ここからドンドンシリアス寄りになっていきます
お楽しみに
――ペラ、ペラ
ランプの薄明かりを頼りに真近くで本のページを捲る音が聞こえる。暗く寝静まった教室ではその音が少し大きく聞こえた。
「何の本を読んでるんだ?もしかして漫画か」
紙と紙が擦れ立てる音が頭の中で漫画を連想させる。仗助は殆ど漫画を読まないが別世界と暫定しているこの地に日本の文化である漫画があるか気になった仗助は自身の懐に座り込んでいる少女に話し掛けた。
「違いますよ。今読んでるのはミステリー小説です。漫画はあまりウルサスに流通していないので読んだことが無いですね」
静寂に包まれた教室に気を使いそう小さく言葉を発するのは水色の髪と皆付いているがやはり特徴的な熊の耳を持つウルサスの少女――アンナだ
「漫画の発想が最初に出てきたのであれば、もしかするとジョウスケさんは極東と似たルーツを持っているかもしれません」
「似たルーツか。あっ、もしかしてここにもファミコンとか64とかってあるのかよ。あるならやりてェなー、手ぇつけてないゲームが家に沢山あったしよ」
体力ギリギリでボスを倒したりゲームのセーブデータの破損をクレイジー・Dで直そうとしたが出来ず、虚空を見つめたりした清き青春の記憶を思い出しながら、仗助はアンナの疑念に答える。
「ふぁみこんとロクヨンというのは分かりませんが恐らくゲーム機のことですよね?ふむ⋯⋯意外ですね」
「意外って何が?」
こちらをチラリと一瞥し、意外だとアンナは言うが主語が抜けているため何が意外なのか仗助はさっぱり分からず聞き返す。
「その⋯印象に囚われた発言で申し訳ないのですが、ジョウスケさんってソニアと同じで⋯⋯不良っぽいですよね」
「ああ〜」
東方仗助は所謂不良のレッテルを貼られている。ただその大部分を占めているのが見た目だ。イチャモン(ただし髪型を除く)をつけられても穏便に済ませることが多い。
一つ善良な面から外れることがあるとすれば価値と値段が釣り合っていない不味い飯などは文句を垂れて料金を払わないことぐらいだ。
「まあそういう目で見られるのは納得してっけどよ、俺は強迫だとか暴力振るったりとかは絶対にしねえぜ。ただこの髪を貶されることは例外な。ガチの不良っていうとやっぱ冬将軍じゃねえのか、アイツ弱い者いじめとか好きそうだしよ」
「⋯⋯」
「――?なんだよアンナ」
冬将軍――ソニアに対する仗助の印象は正しく不良だ。そんな不良が一番しそうな虐めを仗助は口にしたのだが何故かアンナに少し睨まれたのだ。
何か気に障るようなことをしたかと仗助は考えているとアンナが口を開いた。
「ソニアは弱い者いじめは絶対にしませんよ。ソニアはチェルノボーグでは不良の『冬将軍』としてかなり有名ですがその通り名以外にも『弱者の守り神』や『イジメっ子の天敵』などと呼ばれています」
「アイツが⋯そんなヒーローみたいに言われてんのかよ。想像つかねぇな」
会った初手から人を見下してきたソニアにそんな面がある事に仗助は信じられず疑惑を抱いていると、
――スタッスタッ
「!――誰か来るぞ」
扉の向こう側から近づいてくる足音に警戒し仗助は立ち上がると扉近くの壁の側面に背をつける。もし扉を開き入ってきた瞬間クレイジー・Dで攻撃する算段だ。
「まさか、襲撃でしょうか?」
「わかんねぇから俺の後ろにいろアンナ」
クレイジー・Dを扉前に顕現させ、近くなる足音に耳を澄ましていると足音が扉の前で途絶えた。入ってくる気だ。
クレイジー・Dに戦闘態勢を取らせた次の瞬間、扉が開かれた。暗闇で素顔は見えない、しかし夜に無言で入り込んで来るのは略奪を目的とした者だけだ。
何者かの足が教室の床を踏んだ瞬間、仗助はクレイジー・Dの拳を突き出す。
――ドラァッ!
