その咆哮を聞きながら。
サファイアミザールは、身震いし。
「……っ」
彼女もまた――
疾走する。
「――当然ッ!!」
行くしかない。
まだ仕掛けるには早いが。
もう勢いに乗り始めた――今。
行けるとこまで行くしか、ないと――
「……!」
「――ケ!?」
「っ――!!」
彼女らは。
出走者を。
↑UP! 7th サファイアミザール
↑UP! 8th サクラチヨノオー
↓DOWN… 10th エルコンドルパサー
↓DOWN… 10th ダイワスカーレット
↓DOWN… 11th マンハッタンカフェ
「――!」
次々と。
↑UP! 6th サファイアミザール
↑UP! 7th サクラチヨノオー
↓DOWN… 8th ツインターボ
追い抜く――
↑UP! 5th サファイアミザール
↑UP! 6th サクラチヨノオー
↓DOWN… 7th アグネスタキオン
「……はは」
疾走する、二つの影。
眩い光と、どす黒い闇を見て。
アグネスタキオンは、思わず笑う。
「そうでなくては」
そして。
自身もまた、その勢いに煽られ。
「――そうでなくては!!」
速度を、引き上げていく。
レースは1コーナーに入り――
依然先頭は、ヒスイレグルスとトウカイテイオー。
ヒスイとしても、ここは速度を保ったまま曲がりたいところであったが、
「――っ」
目の前に、未来が見えた。
このままの速度でコーナーに入れば――
自分は、大きく膨らんだコースを通ることになる、と。
そうなれば――一転して。
取り返しのつかない差が生まれることになってしまう、と。
だから――速度を若干落とす。
最善で、最適なコースを通るための、やむを得ない減速――
「――どうしたの?」
それを。
『彼女』が、見逃すはずがない。
「ビビっちゃった?」
「っ……!!」
トウカイテイオーは。
無慈悲に、ヒスイを追い抜いていた。
↑UP! 1st トウカイテイオー
↓DOWN… 2nd ヒスイレグルス
それだけでなく――
「!」
サイレンススズカが。
↑UP! 2nd サイレンススズカ
↓DOWN… 3rd ヒスイレグルス
「――、――」
コハクダブルスターが。
↑UP! 3rd コハクダブルスター
↓DOWN… 4th ヒスイレグルス
「――知ってる、ヒスイちゃん?」
――さらには。
「速度落としたら――抜かれちゃうんだよっ!」
サファイアミザールが、追い抜いていた。
↑UP! 4th サファイアミザール
↓DOWN… 5th ヒスイレグルス
「ッ――!!」
それを追って――
サクラチヨノオーも、続く。
↑UP! 5th サクラチヨノオー
↓DOWN… 6th ヒスイレグルス
二人の勢いは止まらない。
コーナーに入っても、彼女らは、猛然と駆け続け。
「――!」
先頭を走っていたはずの、二人の『逃亡者』を。
すっかり、追い抜いていた。
↑UP! 2nd サファイアミザール
↑UP! 3rd サクラチヨノオー
↓DOWN… 4th サイレンススズカ
↓DOWN… 5th コハクダブルスター
サファイアミザールは。
かつては遠くに拝むだけだった、『帝王』を――
今や、『会長』という責務をも追うこととなった、偉大な背中を――
目の前に、捉える。
「――あ」
そしてそれは。
テイオーもまた、認識し。
「
「――は? スキル……?」
投げかけられた、身に覚えのない言葉に。
彼女は頓狂に答えていた。
「あはは。なんだ、自覚無いんだ」
「いや、あの! ど、どういう意味……!!」
「あ~もういいや。別に」
困惑するミザールを。
一転、冷たく突き放したテイオーは。
「むしろ――どーでもいいわ」
距離をも突き放すように――
2コーナー、始め付近にて。
加速する。
「――そう言わずに、」
ミザールもまた、それを見ているだけ、というわけにはいかない。
「教えてください先輩っ!」
『あの時』とは違う――とばかりに、着いていく。
そしてチヨノオーもまた。
鬼気迫る瞳で――追い縋っていく。
1st トウカイテイオー
2nd サファイアミザール
3rd サクラチヨノオー
4th サイレンススズカ
5th コハクダブルスター
6th ヒスイレグルス
7th アグネスタキオン
8th ツインターボ
9th エルコンドルパサー
9th ダイワスカーレット
11th マンハッタンカフェ
.
