アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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――裁くのは誰だ!?


ウルサス学生自治団 その4

「イッつつ、ハァ、ソニアの野郎思いっ切り投げ飛ばしやがって、俺が何したってんだ」

 

ジンジンと心臓が鼓動する度に痛む背中に仗助はその原因となった少女の愚痴を呟く。彼女にはヘッドロックで締められた上に理不尽にも投げ飛ばされた。

 

ヘッドロックはまだあの場のノリということで片付けられるが、投げに関して本当に唐突だったので仗助は不満でいっぱいだ。

 

「まあ、それは一旦置いておくとして向かわなきゃな」

 

不平不満は『一旦』脳の片隅に移すと仗助は犯行を伝えられた場所、手洗い場へ向かう。

 

考えた作戦が上手く通用するのか仗助は内心気が気ではなく、不安に思う度心臓がキュッと何度も締め付けられるがそれを表に出すことは決してない。

 

恐ろしいと思う恐怖はある、だがそれ以上に仗助の中には確かな勇気と黄金色に輝く人間の心があった。

 

 

 

 

「あっ、大丈夫かい?君」

 

男子トイレの奥、そこで待ち合わせていた男子生徒は視界に映り込んだ待ち合わせ相手の容態がおかしいことに気づく。

 

「問題ねーぜ、話をしようや」

 

男子トイレの入口、その壁に体重を預けながら登場したハンバーグ頭の少年は異様な雰囲気を纏っていた。

 

⋯ゴゴゴゴと辺りに漂う重い空気感に男子生徒は本能から息を飲む。こいつは何かがヤバいと得体の知れない感情が男子生徒の中に湧きたつが、

 

「実はな、俺がかなり時間を食っていたのは食糧の問題じゃあねーんだ。オメェらのためにもっとデカい土産を持ってくる為だったんだよ」

 

ニヤリと自分と同類の笑みを浮かべるハンバーグ頭の少年を見て彼に対する男子生徒の感情は逆転し、親近感が湧く。

 

「へー!僕らのためにありがとうジョウスケ君!⋯⋯良かったらその土産を見せてもらうことって出来る?」

 

だが心から信用できることと親しみは別問題。男子生徒にとって一番に優先されるべきその信条は簡単には崩れない。

 

「勿論!すぐ側に待機させてるから着いてこいよ」

 

揚々と手招きする仗助に男子生徒は不審な動きはないかと目を輝かせながらその後をついて行く。表情、動作、声使いどれも特に問題いないと思いつつ男子生徒はその土産の正体に辿り着いた。が、

 

土産のデカさに男子生徒は驚愕がする。

 

「よう、私を誰だかは知っているよな?」

 

「な、『夏将軍』のロザリンだとッ!?」

 

ウルサス帝国一都市、チェルノボーグのみならず他の地域にもその喧嘩強さで名を轟かせている『冬将軍』と肩を並べる存在である『夏将軍』が土産の正体であった。

 

「コイツと意気投合してな、仲間に引き入れたんだ。ソニアをぶっ倒した後の戦力としてな。えっと、どうだ?仲間達は喜んでくれそうか?」

 

「もちろんだよ!!君ってやつはすごいな!」

 

面目も立たないといった様子で謙る仗助に男子生徒は感嘆の意を述べる。興奮に心が踊り、思わず仗助の手を男子生徒は握ると仗助は「本当か!よかったぜ!!」と言い共に喜びを分かち合う。

 

 互いに歓喜の共有が終わると、仗助はゴホンと咳払いをし話を切り出した。

 

「夜襲を仕掛ける際に仲間と連携が取れるようにしたい。俺と『夏将軍』がいるから勝利は間違いないにしても、ソニアに加担するやつが現れて乱戦になったら敵味方の区別がつけられねぇ、一度別の教室で顔を見るぐらいはしておかねえと」

 

仲間を思う仗助の言葉と真摯な眼差しに男子生徒は納得の頷きを作る。仗助の考えは今一度作戦を纏めあげ、勝利を確実なものにするため納得のいくものだと男子生徒は思ったのだ。

