アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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お気に入り登録が100を突破した。『興奮する』しかし!こんな時は浮かれたやつから『更新』が止まっていく!



信用の鍵はポケットから

極限状態にある環境で自殺行為とすらとれる仗助の発言により教室全体から驚愕の声が上がる。仗助に情報を伝えたアンナも記憶障害程度だと思い込んでいた相手のまさかの爆弾発言により目を白黒させていた。

 

「だ、ダメだわアンナ。助けて貰った恩はあるけどこれは手に負えないわ⋯っ!」

 

 顔を引き攣り声を僅かに震わせながらヴィカはアンナへ縋るように手を肩へ置く。ヴィカの中で仗助は遂に理解不能な存在から恐怖の対象へと進化したのだ。

 

 ヴィカの救助要請にアンナは思考を回しているのか無視を貫き顔を俯かせ暫し黙り込む。その思い詰めるような真剣な様子から『冬将軍』と呼ばれているリーダーがこの場にいない為悩んでいるのだろうかと仗助は観察する。

 

恐らくは彼女、アンナが副リーダー的な存在なのだろう。その証拠としてヴィカから自身に対する排除の姿勢、それをアンナへ進言しているためだ。もし否定的な彼女がリーダーならとっくに仗助は教室からつまみ出されているだろう。

 

 未だ黙り込んでいるアンナを見ながら判断がこちらへ傾くようにと仗助は心の中で何度も祈る。

 

仗助からして見ればやっと見つけられたまともな生存者で外にはロシア語(多分)を喋りながら武器を振り回すイカれた集団がいる。

 

付け加え学校内ひいてはウルサスと呼ばれたこの地で同じ英語を喋れる者が何人いるか不明であるのだ。

 

 今この場で『話をまとめる』『信頼される』この二つをやらなくちゃならないのは仗助自身かなり辛いところだがやりきるしかない。

 

 やりきるためにもまずアンナが話に乗ってくれなければならないので仗助は自身のうるさく響く心臓の音を聞きながらただアンナからの返答を待っていた。

 

 仗助の爆弾発言により、張り詰めた緊張感の漂う沈黙はアンナの行動によって破られる。

 

自身の肩に置かれたヴィカの手をアンナが退かしたのだ。恐らくは決定したのだろう。受容か排斥かどちらの判断とも取れる行動に仗助の顔が強張るが、

 

「少し落ち着いて下さいヴィカ。ジョウスケさんは私達を襲ったりはしていない。手に負えないと判断するのは話を聞いてからでも遅くはないと思います」

 

「――!アンナ!?」

 

「――――ふぅ、」

 

 どうやら杞憂だったようで仗助は内心で盛大に心を撫で下ろした。アンナの判断にヴィカは正気かと疑うような眼差しを向けるが決定した判断は覆ることはなくアンナは仗助へ言葉を掛ける。

 

「一言声を掛けるべきでしたね。変な間の置き方をしてしまいすみませんでした」

 

「ん?なんで謝っ――あっ」

 

 アンナからの突然の謝罪に仗助は訳を聞き返そうとしたが寸前で止まる。

 

「もしかして⋯⋯俺が安心してたところめちゃくちゃ顔に出てた?」

 

 顔から火が出る、とまではいかないが顔を紅潮させる仗助にアンナは口元を緩めながら、

 

「ふふっ⋯⋯ええバッチリ出てましたよ」

 

「――っっ!!恥ぃぜこりゃ」

 

 心の中で安堵したつもりがあまりの緊張で顔に出てしまっていたらしい。恥かしさの余り更に顔を赤面させる仗助だが物事はそんな仗助を待ってはくれず進んでいく。

 

「ジョウスケさんの質問に対しては先程答えました。次は私から一つ質問します」

 

「な、なんだ?結構大事な事なのか?」

 

 先程赤面した仗助に見せたほんわかな表情は消え去り、引き締まり真剣な眼光が仗助を射貫く。

 

そのあまりの視線の力強さに重大な事だと見切った仗助は質問を質問で返す。投げ掛けられた質問にアンナは目を瞑りながら、

 

「いえ、大事なことと言えばそうかもしれませんが、今からする質問はこの大地に住む人々皆が知っている事で当たり前に受け入れているものです。別世界から来たと言ったジョウスケさんもこれは知っていると思います」

 

 自分も知っていると告げるアンナの言葉に少しこの世界に親近感が芽生え始めた仗助。しかしその淡い期待はアンナの発言によって露散した。

 

 

 

 

 

「――鉱石病(オリパシー)。この単語に聞き覚えはありますか」

 

 オリパシー。それは例え記憶障がい者や精神異常者でもどういうもので何を齎すか理解出来る程脳裏に刻まれた畏怖の至上。

 

