アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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やった!運命に勝ったッッ!(ごめんなさい)


人の闇と人の光

期待、好奇、興奮と少しの恐怖心が渦巻く教室の中、仗助による情報共有会が幕を開けた。無論主任はリーゼントヘアこと仗助が中央の椅子に座り、その前方横並びに髪の所々が赤のメッシュなソニア、髪色がクリーム色のラーダと水色のアンナの順に椅子に座っていた。

 

「ではまず重点を押さえておきましょう。仗助さんはオリパシーのない別世界から何故かここにやって来たという認識でいいですね」

 

「ああそれで合ってるけど、日本の杜王町っていうのも付け足してくれよな」

 

 厳然たる事実と言わんばかりに淡々とアンナがそう告げ仗助が細かい指摘をするが、

 

「当たり前のように言ってるけどやっぱり有り得ねぇだろが」

 

「えっ、いきなり鉱石病(オリパシー)のない世界から来たなんて言われても信じられないよ」

 

 吐き捨てるように言うソニアと困惑した表情を浮かべるラーダが話の流れについていけないと主張。それを聞きアンナがとある紙幣をポケットから取り出す。

 

「これがジャウスケさんが持っていた唯一の証です。ソニアもラーダもこのお爺さんは見た事はないでしょう?」

 

 紙幣の端を両手で摘み持ち、胸前で見せびらかされたそれは日本人なら誰もが持っているであろうお札――千円札だ。

 

 お爺さん――夏目漱石の立ち姿が印刷された千円札を初めて閲覧した二人は首を傾げて納得したのかしてないのか分からない微妙な顔をしている。

 

 仗助自身も髭の生えた風格のある人くらいの認識であるため、自分の世界でどういった功績を挙げた人なのか言えずただ押し黙ることしか出来なかった。

 

「少し説得力に欠けるが、まあいい。じゃあ別世界から来たっていうお前がさっき見せたアレは一体何だ?お前は感染者じゃねーんだし」

 

「感染者が何なのかは分かんねえけど⋯⋯よし、じゃ、一つ俺から質問だ」

 

 意味ありげなソニアの発言を仗助は後に回し、自身の背後に指をさす。

 

「『視える』かい?今俺の背後に立っているモノが」

 

 仗助は己の幽波紋――『クレイジー・ダイヤモンド』を真後ろに顕現させる。キョロキョロと探すラーダ、目を細め凝視するアンナ、舌打ちをするソニアとその反応は様々だがやはり視えていないようだった。

 

「視えねぇよ。まさか幽霊がアタシやラーダを飛ばしたりした正体だって言うのか?」

 

「概念的ってとこは正解だが、違う。これは俺の個性、『幽波紋』だ」

 

「スタンド?」

 

「簡単に言えば俺の守護霊ってやつだ。守れって念じれば守ってくれるし殴れって念じれば相手を殴り飛ばしてくれる。それと、スタンドには固有の能力がある」

 

 能力を説明する為仗助はアンナが持っている千円札を拝借し、ビリビリに破り捨てる。

 

「えっ、仗助さんそんな貴重な物をなんで」

 

 パラパラと紙屑になり床に落ちていく紙幣を見てアンナがそう言う。ソニアやラーダも口には出していないが仗助の行動に眉を顰めていた。

 

 しかし、次の光景に三人は目を見開く。直っていくのだ。床に散らばった紙屑の一つ一つが仗助の持っている紙幣の欠片に集約されるように。

 

「これが俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの能力。破壊された物や生物を『直す(治す)』。ラーダを黒板に閉じ込めたのもこの能力の応用だ」

 

「すごい」

 

 完全に修復されたそれを見てアンナは唖然としながらただ一言そう告げる。理屈や原理は理解出来ないが起こっている事象は理解出来る。

 

 物や生物を治す、それがこの地獄のような環境でどれ程貴重で重大かアンナのみならずクラス中の生徒全員が理解していた。

 

 生徒の一人が仗助に駆け寄る。

 

「俺の傷を治してくれ!頼む!!」

 

「お、おう分かっ――」

 

 また一人駆け寄る。

 

「私もお願い!斬られた傷を処置できなくてずっと膿んでて痛いの」

 

