アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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今回はまあまあ良い回ができた気がする。

では、どじゃアァぁぁ〜〜ん!


ウルサス学生自治団 その3

 

 

「もういっぺん聞くが、あの『冬将軍』がピンチなんだよな?」

 

 仗助の一心不乱さが伝わりベンチに腰掛けた『夏将軍』ことロザリンは有り得ないといった表情で仗助に問い質す。

 

 ここまで食い付きがいいのは謎だが仗助にとっては願ってもみないことだ。真剣な表情で仗助がコクリと頷くと音が聞こえるほど深くロザリンは固唾を呑んだ。

 

「俺は今日の朝、犯行の内容を聞かされた。グループの一員にソニアに夜襲を仕掛けると知らされたんだ」

 

「まて、犯行の内容を聞かされたのか?なら勝てる勝負だろ、相手の手の内を知ってるんなら手古摺るはずがない」

 

 まるで『勝てる』ことが前提のように話すロザリンの言葉に仗助は疑問を抱くと視線を少女の方に向けながら、

 

「なんでそう言い切れるんだ?俺は仲間もいないから多対一だ勝てる見込みは少ない。しかもソニアやオメェみてーに腕っ節で名を轟かせている訳でもない。まさかお前『知っている』のか?」

 

 指を差しズイズイと仗助はロザリンを問い詰める。心当たりがあるのか単にその気迫に押されたのかロザリンは口角を上に引き攣った。

 

「あ〜それは⋯⋯」

 

「どーなんだ?――いや反応からして確実に『知ってる』な、⋯⋯なら俺がオメェに事前に説明する手間はねーな」

 

 目が泳ぎ、わなわなと手を動かして明らかに動揺している相手に自身の『スタンド』について知っていると確信を得た仗助はそこで追及を止めた。

 

 質問は終わったが何故か呆然とこちらを見つめるロザリンに仗助は不思議と思っていると、

 

「お、お前びっくりするだろうが!迫真の表情で詰めて来やがって何かされると思ったぞ」

 

「する訳ねーだろうがよ〜〜ォ。まあ、ただちょっと尋問じみてたかもな、謝るよ」

 

 雪のせいで正常な顔色が分からないせいか、ロザリンの顔が一瞬紅潮したように仗助は見えたがロザリンの憤怒と悔しさが入り交じったような瞳の方にすぐ目がいき、仗助は目を背ける。

 

「クソッ⋯⋯まあその通りさ。実はお前が集団を返り討ちにしていた所を盗み見していたんだ。何故か地面に拳大のクレーターがいきなりできたり、殴られた奴の顎が異常に伸びていたり、中々お目にかかれない光景を見せてもらった」

 

「中々お目にかかれないって、なんかそれが当たり前に『ある』ような口ぶりだな。普通もっと驚かねーか?ポルターガイストだとか悪魔憑きだなんだとか言って」

 

 もし仗助がスタンド能力を持たない人間なら驚愕するであろうことをロザリンはなぜか平然と受け入れている。

 

 疑問の一つも口にしないので彼女がスタンド使いかと仗助は訝しむが、その考えは彼女の発言によって露へと消えた。

 

「いや、『感染者』なら有り得ることだなと思って」

 

 感染者と、そう言ってこちらを向くロザリンの目は酷く冷ややかに感じた。その視線に当てられた仗助は軽く息を呑むと疑問をぶつける。

 

「⋯⋯アンナ達もちょくちょく言ってたが、その『感染者』ってのは一体なんなんだよ?頼むから教えてくれ」

 

「⋯イカれてんのか?じゃ、逆に聞くがあの現象を『感染者』の『アーツ』以外でどう証明できるってんだ?」

 

「⋯⋯質問文に対し質問文で答えるとテスト0点なの知ってるか?ナンバー2――オメェの質問に対する回答は既に用意できてる。アホじゃねーなら俺が先に質問してんだから答えてくれ」

 

「フンッ、嫌なこった。その理屈が通用すんのはウルサス以外のところだけだ」

 

 あちらが前提としてある知識を会話に持ち出されても仗助は全く要領を得ることができない。それがギリギリ痒い所に手が届かない虫刺されのようにむず痒く、仗助の神経を逆撫でする。

