アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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なんか4部の主人公である東方仗助の小説がないな思いまして書かせて貰いました。原作であるアークナイツの知識も熟練ドクター達には程遠いので頑張って行こうと思います。

何かこういう設定あるよーとかご指摘があれば大変励みになりますのでどうぞよろしくお願いします。


第一章 チェルノボーグ編
プロローグ:さよなら杜王町


 

「ふぅ〜っ、さみぃ〜!」

 

久々の寒波に身震いする青年は大雪に身を晒しながらも髪型だけは崩さないようバックを手で頭に固定し帰路を走る。

 

 ――1999年 杜王町 冬

 

『あの事件』から早数ヶ月、杜王町は平和な毎日を送っていた。凶悪なスタンド使いが出る事もなければ、テストで赤点を取ることもない。普通の人からすればなんの代わり映えもない平凡で日常的な生活。しかし『あの事件』を生き延びた青年達にとってはとても穏やかなものだった。

 

だが、今日その平穏は数年ぶりの大雪によって壊された。

 

「早く帰らねぇと自慢のヘアースタイルが崩れちまうッ」

 

髪の防御体勢を維持したまま青年――東方仗助は曲がり角を曲がると家が見える位置にまで着く。家には全てが揃っている。暖かいコタツも、娯楽のゲームも、アツアツのココアも入れられる。そして何より仗助のヘアースタイルに欠かせないポマードがあるのだ。

 

「よっし、フルスピードで突っ切るぜッ!」

 

希望の光が見えた仗助はそれにいち早く辿り着くため足のギアを上げる。滑る危険性のある半ば雪で埋もれた通路を気にもせず仗助は走るが、奇跡的に転ばない。

 

「よし、到着――ゥゥッ!?」

 

家の前に着いた途端に仗助はブレーキを掛けたが、その勢いと推進力は溶けて地面に張り付いた氷の前では殺しきれる訳もなく、

 

「ひでぶッッ!!」

 

仗助は必然的に転んだ。幸い家の窓に突っ込むことはなく、ドアにぶち当たっただけだったのが不幸中の幸いだった。

 

「た、ただいまー」

 

寒さで少し脆くなった頬に響くようなジーンとした痛みが走るが、自業自得なのでそこまで気分を損ねることはなく、何より家に着けたため髪を守る必要も無くなり一安心だ。

 

「お袋〜。いねーのか?」

 

玄関から少し声量を上げリビングに居るであろう母親を呼ぶが返事は返って来ない。

 

「もしかして外出してるのか?ガレージに車は⋯⋯ねぇな」

 

玄関のドアを開け家に隣接しているガレージを確認したところ車はなく外出しているようだった。

 

「こんな大雪の中外出とか大丈夫かお袋。⋯⋯22時回って帰って来なかったら一回電話するか」

 

止みそうにない大吹雪なため仗助は心配になったがしっかりしているお袋ことだと思い楽観視する。しかし夜は流石に危険なので電話だけはしておこうと脳裏に時刻を刻むと、髪型を整えるため玄関を渡り洗面台へと向かう。

 

「よかった。前髪は水分吸ってねぇ後頭部分だけだ」

 

リーゼントを代表する前髪に雪が付いていなかったことに仗助は安堵すると学ランのポケットから櫛を出し後頭部の水分を流し落としていく。

 

リーゼントは前髪も重要だが後髪も後髪でしっかりで統一感を出さなくては完璧とは言えない。何より恩人への尊敬の念に亀裂が入ってしまう。

 

ほんの少しの怠りが段々とその亀裂を大きくする。それは仗助とって一番嫌なことだ。勿論髪型だけで恩人に尊敬の念を抱いている訳では無いがそれでも目に入るものなら尚更しっかりとしていなくてはならない。

 

「うし。修正完了」

 

角度を変えながら何度か鏡の前でポーズを取りおかしなところがないか確認するが一切問題なくばっちりと決まっている。

 

髪の仕上がりに満足した仗助は洗面台を後にしリビングへと向かう。電気が付いていなかったためスイッチを入れ電気を付けると机の上に置き手紙とお金があることに気づいた。

 

「っと、なになに『急ぎの用で夜まで帰ってこないからそこのお金で弁当でも買って食べて』か」

 

机の上には1000円札が置かれており仗助はそれを徐に手に取ると制服のポケットへと仕舞う。

 

「フフっ、この仗助くんが素直にコンビニ弁当でも食うと思ったのかお袋。当然、家にあるカップ麺とかで凌がせてもらうぜ」

 