「僕も!」

 

「私も!」

 

「は?お前らより俺の傷の方が深いだろ!優先順位考えろよ!」

 

「私のはずっと放置してきて今にも腐りそうなのよ!アンタの方はまだ新しいでしょうがこのクズ!!」

 

「なんだとッ!!」

 

 ――何かまずい

 

「ぼ、僕のこの食糧あげますから僕を先に⋯⋯ぐあっ!!」

 

 立ち上がりおぼつかない足取りでパンの一切れを仗助に差し出そうとした男子生徒を別の女子生徒が突き飛ばしその食糧を奪い取る。

 

「こいつら気が障ってやがる。おいお前ら!元いた場所に戻れ今すぐに!」

 

 いち早く事態を察したソニアが生徒達に呼び掛けるが見向きもせず事態は悪化していく。

 

「これでどうかお願いします!私の傷を治してくださいジョウスケ様」

 

「俺のだ寄越せ!!」

 

 パンを持っている女子生徒の手を乱暴に男生徒が引っ張る。

 

「早く寄越しなさい!!」

 

「イタイ!イタイイタイ!!!」

 

 仗助が傷を治せると知りクラスは完全にパニック状態だった。

 

「って何やってんっスか!!アンタ達仲間で同士でしょ!」

 

 何の拍子も無くただ当然のように繰り広げられる急な展開に思考が追いつかず仗助がパニック状態だと判断出来たのは生徒達のパンの奪い合いからだった。

 

「全員一旦落ち着いて下さいよ!」

 

 何とか平静を保とうと呼び掛けるが全く効果がない。意識が完全に仗助に対するパンの献上に向いてしまっている。治療を受けるには対価が必要だという固定観念が行き過ぎているのだ。

 

「おい!!早く離せよパンが崩れるだろうが!」

 

「ギャアアッ!!」

 

 骨の軋む鈍い音と女子生徒の悲鳴が教室中に響く。見ればパンを必死に抱えていた女子生徒が殴り飛ばされ床を引きずっていた。

 

 手放されたパンは男子生徒が手にし、その顔に歪んだ笑みを浮かべている。

 

「ハァ⋯ハァ⋯その食糧は」

 

 教室の左端、パンの一番最初の所有者であった男子生徒がゆらりと立ち上がった。しかし、立ち上がる瞬間何か左手にキラリと光る物が仗助には見えた。

 

 ナイフだ。小さいが先が鋭く尖ったナイフを別の男子生徒に向けている。

 

「僕のだぞッッッ!!」

 

「冗談じゃ済まねぇぞ!」

 

 男子生徒は血走った目に略奪者の姿を映すとナイフの矛先を向け、走り出す。仲間内での流血沙汰は看過出来ずソニアはパニックを鎮圧しようと拳を握りしめると、

 

「しゃあね〜っスね」

 

 気だるそうに仗助が言葉を発した瞬間。

 

「――ぐべぇへ!!?」

 

「――ぐっっっが!!?」

 

 ドゴッ!と短く鈍い音が鳴ると同時、男子生徒二名が腹を抱え悶絶している姿がソニアの目に映った。

 

「大きい病院には少なからず居るよなぁッ。順番待ち出来ねー自己中な大人がよォー。ただ、普通の病院ではそういう輩には手出しはできねー、法律に引っ掛かるからな」

 

「だから、今決めたぜ。ウチのクリニックで順番待ちできねぇお客様には、特効薬を無料配布してやることをなッッ!!」

 

 仗助クリニックの案内を聞いた生徒達はピタリと動きを止め顔を青くする。そこで悶絶している二人を見れば分かるだろう。特効薬の効果とはすなわち――

 

「治してほしい奴は俺の前にキッチリと列で並んでくれ。それと焦んなくていい。治療費は取らねぇし治療は全員分できるからな」

 

 先程の言動に生徒達は皆仗助を畏怖していたものの、聖人の様な微笑みと全員分の治療が受けられると知ると安堵した表情で争うことも無く列を作り始めた。

 

「はい、次の人〜」

 

 仗助がクレイジー・Dで生徒を順調に治療していき事態は丸く収まった。

 

 

 ▽

 