 

「――ハァ」

 

 食い違う問答に仗助は盛大な溜息を吐く。フツフツと腹の底が煮えたぎるような感覚が徐々に湧いてくる。それが全身に伝播すると、足は上下に激しく揺れ手は眉間を強く抓んだ。

 

「早く答えろよ、おい」

 

「――ッッ」

 

 人に激しい感情の昂りがあった時、そのピークは6秒ほどで収まると医学的に証明されている。

 

 仗助は頭を貶されること以外はかなり温厚な方であるがそれは怒りを一度踏み止めているからであり、自然とこの行動ができているからである。

 

 だが踏み止めた怒りを煽るようなロザリンの数々の言葉は仗助の内の均衡を粉々に粉砕した!

 

「あーもう!いいから教えてくれッッ!!『感染者』とか『アーツ』とか言われても俺は知らねーんだよッ!初めて耳にするビジネス用語みてーに雑音にしか聞き取れない!」

 

「お前、前提を忘れてねーか?お前は私に協力を乞いてる立場なんだぞ!後に答える『権利』は私にだけあるッ!」

 

 我慢の限界に達し自己中な発言をする仗助に負けじと己を押し出すロザリン。両者の主張は終始熾烈を極めた。

 

 

 ▽

 

 

「なるほどな、呑めてきたぜ。俺達は白仮面――いやその感染者組織に軟禁されてんだな」

 

「私はまだ呑み込めてねーけどな、お前が別世界から来たとか何とかなんて」

 

 半ば自嘲気味に笑ってしまっているロザリンを横目に仗助は頭の中で情報を整理する。

 

 まずロザリンが仗助に示唆していた『感染者』についてはアンナが話していた『鉱石病』の罹患者らしく、罹った者は人権がないと言って差し支えない程の差別を受けており、

 

 その憎悪と怒りが爆発し、暴徒として暴れ回っているのが今の現状だと説明された。

 

 『アーツ』に関してはゲームでいう魔法のようなもので、驚くことに適正のある人であれば誰でも使うことができる。

 

 ただ、ゲームに出てくる魔術師のように健常者は媒体が必要だが感染者に関しては適性があるものはデメリットはあるが媒体が必要ないらしい。

 

 ロザリンが仗助を感染者だと訝しんでいたのはこの特徴のせいで完全なトバッチリである。

 

「話が大分脱線しちまったな、整理できたし本題に戻ろう。まず先にしっかりと聞いておく『夏将軍』。オメェは俺に『協力』してくれるのか?」

 

 完全な同意を取れていなかったため改めて仗助は協力を申し出る。その回答に対しロザリンは笑みを沈め、真剣な顔つきのまま腕を組み沈黙する。

 

 動脈がスピードを上げて脈打ち、仗助の心の不安を何度も代弁する。たった数秒の沈黙が時が止まったかのように長く感じられ、嫌な返答の想像を掻き立てる。

 

 永遠にこのままではないかと仗助は錯覚しそうになった瞬間、――ピンと一本の指が視界の前に立てられた。

 

「お前に協力してやる前に一つ条件がある」

 

「言ってみてくれ」

 

 言葉を促す仗助にロザリンは待ってましたと言わんばかりの表情で口角を吊り上げると、条件を口にした。

 

「私をソニアのグループに入れてくれ」

 

 嘘などではなくそれが本心だと直感で理解できるほど淀みのない眼差しに仗助は一瞬呆気に取られるが、内から込み上げるモノに笑みが溢れ出す。

 

「プッ⋯マジかよ、これは一本取られたぜッ〜〜!! 」

 

「チッ、何笑ってやがんだ。私もそろそろ一人じゃなくて仲間を作ってった方がいいと思っただけだ。ソニアとは面識はあるが⋯受け入れてもらえるか少し――」

 

 不貞腐れた態度でロザリンは言い訳の言葉を並べるが「大丈夫」と笑いすぎて片目に涙の粒が漏れてしまっている仗助が彼女の言葉を遮る。

 

「ソニアはきっと受け入れてくれるさ。なんだってアイツの命とグループの皆を救うのは俺と『夏将軍』オメーなんだからよッ!」

 

