「――!!」
……やばい。
やばい、やばい、やばい……!!
恐れていたことが起きた、起きてしまった……!!
差し返された――!!
やばいやばいやばい! どうするどうするどーする!!
このタイミングで抜かれるのはまずい!! なんとか差し返し返す!? いや、駄目だ、今こうして抜かれたってことは、完全に地力でこちらが下ってことだ。抜いたところで、また抜かれ返されるのが関の山……!!
でも、でも気を抜いたら背後には、ゴールドシップさんとタマちゃん先輩がいる! しかも二人とも、追い込みを得意としてるんだ! 絶対、私が疲弊したタイミングを狙って抜いてくるに決まってる……!!
……どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう……!!
もう諦めるしかないのか。私には無理なのか。所詮二年目でしかない私には、歴戦の猛者たちには、その歯牙にかかることさえ――
……
「――っ」
いや。
ふざけるな、終わってたまるか。
まだ負けられない、終われない! 落ち着け、最後まで勝負を捨てるな。
まだ、まだレースは1,000m近くある。
諦めるな。
見極め続けろ。
そうすればきっと。
そうすればきっと――!!
活路は――開ける――!!
「――ッ!!」
だから。
気を入れ直し、努めて冷静になる。
とにかく、これ以上差を開かせないようにと。
ライスシャワーさんの背中を、注視した――
「――
その。
時だった。
「私が通る――!!」
背後から。
『ソレ』がやって来たのは――……!!」
『――!?』
その場に居合わせた全員が。
一斉にそちらに振り向いた。
示し合わせたように――だって、その時感じた威圧感は。
明らかに無視できないほど――
尋常ではないものだったからだ。
「ちょ――はぁ!?」
タマちゃん先輩が。
「お、おいおいおいおい……!!」
ゴールドシップさんが。
「……!!」
ライスシャワーさんが。
「――……」
そして私が。
誰もが、目を見開く。
だってその走りは。
突如追い上げてきた、ヒスイちゃんの走りは。
あまりにも――常識破りだったからだ。
……彼女は。
「……」
迫ってくる。
「……っ」
迫ってくる。
「……!!」
迫ってくる――!!
私たち目がけて、大外を走るでもなく、避けるでもなく――
一直線に。
こちらに、
「――ま」
待て。
ちょっと待て。
ちょっと待てちょっと待てちょっと待て!!
た――確かに。確かにさっき、テイオーさんとタマちゃん先輩が、似たようなことをやった。
似たように、私たちの間を縫って、見事に前方に出てきていた。それは前に出るための最適解ではあるけどさ。
でもそれは。
でもそれは。
でもそれは――あの子たちの体格が、小さかったから出来たのであって。
彼女らよりも、一回り近く体格の大きいあなたが、
「……、」
ヒスイちゃんが。
「……!!」
それ、やったら――!
「――ッ!!」
――避けるしか。
ない――じゃんッ!!
↑UP! 8th ヒスイレグルス
↓DOWN… 9th ライスシャワー
↓DOWN… 10th サファイアミザール
↓DOWN… 11th ゴールドシップ
↓DOWN… 11th タマモクロス
「――っはぁっ!」
……あわや接触。
あわや大事故――にも関わらず、ヒスイちゃんは止まらない。
そのままの勢いで、前方へと、邁進していく。
「な、なんだよあの滅茶苦茶な走り方ッ……!!」
背後のゴールドシップさんは、怒ったように言うけれど。
同時にその声色は――
心底、面白がっているようにも感じられた。