 

「ふぅ、一日にこんなに治したのは初めてだぜ。疲れたー」

 

 全員分の治療が済むと疲労感が一気に仗助を襲い、体をくたびれさせる。人がエネルギーを消費して疲れるのと同じようにスタンドにもエネルギーがあり過度な消費をすれば疲労が溜まっていくのだ。

 

 疲れ過ぎて椅子の背もたれに全力で体重を預け、天井を仰いでいると視界の上端から何かが映り込む。大体ある熊耳にしかし特徴的なクリーム色の髪色。ラーダだ。

 

「ありがとうジョウスケお兄ちゃん。みんなを助けてくれて」

 

 そう感謝を言い視界の端でニコリと笑うラーダ。感謝は良い、ただ何か一つ引っ掛かるところが発言の中にあった。

 

「お兄ちゃんだと?!⋯⋯あっもしかしてお前って俺より四つぐらい年下か?」

 

 高校に軟禁されている為学生は皆仗助と同じ高校生(仗助は高一の16歳)だと思っていたが幼い小学生が囚われている可能性もある。

 

 ラーダは言動も聞く限り幼く、見たところ背も小学生の平均程だ。それらの可能性を考慮しての仗助の発言だったが、それを聞いたラーダは頬を膨らませ、

 

「むー、ジョウスケお兄ちゃんは何歳なの」

 

「16歳」

 

「ラーダも同じ16歳!子供扱いしない」

 

「なあにィィッ?!」

 

 拗ねてプイッとそっぽを向く姿も言葉遣いも天真爛漫な幼女にしか見えない人は自分と同じ高校生でした。

 

 スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃!

 

 昔でも今時でも高校生では有り得ない有り姿。それを目にした仗助は脳が破壊されそうになるもギリギリで踏み止まる。

 

 しかしそれなら尚更お兄ちゃん呼びの理由が気になってしまう。ただ単純に精神年齢が幼過ぎるというにしてもそれがお兄ちゃん呼びの根拠にはならないだろう。

 

「ん〜、じゃあなんで俺をお兄ちゃんって呼ぶんだ?家族な訳じゃあねぇのに」

 

 仗助の質問にラーダは不思議そうに首を傾けると、

 

「――?だってジョウスケお兄ちゃんはみんなを助けてくれたじゃん。それより疲れたんでしょ?じゃあ美味しいもの、食べよ!」

 

「⋯⋯分かんねぇよ。けど確かに腹減ってきたな」

 

 有耶無耶な返答で納得はできないが優先することでも無いため追及せず、飯に話題が行くと同時に仗助は腹の空腹感に気づく。

 

 別世界に転移する前夕飯は摂っていなかった。

 

「フフン、ラーダはここの料理人だから美味しいものなら任せて!隣の教室で調理してくるから出来上がりまでちょっと待っててね」

 

 段取りが早いなと思いつつ仗助はウキウキとした様子で隣の教室に移ろうとするラーダに一言告げる。

 

「おう、楽しみにしてるぜ」

 

 それを聞いたラーダは結構嬉しかったのか満面の笑みを浮かべながら「はーい」と返事をし、隣りの教室に向かっていった。

 

「⋯⋯夕飯時、か」

 

 ラーダを見送った仗助は俯き、ポツリとそう呟く。

 

「ラーダの料理はとっても美味しいんですよジョウスケさん」

 

 仗助の呟きに反応してか優しくふわりとした声が仗助の鼓膜を揺す。顔を上げると表情のやわらんでいるアンナがいた。

 

「⋯⋯あぁ、俺も楽しみに待ってるよ」

 

「おや、初めてなのに随分期待してるんですね」

 

 アンナは言いながら椅子を引き、仗助と人一人分の間を空け隣りに座る。

 

「あんだけ自信たっぷりな姿を見て期待しない方がおかしいだろ?」

 

「ええ、ラーダはあの自信と同様に料理の腕も店を出せるぐらいありますからね。期待しておかしくありません」

 

 アンナの言葉を最後に暫し沈黙が訪れる。話題が切れた訳ではない。話すことなら幾らでも転がっている。ただアンナと仗助の両方も思い詰まっていた。

 