 仗助の言葉に納得したのかロザリンは小さく縦に首を振り何度も頷く。

 

「そうだな!この『夏将軍』ことロザリン様が冬を助けてやるんだ。この礼はいつか壺満帆に入れたハチミツジュースで返してもらわなきゃあ釣り合いが取れねーな!」

 

 仗助よりも先に教室に向かって歩み出すロザリンに仗助はその背中を頼もしいと思いつつ隣りに並ぶ。

 

「てかさっきのは笑いすぎじゃねーか?謝れ」

 

「別に仗助くんは悪気があって笑った訳じゃないぞ。だから謝罪の必要性は皆無だな」

 

 ロザリンの主張を真っ向から否定したことにより仗助は何度も脇腹を小突かれたがそれでも仗助の溢れ出た笑顔に間違いはない。

 

 あの時内から込み上げたモノそれは純粋な喜びだったのだから、

 

 

 

 

 

 ▽

 

 四階まで駆け上がる二人の足音は限りなく小さくそれでいて迅速である。四階の階段の踊り場まで来ると仗助はジェスチャーでロザリンに静止を促した。

 

「オメーはここで待っていてくれ、俺が犯人を連れ出してくる」

 

「わかった」

 

 確認の取れた仗助はソニア達のいる教室へと足を進める。犯行を計画した奴らをぶっ飛ばせると仗助は心を踊らせながら教室の前に到着すると、コンコンと二回扉をノックをした。

 

 すると、

 

「誰だ」

 

 短いかつ覇気のある声は間違いなく『冬将軍』――ソニアのものだ。仗助はその男勝りな声が聞けて少し安心すると、拳を強く握りしめる。

 

「俺だ、仗助だ。開けてくれ」

 

「お前かよ、早く中に入れ」

 

 少し柔んだ声と共にガラガラと扉のスライドが開かれ、仗助は教室に帰還した。

 

 教室の入口前には相変わらず消火斧を持ったソニアが鎮座しており出迎え言葉はない。代わりに、

 

「お帰り!ジョウスケお兄ちゃん」

 

「戻ってきて良かったですジョウスケさん」

 

 小柄な小熊の少女――ラーダとアンナが仗助を出迎える。そんな二人に笑みを零しながら仗助は「よっ」と軽く手を挙げ帰還の存在をアピールした。

 

「少し推定の時間をオーバーしていたので心配したんですよ。時間は守っていただかないとあらゆる面で支障が出てしまうので気をつけてください」

 

 見た目から醸し出してる如何にも優等生らしいアンナの注意に仗助は苦笑いで返す。

 

「もー本当にアンナお姉ちゃんはジョウスケお兄ちゃんのこと心配してたんだから!好きな小説より地図を何度も見て時間もすごく気にしてたんだよ?」

 

「⋯⋯ジョウスケさんはクレイジー・Dがあるとはいえ単独だったんですよラーダ。気にかけない方がおかしいというものです」

 

「そうかなー?ソニアお姉ちゃんが一人で食糧を探しに行っていた時はそこまでじゃなかったと思うけど」

 

「それは、ソニアが信用できるからです⋯⋯」

 

 自分は信用できないと言われた様に感じ、仗助は心臓付近に痛みが走ったかのような錯覚に陥った。

 

 首を回しアンナから全幅の信頼を得ているソニアの方を振り返ると彼女は平然としながら腕を組んでいるが、なぜだろうか、仗助には鼻で笑われているような感じがしてならなかった。

 

「と、とりあえず時間オーバーしちまって悪かったな。そのお詫びとしては何だが、結構イイもん取ってきたぞ」

 

 教室の中央上部ある教卓に貸し出されていた鞄をドサリと音を立てながら仗助は置く。

 

 重量感のある音が皆の期待を膨らませ、鞄の輪郭からはみ出そうと影を出しているモノは皆の目を輝かせた。教室中が仗助に集中するなか仗助は成果を口に出す。

 

「なんと!缶詰五つと飲料二つ、手に入れることに成功いたしやしたァー!!」

 

「「「「!!!」」」」

 

 報告の瞬間、食べ物に飢えたクマ達がまるで咆哮のような歓喜の声を上げた。自分がボルテージを上げた影響かもしれないが正直ここまでの騒ぎになるとは思ってなかったため仗助はその狂喜に若干引いてしまった。

