16年度の卒業生   作:Ray May

162 / 163
継がれていく想い p3

 

 

 

 しばらくして――……

 

 

 

 

 

 

 

ただ地図を広げて

ただ風を待ってたんだ

答えもなく

 

 

 

 

 

「――会長さんたちも来ればよかったのに」

「仕方ないやろ、さすがに大所帯過ぎるから」

 

 私のボヤキに、タマちゃん先輩はそう答えていた。

 

「っていうか、今でも十分大所帯やで。みんなにも都合があるし、これ以上は贅沢っちゅうもんやろ」

「まぁ、そうですね」

 私もそれに応じつつ、少し離れた場所を見る。公園――『元・北部校』隣の、広大な敷地で。

 教頭先生は、オグリさん、マックイーンさん、チヨノオーさん、ゴルシさん、あとカペラちゃんとヒスイちゃん、コハクちゃんにまで囲まれながら、『それ』をいじっていた。

 

 三脚に取り付けられた、最新式のカメラを。

 なんだかいつもよりそわそわしているように見えるのは……まぁ、有名人に囲まれまくってるからだろうなぁ。

 

「――しっかし、残念やなぁ」

 

 タマちゃん先輩の目は、そこで私たちのすぐ傍に向いていた。

 そう、今も変わらず聳え立つ、立派な大樹へと。

 

「気前よく咲いててくれたら、最高やったんに」

「そうですね。まぁ、『ご神木』側の都合もありますから……」

 

 苦笑いしながら答える。そう、今日は、例の有マ記念大会での優勝を、『ご神木』へと『報告』しようかと思って。

 本当ならもっと早くに来るつもりだったんだけど、どうせ行くなら、誘える人誘って行きたい! と思い立ったところ、なかなかスケジュールが合わず……

 

 気が付いてみたら、ようやく来られたのが、今、春先の陽気の下、という感じ。

 

 時間もあったから、『色々』準備も出来たけど。もう少し早く来れたよなぁ……と、少し反省。

 

「でも、良かったな」

「え?」

 

 やや唐突なタマちゃん先輩の声に返すと、彼女は、男前に笑っていた。

 

「『約束』、果たせて」

「……」

 

 その言葉に、重みを感じて。一瞬、呆然とするけれど。

 すぐに私は、微笑みを返していた。

 

「……はい」

「――おーい、タマ! ちょっと手伝ってくれー!」

「あぁ、今行く! おい、ミザール」

「あ、はい」

 

 オグリさんの声に反応して、私たちはそちらへ駆け寄ろうとする。

 

 

 

 

 

いま僕は行くのさ イメージの向こう側へ

僕の向こうへと

 

 

 

 

 

 でも、その瞬間――

 

 

 傍を。

 

 すぐ、顔の横を。何かが通り過ぎた気がして。

 

 弾かれたように。背後に振り返っていた。

 

 

 ……

 すると。

 

 

 背後の、ご神木は……

 

「……? どないしたん、ミザール……」

 

 まだ駆け出していなかったタマちゃん先輩が、怪訝そうに問いかけてくる。

 私は……答えられなかったけれど。

 

 ……答えは。

 

 目の前に、既に、あった。

 

 

 

 ご神木が。

 満開の花を、咲かせていた。

 

 

 

「……な」

 

 タマちゃん先輩は、唖然と声を漏らす。

 

「な、なんでや!? さっきまで蕾やったろ……!?」

「……」

 

 ……それは。

 たまたま起きた、珍しい現象だったのかもしれない。

 

 偶然が重なった結果、見られただけの。

 有り触れた、出来事だったのかもしれない。

 

 でも、私は、それを見て。

 それに触れて。

 確かな温もりを。暖かさを感じて……

 

 笑っていた。

 

 

 

 

 

ただ雨に打たれ

ただ虹を待ってたんだ

疑いもせずに

 

 

 

 

 

 ……色んな人と、出会った。

 色んな人に、支えられた。

 

「――オグリ、もうちょい右に寄ってくれ!」

 

 タマちゃん先輩。

 

「この辺か? 微調整が難しいな……」

 

 オグリキャップさん。

 

「む。少し身体が隠れすぎますかね……ちょっと大き過ぎましたか」

 

 マックイーンさん。

 

「いやー、でも凄い横断幕ですよね~、みんなからの想いも伝わってきます!」

 

 チヨさん。

 

「仕方ねぇ、ゴルシちゃんが真ん中持ってやる! これで万事解決だ!」

 

 ゴールドシップさん。

 

「じゃ、あなた達は前に座って! その方が、画が綺麗でしょ!」

 

 

 教頭先生。

 

 

「ん、わたし、みざーるちゃんのお膝!」

 

 

 コハクちゃん。

 

 

「やはり恥ずかしいですね……こういうのは……」

 

 

 ヒスイちゃん。

 

 

「文字見えた方がいいよなもっと? あたしは寝転ぶか!」

 

 

 カペラちゃん。

 

 

 そして。

 

 

 

 ……   さん……

 

 

 

 

 

いま 僕は行くのさ イメージの向こう側へ

 

 

君の空へ

 

僕の虹へ――……

 

 

 

 

 

 ……観ていますか、校長先生。

 色々なことが、ありました。

 悲しいこと。苦しいこと。いっぱい、いっぱい、ありました。

 

 でも、でもそれ以上に、楽しいこと。嬉しいこと。

 いっぱい、いっぱい、ありました。

 

 

 ちょっと、時間が掛かっちゃったけど。

 

 

 

 ちょっと遠回りも、しちゃったけど。

 

 

 

 でも、私は。

 

 でも、私たちは。

 

 

 

 ようやく、

 

 ここまで、

 

 辿り着けました。

 

 

 

「――さ、撮るわよー、みんな!」

 

 

 

 だから、

 

 

 だから――

 

 

 この声を。

 

 

 

 この姿を。

 

 

 

 

 これからも。

 

 

 

 

 

 見守っていて、くださいね。

 

 

 

 

 

 

――飛び立つのさ――……

 

 

 

 

 

 

 ――教頭先生が、カメラのタイマーをセットし、私たちに加わる。

 

「せー、のっ!!」

 

 そして、その声の合図で、私たちは、横断幕を掲げ。

 息を、大きく吸い――

 

 ――、

 

 ――言っていた。

 

 

 

 

『――我らっ!!

 

 

 トレセン学園ーっ!!』

 

 

 

 

 

 そして、それを合図としたように。

 小気味いいシャッターの音が、響く。

 

 

――『我ら、トレセン学園!!』

 

 

 横断幕には、そんな文字が、騒がしく、踊っていた。

 

 

 

Uma-Musume

Graduate of 16

Act.6

Keep Living with Dreams

果てへの旅の始発点

 

-End-

 

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