ラッキーと思いながら仗助は口角を上げるとそのまま棚へと向かい戸を開く。中には備蓄しているインスタントラーメンや缶詰などがあるがまだ夕食の時間ではないため仗助は確認だけを済ませると台所のポットを手に取る。

 

「ううっさみぃ〜。家に帰って来てもこの寒さとか今日の気候はマジにヘビーだぜ。けど、ラッキーな事に今日はお袋が遅くまで帰って来なさそうだからゲームし放題だ」

 

家は暖房もストーブも切っているため鬼のように寒い。そして家具二つは効力が出るのに時間が掛かるため取り敢えず芯の暖まるココアを入れることにした。

 

ポットのボタンを押し湯を沸かす共にカップにココアの元を入れる。一通りの準備は出来たのでストーブ付けにリビングの中部へと向かう。

 

ポチッとストーブのボタンを押すと起動音がなり始め辺りの空気を温め始めた。このままストーブの前で固まっておくのもいいかもしれないがまだやる事が残っている。

 

「さてと、それじゃゲームのカセットもセットして⋯⋯あれ?」

 

リビングの中央にはいつもソファとテレビと64ハード、そして箱のカセット入れがあるのだが何故かカセット入れが見つからなかった。

 

「なんでだぁ?整理整頓はキチッとしてたのによォ〜。まさかお袋棚にでも仕舞ったのか?」

 

散らかしてはないし邪魔になる置き場所でもなかったと思いつつも仗助は母親がいつもカセットを仕舞う戸棚へと歩を進める。

 

戸棚前まで行きその扉を開くと予想通りゲームカセットが詰まった箱が収納されていた。目的の物はシューティングゲームのカセットだ。仗助はそれだけを取ろうと手を箱の中に入れるが如何せん光が届きにくく暗くてゲーム名が見えないため一個一個光の下に出しながら目当ての物探す。

 

「今日こそ、お袋の居ない今日こそは!!全クリから裏ボス攻略までぶっ通しでやってやるぜ!」

 

意気込みを口にしながらカセットを光の下へと何度も手を動かす。所持しているカセット数が多いのが苦になるなど思ってもみなかったが、これはスタンド――ハーヴェストを持つ重ちーが集めてくれた4万円相当のゲーム引換券をバンバンカセットに使ったせいである。

 

目当ての物が見つからず苛立ち覚えるがもう少しで見つかるはずだと思い何度もカセットを光の下へと運ぶ。

 

あれでもないこれでもないと目を漂わせゲーム名を判別していると――いきなり目が止まった。いや正しくは見た事ないゲーム名に目が釘付けになったのだ。

 

「何だこのゲーム?買った覚えはねぇけど。えっと、なんだ、明日(アーク)方舟(ナイツ)?」

 

仗助自身、買ったことのあるゲームは全て把握しているため間違いは無い。買い間違いや借りたことなども記憶しているのでその線もない。

 

それにまあまあなゲーム好きなのでライトなものからコアなものまで雑誌や掲載誌等で知っている。つまり、このゲームの正体は――全く分からない。

 

「う〜ん。でもちょっと興味湧いて来たし触りだけでもしてみるか」

 

全く聞いたことも見たこともないというゲームに冒険心を擽られ好奇心が湧いた仗助は面白く無かったら止めようと思いつつカセットを手に持ちリビングへと戻る。

 

「結構ストーブ効いてるじゃあねぇか。これならゲーム中指が凍えずに済むな」

 

ストーブで部屋の空気が暖まっていることを実感しつつカセットを64ハードに差し込む。ゲーム機が起動音を上げ数秒するとゲーム画面が表示された。

 

「うお!?何だこのゲーム?!タイトル画面からすげぇ解像度だ!」

 

タイトル画面を見た瞬間、仗助は驚愕した。ヤバい物を拾ったのではないかと。64ソフトの殆どはドット絵とポリゴンで構成された画素数と解像度の低い3Dゲームが主流というか技術的にそこまでの物しか作れない。

 

しかし目の前のゲームはどちらとも違う。まるで超高画質カメラで撮った写真をそのまま貼っつけているような、現実の物と一瞬見間違えてしまうような、そんなレベルの物だ。

 

「うちのテレビでこんなに綺麗な物を映せるとはな。制作会社さんには敬意を表するぜ」

 

タイトル画面から見入ってしまうほどのハイレベルな作り込みに仗助は喉を鳴らす。しかしゲームは画面だけではなくストーリーやゲーム性の面白さが肝心。傑作となる作品はそのバランスが取れているかどうかで決まるのだ。

 

