起きて
もうすぐ 終わりだよ
Tailpiece
――どうも! 初めまして!
私、このたび、トレセン学園中央校に入学することとなりました、ウマ娘です!!
全国でその名を知らないほどの超・有名校! 試験は難しかったし、面接も怖かったけど、なんとかそれらを乗り越えて、今、私はこの地に立っています!
本当ならそれを心の底から喜ぶべきだし、胸を張って誇るべきことでもあるんですけど!
あるん、ですけど……!!
……
正直。
ちょっと、そうは、出来そうになかったです。
だって、だって、私は、ここにいていいのかな、って、思っていて。
なぜなら、私はお父さんやお母さんに言われるまま、ここに来ただけで……
夢とか、そういうの……
持って、ないから……
寮への入寮も許可されたし、私は晴れて、息苦しい実家から離れて自由の身。のはずなのに。実際その日を迎えてみると、また新しい監獄の中に入ってしまったよう。
周りの子を見てみると、いかにも希望に満ちた明るい顔をしていて。
それを見ると、自分がひどく罪深い罪人のように思えてしまって。
とても、肩身が狭くて
とても、息苦しい……
「……どうしたの?」
それを抑えるために、桜並木の端っこで立ち止まっていると。
誰かが、私に話しかけてきていた。
振り向いてみると、そこには、どこかで見たような顔。
栗色のポニーテールが――目に映える。
あれ。確かこの人……
去年の有マの……
「何かあった?」
その人は、私に心配そうに声を掛けてくるけれど、私は、なんでもないです、とだけ答えて歩き去ろうとする。
「待って」
でもその人は、そんな私の背中に声を投げかけ、私の正面へと、回り込んでいた。
「悩みがあるなら聞くよ」
すると、そんなことを言うのだ。
「大丈夫。力になれると思う」
根拠のない言葉。理屈のない呼びかけ。
本当なら、話すことなんてないんだけど。その屈託のない瞳に捉えられた時、なぜだか妙な安心感を抱いてしまって。
私は、自然、心のうちを、彼女に吐露していた。
「……」
それを聞いた彼女は、少しの間だけ黙って。
「……そっか」
にこりと笑って、そう言っていた。
「私とおんなじだ」
え。
私と、同じ……?
「うん。まぁ、私には、夢があったけどね。ずっと、ずっと、自分にそんな資格はないって言い聞かせて、それを追うのを拒んでた」
彼女は続ける。
「でもね、気付いたの。それはただ、自分が怖がってただけで……勇気をもって踏み出せば、いつでも、どこへでも行けるんだって」
その瞳に。
慈しみの光を灯して。
「……辛いこともあったけど。苦しいこともあったけど。でも……ここには、いい人たちがいっぱいいる。優しい仲間が、いっぱいいる。支えてくれる人たちが……いる」
そして、私の目を。
真っ直ぐに、見つめていた。
「……言ってみ?」
それから。
淀みなく、言うのだ。
「あるんでしょ、本当は。……目指したいもの」
……私は。
『それ』を夢などと呼ぶのも、おこがましかった。
本当は、バカバカしい妄想と割り切って、夢と思うことすらも、なかった。
けれど、今、ここで話して。今、ここで呼びかけられて。なぜだか、一歩を、踏み出せそうな、気がして……
……
……
……っ
私は。
『 』
意を決して、
それを口にしていた。
ざあ、と、周りの木々が。
喝采のように、明るくざわめく。
「……そっか」
それを聞いた彼女は、再び、優しく笑って。
「素敵な夢だね」
そう言うと、手を差し伸べてくれる。
「さ、行こう。案内してあげるよ」
私が、その手を、恐る恐る取ると。
「……ようこそ、トレセン学園へ」
母のように、優しく、微笑んでくれた。
――暖かな春先。
花弁舞う、桜並木の道すがら。
ウマ娘に出会って2ヶ月強。
構想から1ヶ月強でこの作品を書き上げたことが、未だに信じられません。
それだけの情熱を傾けて取り組んだ一作でした。
この制作期間中、本当にお話を書く以外のことをしていなかったものですから恐ろしい話です。
しかし、シュヴァルグランという私の性癖ど真ん中の偉大なウマ娘が登場していなければ、
この作品は書き上げるどころか、思いつくことすらなかったでしょう。
作品全体の体裁を整えるため、全体を改めて見直す機会があったのですが
やっぱり一章の展開にはちょっと無理あるなと反省しつつも
それを前提として作品を組み上げてしまったため、構想を組み替えることも出来ず
結局現状を維持することになってしまいました。
この反省はまた別のお話に生かしていきたいなと思っています。
次作以降の展望は不明確ですが
マイページ上にチラシの裏という形で、触りだけは載せてあります。
飽くまでプロトタイプですので、正式にローンチする際には、全面的に改稿されると思います。
まぁ、こういうの作ろうとしてるんだなーくらいに見てもらえれば幸いに存じます。
ともあれ、私が見つけ出した4人のキャラクターたちの、
語れる分の物語は、これでおしまいとなります。
後日談の構想は緩くあるくらいなので、
需要があるようなら真剣に考えてみようかと思います。
彼女らがこれからどのような道を歩み、どのような結末に辿り着くのかは、私にもわかりません。
ですが、私が課したクソみたいな艱難辛苦を乗り越えた彼女らなら、きっとどこへだって行けるでしょうし、
きっと、何にだってなれるでしょう。
そしてそれは、我々に関しても同じことです。
家に帰る時間が来ました。
私たちの道は、ここで分かたれることになりますが
確かな意志を持って生き続ければ、その道もまた交わるでしょう。
いつか、そんな日が来ることを願って。
それでは。