これを知らないのは野獣か、生まれたばかりの赤ん坊ぐらいで現にアンナ含め教室のクラスメイト達はそのオリパシーに罹った感染者に監禁されている。

 

 分からないはずがない。知らないはずがない。仗助をこの地の人間だと捉え、そんな先入観持つアンナだが、

 

「⋯⋯悪ぃけど俺はここでの常識とかいうのは知らない。だからマジに頭逝ってるって思われるかもしれねえけどその、オリパシーってヤツは俺の当たり前にはねぇな」

 

 ぴしゃり、と言い切りそう告げる仗助にアンナ含め全てのクラスメイトが絶句した。彼の言い回しは諄かったが、知らないという意を込めそう言ったのだ。

 

鉱石病(オリパシー)を知らないなんて貴方、ホントに――」

 

「狂人⋯⋯とか言うのか?でも俺も必死なんだ。右も左も分からない場所に飛ばされてここに来るまでに数多の死体を見てきた」

 

 ヴィカが言葉を紡ぐ前に仗助が声量を変えそれを遮る。その声色は先程まで少しおちゃらけていた彼とは違い、力強く芯を通そうとする意思が見て取れた。

 

 その雰囲気を感じ取ったのかヴィカも割って追撃しようとはしない。それよりも仗助がこうもキッパリ言い切るため別世界から来たというのも伊達でも酔狂でもなく本当なのだと少しずつだが教室全体に信憑性が広まりつつあった。

 

「生きてる人を探しても見つかるのは死体だけ。やっと生者を見つけたと思ったら変な仮面を被り襲ってくる暴徒だけだった。多分まだ街の人達を殺して回ってんだろうな」

 

「⋯⋯」

 

 ここに来るまでの経緯、それを話しながら仗助はチラリと椅子に座っているアンナを見る。

 

彼女は何か思うことがあるのか無言で又もや顔を下に向け影を作っていた。もしかすると彼女達も仮面集団に何かされたのかもしれないと仗助は同情の気持ちを向けつつ言葉を紡いでいく。

 

「そんな中あんた達がやっと会えたまともな人で、ここで突っ撥ねられたら俺には後がない。だから頼む、俺がこれから言う出鱈目なことを信じて欲しいんだ」

 

「――分かりました。どうデタラメなのかは分かりませんが貴方がここに来るまでのことを詳しく聞かせて下さい」

 

 下を向いていた顔を上げ口角を上げ微笑むアンナに仗助も自然と笑顔を作る。己の居場所が出来たと目元まで喜ぶ仗助に対し彼女――アンナの目は光を失ったように暗く濁っていた。

 

 

 

 ▽

 

 

「信じて貰えたのは嬉しいけど、どっから話したモンかな」

 

「⋯⋯じゃあ出身地とか言ってみてよ私まだ貴方の言うこと信じられない。作り話じゃないって思える材料を見せてちょうだい」

 

 呑気な態度でそう口にする仗助に不機嫌に声を落としたヴィカがそう発案する。

 

「⋯材料か。じゃあまず俺の出身地は日本の杜王町だけど、分かる?」

 

「「「⋯⋯」」」

 

「⋯⋯まぁ、うん、そうだよな」

 

 ここまできて当然だが分かる訳もなく、誰も口を開かないシーンとした気まずい雰囲気が辺りに充満した。仗助もバカではない、ただダメ元で言ってみただけなのだ。

 

ただ誰もうんともすんとも言わないので流石に心に来たが。

 

「⋯⋯日本、杜王町、すみませんが私の学んで来た歴史や地理を思い返してもそのような国や地名はやはり無い。⋯ジョウスケさん文化や文明なども教えてくれませんか」

 

「――?うん、別にいいんだけどよどうしてだ?」

 

 顎に指を据えながらそう言うアンナに仗助は疑問を投げかける。別に彼女たちが別世界にある日本の文化に今触れる必要はない。知った所で無駄な知識になるだけだ。

 

 尽きない疑問を仗助はグルグルと頭で回していると天啓が齎された。

 

「⋯⋯少し、まだ疑っているんですジョウスケさんがこの大地の人間かもしれないと。ただ記憶が錯乱してしまっている人かもしれないと。文化や文明が私の知っているモノと同じならその可能性が出てきますから」

 

 疑い。その言葉の響きに仗助の顔に緊張が走る。深読みかもしれないが、この疑いが晴れなかった時自分は排斥される、そんな直感があった。こんなトラブルの時に理解不能な奴を置くのは危ないからだ。

 

仗助が彼女達にそう認定されてもなにも言い返せない。なぜならその判断は至極当然で意味の分からない奴は意味の分からない事をする可能性が高いし完全なお荷物だ。

 

 こんな状況なら温情な奴だってそうするだろう。仗助自身だって優柔不断だが、そうしないなんて言いきれない。

 