期待を胸にコントローラーを手に取り丸ボタンを押す。すると何かが砕け弾けたようなSEがなりタイトルから次の画面へと移る。

 

次の画面ではさっきの山と荒野が綺麗に描写されていたタイトル画面とは打って変わってただただ真っ黒な画面が表示されていた。

 

故障か、と思いテレビを確認しようとした矢先、黒い画面に真逆の真っ白な文字が表示された。

 

「えっと、なになに『一度これを起動したら後戻りは出来ません。先に進みますか?』⋯⋯何だこの注意喚起、ちょっと不気味だな」

 

粋な演出だとも思う反面、真っ黒な画面に淡々とした白い文章が表示されるのはなんとも言えない不気味さがあった。

 

この演出的にまさかのホラーテイストかと考えるとこの不気味さはいい味を出しているなと思い、仗助の恐怖心は薄まり逆に挑戦的な気分へと変える。

 

絶対にビビらないと仗助は心に誓い丸ボタンを押そうと親指に力を入れようとしたがその時、背筋にツンと悪寒のようなものが走った。ボタンを押すなと忠告されているようなそんな感覚。

 

「ストーブが付いているのに縮み上がるこたねぇだろ。まさか俺ビビってんのか?ゲームごときに?」

 

洒落せぇと思い仗助は思い切り丸ボタンを押した。しかし先程のSEは鳴らず、黒い画面にロード中という文字とパーセントが表示され、みるみるうちにパーセントが進んでいく。

 

先程少しビビらされたことによる敗北感。それを否定したいプライドと瞬く間に進んでいくパーセントに仗助は目を離さずジッと集中し画面を見詰める。

 

 96、97、98、99――

 

――チンッ!!

 

「わっ!!ビックリした!!⋯⋯なんだお湯が湧いたポットの音かよ」

 

なんの音かと振り返ると湯の沸いたポットの音だったため一安心し、画面へと向き直る。

 

 そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ヨウコソ。テラへ』

 

文字を理解した時にはもう遅かった。

 

「なっ!!?」

 

画面の中央に穴が空いたように広がるブラックホールじみたものがとんでもない吸引力で仗助の体を引き寄せたのだ。

 

「くっっ!!クレイジーダイヤモンド!!」

 

下半身は既に吸い込まれたが上半身に行き届く前に仗助は己の幽波紋――クレイジーダイアモンドを顕現させる。しかしこの吸引はスタンドにまで影響を及ぼしておりスタンドの腕を床に突き刺し固定するので精一杯だった。

 

「スタンドにまで影響するってことは、まさかスタンド攻撃か!!?」

 

油断していた。もうスタンド使いはいないと安心していた。だがその心の隙に入り込まれていたのだ。

 

「くそッ!脱出出来ねぇ⋯⋯っっ!マズイ!ソファが!」

 

テレビの正面に位置するソファが吸引され飛んで来る。当然、その衝撃を受けるのは仗助自身だ。

 

 ――ドラララララァッ!!

 

床に固定している腕とは別に、残っているスタンドの片腕でソファを左側に殴り飛ばす。この吸引は正面にしか作用していないと考え殴り飛ばしたがまた吸い込まれて来ないところを見るに当たりだったようだ。

 

しかし状況は依然として変わらない。いや寧ろ悪い方に進んでいる。

 

「グレート!この吸い込み!ますますパワー増して来てやがる!!」

 

スタンドの腕を突き刺し固定してある床も音を上げギシギシと軋む音がなっている。自慢のクレイジーDのパワーで抜け出そうにもその本領を発揮できるだけの土台と吸い込まれている影響でスタンドの完全顕現が出来ない。

 

何か他の脱出方法はないかと辺り見回し模索するがそれらしい物も考えも浮かばず手詰まりだった。

 

「マズイ!床も!」

 

諦め掛けている仗助の心に追い討ちを掛けるが如く床がギギっと捲れ始め、完全に割れた。上半身が吸い込まれ体の全てが吸い込まれようとするが、

 

「直せ!クレイジーダイヤモンド!!」

 

クレイジーDの腕と共に剥がれた床を直す力によってギリギリ顔と頭は吸い込まれずに済んだ。しかし、

 

「こ、の、パワー、異常、すぎ、る!」

 

直す力を上回る吸引力によって徐々に顎、頬、耳と吸い込まれていく。そして視界は徐々に色を失い口と鼻が吸い込まれた途端空気を取り込む事も不可能となった。

 

「康一、、億泰、、、」

 

薄れゆく意識の中、仗助は友の声を呼ぶ。果たしてその呼ぶ声は許しか助けを呼ぶものか。仗助自身にも分からなかった。




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