アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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少しタイトルにも拘っていきたいと思っている作者です。

※今話は中々物語が進まず少しギャグが入ってしまっています。すいませェん

シリアス書くのが苦手なんだ!


グリズリー・ベア (凶暴な熊)

 

 

教室の扉を乱暴気味に開け立っていたのは消化斧を手にしたこれまた耳の生えた少女だった。髪に所々赤いメッシュが入っており態度もお淑やかとは遠くまさに不良少女という印象を受ける。

 

「戻りましたかソニア。無事で何よりです」

 

「おう。なに安心しろアタシはそう簡単にくたばるタマじゃねえよ。ただ今日はあんまり食糧は見つかんなかった」

 

 安心からか表情を綻ばせるアンナに少女――ソニアは不敵な笑みを返す。そのまま室内へと足を動かし入って来るのを床に座っている仗助が見ていると教室を一望する彼女と不意に目が合った。

 

「ん?誰だお前アタシが連れて来たヤツじゃねえな。誰が連れて来たんだ」

 

 威圧的な声を響かせソニアは仗助の所在の探りを入れる。

 

「私が連れて来たわ。彼に助けて貰ったし彼は⋯そう、ついさっきこの学校に軟禁されたみたいだから」

 

「へえ、最初の暴動から結構時間経ってんのに、もしかして隠れてやり過ごしたりしてたのかお前」

 

 ズカズカと教室内をアンナは闊歩し仗助の方へ近づく。彼女は仗助の首の角度が少し上を向き始めた所で止まり見下すような視線をこちらに向けた。

 

「『冬将軍』っていうのはアンタのことっスか?想像していたのとはかなり違いましたけど」

 

 ソニアの嘲るような口調と態度は些か危うい立場である仗助とて見過ごせず悪態を付くような口調で言い返す。その言葉を受け僅かに気が立ったのかピクリとソニアが眉を動かしたのを仗助は見逃さなかった。

 

「二人共、一旦気を鎮めて下さい。話さないといけない事が山積みですから」

 

 バチバチと火花が飛びそうな睨み合いにアンナによる仲裁の言葉が割って入る。ただそれを聞いてもなお、お互い譲らないプライドがあるのか数秒間睨み合いは続く。が、ソニアがフンっと鼻を鳴らし椅子に座ったところでその睨み合いは終わった。

 

 しかし時間を食うから仕方なくといった感じでソニアが降りたので勝った気はせず逆に大人な対応を取った向こうの方が分があると思ってしまい少し敗北感を感じてしまった。

 

「話す事が山積みってなんだよアンナ。何か計画でも立てたのか?」

 

 アンナの発言に足組み堂々と座るソニアが反応する。その時の彼女の顔は仗助に披露した挑発的なものでは無く緩く温和でアンナの事を信頼しているのが見て取れた。

 

 ただの粗暴そうな奴から仲間には優しい粗暴な奴だと仗助は評価を変えているとアンナが口を開いた。

 

「いいえ。そこにいる彼⋯⋯ジョウスケさんについてです」

 

 仗助という単語が耳に入るや否やソニアは顰めっ面を浮かべる。

 

「あ?こんな腐ったナスみてぇな髪したヤツの話が山積みだあ?聞くだけ無駄だ」

 

 軽口を叩き手をスイスイと払う仕草をしながら話題を拒否するソニアにアンナは吐息し、

 

「戯れはよして下さいソニア。私達にとってはそこまでかもしれませんが、ジョウスケさんにとってはかなり重大な――」

 

 こと、と言おうとした言葉が喉で止まった。話題を振る際チラリとアンナは彼を見たのだがどうも様子がおかしいのだ。

 

「ジョウスケさん?」

 

「ああ?」

 

 心配なったアンナは声を掛けそれに釣られソニアの視線も仗助に誘導される。しかし声にも反応せずまるで石像のようにピクリとも動かない彼を見てアンナが何事かと席を立ち近付こうとした。その刹那、

 

「今――なんつったッ!?」

 

 突然顔を憤怒の色に染め上げた仗助が床から立ち上がる。突拍子し過ぎる出来事に近付こうとしていたアンナとヴィカの喉から「ひっ」と恐怖が漏れ出た。

 

「もういっぺん言ってみろコラーッ!!」

 

 荒々しく声を上げ怒りに身を震わせる仗助にクラスにいる生徒達全員に恐ろしさが伝染していくが怨嗟の矛先はクラスにいるただ一人ソニアに向けられていた。

 

「あー、もしかしてその髪型を貶されてここまで怒ったのか?だとしたら笑えるな」

 

「ど、どうしたんですかジョウスケさん!?」

 

 慌てふためきながらもアンナは必死に仗助を呼び掛けるが一寸たりともこっちを見ようとしない完全に戦闘態勢へと移行してしまっていた。

 

 戦闘が起きることを確信したアンナはソニアの方を向き、

 

「ソニア!相手をしないで下さい!仲間割れは何の意味もない状況が悪くなるだけです!」

 

