16年度の卒業生   作:Ray May

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刑苦 p6

-◆◇◆-

 

 

 

 

 

 ……そんな風に。

 

 

 我武者羅に走ったところで、簡単に、人を見つけられるはずがない。

 

 

 手掛かりも、それを手にするための手段もなく。

 

 

 私は、学園に戻るしかなかった。

 

 

 ……もう、辺りは薄闇に沈み始めてる。

 

 

 間もなく、誰かを見つけるのなんて、至難の業になるだろう。

 

「…………」

 

 ……駄目なのか。

 やっぱり、駄目なのか。

 夢を叶えるには。

 四人一緒になるには。

 彼女を、助け出す、には……

 

 

 

 もう、

 

 全部、

 

 手遅れなのか……

 

 

 

「……」

 

 

 そうして。

 学園の敷地内。

 正門を、潜った時。

 

 

「――」

 

 

 ……私は。

 それを、見ていた。

 

 

 

 

「――はっ?」

「よーやく帰ってきましたわね!」

 

 頓狂な声を上げる私に――まず、応じたのはマックイーンさん。

 いや、そこにいるのは、彼女だけじゃない。そこには……

 何人もの人と。

 何人もの、ジャージ姿のウマ娘と。

 ……一台の。

 見覚えのある、黒塗りのワゴン車がある。

 

「え……え!? ま、マックイーンさん!? これ、一体どういう……」

「お前のとこの担当クンだよ」

 

 答えたのは。

 彼女の背後から現れた、茶髪ポニーテールの男性――

 西崎さん、だった。

 

「俺らが呼びかけるなり、ちょっと行ってくるとか言って飛び出してな。しばらくしたら、あんなごつい車に乗って戻ってきてよ」

「しかも車内。すごいことになってますわよ。まるでちょっとした秘密基地ですわ」

 

 ど……え? で、でも、状況がつかめない。なんてったって、そんなものを、トレーナーさんは……

 

「……前々から気になってたのですが。一体あなたのトレーナーさん、何者なのです……?」

「い……いや。それはもう、私も聞きたいくらいで……」

「まぁー、こんな状況なんだ。細かいことはいいじゃねぇか」

 

 そう言って、西崎さんは前に出てきていた。

 

「――コハクちゃんの捜索だろ? 協力するぜ。スピカは動ける奴が多いからな」

「へ……」

「そうですよ、ミザールさん!!」

 

 その言葉を皮切りに。

 飛び出してきたのは、スペシャルウィークさん。

 ……と。

 見慣れた、何人もの、人たち。

 

「お友だちを助けに行くんでしょう!? 協力させてください! きっと役に立ちますよっ!」

「そーだよっ。ボクだって、障害レースは結構自信あるんだから。追跡なら任せてよねっ」

「私も、速さなら負けないわ」

「へっ、ゴルシちゃんの捕獲術が炸裂する時が遂に来たようだな……腕が鳴るぜ!」

「そんな武術、初耳ですけれど」

「……まぁ、アタシたちは、おっきなレース控えてるから。サポートに回るけどね」

「俺も全力で協力してーけど、背に腹は代えられねーからな……すまねぇ!」

「……」

 

 スペさん、テイオーさん。

 スズカさん、ゴルシさん。

 マックイーンさん、スカーレットさん、ウオッカさん……

 チームスピカの、みんな。

 

「せやで、自分」

 

 しかも。

 それだけじゃ、ない。

 

「ウチらも協力するで。オグリもたまたま手空いとったから、協力してくれるっちゅう話や」

「……出来れば、こんな形で再会したくなかったけれどな。協力させてくれ」

「……」

 

 タマちゃん先輩に。

 オグリさん。

 

「もちろん、協力するのは俺らだけじゃないぜ?」

 

 そこで。

 西崎さんの視線が、別の方向へ向く。

 

「そうだろ、南坂!」

「えぇ」

 

 そこから歩いてくるのは――ウェーブのかかった、長めの髪の男性。

 ……南坂さん……と。

 

「カノープスも、ちょうど手が空いていたところなんです。ぜひ協力させてください」

「おう! ターボも協力するぞ!」

「模擬レースのよしみもありますからね」

「うおー! いつもと違う訓練! 燃えてきますよーっ!」

「訓練じゃないけどね」

「……」

 

 ターボさん、イクノさん。マチタンさん、ネイチャさん。

 チームカノープス、さん。

 

「ミザール君」

 

 しかも。

 しかも……呼びかける声は、まだ、あった。

 いつもの、威厳ある佇まいで。

 その人は、私の傍に、歩み寄ってくる……

 

「リギルでも、動ける人員を用意した。決して多くはないが……いないよりはマシだろう?」

「はっ。不本意だが、『皇帝』サマの『ご命令』じゃしょうがねぇ」

「そう言って結構ノリノリだったじゃねーかさっきまで」

「はは。もー泣きそうな顔してるじゃん。しっかりしな?」

「『暴走』したら任せろ。今度は完全に抑え込んで見せる」

「シー! いざとなったら、エルが人ごみごと吹き飛ばしてあげマース!」

「ふふっ、あんまり出来ないことを言うもんじゃないですよ」

「……」

 

 シリウスさん、ナカヤマさん。

 シービーさん、ブライアンさん。

 エルさんに、グラスさん……

 チームリギル、さん……

 

「――言うまでもねーけどな」

 

 そして――

 腰の辺りを、軽く叩かれる、感覚。

 

「あたしらだって、いるぜ?」

「計画の遂行は、完全になされなくてはなりません。たった一人でも欠落することは、この私が許しません」

「……」

 

 カペラちゃん。ヒスイちゃん。

 

「そういうわけだ、バカウマ」

 

 締めとばかりに。

 やってきていたのは、トレーナーさんだった。

 その手には、籠のようなものが抱えられている。

 

「――よし、みんな聞いてくれ!」

 

 それを地面に置くと、彼は言っていた。

 

「全員、二人一組、無理なら三人一組でいい、グループを作ってくれ! そのうちのリーダーに、通信役として無線機を渡す。通話は別途通話用の機器があるから、話しやすい部分に装着してくれ。全員の無線は俺が『ここ』で取りまとめて中継する。指示があったらそれに従って速やかに動くように――いいか、

 

 どんな手を使っても、今日中に見つけ出すぞ!」

 

『――はい!!』

 

「……み」

 

 そんな、彼の呼びかけに応じて。

 みんなが、動き出す……

 

「みん……な……」

 

 ……あぁ。

 そうだ。

 何を、勘違いしていたんだ。私は。

 

 私は、一人じゃない。

 私は、一人で、戦ってるんじゃ、ない……

 私には……

 

 仲間が。

 

 

 

 みんなが、

 いるじゃないか――……

 

 

 

「――ったく、ホンマに自分は」

 

 呆れたように言うのは、タマちゃん先輩だった。

 

「いっつも一人で勝手に突っ走るんやからなぁ」

「……う」

 

 痛いところを突かれて、思わず口籠る。それに柔らかく微笑んだ彼女は――

 

「――ほら」

 

 私に。

 手を、差し出していた。

 

「行くんやろ? ……捜しに!」

「……」

 

 ……私は。

 込み上げてきた涙を、目を強めに閉じることで、引っ込めた。

 ……そして。

 

「――はい」

 

 その手を、

 取っていた。

 

「――そのつもりです!!」

 

 ――行こう。

 

 みんなと共に、捜しに行こう。

 

 必ず、必ず見つけ出して――あの子を。助け出そう。……だから。

 

 

 だから――

 

 

 

 待っててね。

 コハクちゃん――……!!

 

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