 

「そうだね、一度招集をかけよう。『冬将軍』に少し不審に思われるかもしれないが、この際どうでもいい」

 

目の前にいる過剰戦力二人を見て男子生徒はその口角を上げた。仮に『冬将軍』の方から奇襲を仕掛けて来たとしても負けることなどない。

 

ゆっくりと痛ぶり、その体と矜恃を辱めた後貴族に引き渡せば問題の全ては解決され、安心の環境が手に入る。

 

計画の成功は確約されたも同然であり、不遜に振舞っても全く支障はないのだ。

 

「さあ、早く仲間の元にいこう。皆に成功は確実なものだと知らせるために」

 

微笑み先を先導し階段を上がっていく男子生徒に仗助は笑みを返す。

 

「ああ、そうだな。作戦は成功するだろうな、確実に」

 

その顔は不敵に笑っていた。

 

 ▽

 

椅子も机も何もない、ただ埃の舞う教室で仗助とロザリンはその時を待っていた。

 

カチカチと時計の針の音だけが響く静寂な空間に終わりを告げたのは数多の足音だ。

 

「⋯⋯来たな」

 

「みたいだな。『夏将軍』もしもの時は援護を頼むぜ」

 

壁に凭れていた体を起こし仗助はポケットから櫛を取り出すと髪に滑らせる。仗助が気合いを入れ直した直後、数多の足音が教室の前で止まりその姿を見せる。

 

「遅くなってすまなかった。みんな早く中に入って」

 

見慣れた顔の男子生徒が一言謝罪するとその後ろから招かれた男女それぞれの生徒が入ってくる。

 

その中で一番に目に入ったのは仗助が最も知りたかった人数や顔ではなく入ってきた生徒のほとんどが手に持っているモノだ。

 

「⋯⋯なんで武器なんか持ってんだ?」

 

鉄パイプやバット、先が歪に尖った鉄クズ。どれも人を殺められる性能を持ったものだ。仗助は敵意を隠し疑問を装った質問をすると男子生徒は潔く答えた。

 

「ああこれは、もう機会を待つ必要は無いと思ったんだ。君と『夏将軍』がいれば態々夜襲を仕掛ける必要性もないからね。今すぐにでも僕達は始められるよ」

 

8人の生徒は下衆な笑顔を貼り付け準備万端と武器を担ぐ。殺伐とした空気感が辺りを張り詰め、増長していく。誰かが一言発破を掛けるだけで爆発しそうな雰囲気の中、仗助はその役を担う。

 

「そーかい、じゃあ始めるとしようぜ。()()の作戦をよォ――!!」

 

「「「オォオォオーーー!!」」」

 

膨張した闘志が遂に破裂し、生徒達は気合い雄叫びを上げる。

 

「殺してやるぜ!!あの野郎!」

 

「待って、殺しては駄目よ!貴族への土産にするんだから。だけど存分に身も心も痛ぶってやりましょう!!」

 

「イイねー!そうだ!裸にひん剥いてオモチャにしてやろうぜ!!力に驕っているアイツに自分がどれだけ小さい存在か思い知らせてやるんだ!!」

 

どれだけソニアに恥辱の限りを尽くしてやれるかと生徒達は言葉に出してそれが可能だという実感を高めていく。段々と想像を掻き立てそれを行動に移そうと、全員が教室を出ようとしたその時、

 

一言、仗助が間違いを訂正する。

 

「勘違いしているようで悪いんだけどよォ〜〜〜。俺達の中にオメェーらは入ってねーんだわ」

 

「は――」

 

何を言っているのか分からず男子生徒が聞き返そうとしたその刹那、

 

――ドラァッ!!

