アーククレイジーナイツ   作:カマクラカスタ

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他の人の小説とか読んでると自分の文才に辟易して書く手を止めてしまう。

夏目漱石の脳と自分の脳交換できたりしませんかね(パカッ)




ウルサス学生自治団 その1

 

「――は?」

 

 髪を梳かしていた手が男子生徒の一言で止まる。彼が今なんと言ったのか仗助は瞬時に理解できず息の抜けたような声が漏れた。

 

「君も見ていただろう?冬将軍の暴力性を、あんなのはリーダーに値しない。大丈夫、貴族達は冬将軍に手を焼いているからきっと良い土産になるし君の力は有益だから酷い扱いは受けないはずだ」

 

 歪に口角を上げヘラヘラと言葉を羅列させる男子生徒を仗助はただ無感情に見つめる。そして冷静に頭を働かせると、

 

「――嗚呼、確かに俺もアイツを信用出来ないと思ってたところだ。ところで計画はあるのか?あるんなら聞かせてくれ」

 

 上辺だけ納得したような表情を作り、まるで全力で乗り気のように男子生徒の肩に手を置き共犯者らしく小声でボソリと計画について問い詰める。

 

 その行為が信頼できるものと思ったのか男子生徒は更に口角を上げ計画について語り始めた。

 

 

 

 ▽

 

「なるほど良い作戦じゃあねえかよ。これならきっと成功するぜ」

 

 計画の全容を把握した仗助はニヤリとできるだけ卑劣な笑みを作り男子生徒の行動を後押しする。

 

「冬将軍と同等以上の君がいれば作戦は安心だ。君の賛同を仲間にも伝えておくよ」

 

 男子生徒は身振り手振りに喜びを伝えると手洗い場を抜け教室へと向かっていく。それを仗助は「おう!」と溌剌に見送った後深く吐息した。

 

 ――クソッ!クソッ!

 

 誰にもぶつけることの出来ない言葉を仗助は胸中で吐露する。どうせなら大声に、できるならば物にこの感情をぶつけてやりたい。

 

「――クソ⋯⋯ッ」

 

 この感情を言葉で表すことはできない。ただ言葉を吐いく中で仗助の中に浮上したのはアンナとソニアのことだった。

 

 たった一日の短過ぎる関係で彼女達を思い浮かべるのは変だと思われるかもしれないがこの世界に来て昨日の夜は本当に安堵できる時間を過ごせた。

 

 アンナは凍えそうな自分を温めてくれた。ソニアとの話はこれからの不安を紛らせてくれたし互いの事を知れた。

 

 二人がどう思っているのかは分からない。だがその行動に救われたのはあの時を一番楽しんでいた仗助自身がよく分かっている。だから、

 

「助けるんだ。あの人と同じように、今度は俺が」

 

 下を向いていた顔を上げ、仗助は鏡に映る自身を見つめる。鏡に映る姿に一瞬過去の自分が見えたような錯覚を覚えたが、一度瞬きするとその幻は消え失せた。

 

「⋯⋯ソニアに伝えるべきか」

 

 聞かされた犯行の内容はソニアの寝込みを複数で襲うというものだ。男子生徒から決行の時刻は教えられたが、ただ具体的な人数と名前は探りを入れても男子生徒は一切口に出さなかった。

 

 男子生徒とその仲間との信頼関係の浅さを仗助は実力で買われた形なのだろう。相手に信頼されてはいないが不幸中の幸いか、この犯行の内容を知れたのは大きい。

 

 しかし共犯の人数が不明な上顔も名前も暴けていない状態で伝えるのは危険なリスクがあるだろう。

 

 打開策を弾き出そうと仗助は脳を目まぐるしく働かせる。場所、口頭、文書と候補を出しリスクを限りなく減らす為の案はやがて一つに収束した。

 

「食料を探す名目でソニアを連れ出そう。そして計画を伝える、それでいく。俺が切り拓くんだ」

 

 手洗い場に設置された鏡に映る己を見つめながら仗助は自身を鼓舞する。

 

「野郎共、絶対に馬鹿な真似はさせやしねぇッ」

 

 鏡に映る青い目、その奥には揺るぎない決意が漲っていた。

 

 ▽

 

「⋯⋯」

 

 扉の取っ手に手を掛けスライドさせるとガラガラと音を立て扉が開く。そのまま教室に入ろうと仗助は足を一歩前に出した、すると

 

「おい」

 

 聞き覚えのある威圧的な声と共に仗助の眼前に飛び出したのは鋭利に磨かれた斧だ。突然の刃物の出現に仗助は驚いていると、その声の主がひょこりと顔を覗かせた。

 

「テメェ無言で入って来てんじゃねえ。昨日自分で言ってたろ」

 

 差し向けていた斧を担ぎ直し「アホが」と一言余計な事を言うのは冬将軍こと――ソニアだ。

 

「⋯⋯悪ぃ悪ぃ、イマイチ髪型決まんなくてよ。頭から抜けてたわ。ただ何も斧を振ることたぁねぇだろ」

 

「ここは危険地帯だ、何があっても不思議じゃない。⋯⋯髪も大切だろうがお前もしっかり頭に入れておけ」

 

