〇〇ってサークルの新しいイラストレーター微妙だよな 作:あいうえお
0109 brjdioejcka 2021/03/13()
まじでふえた先生って失踪したのか?
0110 brjdioejcka 2021/03/14()
それを知るのはほんのり屋のみ
0111 hejieixksjsk 2021/03/14()
ほんのり屋ふえたと仲悪くなったからmathに鞍替えしたのかね
0112 bejsixixjsaid 2021/03/18()
確実に絵はふえたの方が上手いけどmathの絵も段々悪くないなってくる不思議
増田くんはCG集を販売するようになっていた。
「販売数すごいことになってるね!専売じゃないのにこのサイトで1万超えてるんでしょ?」
「そうですね。色んな人に楽しんでもらえてるみたいでうれしいです。この前も原画の依頼が来ました」
「え、すごいすごい!ちなみに、どこ?」
「それは、守秘義務があるので」
「あっ、ごめんね」
「でもこれまでと変わらず、ゲームつくるときは描きますので連絡くださいね!」
通話を切ると、ぼくは
「増田くん、変わってなさそうで、よかったぁ……」
と独りごちた。
⭐︎
記憶がなくなってしまって、増田くんはどうやって生きていくんだろうとその先行きを不安に思っていた。増田くんは自己都合退職の後、もくもくと絵を描いていた。収入をどのように得ていくのか不鮮明な身空になってしまって、家を探そうにも探せない状況だった。
責任というものがあるので、ぼくは増田くんを家に招いてしばらく共同生活をしていた。異性とはいえ、別に増田くんのこと、ぼくだって嫌いなわけじゃないんだし。まぁ、うん。予想もしなかった事象が起こるかもしれないね。
そうして特に何が起こるでもなく、7ヶ月くらい経った。そんなある夜のこと。ぼくが仕事から帰ってくると増田くんは、ぴょんぴょんと子どもみたいに跳ねていた。(これは今日何かあるぞ……)と、ぼくの内心は俄に活気だっていたのは言うまでもなかった。
「あまり迷惑もかけられないから一人暮らしはじめます!」
ぼくは目をかっぴらいて、手に持った鞄をその場に落とした。増田くんが何かを見てほしそうにしているので、煤けつつ、増田くん用の部屋まで着いていくと、パソコンの画面に映し出されたSNSのフォロワー10万人超えのすげぇイラストレーターアカウントを見せられた。
「あ、最近よくTLに流れてくる人だ。ちょっと前にアカウント開設されて、日に日に上達してくのが目に見えてすごかったなあ。今なんて商業の人にも負けないってくらい上手いもんな。……この人がどうしたの?」
「これ、ぼくです」
「……?」
「これ、ぼくです」
「……。ん?……。え、これ、ぼくぅ?!ちょっと前にアカウントができたってそういうこと?!」
「はい、依頼とか結構来てるので。安定してやっていけるのかはわからないですけど、迷惑かけられないですしもうそろそろ出ていった方がいいかなあって」
「迷惑とか、そういうのはどうでもよくて。増田くん、神絵師じゃん!」
「神絵師だなんてそんな。まだまだですよ。でも褒めてくれてありがとうございます」
アカウント名が「ますます」で、アカウントidに「increase」と「math」いう文字列が入っているのはそういうことだったのか!にしても、ゲームのCGとして使わせてもらったmathさんの絵柄から一気に進化していて、気づこうにも気付けない。
「増田くん、がんばってたもんね」
この数ヶ月の増田くんのタブレットに向き合っている姿を脳裏に描きながら、ぼくはそんなことをポツリと溢した。何が琴線に触れたか、増田くんは泣き出してしまった。
「どうしたの、増田くん?!」
「いや、えっと。わ、わからないんですけど。涙が溢れてきて。なんでだろう」
ただただ不思議そうな顔をしている増田くんなのに涙を流し続けていて、そのアンバランスな様相がおかしくてぼくは思わず笑ってしまった。増田くんはすごいんだってことが世間の人からも周知されていくことは当然だと思う。こんなに上手いんだから、崇める人の一人や二人出てくるくらいが丁度いい。リプライの欄にはそういう人がちらほら存在しているのは確認済みだ。
「もっともっとぼく、がんばりますね!」
と、再びタブレットと睨めっこを始めた増田くんの丸まった背中を頬笑ましく見守りながら、ぼくは頭の中に絶えず浮かんでくる(結局何もなかったな)という煩悩を掻き消す努力をしていた。増田くんはそうしてぼくの家から旅立っていった。燃え尽きたぼくは何もかも忘れようと仕事に打ち込み続けた。
「そもそもぼくの責任で増田くんは記憶喪失になってしまったんだし、ぼくが増田くんを幸せにできるわけなかったんだよね」
ぼくは最近花を育てることにはまっている。お花、きれい……。
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SNSでは定期的に5万いいねを獲得する化け物イラストを供給し続け、ついにフォロワー6万人にたどり着いた増田くんこと「ますます」先生の勢いは留まることを知らない。いくつかのCG集は1万を優に超えるヒットを成し遂げていた。
CG集の販売ページには、販売日とか、作者とか、シナリオライターとか、イラストレーターとかそういう項目を表示できる設定がある。ぼくたちがこの前販売した「ラグランジュの遺産」という作品についても、ほんのり屋というサークルから出ていて、イラストレーターmathと表示されているわけだ。
増田くんが最近出したCG集には、イラストレーター名が表示されていない。ぼくは、ぼくと一緒につくった作品のことをすでに葬り去りたい過去のものだって増田くんが思っているのではないかと疑心暗鬼になっていた。
「最近ぜんぜん連絡くれないし!」(自分から連絡すればいい)
「ぼくと一緒に作品つくっても何のメリットもないし!」(メリットとかそういうので同人をするわけではない)
「ぼくのせいで記憶喪失になったし!」(紛うことなく反省するべき点)
「ぼくのことなんて嫌いになっちゃったんだ!」
不安に思っていることの大体すべてが、増田くんに自分から連絡をとれば答えもわかるし、正直ぼくの思い込みに過ぎないってこと、よくわかってる。でも否定しきる材料はないし、自分から連絡するの、すっごく怖い。あーあー。
そんなときに増田くんから電話がきたのだ。そして冒頭に戻る。