 アンナのこの訴えは先を見越してのものだ。もしここで戦闘を起こしたら統率に悪影響出るだけでなくソニアのリーダーとしての印象にもマイナスイメージが付いてしまう。

 

そうすれば元々ソニアに不満が多かった生徒がこれを機に不満を爆発させるかもしれない。

 

 そんな不安の訴えはしかし行き届かずソニアは席を立ち完全にやる気満々だった。立ち上がった両者の距離は2メートル程で格闘で仕掛けるには微妙な距離だ。

 

「やる気か?いいぜここは弱肉強食だ。力関係はしっかりしとかなくちゃなこのナスやろ――っ!!?」

 

「えっ?」

 

 何かが起こった光景をアンナは理解出来なかった。嘲笑を含み軽口を言いかけたその瞬間、いきなりソニアの体が後方へ吹き飛ばされたのだ。少なくともアンナの目にはそう映った。

 

 バゴン!っと教室の外にも響く轟音を立てソニアは壁に衝突した。その轟音に止まっていたアンナの思考が回復する。

 

 吹き飛ばされた現象の起点となった仗助をアンナは凝視するが彼はソニアとは対照的にその場から一歩も動いておらず怒髪衝天の怒りを顕にしているのに拳すら振るっていなかった。

 

「俺の頭にケチつけてムカつかせたヤツは何モンだろうと許さねぇッ!このヘアスタイルがふわふわ食感のコッペパンみてェーだとォ?」

 

「――やりやがったな、この野郎!」

 

 腹を強く殴打されたのか脇腹を押さえながらソニアは体制を直し仗助を睨み付ける。再び戦闘が勃発すると思ったその時、教室の扉が開かれた。

 

「何か凄い音がしたけどどう――っ!ソニアお姉ちゃん?!」

 

 調理用のフライパンを片手に登場したのはクリーム色の髪をしたウルサスの少女――ラーダだ。恐らく別の教室で食糧を調理していたところ大きな音がしたので駆けつけたという具合だろう。

 

 彼女はソニアの状態を見るや否や仗助を敵だと認識しフライパンを振り上げ仗助へ突撃していく。

 

「――っ!!来んじゃねぇラーダ!」

 

「ソニアお姉ちゃんを!傷つけるなーッ!」

 

 突撃するラーダをソニアは言葉で引き止めようとするが怒りを露わににしたラーダには届かない。怒気をエンジンにラーダは飛び上がりフライパンを仗助に振り下ろそうとしたが、

 

「邪魔っスよ」

 

「――うぐっ!!?」

 

 ラーダは中に固定された。文字通り足場のない空中に。

 

「――なっ!?」

 

「どうしてラーダが宙に浮いて――?!」

 

 驚愕の光景にソニアとアンナは声を漏らす。フライパンを持つ片腕を重点にまるで何かに掴まれた様にラーダは中を浮いていたのだ。

 

信じられないと内心でアンナが思っていると突如して黒板の欠片が教室中を舞った。

 

 黒板の方を見るとそこには大穴が空いており、次の瞬間にはラーダがそちらへ飛ばされていた。いや投げ飛ばされたという表現が正しいだろうか。

 

「い、一体これは?!」

 

「黒板の破片が!?」

 

 ラーダがそのまま大穴に突っ込むと思った矢先、飛び散ってバラバラになった黒板の欠片が黒板に吸い込まれていくように戻って行ったのだ。

 

 そしてその破片は黒板へ向かっていくラーダに纏わりつき体全体を覆い黒板に拘束した。

 

「外野はそこで大人しくしてるんだな」

 

「なにこれ⋯?う、動けない!」

 

 黒板に張り付けにされたラーダが苦悶の表情を作り黒板から抜け出そうと身を揺らすが強度が強くビクともしない。

 

「――っ!テメェよくもラーダを。頭にきたぜ」

 

 異様な光景だが仲間を傷つけられた事には変わらない為ソニアは拳を握り締め眉間に皺を寄せながら一発食らわせようと仗助に近付いていく。

 

「頭に来ただと?そいつは俺の台詞だッ!」

 

 ソニアの文句に反応し更に顔を怒りで歪めた仗助も同様にソニア方へと近付いて行く。一歩一歩踏みしめ距離を詰めていく両者だがしかし勝負はもう目に見えていた。

 

 ソニアは未だ痛みからか片腹を押さえておりいつもの堂々とした足取りは少しおぼついてしまっている。相当ダメージが深いのだ。

 

 反対に仗助は五体満足なことに加え恐らくだがラーダを浮かせたりした現象の原因は仗助。その時点で負傷していて不利なソニアがより一層不利な立場に追いやられるのは必然でどう転んでも勝ち目がない。

 

 だから、

 

「止めて、止めて下さいジョウスケさん!」

 

「アンナ!」

 

 アンナのその行動にソニアが名を叫ぶ。アンナは縋り付くようにして仗助の前に立っていたのだ。自分には仗助を止める程の力はないことはアンナ自身も分かっていた。

 