 全くと言った感じで呆れたような表情をするソニア。少し口調が柔らかくなったかと仗助は思いつつ教室に入る。

 

 戻ってきた教室は夜かと疑うぐらい薄暗く感じた。窓から射し込む光が新聞紙などで遮断されており小さな隙間からしか光が射し込んでいない。

 

 外から凶器などを投げ入れられないようにする為の処置なのだろうと仗助は感想を抱いているとその窓を一つ一つチェックする二人の少女がこちらに気づく。

 

「おはようございますジョウスケさん」

 

「おはよう!ジョウスケお兄ちゃん。どこ行ってたの?」

 

 教室の点検をしているのはアンナとラーダだ。二人の挨拶に仗助は同じように返す。相変わらずラーダは元気そうだ。

 

「手洗い場にちょっとな。俺の朝の始めは入念な髪のセットから始まるんだけど、見ての通りダメダメだ」

 

 撓んだリーゼントを指しながら恩人への敬意が乱れてしまうことに仗助は辟易するが、同時に自身の原点を深く回顧する。

 

 豪雪で助けられたあの時とは状況は違えど人を助けることに違いはない。

 

「大事な髪型なんでしょ?何とかできないかな」

 

 萎れたリーゼントをまじまじと見ながらラーダは思案するが、大丈夫だと仗助に止められる。

 

「どうしようもないことを考えても仕方ない。それより食糧は大丈夫なのか?」

 

 教室の端に綺麗に整頓された缶詰や食料が目に映るも数は心許ない。一見しただけでも人一人が満足に腹を満たせない量程度だと分かる。

 

「⋯⋯そろそろ賄いきれないかもしれない。新しい食糧を見つけないといけないけど、もしできるなら、ジョウスケお兄ちゃんの力で食べかけのご飯を戻したり出来ないかな?」

 

 ラーダの縋るような問いかけに仗助は微かに拳を握り締め無理だと即答する。

 

「クレイジー・ダイヤモンドの能力は物や生物を治せるが部品が無いものは直せない。だから食べて人体のエネルギーになったものは直せないし直せたとしてもそこから栄養をこそぎ取るだけだ」

 

「⋯⋯そっか」

 

 仗助の説明を聞いたラーダは表情を曇らせる。淡い希望を持っていたのだろう。食糧難も解決していかなくてはいけないがそれよりも今訪れている危機の方が仗助にとっては重要だ。

 

「俺の能力でも解決のしようがない。それにラーダ言う通りなら食糧も数日と持たない、食糧を探しに行くべきだと思う」

 

 仗助の提案にラーダとアンナは渋々ながら同意する。二人の同意に仗助は内心でガッツポーズを取るとソニアに提案の是非を問おうとするが、

 

「――アタシはここに残る」

 

 態度悪く机に腰掛けたソニアがそう発言した。

 

「⋯⋯っ、オメェが一番最初に乗ってくる話だと思ったんだけどな。なんでだ?」

 

 一瞬、息の詰まるような感覚を覚え動揺が表に出そうになったが自制心を働かせ顔には出さなかった。

 

「貴族共と抗争するなら兎も角、食糧を探しに行く程度ならお前一人で十分だ。襲撃もいつ来るか分からないからな、アタシはここに残って教室の奴らを守る」

 

 腕を組み皆を守ると宣言したソニアの顔は固く動く意志を見せない。同行を何としてでも頼みたいがしつこ過ぎるとソニアにも教室にいる造反者達にも勘づかれてしまう。

 

「そうだな。オメェが守っていれば俺も心置きなく探索ができるもんな。安心感ってやつが段違いだぜ」

 

 ソニアの主張に微笑みで答える仗助は顔には出ていないが内心は無茶苦茶だ。浅慮な自分自身を仗助は呪うが時は遅くこの流れは変えられない。

 

 計画を詰める時間がなかったとはいえ上手く立ち回ることが出来なかった自分の失敗だ。

 

「ジョウスケさん、食糧を探しに行くのでしたら万が一に備えて探索範囲とルートと時間を共有しておきましょう」

 

 アンナは教室の前端にある教卓に学校の簡易的な地図を広げる。言い出してしまったものは仕方なく仗助はアンナの提示した諸々を頭に入れると食糧を探すため教室を後にした。

 

 

 

 

 

 ▽

 

 出た教室から数十分、仗助は地図に目を通しながら荒廃の進む校内を歩く。幸先よく食糧を見つけたりしたがあまり嬉しくはなかった。

 

 食糧を見つけた嬉しさよりも割れた窓や血痕に嫌気が差す。更にそれよりも酷いのが何処からか響いてくる悲鳴や怒号の声だ。

 

「⋯⋯大丈夫なのか、みんなは」

 

 位置も分からず響いてくるこの悲鳴がもし教室にいるアンナ達ものだったらと考えてしまう。それに『もし』だと思える余裕は今の仗助にはなかった。

 

 夜襲を仕掛けると男子生徒は言っていた。しかしそれが嘘だとしたら――そんな可能性が悲鳴を聞いていると何度も頭をよぎる。次善策も浮かばない。

 

