16年度の卒業生   作:Ray May

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勝利の鼓動 p13

-◆◇◆-

 

 

 

 ヒスイレグルスは、思い出す。

 加速を取り戻した身体で、先団への再介入を果たし、トレーナーの、あの言葉を。

 

『――最高速度に必要なのは、強い力を発揮し続ける『持続力』』

『対して、加速力に必要なのは、一瞬で強い力を発揮する『瞬発力』』

『どちらも似て非なるものです。どちらをも鍛えようとすれば、どっちつかずの中途半端なものになってしまうでしょう』

『ですがそれは――鍛えてはいけないということではありません』

『ですので。『いい具合に』鍛えるのです。あなたの『メイン武器』を阻害しない程度にね』

『そうすればきっと――その力は』

『いざという時に頼れる――『サブ武器』(サイドアーム)になってくれるはずです――……』

 

「……感謝します、トレーナー」

 

 ぼそり、とヒスイは呟く。

 お陰で自分は、早い復帰で。

 こうして、再び追いつくことが出来た――と。

 

 トウカイテイオー、サファイアミザール、サクラチヨノオー、サイレンススズカ、そしてヒスイレグルス。

 そうして、総勢五人の出走者が、激しい先頭争いを繰り広げ始める中――

 第二直線、向こう正面の、中頃――

 

「――っ」

 

 ――彼女は。

 コハクダブルスターは――

 

「――、はぁーっ、はぁーっ……!」

 

 追いつこうと、必死に走りながらも。

 激しい呼吸を、繰り返していた。

 

「……っ」

 

 観客席――

 それを、遠目からでも確認出来た東条は。

 思わず、顔を歪める。

 

 わかっていたことだった。

 届かないということは。

 なぜなら――彼女が走れる最長は、行っても中距離程度で。

 

 実際には、マイル距離が最適であり――

 長距離には、とても向いていなかったからだ。

 

 況して、序盤で激しい先頭争いを繰り広げてしまったのだ。

 そんなことをしたら、最後まで持つかもわからない。

 

 ――だからペースを意識しろと、あれほど……!

 

 だが、と東条は思う。

 それも仕方のないことなのかもしれない、と。

 何せ今日は――彼女が、彼女らが、一心に目指してきた夢の舞台。

 それに心を奪われ、細かいことを忘れ。

 目の前に囚われてしまっても。

 仕方のないことなのかもしれない――と。

 

「――!」

 

 それでも。

 

 

↑UP! 6th アグネスタキオン

↓DOWN… 7th コハクダブルスター

 

 

 レースは、無情に進み。

 

 

↑UP! 7th ツインターボ

↓DOWN… 8th コハクダブルスター

 

 

 彼女のすぐ背後に。

 相変わらず競り合い続けているエルコンドルパサーと、ダイワスカーレットが迫る。

 

「っ……!!」

 

 ――嫌だ、と彼女は思う。

 負けたくない、とも考える。

 目の前の出走者を見て。

 同胞たちの姿を見て。

 置いていかないで――と。

 歯を食いしばり。

 死に物狂いで、加速する。

 

「――」

 

 それを。

 前を走るツインターボは、確かに目撃する。

 肩越しに彼女に視線をやり――

 突然、大仰な動きで。

 身体を、ほんの少し、振り返らせていた。

 

「――!?」

 

 スローモーションになったような感覚。

 彼女の小さな手指が。

 コハクダブルスターを、確かに指差す。

 その特徴的な鋸歯が。

 いかにも楽しげな笑顔を作った。

 

「――イイね」

 

 そして。

 ツインターボは、言った。

 

()()が――諦めないってことだッ!!」

 

 そして――

 加速する。

 その姿に、目を見開いたコハクは。

 憔悴し始めていた顔に。

 再びの闘志を宿らせ――

 

「――ッ、ぁぁぁぁあああああッ!!」

 

 加速し――

 

「――おぉ!」

 

 

↑UP! 7th コハクダブルスター

↓DOWN… 8th ツインターボ

 

 

 ツインターボを。

「む――!」

 

 

↑UP! 6th コハクダブルスター

↓DOWN… 7th アグネスタキオン

 

 

 アグネスタキオンを。

 再び抜き。元の順位へと、返り咲いていた。

 その、予想外の底力を――

 

「……」

 

 東条は。

 冷汗を垂らしながらも。

 期待のこもった眼差しで、見つめていた。

 

 ――先団は。

 3コーナーに差し掛かる。

 

「――、――!」

 

 レースは間もなく終盤戦。

 そう、コハクダブルスターがそうであったように。

 出走者たちの顔に、疲労の色が見え隠れし始める。

 

 バ群全体の統率が失われ始め。

 出走者間に、明らかに、差が出来始める――

 

 

「――なんだ、皆様方」

 

 

 そんな。

 彼女らを。

 

 

「こんなんで、もうグロッキーか?」

 

 

『紅い閃光』が――

 

 

「――隙だらけだぜッ!!」

 

 

 容赦なく。

 切り裂いていた。

 

「――!!」

 

 先団を、衝撃が走り抜ける。

 だが――動きは、それだけでは終わっていなかった。

 ――そう。

 

「――おっす、元気してっかスカーレット!」

「ッ――!」

 

『女帝』が。

 

「お疲れのようですね、エルさん!?」

「グラス……!!」

 

『不死鳥』が。

 

 そして。

 

 そして――

 

 

「――どもっ」

 

 

『トリックスター』が。

 

「――セイちゃん急便、お届けに上がりましたっ!!」

「……!!」

 

 それまで、息を潜め、雌伏の時を過ごしていた、後団が。

 一斉に――仕掛け始めたのだ。

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

1st トウカイテイオー

2nd サファイアミザール

2nd サクラチヨノオー

2nd サイレンススズカ

2nd セイウンスカイ

6th ヒスイレグルス

6th ガーネットカペラ

7th コハクダブルスター

.

.

.

 

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