Mimic:模倣能力不定形型魔偽禍   作:千歳 瑠為

3 / 14
頭痛が痛い


3.To be a human

空を飛びながら考える。

人の姿に擬態するのは良いとして、情報を取り込んで模倣する能力は言語にも適用されるのだろうか。

そうでなければ、親のいない小さな子供を装い施設などに保護されて一から言語を学ぶという方法も思いつく。

しかし、これは面倒なので出来ることなら避けたいものだ。

そう思いながら人がよく集まりそうな場所を探す。

 

少しの間空を飛んでいると、住宅街の近くに滑り台や砂場、ブランコのある小さな公園が目に入った。

公園に行くのは良いかもしれない。

公園ならば子供も多く、親や子も比較的簡単な言語を喋っている可能性が高い。

それならば、情報の収集に段階性のあるこの能力でも模倣しやすいだろう。

それに、ちょうど今二人の少女が公園で遊んでいる。

 

ブランコを囲む柵に降り立ち二人の様子を見る。

砂場で何かを作っているようだ。

年上に見える中学生ぐらいの方は、ツインテールで白い髪にピンクのメッシュが入っている。

もう片方の幼稚園児程度に見える方は、短めに切りそろえた髪に、ピンクと白のグラデーションのかかった髪色をしている。

二人の顔は下を向いていてよく見えないがおそらく姉妹だろう。

 

砂場の石製のふちに降り立ち、二人の模倣とともにその会話を聞こうとすると、推定妹の方がふちに立つ私に気づき顔を上げた。

 

()っ、■■■(スズメ)

 

推定妹はこちらを見て何かをつぶやく。

意味はやはり分からない。

 

()ー、■■■(スズメ)?」

■■(ほら)■■■(あの子)

 

妹の方がこちらを指差す。

推定姉の方もこちらを見て小首を傾げる。

二人の顔立ちはよく似ていて、エメラルドのように美しい緑色の瞳をしていた。

 

■■■■■■■■■(スズメがどうしたの)?」

■■■■■■■■■■(じっとこっち見てるね)

 

妹はこちらを興味深そうに見ている。

 

■■■■(そうだね)■■■■■■■■■■■(実は魔偽禍だったりして)

 

姉は笑みを浮かべる。

何を言っているのか分からないのがもどかしいが、更に彼女達の姿と言語の模倣を続ける。

 

「えー!スズメは■■■■■■■■(可愛いから違うよ)ー!」

 

姉の発言に対して妹は唇をとがらせる。

模倣する時間が伸びていく内に、なんとなく今まで使われてきた彼女らの言語が分かってきた。

先程、妹の方つぶやいた言葉は「スズメ」のニュアンスを持つらしい

 

「あはは、■■■■(冗談冗談)

 

妹の反応に対して姉は笑う。

 

「まぁ■■(でも)■■■■■(不思議な子)だね」

 

姉がこちらの顔を覗き込む。

変なスズメとでも思われているのかもしれない。

まぁ、じっと自分を見てくるスズメが居たら気になるだろう。

元々人間であった影響か、目を持つ何かに擬態している時は対象をじっと見ている方が模倣しやすい気がするのがその理由だが。

 

妹の方はそっとこちらの頭上に手を伸ばす。

そして私が逃げないことを確かめると頭を撫でてきた。

 

「わー!可愛い!」

「あっ、■■(こら)■■■■■■■■(触っちゃだめ)だよ」

 

姉は私を撫でる妹の手を掴むと何か言って、そのまま近くの水道へと連れて行く。

そういえば、野生の鳥はあまり触らないほうがいいらしいとか言われている。

私の身体は模倣しているだけで病原体などは付いていないので、彼女の健康に影響はないが。

 

二人がこちらから目を離した間に砂場のふちを飛び立ち、公園の隅の草むらの中へ入る。

彼女達から離れるついでに適当な生物の擬態に必要な情報を集めておくためだ。

 

人類の最先端技術の中には自然の形を模倣したバイオミメティクスも多く存在し、昆虫は人間大で考えるとすさまじい身体能力を発揮する。

これらはいつか役立つ時が来るかもしれない。

というか、魚の模倣をした時にも川で他の水生生物を模倣しておけば良かった、と今更になって少し後悔した。

 

見つけ次第バッタやらダンゴムシ、ナメクジにムカデ、クモ、ついでにその辺の植物などを模倣していく。

それと、特に飢えなどはないので今まで特に考えていなかったが、植物の光合成も真似することが出来れば、この身体がエネルギーを必要としていたとしても難なく解決することが出来そうだ。

 

そして、模倣しながら考える。

あの二人の模倣で得られたのは二人の姿への擬態と、二人を混ぜ合わせる、あるいは顔を少しだけ変えた彼女らの姉妹に見えるものへの擬態。

一応、それ以上の形の変形も可能なのだが現時点ではどうにも不自然な感じになってしまう。

さらに、ほんの僅かながら言語の理解への進歩があったことが大きい。

 

つまり、これから先より多くの人やその会話の模倣を続けて行けば、オリジナルの人間としての擬態や言語の理解が可能になるということだ。

その目標を達成する為、早速この住宅街で歩いている人を対象に見つけ次第模倣をしていくことにした。

 

草むらから飛び立ち、近くの電線へ。

家の庭で植物の世話をしている人を見つけたので、庭の柵に飛び移り、その人が植物の世話を終えて家の中に戻るまで模倣する。

 

しばらくしてその人が家に戻った後は、庭に入りミニトマトやハーブ類などの植物やトカゲなどの生き物を模倣。

再び飛び立って電線に移り、次は通行人を、会話をしている人を優先的に、電線から電線へ移りながら、疑われないぐらいまでに追い、他の人に切り替えて同じことを繰り返す。

 

 

 

 

「ねぇ、おかあさん、今日の■■■(晩御飯)ってなぁに?」

「今日はね、■■■(カレー)よ」

「やったぁ」

 

道を歩く親子連れの会話を聞く。

その会話は先程の姉妹の会話よりも理解できるようになっていた。

名称などが分からないことが多いが、文法についてはほとんど理解したのでどうにかやっていけそうだ。

後は、会話も聞いてものの名称も知っていけば良い。

 

そして、人への擬態に関してはもう完璧に可能になったと言って良いだろう。

好きな見た目の人間になれる。

本格的に人への擬態をして暮らして行くことに関しては、自分がどういう人間としてやっていくのかを決めてからしていくつもりだ。

とりあえず、今のところは戸籍がないので記憶喪失の人間になるというのが候補である。

しかし、この世界の社会構造についてよく知らないので戸籍などがどういった制度になっているのかを知らないのだ。

 

まずは、この社会についての情報が必要だ。

適当な容姿の人に擬態して本屋か図書館にでも行くことにした。

もう日は沈みかけているが、店の閉店時間まではまだ遠いだろう。

 

電線から飛び立つ。

早速、本屋か図書館のありそうな建物を探──ズバッ!

 

そんな音ともに、光を放つ矢が擬態しているスズメの身体のちょうど心臓部分を貫き、偽物の内臓が溢れ落ちる。

その痛みはないものの、物理攻撃の効かない私の身体を削りダメージを与えていることに気づいた。

私を撃ち抜いた相手はこちらからは見えない。

空中での姿勢制御を失った私は、そのまま地面へと落ちて行った。




不意打ちされがち主人公
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。