「ハァ、食い物⋯まだ残って――!」
聞き覚えのある声が鼓膜を突き、仗助は繰り出したクレイジー・Dの拳を急停止させる。
「――ぶねェッ!」
時速300km以上出るクレイジー・Dの拳が冬将軍――ソニアの顔面スレスレで止まった。拳の余波によりソニアの髪が巻き上がる。
「テメェ無言で入って来てんじゃあねぇよ。入る前に誰かぐらい言えよな、襲撃だと思うだろうが」
「⋯⋯悪い」
短く謝罪するソニアに仗助は溜息を吐く。仮に殴り抜いたとしてもクレイジー・Dで治せるが顔見知りをぶち抜いたとなると精神的にキツイものがあるのだ。
「随分遅かったですねソニア」
「少し頭冷やしてたんだよ。それより食い物残ってるか?」
「ラーダが保存していると思います」
「そうか、ラーダに感謝しなきゃだな」
言いながらソニアは窓側の端で眠っているラーダに近づくと優しく肩を揺する。
「⋯んん?ソニアお姉ちゃん?もしかして見張りの交代?」
のそりとラーダは体を起こし眠そうに目を擦る。
「いや、今日の見張りはアタシが一任するから大丈夫だ。それよりラーダ飯残ってないか?」
「えーと、あのロッカーに入ってるよ」
教室の後ろ側にある小さなロッカーにラーダはあっちと指を指す。ソニアは「ありがとな。寝てていいぞ」と感謝と一言を述べるとロッカーから缶の蓋のされたトマトスープとパンを手に扉近くの机の上に座った。
「やべっ⋯寒い」
ソニアの一連の行動を見届けていると忘れていた寒さが体を襲う。ブルブルと震える手で仗助はカーテンの布を体に纏い座り込むと、
「なあアンナもう一回たの――」
頼んでも、と言いかける口を仗助は即座に噤む。背中に冷たいものが走るのを感じながらチラリとソニアの方を見るが一瞬怪訝そうな顔を作っただけで食事に戻った。
言えるわけがないだろう、ソニアの目の前でもう一度アンナの背中を貸してなどと。
白く凍えた息を吐きながら仗助は凍えそうな体を必死に震わせる。その姿を目にしたアンナは一度深く目を瞑ると、
「⋯ソニア、私が今から行う行動に何一つ口出ししないでください。奇妙に思うかもしれませんが仕方のないことなので」
「あ?一体何言って⋯⋯は?」
アンナのその行動にソニアは目を見開く。仗助とアンナは出逢ってまだ一日未満だ、そんな数時間の男女の関係なんて精々友達になる程度が限界だろう。
だから視界に映る光景にソニアは驚愕を隠し切れなかった。仗助の懐にアンナが座りそれを仗助がカーテンの布で包み込む。その光景は相思相愛のカップルが見せるソニアにとって見るに堪えないものなのだったのだから。
「⋯⋯テメェら、デキてんのか?」
冗談だろ、と言いたげなソニアの声は驚きで少し甲高く震えている。その声に込められた意味を感じ取ったカップル紛いの二人は首を横に振ると、
「っな訳ねぇだろうがよォ、俺は寒さに耐性がねぇからアンナに暖めてもらってんのよ。⋯マジに疑うなって目が怖えぜお前」
「これはジョウスケさんへ対するただの正当な恩返しです。こんな形であっても義理は通さないと」
若干早口で言い張るアンナにソニアは納得できてないのか複雑な表情を浮かべた。
「あー、まあ、よしわかった。話題を変えるがお前って種族はなんだ?見たところ獣的な特徴はねぇが寒さに弱いのか?」
「種族って俗な言い方だな。普通人種とかって言うんじゃねぇのか。⋯まあ俺はイギリス系日本人ってだけで純粋な人間だ」
自分の人種を発表したところで、ふとアンナの耳に目がいく。知的好奇心というものだろうか、丸くふわふわとした毛並みの良い耳だが自身と同じように触覚があるのだろうかと気になってしまう。
ただ流石に触れる訳にはいけないため仗助は自制心を働かせ好奇心を押さえつけた。
「ジョウスケさんの世界にはこう、私達のように獣的特徴を持つ人種はいないんですか?」
「いない、ただ仮想の存在として描かれているとかはある。日本で有名なのは桃太郎伝説に出てくる鬼とかだな。角が生えていて大きくて力が強い」
鬼に金棒など力強さの象徴と言える鬼を仗助が語っていると懐から「ちょっといいですか」とアンナが申し出る。
大した話でもないため仗助は話の腰を折り譲るとアンナが疑問を口にした。
「先程話していた極東に鬼という種族がいて今も現存していますが、あまりにも特徴が共通しています。偶然でしょうか?」
「マジに鬼がいんのは驚きだが、そう言われても偶然としか言えねぇな、鬼はおとぎ話で出てくる妖怪だし実在した痕跡もないが⋯⋯いや、もしかして」
その時仗助の脳内に天啓が降りた。もしかするとその鬼は大昔だが自身と同じで転移したのかもしれない。
確実だと言える根拠はないが仗助自身がこの様な事態に陥っているなら自分だけが特殊という訳でもないはずだ。
微かな帰還の希望に仗助は瞳孔を震わせたが今この可能性を広げても解決には至らないと思い胸中にしまい込んだ。
「ジョウスケさん何か思い当たることでも?」
「あー、いやただの思い過ごしだ。何もない」