.
.
「……とんでもないレースだねぇ」
レースは中盤。
ミスターシービーは、その様相に、苦笑い付きで言っていた。
「序盤からここまで……全然目が離せないじゃん」
「私たちが現役の頃も、ここまで緊密にやり合ったものはなかったね」
「ルドルフの場合は、一人でぶっちぎって終わりだったしな」
それに、ルドルフとブライアンが続く。
「……凱旋門を思い出すな、なんか」
その後にシリウスが言い。
「バカ言え。あっちのレベルはもっと高ぇよ」
ナカヤマが反論するが。彼女も、冷汗を隠せていない。
「――ライス……そないに身ぃ乗り出して見とったら危ないで」
「ごめんね。でも、これだけは譲れないの……!!」
「落ちないように私が支える。タマも同じようにしていいぞ」
「いや、ウチは別に……いや、そう言うんならしとこかな……」
「あぁん!? 聞き捨てならねぇな! 行くぞマックちゃん! 究極合体☆ゴルシカタグルマだ!」
「後ろに迷惑なのでお止めくださいませ」
「あっはい。さーせん……」
傍で、タマモクロス、オグリキャップ、ライスシャワー、メジロマックイーン、ゴールドシップがやり取りし。
「ターボちゃん、いつもより長く走れてるよ! すごい!!」
「ヒスイさんも、危なげなく走れてはいますが……まだ油断は出来ません。ここからどうなるか」
「ターボ……頑張れ。あんたなら出来る……!!」
マチカネタンホイザ、イクノディクタス、ナイスネイチャも、言葉を交わした。
加えて――
西崎の。
東条の。
南坂の。
チヨノオーのトレーナーの。
ミザールのトレーナーの。
真剣で、真っ直ぐな視線が注がれる中。
レースは、更に加速する――
そろそろ2コーナーが終わる。
序盤はなんだかんだあったけど、なんだかんだこうして先団に介入出来たのはいい流れだ。
テイオーさんが、その名に恥じぬ驚異的な走りで前を走ってるけど……
捲れない距離じゃない。
そうだ、焦ることはない。最初の坂路で無理しちゃったせいか、やや息が上がり始めちゃってもいるから。ここらで体力を温存しないと……
あと気になるのは――すぐ背後に追い縋っているチヨさん。
どす黒い、殺意にも敵意にも似たその気迫は、振り返らずともよくわかる。
ってかむしろ、振り返りたくない! あんまり恐ろし過ぎて……!!
もう、なんでそんな空気で走ってくるんだよ。私が何したって言うんだよ……!
あぁ、もういい、気にしててもしょうがない。とにかく次だ。
次は、どうする……!
ここは堅実に順位維持か。次に追い抜けるタイミングがあるとすれば、3、4コーナーと最後の坂路くらいだ。
ここまで来たんだ、二位に甘んじることなんて認めない。
いや――むしろ。
興味ねーよ――二位以下なんかに!!
狙うなら一位、掴み取るなら先頭。
それ以外に、意味なんてない――!!
――というのは、
さすがに言い過ぎましたっ!! ごめんなさいっ!!
「――、」
とにかく。
とにかく、油断するな私。
わかる。わかるよ。あの人が――あの『逃亡者』が、こんな展開を受け入れるはずがない。
感じる。
わかる。
2コーナーの終端――
来る――!!
「――!」
スズカさんが――……
……――!?
「――!?」
そう、私の中では、そういう予想。
きっと、スズカさんが速度を取り戻し、この辺で追いついてくる。
対して、コハクちゃんはもう、結構垂れ始めているように見えたから。
先頭争いは、テイオーさん、スズカさん、チヨさん、私、の四人によるものになるだろうと、そう考えていた。
そう、考えていた――
のに。
――それに引っ張られるように。
黒髪が。
ヒスイちゃんまでもが――
上がってきた――!?
「ッ……!!」
それは。
それは、ちょっと予想外……!!
っていうか、ヒスイちゃんは加速に難ありだったはず。少しとは言え、その少しの減速が仇となって、追い付くにも直線に入ってしばらくしてから、って思ってたのに。
まさか――まさか。
こんなに早く、追い付くなんて――!!
1st トウカイテイオー
2nd サファイアミザール
2nd サクラチヨノオー
2nd サイレンススズカ
2nd ヒスイレグルス
6th コハクダブルスター
.
.
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