必ず見つけ出して――あの子を。助け出そう。……だから。
だから――
待っててね。
コハクちゃん――……!!