「⋯⋯話題を変えるがお前のその変な力、スタンドって言ったか、それはお前の世界では人類皆が持ち得ているものなのか?」
食べ終わったスープ缶をゴミ箱に正確に投擲させたソニアは足を組み直すとスタンドについて言及した。少しスタンドについて説明不足だったと思い仗助は口を開く。
「ちょっと説明不足だったな。スタンドを持っているのは極々少数の人間だけで生まれつき持っている奴もいればスタンド能力が発現する矢に貫かれて覚醒する奴もいる。俺は血統の影響で発現した形だ」
「随分と詳しいな専門家か何か?」
「いーや違う、自然とそうならざるを得なかったんだ。『スタンド使いとスタンド使いはいずれ惹かれ合う』俺もその影響に当てられて何十人のスタンド使いと出会ったし戦った。その中で知恵を持っておかないと殺られるのはこっちだって何度も思い知ったんだ」
空条承太郎から始まり広瀬康一、虹村億泰、岸辺露伴など数多くのスタンド仲間と出会った一方でアンジェロや吉良吉影など凶悪なスタンド使いとも対峙した。
その際に仗助が学んだことは承太郎のように聡く冷静な判断を下せる人間に成長することだった。
「ふーん、今のお前修羅場を幾つも潜ってきたって目してるな。それに凄く面白そうな武勇伝じゃねぇか、聞かせてくれよ」
不敵な笑みを浮かべながら虎視眈々と肴を狙うソニアに仗助は笑みを返すと、
「まあオメェの武勇伝には劣るけどなヒーローさん」
「あぁ?テメェ何言ってんだ」
自身が『弱者の守り神』や『イジメっ子の天敵』などの渾名を付けられていることを知らないことを反応から悟った仗助は吹き出しそうになりながらも「まあまあ」と話を逸らす。
「ほんじゃそうだな、一番ピンチだったけど面白可笑しかった話からしようかな。ちなみに居眠りは厳禁だからな」
「ふむ⋯⋯面白そうですね。私も聞かせてください」
話に興味があるのかアンナはパタンと小説を閉じると首が疲れたのかカーテンに包んでいる仗助の二の腕に少し寄り掛かる。
「いいから早く聞かせろよ」
「わかったわかった。じゃあ始めるぞ、事の始まりは俺の貯金の残金が285円しかなく苦しでいた時――」
余談だが仗助の重ちーの500万小切手騒動からソニアの武勇伝と話は派生していった結果、長い夜はあっという間に過ぎていき彼等の睡眠時間は見張りの交代も併せて30分程度になったという。
▽
「――てくれ」
睡魔に支配された仗助の脳が微かに受信したのは体を揺さぶられている感覚と途切れ途切れに聞こえる声だった。
「――きてくれ」
沈んでいた意識が徐々に浮上していくと途切れ途切れの声はハッキリと聞こえた。
「起きてくれッ」
「ん?あぁ?なんだよ」
不完全な目覚めで意識が朧げな仗助は少しキレ気味に起こしてきた男子生徒に言葉を返す。声量はかなり抑えているが焦燥感が伝わってくる言い方がどこか癪に障ったのだ。
重たい瞼を上げながら辺りを確認するがどこも異常はなく教室には朝日が差し込んでいた。
何も異常はない。ただ眠り心地はいつもとかなり違う。まず座って寝ているため腰がこれまでに無いほど痛いことと人形のように可愛らしい小柄な少女が自分の胸を借りて寝ていることだ。
「何かあったのかよ」
「話がしたい。ついてきてくれないか?」
神妙な顔で話す男子生徒だが仗助の心境としてはここから一歩も動きたくない。今立ったら腰が逝きそうだし何よりも寒いのだ。
「⋯⋯しょうがねぇ、わあったよ」
しかし自身の本心とは裏腹に仗助は同行を決めた。余りここで話せるような内容では無さそうにする男子生徒の訴えるような目に押されたのだ。
慎重にアンナを仗助は自身の胸からズラしダンボールを敷いた床にカーテンを掛け寝かせるとそのまま教室出る。
そして近くに設置されている手洗い場まで移動した。そこにある鏡を駆使し崩れそうになっているリーゼントを直そうと奮闘するが、洗面所の水道は機能しておらずワックスもないためセットは不可能に近かった。
「呼び出して何の用だよオメェー、クッッソ⋯水分ねぇ上にギトギトなせいで櫛が滑らかに通らねぇじゃあねえか!」
命の次に重い髪型の危機に仗助はヤケクソになりながら男子生徒に言葉を投げる。髪を手入れしている今の仗助に耳を傾ける余裕はない。例え聞くとしてもいい加減な態度でうろ覚えとなるだろう。
しかし、その男子生徒の言葉は確かに仗助の心を深く脈打たせた。
「冬将軍を売って貴族に寝返らないか?」
「――は?」
アンケートを締め切ろうと思います。ジョジョキャラを登場させる方針に決定致しました。
ただ登場するのは既存キャラの一人で仗助の帰還ルートに関わるキャラなので反対派の人は悪しからず。
登場キャラについてヒントを出しておくと
1970年代のディスコを代表するバンドグループから取られているスタンド名。
そのグループを代表する曲は2020年9月21日に日本記念日協会によって記念日に指定された。
以上です!皆さん絶対にコマーシャルとかで聞いたことがある曲なので是非当ててみて下さいね。
インターネット検索は厳禁でお願いします!