 溜息を吐く余裕すら失われた仗助はただ地図をボーッと見つめて歩を進める。すると、

 

「命が惜しいならその食い物を置いていけ」

 

 背後からの声に仗助は歩を止める。恐らく通ってきた部屋の何処かに潜んでいたのだろうと考察していると、複数の足音が鳴り響いた。

 

 物陰に潜んでいた強盗が正面背後ともにズラズラと仗助を挟むようにして並び立っていた。

 

「『命が惜しければ』だって?⋯⋯俺はアンタらに命を脅かす程の脅威は感じねェっスよ。アンタらこそ命が惜しければ、そこ、退いてくれねェッスかね」

 

 無駄に思考を削がせるなと、苛立ちと剥き出しの敵意の籠った視線に前方にいる三人の生徒がその重圧から息を飲む。

 

「状況の分からない奴は嫌いじゃない。現実を知った後に自分の過ちでその顔を恐怖で歪ませるのは最高の愉悦だからな!」

 

 ウププッと下卑な笑みが廊下に木霊する。最低な性癖とその笑いに仗助はある凶悪犯を男子生徒を重ね合わせた。人の命と人生をどうとも思わない快楽殺人鬼であるアンジェロ、嘲笑する男子生徒はそのクズによく似ている。

 

「⋯⋯オメェに掛けられる情けは、オメェの言動と思想で今、消え失せたぜッ」

 

 振り返りポケットに手を突っ込む仗助の姿は誰がどう見ても無防備だった。その態度を目にしたイカれた男子生徒は手に持つ鈍器を変な髪の生徒に向け眉間に皺を寄せながら、

 

「生意気だなテメェー、そういうやつは――」

 

 ――ドラァ!!

 

 男子生徒が続けるつもりだった言葉は謎の衝撃に顎を打ち抜かれたことにより紡がれることはなく、男子生徒の体は強すぎる衝撃で二秒程宙に浮いた。

 

「げ、ぇ?」

 

 突如として起こった謎としか言いようがない出来事に仗助を襲おうと挟み込んでいた複数の生徒は狼狽し、仗助から一歩後退りする。熊の遺伝子を持つ彼等の古くからの野生の直感がそうさせるのだ。

 

「え、おひぇどうなっへんの?」

 

 唯一その直感が鈍いイカれた男子生徒は砕かれた顎を必死に上下させ痴態を晒しながら仲間を求めるが誰も駆け寄ることはなく、代わりに、

 

「俺は状況の分からない奴は好きじゃない。一から十まで説明しないといけねェからよォ〜〜。その耳とオツムはどうなってんだって根本から問い詰めたくなる」

 

 近付いてくる仗助に見下される形となり、イカれた男子生徒はそこでようやく己の置かれている状況に気付き本能から仗助から距離を取ろうとするが顎に食らった衝撃に脳が揺れ言うことを聞かない。

 

「ただ、ここで説教するんのも億劫だからよォ、早く消えろ」

 

 語気を強くし反抗を許さない圧迫感を仗助は醸し出すが左右を挟む生徒達は動かない。だがその表情は恐怖で引き攣っており目は泳いでいる。

 

 まるでその様態は先生に止めと言われるまでその姿勢を崩さない小学生のようで滑稽だった。

 

 ――ドッ!ドッ!

 

 それを見兼ね仗助は地面にクレーターを作り脅しかける。

 

「オメェらもこの床みてぇに顔面陥没させてやろうか!?アァ!!?」

 

 自分の行く末を明確に思い描ければ生徒達の取る行動は簡単だ。背を向けて逃げるただのそれのみ。

 

 逃げ果せる生徒達の姿を見届けた仗助は未だ倒れているイカれた男子生徒を見下げると、顎の骨折をクレイジー・Dで治した。

 

「あ、あれ?オレの傷が?」

 

 ガクガクと自身の骨が急速に修復されていくという奇妙な感覚を得ると瞬く間に顎の痛みは引き、出血は止まる。

 

 奇跡のような幸運にイカれた男子生徒は歓喜し、治った実感を手触りで感じるため顎に手をやるがそこで違和感に気付く。

 

「それは戒めだ。オメェみたいなタイプはしっかり身に刻んで置かないと反省しねえからな。この状況下で傷を負わなかったことには感謝しろよ」

 

 異形、と言えるまで伸びた顎の骨格を困惑とした表情で何度も確かめる男子生徒。そんなしゃくれを尻目に仗助は地図を確認しながら歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、なんなんだよ今のは⋯⋯ッ」

 

 そんな光景の一部始終をペテルヘイムの()()()()2()を自称するウルサスの少女は物陰から覗いていた。





仗助の趣味が公開されているので、最近自分はSpotifyでプリンスの楽曲を聴くようにしています。キャラを知ることって重要だと思うからネ

どれも中々渋い曲で古き良き年代を感じるなと聴いていて思いました。

それにSpotifyは数十分に一回短い広告が入るだけで無料で聴けちまうんだッ!!(スピードワゴン風)

皆さんもSpotifyでジョジョの元ネタを聞いてみて下さいね


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