16年度の卒業生   作:Ray May

80 / 163
真剣勝負デス! p3

-◆◇◆-

 

「……動揺してんな。お前の担当ちゃん」

「あー」

 

 西崎の言葉に、ミザールの担当は息を吐いていた。

 

「あいつ、本気(ガチ)のテイオーとやったことないっすからね。『アレ』を見せられるのも初めてでしょう」

 

 そう、それは、熟練のトレーナーの間ではよく知られている、彼女の『技』。

 卓越した戦術眼と、

 磨き抜かれた身体能力、

 そして、小柄な体躯が可能とする――洗練された、無駄のない体捌き。

 

『帝王ステップ』――

 

 人は、そう呼ぶ。

 彼らがそう呟いた通り、サファイアミザールは動揺するものの――

 

 

↑UP! 5th トウカイテイオー

↓DOWN… 6th ツインターボ

 

 

 そんなものには構わず、トウカイテイオーは、ぐんぐんと順位を上げる。

 

 

↑UP! 4th トウカイテイオー

↓DOWN… 5th マチカネタンホイザ

 

 

 気付けば、その姿は――

 

 

↑UP! 3rd トウカイテイオー

↓DOWN… 4th エルコンドルパサー

 

 

「――!」

 

 あっという間に、メジロマックイーンを捉えていた。

 

 

→KEEP 2nd メジロマックイーン

→KEEP 2nd トウカイテイオー

 

 

「――おっす」

 

 怒涛の追い上げに、マックイーンは目を見開き。

 そんな彼女に、テイオーは言う。

 

「そんなに急いでどこ行くの? 『散歩』(ドライブ)ならボクも連れてってよ!」

「――ッ、生憎と、定員オーバーですのッ……!!」

 

 笑いながら、歯を食いしばりながら――

 メジロマックイーンは、それに応じた。

 

「お引き取りッ――くださいませッ!!」

 

 そして、加速。

 テイオーも、それを見過ごさない。

 

「っ……!」

 

 あまりにも、あまりにも。

 レベルの違い過ぎるそのレース展開は、それでも、それでもなお――

 留まることを知らない――

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

「――なんや、おもろそうなことやっとるやん自分らッ!」

 

 そう、そんな、聞き慣れた声すらも。

 今の私には、勘弁してほしいものだった。

 

「ウチも混ぜぇ!!」

「――ッ……!!」

 

 ……嘘でしょ。

 嘘でしょ……!!

 ここで――ここで、タマちゃん先輩まで上がってくんの!?

 勘弁してよ……!!

 

 

→KEEP 7th ゴールドシップ

→KEEP 7th サファイアミザール

→KEEP 7th ライスシャワー

→KEEP 7th タマモクロス

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

「……」

 

 そんなめまぐるしい状況変化を。

 サイレンススズカは、肌で感じ取っていた。

 レースは間もなく、二周目の第一コーナー、その終端。

 まずいなぁ、と考える。

 

 ――ペースを上げるには、まだ早いんだけど。

 しかし、ここで手を抜いてしまったら、いずれ追い付かれてしまうだろう、とも考える。

 

 ――……まぁ、いっか。

 そう、これは模擬レース。

 公式ではない、飽くまでも『練習』のレースなのだ。

 確かに、いつもなら、ペースアップにはまだ早いが――

 

 ――それもまた、挑戦。

 

「――ッ」

 

 そう結論して。

 サイレンススズカは――強く足を踏み込み。

 速度を上げた。

 

「!」

 

 それを真っ先に目撃した、メジロマックイーンとトウカイテイオーも――

 それに呼応して、速度を上げる。

 更に後ろの出走者たちも、呼応して速度を上げ――

 結果として、全体が――

 速度を、一段階引き上げた。

 

 ――洒落にならないことになってきた、と、サファイアミザールは考える。

 レースはまだ中盤だが――程なく終盤に差し掛かる。

 今の自分では、もう集団に着いていくのが精いっぱいだ。

 この状況で、自分達よりも遥か前を走る先達たちに、追い縋る、追い抜く――?

 

 無茶苦茶言うな、と誰にともなく怒っていた。

 しかし、かといって、手放しで敗北を受け入れるわけにはいかない。

 やはり勝たなくては、どうにかして追い付かなくては。そんな想いばかりが先行する。

 そのためにどうすれば――

 何をすれば――

 

 どう走ればいい――

 どう攻めたらいい――

 

「――ッ」

 

 ――せめて。

 何か、きっかけがあれば。

 祈るように。懇願するように。

 そう考えた時だった。

 

「――!」

 

 彼女は、見ていた。

 二周目の、第二コーナーへと差し掛かった、直後――

 自分たちの傍を。

 大外を。

 ――赤色の影が、駆け抜けていったのを。

 

 

 

-◆◇◆-

 

 

 

 このまま順当に行けるか、とメジロマックイーンは考える。

 目の前のサイレンススズカは相変わらずの高速で、こちらの接近を安易には許さない。

 ただ、ペースアップがいつもより早い――もしかしたら、終盤に『垂れる』かもしれない。

 純粋な速度では五分五分といったところ。

 勝ち筋があるのなら――

 そこしかない、と。

 ――そんな彼女の傍を走るトウカイテイオーも。

 また、似たような結論に至っていた。

 何を言おうとも、スズカの圧倒的な速度は如何ともし難い。

 抜き去るには、最終盤に一気に勝負を仕掛けるしかない、と。

 そしてそのような戦略には――

 マックイーンもまた、至っているはずだろう、と。

 

「――、」

 

 ともかく、今は速度維持。

 

「……」

 

 背後から差されないよう。

 突き放されぬよう。

 力を温存して――

 

『――ッ!?』

 

 と。

 二人が、似たように考え。

 第二コーナーの終端へと。至った時だった。

 ぞくり、と。

 殺意に似た悪寒を、両者は覚える。

 

「……」

 

 それに駆られるように。

 彼女らは。

 その方向に、思わず、振り向いていた――

 

「――おい」

 

 果たして、そこには。

 

「あたしを忘れんな――貴族共ッ!!」

 

 赤色の影が。

 ガーネットカペラが、追い上げてきていた。

 

 

→KEEP 2nd メジロマックイーン

→KEEP 2nd トウカイテイオー

→KEEP 2nd ガーネットカペラ

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。