 

金剛石の拳が炸裂する。

 

「ぐぎぁ゙あ゙ッ――」

 

メギョオとクッキリと顔面に拳の跡をつけながら男子生徒は壁へ激突した。

 

「ひっ――!!アナタ裏切ったのね!!このクソッタレ!」

 

一人の男子生徒が吹き飛ばされた光景を目にし、残りの生徒達は仗助が裏切ったことを悟る。しかし実体の見えない理不尽な力には勝てないと女子生徒は判断すると出口へと向かうが、

 

「おーっと、逃がさねーよ卑怯もん!」

 

「ふぐぅ――!?」

 

作戦の協力者である『夏将軍』――ロザリンがその逃亡を顎を撃ち抜くハイキックで阻止をする。正確無比なその蹴りを喰らった女子生徒は空を舞い、最後には地面と熱烈なキスを始めた。

 

「クソッ!君のこと信じてたのにッ!!殺してやるぞ!!」

 

「まだ6人残ってる!手加減なんかいい!武器を持ってアイツらを殺すんだ!!」

 

距離を取り複数で固まる生徒達。牽制で武器を振り回すが仗助には物理的にも精神的にもそんなものは意味を成さない。

 

「――俺はオメェらと同じように平気で人の尊厳を踏み躙るクソ野郎に何度も出会ってきた。だから、吐き気のする悪はすぐに分かるッ」

 

集団との距離をジリジリと仗助は詰めていく。

 

「悪とはッ!――テメェらのように自分の利益のためだけに人の命を弄び、踏みつけるやつのことだッッ!」

 

更に一歩距離を詰めていく。

 

「――ましてや一人の女を!!」

 

肉薄してくる仗助を見て恐怖の限界に達した生徒達は形振り構わず武器を振り回す。

 

「う、うわぁぁぁああッ!!」

 

 しかし仗助の頭に向け振り下ろされた武器の数々は仗助の頭上でピタリと止まり、異常な膂力によりあられもない方向へひしゃげ、その機能を失う。

 

「うわっ!マジかよ、すげーな」

 

観戦兼見張りのロザリンはその不可思議な光景に感激の言葉を漏らす。その言葉を仗助は背中に聞きながら生徒達に最後の言葉を告げた。

 

「許せねェッ、だから!俺が裁く――!!」

 

 ――ドラララララララララララララララララララララララララァッ!!

 

「ぶぎぃ゙や゙ぁ゙あ゙ぁ゙!!!」

 

嵐のように集団全体を巻き込むラッシュを浴びせていく。そして、

 

「裁くのは――俺の『スタンド』だッー!!」

 

壁や床に蓄積されたダメージはクレイジー・Dのアッパーによる渾身の一撃に耐えられず崩壊寸前程のヒビを作り、その余波は地震のように学校を全体を揺らした。

 

 

 ▽

 

「わあああ?!」

 

「うお!?なんだこの揺れは?!」

 

空気が振動し視界が上下に揺れ動く程の謎の揺れに教室で待機していたソニア達は驚きに声を上げた。

 

「前震かもしれない。何か硬いもので自分の頭を守れお前ら!」

 

唐突な揺れから『天災』の可能性が頭に浮かんだソニアは的確な防御体勢を取るようクラスにいる全員に指示を飛ばす。

 

机、椅子、フライパン、分厚い本、無い者はカーテンや自分の手で頭を守る。数秒後には本震が来るだろうと皆震えながらに覚悟したが、

 

「大丈夫、のようですね⋯⋯。もしかして何処か大きな爆発が起きたのかも」

 

「えっ⋯それって、ラーダ達大丈夫なの?すごく怖いよぉ」

 

「やめろ、嫌な想像なんてするんじゃねぇ!今は自分の身を守ることだけ考えろラーダ」

 

地震に備えてから二十秒ほど経過しても本来続く筈の本震が来ないため、アンナは別の可能性を提言する。

 

しかし原因の根幹がハッキリと分からない為ソニア達はその場で固まっていると、

 

「――ッ!!誰か来るぞ」

 

教室の外、その左奥の通路から何者かの足音がソニア達の鼓膜を揺らした。音の重複からして二人、ソニアは警戒心を高める。

 

進む足音からして確実にこの教室に向かってきているからだ。

 

ソニアは消火斧を手に取り、扉の側面に体をつけると斧の柄に力を入れた。もし奴等が扉を開いたのなら躊躇なく斧を振り下ろすと、ソニアは心を決め息を殺す。

 

