サクラチヨノオーの場合
Scene
東京競技場 控室 昼
Actor
サクラチヨノオー:チヨノオー
サクラチヨノオーのトレーナー:トレーナー
実況:実況
チヨノオー「……えっ?」
-チヨノオー、控室で頓狂な声を上げる。
-トレーナー、気まずそうな顔で、彼女に浅く頭を下げている。
チヨノオー「あ……あー……あはは。そっか。わかりました!」
チヨノオー「冗談。冗談ですよね、トレーナーさん! あはは。そっかそっか。私が緊張してるから、面白い冗談で解してくれようとしてるんですよね!」
チヨノオー「もー、大丈夫ですよトレーナーさん! チヨはそこまでしなくても、全然緊張してませんから!
チヨノオー「心配は無用です!」
トレーナー「……お嬢」
-爛漫に笑うチヨノオーに、トレーナー、頭を下げ続けている。
トレーナー「……冗談ではありやせん」
-トレーナーの言葉に、チヨノオー、硬直する。
トレーナー「うま娘ぷりてぃだーびー、二次創作、16年度の卒業生……」
トレーナー「次章で、
-チヨノオー、絶句する。
チヨノオー「――は、はぁぁぁぁッ!?」
-チヨノオー、絶叫する。
チヨノオー「ち、ちょっと、ちょっと待ってくださいよっ!! そんなことって、そんなことってありますか!?」
チヨノオー「確かに私、最近までトレーニングと遠征でものすっごく忙しくて、例の『捜索』にも参加出来ませんでしたけど!!」
チヨノオー「でも、でも私、最後に出演したの、三章の冒頭ですよ!? そこでミザールさんの噛ませ犬やらされて、意味深になんか言ったのを最後にようやく出られたと思ったら!!」
チヨノオー「次で、次で
トレーナー「お嬢。お嬢。落ち着いてくだせぇ」
-トレーナー、激昂するチヨノオーを宥めるが、チヨノオー、収まる気配がない。
チヨノオー「だって、だってだっておかしいじゃないですかっ!! 見てくださいトレーナーさんこれっ!!」
チヨノオー「私一応、これでも一応!! タグの一覧に名前載ってんですよ!! ほら!!」
チヨノオー「ほらっ!!」
チヨノオー「ほらぁーっ!!」
トレーナー(見事に見切れていやすね……)
チヨノオー「なのにっ、なのにこんな扱いっ!! こんなの、こんなのってあんまりですよーっ!!」
トレーナー「お嬢。お嬢。落ち着いてくだせぇ。あんまり『めたい』こと言うと、他媒体に掲載出来なくなってしめぇます」
-チヨノオー、一頻り騒ぎに騒ぎ、ようやく落ち着く。
チヨノオー「……、……」
チヨノオー「……わかりました」
チヨノオー「せめて……せめて今日のレースで、相応の結果を出してみせます!!」
トレーナー「その意気です、お嬢」
-二人、力強く頷き合う。
トレーナー「……全ては、『らいばる』を越えるためです」
チヨノオー「うん。わかってる。だから本当に、トレーナーさんには感謝しています」
-そこで、スタッフが控室を訪れる。二人、地下バ場道に到着する。
トレーナー「お嬢、」
-トレーナー、腰を落とし、両膝に手を突いて、チヨノオーに恭しく頭を下げる。
トレーナー「いってらっしゃいませ!!」
チヨノオー「……」
-チヨノオー、それに笑顔を浮かべる。
チヨノオー「――行ってきます!」
-チヨノオー、競技場内に入場する。
-はち切れんばかりの歓声が、彼女を迎える。
実況『――さぁ! 舞台は鮮やかな紅葉の彩る東京競技場! 天皇賞・秋、出走が近付いてまいりました!!』
チヨノオー「……」
-チヨノオー、立ち止まり、目を閉じる。
-しばらくして目を開け、ゲートへと向かう。
-その瞳には、それまでの可憐な姿とは裏腹の、闘志の炎が燃え滾っている。
チヨノオー(……待っていてください、ミザールさん)
チヨノオー(これまで何度も……苦い思いをしてきました。今度は……今度は、そうはいきません)
チヨノオー(私は……私は、あなたに)
チヨノオー(絶対に、)
チヨノオー(勝ってみせる――!)
-ゲートインが済み、一瞬の間ののち、ゲートが開く。
-チヨノオー、見据えた未来に向けて、勢いよく駆け出す。