 沈黙を破り先に思いを口にしたのはアンナだった。

 

「⋯⋯ジョウスケさん、先程の件は本当にすみませんでした。来たばかりで関係のないジョウスケさんに責任を取らせてしまいました」

 

 頭を深々と下げ謝罪するソニアに仗助は澄ました顔で若干の笑みを浮かべながら、

 

「あー、いやいやあれは問題の中心が俺にあったから俺が解決して当然だ」

 

 何もできなかった。しなかった自分を責めるのではなく、自分に責任があると言い切る仗助にアンナはあやふやな表情を浮かべる。

 

 ギュッと胸元を掴みソニアは言葉を続ける。

 

「違いますあれは私の統率不足です。私はこのクラスのまとめ役です。クラスを団結させ皆を導く立場なのに、、なのに私はあの時ただ困惑して傍観する事しか出来なかったんです」

 

 言葉を続けるにつれ語気は弱々しく声はか細く震えてゆく。言葉すらまともに紡げない自分自身に嫌気が差しソニアは更に強く胸元を握りしめる。

 

 涙は出ていない。出してはいけない。それすら防げないのなら自分は皆のまとめ役は疎か人としてきっとこの先何も成してはいけない。

 

「でもよォ、俺は人の為を思って行動したアンタに助けられたんたぜ」

 

 仗助の一言が表情を曇らせただただ自己嫌悪に堕ちてゆくソニアの心を震わせる。

 

「論点が違うかもしんねぇけどよ、俺はア――いやアンナに恩を返せてよかったってどっか安心してるぜ。俺の能力を聞いてあんな風にパニックならず皆のことを考えて冷静でいられたのもすげーと思う」

 

「いや私はただ困惑し――」

 

「それにだ!俺だって治せるとはいえ結局は暴力で解決したんだ。ほんと良くないことだぜ暴力は。でも!アンナはそうしなかった、あの態度のデケェ熊(ソニア)を頼ればすぐに鎮められたはずなのにそうしなかった」

 

 ギュッと胸元を握り締めていた手が自然と緩む。心の中に沈んでいた黒くて嫌なものが浄化していく。

 

「その時の結果が全てじゃない。そういう人に人はどこまでもついていくんだ。だから大丈夫、自信持ってくれこの先もきっとアンナは必要だからよ」

 

「っっ⋯⋯⋯」

 

 右側の頬に一筋の涙が伝う。仗助の側には見えていない方だ。結局出てしまった涙をソニアは服の袖でそっと拭う。

 

 ――パチパチ

 

「ん?」

 

 突然なった乾いた音に釣られ仗助はその音源のした方を向くとヴィカが手と手を何度も重ねては離していた。

 

 ――パチパチパチパチパチパチ!

 

 それは教室中に伝播し、やがて大きな喝采へと変わる。

 

「やめろ!小っ恥ずかしいぃ!なあアンナもそう思――」

 

 羞恥を誤魔化すように仗助はバッと椅子から立ち上がり大声で訴える。ここが教室の中だということを仗助は完全に忘れていた。同意を求めようとアンナの方を振り返るが、

 

「フフッ、ごめ、んなさいジョ、うスケさん」

 

 嬉しそうに笑いながら溢れ出る涙をアンナは必死に袖で拭っていた。助けは借りれそうにない。

 

「この先もアンナは必要だー、って貴方この意味分かって言ってるの?」

 

 助けを求められず絶望している仗助に更に追い討ちをかけるようにヴィカが釘を刺す。その顔は格好の獲物を見つけたが如く嗜虐的に笑っている。

 

「これって遠回しのこ――」

 

「わああああッッッ!!テメェ!クレイジー・Dで頭修理されてェーのかコラァ!!?」

 

「キャハ♡怖い怖い」

 

「なんじゃこりゃ」

 

 ただ一人喝采のパレードに参加していないソニアが呆れたようにそう呟いた。

 

 





作者スランプに陥っていました。ごめんなさい。

話しの展開も全然進まないし不安で書く手が止まってました。
それに登場人物多いと描写するのがムズすぎる!!

未熟な作者ですが頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします

それと仗助って恋愛に疎そう。純愛タイプだって言ってたし
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