「――ッ」

 

新聞紙で補修された窓から薄く二人の人影が写り、人影は扉の前で停止した。そして、

 

――コンコン

 

「ソニア?そこにいるんだろ?開けてくれ」

 

「――ッ!ジョウスケお前か」

 

少しおちゃらけた仗助特有の声にソニアは安堵から短く吐息する。しかしもう一つの人影を不審に思いソニアは言葉を続ける。

 

「お前以外に誰かそこにいるだろ?誰なんだ?」

 

仗助よりも小さな人影から女性と予想できるが素性が分からないためソニアは訝しむが、小さな影の聞き覚えある声が彼女の不信感を取り払った。

 

「私だよ『冬将軍』、ロザリンだ。久しぶり」

 

「ロザリン!?孤軍だったお前がなんでジョウスケと一緒にいるんだ?」

 

「まあまあ、積もる話があんだよ。それより早く中に入らせてくれ、事情は中でちゃんと説明するから」

 

「⋯⋯わかった。中に入れ」

 

少なからず面識のある相手なので信用できると思いソニアは教室の扉を開け、二人を入室させた。

 

「『夏将軍』、ソニアと肩を並べる貴方がなぜここに?」

 

名のある実力者がここに出向いた理由がしれずアンナは露骨に警戒心をさらけ出す。

 

「気が悪ぃなもう、お前らのボスを助けたっていうのに」

 

「⋯⋯要領を得られませんね。妄言を言うために態々ここに来たんですか?それなら他所に行ってください」

 

敵意の孕んだ目でロザリンを睨むアンナはかなり気が立っているように見え、仗助はそんなヒートアップを止めようと言葉を掛ける。

 

「落ち着いてくれアンナ、今から俺が訳を話す」

 

仗助の言葉にアンナは顔を少し和らげると視線を仗助へ向ける。アンナの視線を受け仗助は「けど」と前置きすると、

 

「アンナ、今から話すことはお前にとって辛いことだと思う。だけどこれを聞いても決して自分を責めないでくれ」

 

「⋯⋯はい」

 

仗助の真剣な言葉と雰囲気にアンナは胸をキュッと抱き締める。仗助は話を切り出す前に短く吐息すると口を開いた。

 

「さっき大勢の奴等がここを出て行っただろ、ソイツらはソニアを襲う計画を立てていたんだ」

 

「⋯⋯えっ」

 

弾かれたように顔を上げアンナは驚愕に水色の双眸を震わす。

 

「⋯⋯アイツらアタシの静止を無視して出て行ってたからな、納得はできるがそれをなんでお前が知っているんだ?アイツらはどこに行った?」

 

「もう全員ジョウスケの拳で地面にノビてるぜ。さっき揺れが起こったろ?冗談みてーな話だが、あれはジョウスケがかなり派手にぶちかました余波だ」

 

仗助に質問を投げ掛けるソニア。それをそばに居たロザリンが代替する。内容の本質を理解したソニアは目を丸くしながらその事実に呆然とする。

 

「⋯⋯ってことは助けられたのか、アタシは」

 

「そーだ。私はジョウスケがアイツらの信用を得るために条件付きで協力したんだ。条件は私をここのグループに入れること、何も問題ねーだろ?」

 

 恩着せがましくロザリンは強引に条件を履行しようとするがソニアはそれに対して言い返せる言葉もないため「勝手にしろ」と悪態のついた言葉で返す。

 

そして仗助の方に歩み寄るとソニアは目を逸らしながら、

 

「その、本当に悪かったなジョウスケ、アタシの問題に巻き込んじまって」

 

仗助を目の前にソニアは歯を食いしばった。何かを悔いているように思えるが、本当の意味でソニアが何を思っているのかは仗助には分からない。だが、

 

「⋯⋯ハァ、悪かったじゃなくて、せめてありがとうって言ってくれよ。その、俺はよ、個人の問題云々より、ここにいる全員の安全を守りたくてああしたんだ」

 