「⋯⋯日本は、そうだなまず他の大陸から切り離されている完全な島国で特徴は食べ物なら寿司とかバランスのいい和食それと漫画とアニメっていう娯楽の文化が盛んだな」

 

 しかし正直に言うほか道はないので完全に主観だが仗助は自分の知っている日本について口にした。暫し訪れる沈黙に耐えながら仗助が待っているとアンナが口を開く。

 

「その特徴は極東と呼ばれる国に当てはまりますね。しかし島国ですか、私も知識としては知っていますが見たことはありません。⋯⋯何かジョウスケさんがその国の出身だと証明出来る物があればいいのですが」

 

 半信半疑というような難しい表情を浮かべているアンナ。仗助の先の発言は極東という国と特徴が一致しているためかあまり印象がよろしくなかったようである。

 

 こちらに訝しげな視線を送って来るとまではまだ行っていないがそれも時間の問題だろうと思い仗助は焦燥感を募らせる。

 

 証明としてスタンドを、と考えたが直ぐに頭を横に振った。ポルターガイストを証明手段に使えばそれこそ理解不能なヤツとしてレッテルを貼られるだけだ。

 

 どうする、どうすると仗助が焦燥感で頭を焼かれそうになった瞬間――家にいた時の記憶が溢れ出した。

 

 仗助はずっと持っていたのだ証明出来る物を。

 

 思い出した仗助は学ランのポケットに腕を入れ目当ての物を取り出した。

 

「証明出来る物なら一つだけあるぜ、これだッ!」

 

「――?紙、いや紙幣ですか?」

 

 それは少しくしゃくしゃになってしまっているが紛れまない日本人の必需品――1000円札だ。まさに奇跡と言っていいだろうこれは仗助が家でお袋が残した金をネコババしてポケットに入れていた物である。

 

 奇跡のお札をマジマジと見つめるアンナに仗助は勝ったと言わんばりの顔でドヤ顔を披露しながら、

 

「そう、これは俺含め日本国民だけが使う歴史ある紙幣なのよッ!どうだ?このヒゲオヤジの印刷顔は見たこたぁねぇだろ!」

 

 ちなみに印刷されているのは夏目漱石という偉人(国民的作家で1984年から2007年までお札に抜擢された人)なのだが仗助の馬鹿はそれを知らないので滅茶苦茶失礼な蔑称を言ってしまっている。

 

 そんな偉人を知る由もないアンナは仗助から紙幣を手に取りジーッとまるで謎を解き明かす探偵のように細部まで舐めますように紙幣を見つめる。

 

「龍門弊で別発行されたものじゃないですね。それに一番驚くのが年号、今は1096年なのにこの紙幣にはその888年先の1984年と印刷されています。どういうことですか??」

 

 若干興奮気味で口を動かすアンナ。年数を読み上げた後糖分が足りていないのかそれとも目の遠くなるような年数に圧倒されたのか簡単な疑問をアンナは口する。仗助はそんな彼女の疑問にバッチリと答えるべくポーズを決めながら、

 

「それはつまりッ!俺が別世界の人間だっちゅーことよッ!――あっ、ちなみにそのお札は古いぜ今は1999年だからな」

 

 仗助渾身の宣言とちょっとした訂正にハッとした表情でアンナは我に帰ると「十世紀以上経ちそうじゃないですか」とツッコミを入れる。

 

「認めるしかないですね。ヴィカもこれを見せられたら納得するしかないでしょう?」

 

 同意を求めるアンナにヴィカは唸りながら、

 

「まあそりゃ材料提示しろって言ったの私だし認めるしかないわね。あと気になるんだけど確か貴方鉱石病(オリパシー)を知らないって言ってわね。もしかしてそっちにはオリジニウムすら無いの?」

 

 意味を理解できていない単語を連発しながらヴィカとアンナが興味を抱いた視線を仗助へ送る。その早く教えろと訴えるような視線に「いや」と仗助は前置きすると、

 

「まずそのオリジニウムとオリパシー?ってヤツを教えて欲しいスっけど。まあ多分知らないってことは無いってことなんだろうけど」

 

「ああ、そうでしたね。ジョウスケさんには答えて貰いましたからこっちの番ですね」

 

 思い出した様に呟くアンナにやっと事態の把握が進むと内心で安堵する仗助。コホンとそうアンナが咳払いし状況が進展すると思ったその刹那、

 

 ――ガララララッ

 

「――帰ったぞアンナ」

 

『冬将軍』が帰還した。





お気に入り登録が100人を突破しました!本当にありがとうございます!

前書きはどうしてもリゾットの台詞をお借りしたかったのでこの場を借りて感謝します。

それと一つ質問なんですがアークナイツってスタンドが見えそうなキャラって居ますかね?

もし居たらどうか感想欄にコメントよろしくお願いします!





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