16年度の卒業生   作:Ray May

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勝利の鼓動 p12

-◆◇◆-

 

 

 

 その咆哮を聞きながら。

 サファイアミザールは、身震いし。

 

「……っ」

 

 彼女もまた――

 疾走する。

 

「――当然ッ!!」

 

 行くしかない。

 まだ仕掛けるには早いが。

 もう勢いに乗り始めた――今。

 行けるとこまで行くしか、ないと――

 

「……!」

「――ケ!?」

「っ――!!」

 

 彼女らは。

 出走者を。

 

 

↑UP! 7th サファイアミザール

↑UP! 8th サクラチヨノオー

↓DOWN… 10th エルコンドルパサー

↓DOWN… 10th ダイワスカーレット

↓DOWN… 11th マンハッタンカフェ

 

 

「――!」

 

 次々と。

 

 

↑UP! 6th サファイアミザール

↑UP! 7th サクラチヨノオー

↓DOWN… 8th ツインターボ

 

 

 追い抜く――

 

 

↑UP! 5th サファイアミザール

↑UP! 6th サクラチヨノオー

↓DOWN… 7th アグネスタキオン

 

 

「……はは」

 

 疾走する、二つの影。

 眩い光と、どす黒い闇を見て。

 アグネスタキオンは、思わず笑う。

 

「そうでなくては」

 

 そして。

 自身もまた、その勢いに煽られ。

 

「――そうでなくては!!」

 

 速度を、引き上げていく。

 レースは1コーナーに入り――

 依然先頭は、ヒスイレグルスとトウカイテイオー。

 ヒスイとしても、ここは速度を保ったまま曲がりたいところであったが、

 

「――っ」

 

 目の前に、未来が見えた。

 このままの速度でコーナーに入れば――

 自分は、大きく膨らんだコースを通ることになる、と。

 そうなれば――一転して。

 取り返しのつかない差が生まれることになってしまう、と。

 だから――速度を若干落とす。

 最善で、最適なコースを通るための、やむを得ない減速――

 

「――どうしたの?」

 

 それを。

『彼女』が、見逃すはずがない。

 

「ビビっちゃった?」

「っ……!!」

 

 トウカイテイオーは。

 無慈悲に、ヒスイを追い抜いていた。

 

 

↑UP! 1st トウカイテイオー

↓DOWN… 2nd ヒスイレグルス

 

 

 それだけでなく――

 

「!」

 

 サイレンススズカが。

 

 

↑UP! 2nd サイレンススズカ

↓DOWN… 3rd ヒスイレグルス

 

 

「――、――」

 

 コハクダブルスターが。

 

 

↑UP! 3rd コハクダブルスター

↓DOWN… 4th ヒスイレグルス

 

 

「――知ってる、ヒスイちゃん?」

 

 ――さらには。

 

「速度落としたら――抜かれちゃうんだよっ!」

 

 サファイアミザールが、追い抜いていた。

 

 

↑UP! 4th サファイアミザール

↓DOWN… 5th ヒスイレグルス

 

 

「ッ――!!」

 

 それを追って――

 サクラチヨノオーも、続く。

 

 

↑UP! 5th サクラチヨノオー

↓DOWN… 6th ヒスイレグルス

 

 

 二人の勢いは止まらない。

 コーナーに入っても、彼女らは、猛然と駆け続け。

 

「――!」

 

 先頭を走っていたはずの、二人の『逃亡者』を。

 すっかり、追い抜いていた。

 

 

↑UP! 2nd サファイアミザール

↑UP! 3rd サクラチヨノオー

↓DOWN… 4th サイレンススズカ

↓DOWN… 5th コハクダブルスター

 

 

 サファイアミザールは。

 かつては遠くに拝むだけだった、『帝王』を――

 今や、『会長』という責務をも追うこととなった、偉大な背中を――

 目の前に、捉える。

 

「――あ」

 

 そしてそれは。

 テイオーもまた、認識し。

 

(スキル)泥棒さんだ!」

「――は? スキル……?」

 

 投げかけられた、身に覚えのない言葉に。

 彼女は頓狂に答えていた。

 

「あはは。なんだ、自覚無いんだ」

「いや、あの! ど、どういう意味……!!」

「あ~もういいや。別に」

 

 困惑するミザールを。

 一転、冷たく突き放したテイオーは。

 

「むしろ――どーでもいいわ」

 

 距離をも突き放すように――

 2コーナー、始め付近にて。

 加速する。

 

「――そう言わずに、」

 

 ミザールもまた、それを見ているだけ、というわけにはいかない。

 

「教えてください先輩っ!」

 

『あの時』とは違う――とばかりに、着いていく。

 そしてチヨノオーもまた。

 鬼気迫る瞳で――追い縋っていく。

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

1st トウカイテイオー

2nd サファイアミザール

3rd サクラチヨノオー

4th サイレンススズカ

5th コハクダブルスター

6th ヒスイレグルス

7th アグネスタキオン

8th ツインターボ

9th エルコンドルパサー

9th ダイワスカーレット

11th マンハッタンカフェ

.