「――それに俺が自ら巻き込まれにいったんだから、オメェに謝られる理由なんて最初からねぇんだよ」

 

勝手に落ち込まれても気が滅入るため仗助は本音を告げた。正直なところ異性の励まし方なんて経験のない仗助は分からない。

 

これがソニアへ対する完璧な回答とは言えないかもしれないが、下手な励ましより本音を言った方が言いたいことは伝わるだろうと思ったのだ。

 

本音を告げた仗助にソニアは背を向ける。そして、

 

「⋯⋯アタシ、いや、アタシ達を助けてくれてありがとなジョウスケ。この借りはお前が嫌だと言っても絶対に返してやる」

 

語気に覇気が戻ったソニアは背を向けながら仗助に宣言する。背中を向いているため仗助からその表情は見えないもののソニアは恐らく不敵な笑みを浮かべている。

 

 そんな確信が仗助にはあった。言葉からしても彼女はもう大丈夫だろうと思い仗助は未だ表情を曇らせたアンナに語りかけた。

 

「⋯⋯アンナ、俺が今ソニアに言ったことが全てだ。嘘も虚偽もない俺の行動原理、、ただ何も知らない俺を救ってくれたあの人みたく救いたいと思ってやったことなんだ」

 

床に座り尽くすアンナと目線を合わせるように仗助は片膝を着き、優しい声色で言葉を掛ける。するとアンナは俯かせていた顔をハッと弾かれたように上げ、

 

「アナタが助けてくれたことは凄く感謝しています、分かっています。でも、とても悲しいんです⋯⋯私が一緒に生き延びようと連れてきたクラスメイトがソニアを襲おうとしていたことが」

 

 震える声でアンナは続ける、

 

「――そんなクラスの人達の蛮行を未然に解決できなかったことが。グループを作ろうと私が言い出したことなんです、秩序を保って皆で支え合えば乗り越えていけると。そう言ったに私は保つ事も人を助けることもできなかった」

 

「――私は、役立たずです」

 

 

アンナの言葉の端々に泣き声が混じりだす。あと少し自責を続ければ啜り泣きへと変わるであろう雰囲気に仗助は一度吐息すると、

 

「アンナ、顔を上げてくれ」

 

「……なん、ですか」

 

優し気な仗助の呟きに目に赤みを帯びているアンナは顔を上げた。その瞬間、教室にパチンと乾いた音が響く。

 

「いっ~~!?」

 

突然の痛みの襲来に新橋色の髪の少女は悶える。音の発生源はアンナからでその額にはクッキリと赤く腫れあがった痕ができていた。

 

「今のはちょっと強めにいったぞ」

 

大人が子供を叱りつける際にする懲罰、所謂デコピンを仗助はアンナに喰らわせた。デコピンという謎の行動にアンナは目を白黒させていると、仗助は指を指しながら、

 

「あのな、オメェはなんで全部一人の責任だと思っちまうんだ?何もかも自分の責任しないといけない理由でもあんのか?その点だが、関わった俺から言わせればオメェが責任を感じる道理は微塵もない、ただの偏屈だぜ」

 

先程の穏やかな声と表情から打って変わり、仗助は語調に怒りを含ませながらアンナを りつける。その気迫に押され戸惑うアンナに仗助は更に追撃を加える。

 

「俺はアイツ等の本性を間近で見たから言ってるんだぜアンナ。あれはオメェの不手際でああなった訳でもソニアの態度がそうさせた訳でもない、アイツ等は生粋の屑野郎共だった」

 

「……でも私が、」

 

「ああ、もう!あとな!オメェも生粋の頑固野郎だ!計画性の高い作戦を思い付く良い頭脳持ってるくせに、仲間に相談とか協力を仰ぐことは考え至れねぇんだもんな」

 

またもや己を陥れようとするアンナに仗助は我慢できず内心を吐露する。そして何度か頭を掻くと「それにな」と前置きし、

 

「責任に押し潰されそうなら、分けてくれたっていいんだ。泣き言でも何でも聞いてやる、俺はオメェの味方なんだからよ」

 