 

 一歩教卓から身を引き、改めて正面を見た時仗助は自身に犯行の内容を知らせた男子生徒と目が合った。

 

 アイコンタクトで教室の外に出るよう仗助が指示するとその意図が伝わったのか男子生徒はコクッと小さく頷いた。

 

「やるなジョウスケ。どうやったら一回でこんな量見つけられんだ?コツ、教えろよ」

 

 鎮座していた所から降り、腕を肩と同位置に上げたソニアが仗助に近づく。恐らくヘッドロックをカマしてくる、と仗助が予想した頃には『すでに』行動は終わっていた。

 

「ぐっ゙、ぐる゙じい゙」

 

「教えるまでは離してやんねーからな」

 

 酸素の供給が行き届かない中、仗助はソニアの恐るべき生体に触れそして理解した!

 

 それは腕の筋肉の硬さが異常なことである!筋肉の盛り上がりは少ないものの腕を退かそうとソニアの二の腕を触れた時、仗助は自身がコンクリートの壁を素手で押しているかのような錯覚を得たのだ。

 

 まるで動かざること山の如し、仗助はスタンドなしではソニアに全く歯が立たない。かといってここでそれに頼ってしまっては男が腐ってしまうと仗助は漢気を優先した。

 

「ソニア、ジョウスケさんの顔が真っ青になっていってますよ」

 

「こいつがちょこまか動くからだ。いい加減大人しくしろよ」

 

 腕の締まりから抜け出そうと何度も頭を上下させた、その甲斐あってか空いた腕の少しの隙間に仗助は指を三本挟むと一気に上半身に力を入れた。

 

 だが、後ろに身を引いてしまえば大切な髪型がオシャカになってしまうので仗助は上昇を目指す。

 

「逃げられると思うなッ」

 

「うげぇっ゙!」

 

 カタツムリが地面を這うように仗助は少しづつ生還の道を切り開いていたのも束の間、数センチ動いたところでヘッドロックならぬ死のデッドロックが仗助の首にクリーンヒットした。

 

「――ッ!バカッ!おま――」

 

 視界が黒のふちを作り出し、思考が遥か向こうに飛ぶ死の境界線の中、なぜかそのどれとも属さない感触が頭部に伝わった。

 

 それは今感じている地獄の環境とはまるで対極の天国のようであり、夢見心地のように柔ら――

 

 「''最上級ウルサススラング!!''*1

 

「――がっ゙?!!」

 

 天と地にあった意識が背中に伝わった物凄い衝撃に叩き起され、仗助は激痛に悶えながらその体を起こす。

 

 ソニアが仗助から見て正面に捉えられることから突き飛ばされた具合だろうか。

 

 なぜなのか、なぜそうなったかと思考する脳は酸欠で背中の激痛でその気も回らないため仗助はとりあえず男子生徒との合流を一番に考え、腰を曲げながら教室の外に向かう。

 

「ち、ちと外に出てくるわ。――うっ゙!?イッッ〜〜!!?」

 

「だ、大丈夫?!ジョウスケお兄ちゃん?ちょっと!ソニアお姉ちゃんこれは幾らなんでもやり過ぎだよ!」

 

 瀕死の仗助に手を貸し支えるように体を労るラーダ。その原因となった対象にラーダは責めの言葉をぶつける。

 

「じ、自分の力で治せばいいだろそれぐらい」

 

 やり過ぎだと思ったのかはたまた何か原因があったのか少し声を上擦り震わせるソニアに、仗助は後ろを振り返りソニアと視線を合わせるとこれ以上とない憎悪に満ちた声で、

 

 

 

 

 

「俺のスタンドは自分の傷は治せねェーんだよッ゙ッ゙、アホがッ゙!――うっ゙っ゙!!?」

 

「え⋯⋯っぁ、わ、悪かったジョウスケ⋯⋯」

 

「ん?お、おう。じゃあ」

 

 とてつもなく凍った空気を察した仗助は背中を痛めたまま教室を後にした。

 

 

 

 

*1
放送禁止用語の類い。いわゆるピー音





このままバンバン書き進めていきたいですね!

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