.

.

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

「……とんでもないレースだねぇ」

 

 レースは中盤。

 ミスターシービーは、その様相に、苦笑い付きで言っていた。

 

「序盤からここまで……全然目が離せないじゃん」

「私たちが現役の頃も、ここまで緊密にやり合ったものはなかったね」

「ルドルフの場合は、一人でぶっちぎって終わりだったしな」

 

 それに、ルドルフとブライアンが続く。

 

「……凱旋門を思い出すな、なんか」

 

 その後にシリウスが言い。

 

「バカ言え。あっちのレベルはもっと高ぇよ」

 

 ナカヤマが反論するが。彼女も、冷汗を隠せていない。

 

「――ライス……そないに身ぃ乗り出して見とったら危ないで」

「ごめんね。でも、これだけは譲れないの……!!」

「落ちないように私が支える。タマも同じようにしていいぞ」

「いや、ウチは別に……いや、そう言うんならしとこかな……」

「あぁん!? 聞き捨てならねぇな! 行くぞマックちゃん! 究極合体☆ゴルシカタグルマだ!」

「後ろに迷惑なのでお止めくださいませ」

「あっはい。さーせん……」

 

 傍で、タマモクロス、オグリキャップ、ライスシャワー、メジロマックイーン、ゴールドシップがやり取りし。

 

「ターボちゃん、いつもより長く走れてるよ! すごい!!」

「ヒスイさんも、危なげなく走れてはいますが……まだ油断は出来ません。ここからどうなるか」

「ターボ……頑張れ。あんたなら出来る……!!」

 

 マチカネタンホイザ、イクノディクタス、ナイスネイチャも、言葉を交わした。

 加えて――

 西崎の。

 東条の。

 南坂の。

 チヨノオーのトレーナーの。

 ミザールのトレーナーの。

 真剣で、真っ直ぐな視線が注がれる中。

 レースは、更に加速する――

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

 そろそろ2コーナーが終わる。

 序盤はなんだかんだあったけど、なんだかんだこうして先団に介入出来たのはいい流れだ。

 テイオーさんが、その名に恥じぬ驚異的な走りで前を走ってるけど……

 捲れない距離じゃない。

 そうだ、焦ることはない。最初の坂路で無理しちゃったせいか、やや息が上がり始めちゃってもいるから。ここらで体力を温存しないと……

 あと気になるのは――すぐ背後に追い縋っているチヨさん。

 どす黒い、殺意にも敵意にも似たその気迫は、振り返らずともよくわかる。

 

 ってかむしろ、振り返りたくない! あんまり恐ろし過ぎて……!!

 もう、なんでそんな空気で走ってくるんだよ。私が何したって言うんだよ……!

 あぁ、もういい、気にしててもしょうがない。とにかく次だ。

 

 次は、どうする……!

 

 ここは堅実に順位維持か。次に追い抜けるタイミングがあるとすれば、3、4コーナーと最後の坂路くらいだ。

 ここまで来たんだ、二位に甘んじることなんて認めない。

 いや――むしろ。

 

 興味ねーよ――二位以下なんかに!!

 狙うなら一位、掴み取るなら先頭。

 それ以外に、意味なんてない――!!

 

 ――というのは、

 さすがに言い過ぎましたっ!! ごめんなさいっ!!

 

「――、」

 

 とにかく。

 とにかく、油断するな私。

 わかる。わかるよ。あの人が――あの『逃亡者』が、こんな展開を受け入れるはずがない。

 

 感じる。

 わかる。

 2コーナーの終端――

 

 来る――!!

 

「――!」

 

 スズカさんが――……

 

 ……――!?

 

「――!?」

 

 そう、私の中では、そういう予想。

 きっと、スズカさんが速度を取り戻し、この辺で追いついてくる。

 対して、コハクちゃんはもう、結構垂れ始めているように見えたから。

 先頭争いは、テイオーさん、スズカさん、チヨさん、私、の四人によるものになるだろうと、そう考えていた。

 そう、考えていた――

 のに。

 

 ――それに引っ張られるように。

 黒髪が。

 ヒスイちゃんまでもが――

 上がってきた――!?

 

「ッ……!!」

 

 それは。

 それは、ちょっと予想外……!!

 

 っていうか、ヒスイちゃんは加速に難ありだったはず。少しとは言え、その少しの減速が仇となって、追い付くにも直線に入ってしばらくしてから、って思ってたのに。

 

 まさか――まさか。

 こんなに早く、追い付くなんて――!!

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

1st トウカイテイオー

2nd サファイアミザール

2nd サクラチヨノオー

2nd サイレンススズカ

2nd ヒスイレグルス

6th コハクダブルスター

.

.

.

 

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