「これ以上事態を悪化させるなら、もう私は貴方のことを信じられなくなってしまう。別世界から来たという証拠は有っても人間性の部分で貴方を信頼出来なくなってしまいます!」

 

 そう、分かっているからアンナは言葉でもって仗助の理性に訴えたのだ。仗助に縋っているアンナの手は震えてしまっていて滑稽に見える。

 

 だが、それは教室にいる誰もが出せなかった勇気の何よりの証明であり仲間を助けたいという意志が詰まっていた。

 

「⋯⋯⋯」

 

 アンナの言葉を最後に教室は静まり返り、長い沈黙が訪れた。その間にもアンナは仗助の前から退こうとはせず縋る手はそのままに目を瞑り全身全霊で仗助に気持ちを伝えていた。

 

 ポン、とアンナの肩に手が置かれる。

 

「許しはしねぇ。けど、やっと出来た頼れる人にそんな事言われたら後が怖いぜ。うん、スゲェ怖い」

 

「――ジョウスケさんが後先考えれる人でよかったです」

 

 ただ仗助が髪型の侮辱という些細な事からこんな行動を起こしている時点でアンナのこの発言には矛盾が生じてしまっているが言うだけ野暮というものだろう。

 

 仗助はアンナから離れると黒板に張り付け状態にされている少女の方に向かっていく。

 

「その、悪かった。アンタは関係ないのによ」

 

 ラーダの覆っていた黒板の破片が徐々に元の状態――元々の黒板――に戻っていく光景に教室にいる誰もが目を見張った。

 

しかしラーダの目にはその摩訶不思議な光景よりも先に人が変わった様に謝罪する仗助の方がより奇妙に映った。

 

 ゆっくりと謎の力により地面に降ろされたラーダは仗助を見つめると、

 

「もうソニアお姉ちゃんを傷つけたりしない?」

 

 威圧感のない顰めっ面を作り凄むラーダに仗助はぬいぐるみみたいだなと感想を抱きつつ言葉を返す。

 

「ああ、まあ余程の事がない限りは」

 

「余程の事って――もしかしてお姉ちゃんが先に喧嘩したの?」

 

 途中から乱入したラーダは喧嘩の発端を知らない故、もしやと思い怪訝な目をソニアに向ける。その視線にソニアは呆れたように溜息を吐くと、

 

「違ぇよソイツが先に吹っ掛けてきたんだ。髪型を馬鹿にされたぐらいでな」

 

「ええ!?それが理由であんなに怒ってたの?!なんでどうして?」

 

 有り得ないという風に唖然とした表情を浮かべラーダは仗助へ問いを投げる。その発言にソニアとアンナは同じ事を思った。

 

 ――聞くなバカ!と

 

 二人の頬に一筋の汗が流れる。あんな激しく怒っていた理由の元、きっとそれは触れるべきではないタブーだと二人は思ったのだ。

 

 タブーを犯してしまったと思い二人は固唾を呑んでラーダを見守る。またキレると思った矢先、仗助が口を開いた。

 

「どこの誰かは知らねぇんだけどよぉ。ある人が子供の頃、俺を救ってくれたんだ。そん時にあの人がしていたのがこの髪型で、俺はそん時からその人に憧れて今もずっと同じ髪型にしてんのよ」

 

 仗助の発言を聞いた瞬間グサッと心臓に矢が突き刺された錯覚がソニアとアンナを襲う。

 

 何故か髪型を馬鹿にされたらキレるヤバい奴だと行動から決めつけていたばかりに話の内容から来る感銘さはかなり大きかった。

 

「「――っ!!」」

 

 だがそれが逆に!ソニアとアンナの善性に触れた!*1

 

 胸に突き刺さったその矢は仗助に対する罪悪感として二人を襲ったのだが髪型を貶した張本人であるソニアは兎も角、アンナに至っては流石な感受性である点は否めない。

 

 然しそんな事を知る由もない仗助は「だから」と言葉を続るとソニアに振り向き、

 

「それを貶す奴は誰だろうと許さねぇぜ。あの人を貶すのと同じだからな」

 

「⋯⋯わあったわあった。貶さないようにすっからさ、アンナが喧嘩の最中に言っていた『別世界』から来たとか、さっきの黒板を壊したり直したりアタシをぶっ飛ばしたヤツの正体を詳しく聞かせろ」

 

 罪悪感はどこへやらと仗助の忠告を軽くあしらい興味津々に口角を上げニヤつくソニアに仗助は頭を掻きながら、

 

「あーやっぱり説明しなきゃダメ?」

 

「「当たり前だ(です)!」」

 

 長い長い会話と説得の時間が仗助に訪れるのであった。

 

 

 

*1
ウェカピポの妹の夫ネタ





今話のタイトルは2004年に結成されたアメリカのロックバンド「Grizzly Bear」のグループ名から拝借させていただきました。

更に付け加えるとこのグリズリーというのは熊の中でも上位に位置するヒグマの亜種的な個体らしいのでズィマーにピッタリだなと思い二重の意味で今話のタイトルとして決定しました。

あと、お気に入り登録200人突破本当にありがとうございます!
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