「……動揺してんな。お前の担当ちゃん」
「あー」
西崎の言葉に、ミザールの担当は息を吐いていた。
「あいつ、
そう、それは、熟練のトレーナーの間ではよく知られている、彼女の『技』。
卓越した戦術眼と、
磨き抜かれた身体能力、
そして、小柄な体躯が可能とする――洗練された、無駄のない体捌き。
『帝王ステップ』――
人は、そう呼ぶ。
彼らがそう呟いた通り、サファイアミザールは動揺するものの――
↑UP! 5th トウカイテイオー
↓DOWN… 6th ツインターボ
そんなものには構わず、トウカイテイオーは、ぐんぐんと順位を上げる。
↑UP! 4th トウカイテイオー
↓DOWN… 5th マチカネタンホイザ
気付けば、その姿は――
↑UP! 3rd トウカイテイオー
↓DOWN… 4th エルコンドルパサー
「――!」
あっという間に、メジロマックイーンを捉えていた。
→KEEP 2nd メジロマックイーン
→KEEP 2nd トウカイテイオー
「――おっす」
怒涛の追い上げに、マックイーンは目を見開き。
そんな彼女に、テイオーは言う。
「そんなに急いでどこ行くの?
「――ッ、生憎と、定員オーバーですのッ……!!」
笑いながら、歯を食いしばりながら――
メジロマックイーンは、それに応じた。
「お引き取りッ――くださいませッ!!」
そして、加速。
テイオーも、それを見過ごさない。
「っ……!」
あまりにも、あまりにも。
レベルの違い過ぎるそのレース展開は、それでも、それでもなお――
留まることを知らない――
「――なんや、おもろそうなことやっとるやん自分らッ!」
そう、そんな、聞き慣れた声すらも。
今の私には、勘弁してほしいものだった。
「ウチも混ぜぇ!!」
「――ッ……!!」
……嘘でしょ。
嘘でしょ……!!
ここで――ここで、タマちゃん先輩まで上がってくんの!?
勘弁してよ……!!
→KEEP 7th ゴールドシップ
→KEEP 7th サファイアミザール
→KEEP 7th ライスシャワー
→KEEP 7th タマモクロス
「……」
そんなめまぐるしい状況変化を。
サイレンススズカは、肌で感じ取っていた。
レースは間もなく、二周目の第一コーナー、その終端。
まずいなぁ、と考える。
――ペースを上げるには、まだ早いんだけど。
しかし、ここで手を抜いてしまったら、いずれ追い付かれてしまうだろう、とも考える。
――……まぁ、いっか。
そう、これは模擬レース。
公式ではない、飽くまでも『練習』のレースなのだ。
確かに、いつもなら、ペースアップにはまだ早いが――
――それもまた、挑戦。
「――ッ」
そう結論して。
サイレンススズカは――強く足を踏み込み。
速度を上げた。
「!」
それを真っ先に目撃した、メジロマックイーンとトウカイテイオーも――
それに呼応して、速度を上げる。
更に後ろの出走者たちも、呼応して速度を上げ――
結果として、全体が――
速度を、一段階引き上げた。
――洒落にならないことになってきた、と、サファイアミザールは考える。
レースはまだ中盤だが――程なく終盤に差し掛かる。
今の自分では、もう集団に着いていくのが精いっぱいだ。
この状況で、自分達よりも遥か前を走る先達たちに、追い縋る、追い抜く――?
無茶苦茶言うな、と誰にともなく怒っていた。
しかし、かといって、手放しで敗北を受け入れるわけにはいかない。
やはり勝たなくては、どうにかして追い付かなくては。そんな想いばかりが先行する。
そのためにどうすれば――
何をすれば――
どう走ればいい――
どう攻めたらいい――
「――ッ」
――せめて。
何か、きっかけがあれば。
祈るように。懇願するように。
そう考えた時だった。
「――!」
彼女は、見ていた。
二周目の、第二コーナーへと差し掛かった、直後――
自分たちの傍を。
大外を。
――赤色の影が、駆け抜けていったのを。
このまま順当に行けるか、とメジロマックイーンは考える。
目の前のサイレンススズカは相変わらずの高速で、こちらの接近を安易には許さない。
ただ、ペースアップがいつもより早い――もしかしたら、終盤に『垂れる』かもしれない。
純粋な速度では五分五分といったところ。
勝ち筋があるのなら――
そこしかない、と。
――そんな彼女の傍を走るトウカイテイオーも。
また、似たような結論に至っていた。
何を言おうとも、スズカの圧倒的な速度は如何ともし難い。
抜き去るには、最終盤に一気に勝負を仕掛けるしかない、と。
そしてそのような戦略には――
マックイーンもまた、至っているはずだろう、と。
「――、」
ともかく、今は速度維持。
「……」
背後から差されないよう。
突き放されぬよう。
力を温存して――
『――ッ!?』
と。
二人が、似たように考え。
第二コーナーの終端へと。至った時だった。
ぞくり、と。
殺意に似た悪寒を、両者は覚える。
「……」
それに駆られるように。
彼女らは。
その方向に、思わず、振り向いていた――
「――おい」
果たして、そこには。
「あたしを忘れんな――貴族共ッ!!」
赤色の影が。
ガーネットカペラが、追い上げてきていた。
→KEEP 2nd メジロマックイーン
→KEEP 2nd トウカイテイオー
→KEEP 2nd ガーネットカペラ