「――ッ、貴方はどうしてそこまで」

 

家族でもなく、深い関係でもない、他人であるはずの目の前の男が何故ここまで赤の他人である自分を助けようとしてくれるのか分からずアンナは小さく呟く。

 

「……言ったろ?俺は俺を救ってくれたあの人を見習ってんのよ。俺はあの人の行動がどこまでも正しいことだと思ったし俺もあの人のようにありたいと願ってる、それだけさ。じいちゃんも喜ぶだろうしな

 

言葉の最後、仗助が何を呟いたかアンナは分からなかった。それにそれ以外の主張も理解の難しいもので行動理由として正常なものではない。

 

バカげてる、そう頭では否定できる。だが、心に渦巻く得体の知れない感情がそれ以上にボロボロになったアンナの心を癒していく。

 

「ジョウスケさんは本当に凄いですね……」

 

決壊しそうだった目元の雫を指で掬いアンナは感服の言葉を口にする。抽象的で何を指して言ったのかは分からないし聞き返す気もないが仗助は言葉を受け取り、瞑目し小さく微笑むと、

 

「ちょっぴり楽になったかよアンナ?」

 

「はい、ちょっぴり、ほんのちょっぴり気持ちを整理できました」

 

 暗くなっていた表情に少し光明が差したのかアンナは口調が軽くなり顔は憑き物が取れたように和らいだ。まだ少ししこりが残っているという感じだが支えていけば大丈夫だろうと思い仗助は内心で吐息し、安堵する。

 

その安堵感から気を張っていた全身から力が抜け仗助はそのまま床に尻もちをつく。どっしりと床についた瞬間これで一件落着だと遅れた実感が湧き仗助はしばし達成感に浸っていた。すると、

 

「なぁ、そういえばここのグループ名ってないのか?ソニアがいるのに聞いたことないと思って」

 

机に腰掛けていたロザリンが何の関連もない話を切り出した。ただ仗助を尋ねた集団にもダサいが集団名はあったので示しとしてはありだなとぼんやりと仗助は思っていると、教室の入口前、そこに鎮座していたソニアが口を開いた。

 

「そうだな、確かに名付けてなかった、この節目に名付けてもいいかもな。何かいい案はあるか?」

 

突如として始まったグループ名の名付け会だが、ダサい名前は御免なため仗助は頭を回す。自分が好きなプリンスのアルバム名や楽曲、その他のアーティストなど色々総合しながら考えていたが、答えを出す前に隣にいる新橋色の少女が声を上げた。

 

「……ウルサス学生自治団にしましょう」

 

「えっっ!えぇ……」

 

仗助が声を上げたのは先に言われたことへの驚きではない。国の名前を取り入れるというアンナの安直で地味すぎるグループ名に唖然としたのである。ただ先に言われたとはいえ流石に採用はされないと仗助は高を括っていると、

 

「あー、わかった、じゃあ今からアタシ達のグループは『ウルサス学生自治団』だ」

 

決定を口にするソニアだが実のところあまり乗り気ではない。仗助と同じで地味だと内心では思っているものの、辛い思いをしているアンナの意見を否定するのは気が引けたのだ。

 

「どうですかジョウスケさん、このグループ名かなり語呂もいいでしょう?」

 

胸を張る、という分かりやすい態度ではないもののアンナの語調には自信が含まれており、意図せずともそれは強い電磁波のようにビンビンと仗助に伝わった。

 

しかしアンナがやっと見せた明るい一面を仗助は否定できるはずもなく、

 

「あ、ああ。かなり良いんじゃあねェか?こう、聞いた瞬間ブルッと縮み上がるようなネーミングセンスですよこいつァ」

 

皮肉を込めた仗助の感想を優等生であるアンナが見抜けるはずがなくアンナはその意味を履き違えると脇の陰で軽く拳を握りガッツポーズをとったのであった。

 

 




ジョジョ4部ってドラマCDがあるらしい⋯⋯

ということでジョジョ4部とウルサスの子供たちのドラマCDはYouTubeにアップされているので
是非視聴してくださいね。
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