Mimic:模倣能力不定形型魔偽禍   作:千歳 瑠為

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(自分の小説の伸びを見て)怖···


5.The lost child

魔法少女二人との戦闘からしばらくして、私はあそこからある程度離れた場所へと移動していた。

今は、人に擬態し、ただ意味もなく道を歩いている。

辺りはすっかり暗くなってしまって、歩く道を街灯と建物の窓から漏れる光が照らしていた。

家々からは家族団欒の声が聞こえ、それに対して、ただ一人、夜道を歩く私はどこか淋しさを覚えていた。

 

───まあ、そんなセンチメンタルなのは自分らしくないか。

そんなことを考えて、私はその感情を誤魔化す。

 

さて、これからどうしようか。

本が読みたいだとか、魔法少女らとの戦闘の前は考えていたが、もう精神的に疲れてしまって、どうにもその気が起きない。

どこか適当な所で休息を取って、次の日にでも行こうか。

 

「ねぇ、キミ、もう■■(暗い)けど、一人で大丈夫?」

 

歩いてすれ違おうとしていた人に声をかけられる。

思考を止め、声をかけてきた人物を見ると、そこには、180cm程はあろうかという長身に、赤メッシュのショートヘアをした女性が琥珀色の瞳をこちらに向けていた。

 

私は不審者扱いを避ける為に大人ではなく、少女の姿に擬態していたのだが、それはそれで夜中に一人で歩いていると心配されることになってしまったようだ。

 

ちなみにその容姿は、暗い青色の瞳に、髪はミディアムヘアで淡い青紫から青色のグラデーションの髪と赤紫からピンクのグラデーションの髪が混ざったものとなっている。

服装は、紺色をベースに緑や白などのチェック柄の入ったワンピースを着用している。

この世界の人々は鮮やかで色とりどりの髪色や瞳の色をしているので、そこまで目立たないだろうと思い、ついキャラメイクのような感覚で作り込んでしまった。

 

「大丈夫」

 

彼女の質問に対してそう返して微笑む。

すると、彼女は少しだけ訝しんだような表情をしつつも、

 

「ふ~ん、まぁ、危ないから早く帰りなよ?」

 

そう言うと、彼女は私を通り過ぎて歩いていった。

 

私を心配してくれた女性と別れてから、少し歩いていると、ふと、誰もいない公園が目に入った。

あそこならベンチもあるので、休むのにちょうど良いだろう。

 

公園の中へ入ると、近くのベンチの上で横になる。

そして、身体を丸め、目を閉じた。

 

 

 

 

···全く眠れない。

あくびの一つさえも出ない。

薄々気づいてはいたが、やはり、私の身体は睡眠すらも必要としないようだ。

それでも、寝る機能ぐらいついていてくれていても良いと思うのだが。

 

ぼーっと、夜空を仰ぐ。

夜空はここが人の住む場所とは思えない程に、幾多の星々が輝いていて、ため息の出てしまうような美しさだった。

 

「あれ?さっきの子じゃん」

 

再び、先程も聞いた声が私にかけられ、上半身を起こす。

やはり先程の女性だった。

その手には、コンビニで何か買ったのか、ビニール袋が握られていた。

 

「お父さんお母さんは?」

 

無言で返す。

そもそもこの世界には存在しないとは言えない、絶対に面倒なことになる。

 

「ん〜、じゃあ、家は?」

 

またしても無言。

これも答えることはできない。

 

「キミ、名前はなんて言うの?あ、まずは私から教えないとね」

 

名前に関しても、前のものは覚えてすらなかったし、新しい名前を考えているわけでもなかったので、これも答えられないなと思いながら、彼女の名前を聞いた。

 

「私はルースト、ルースト・カーネーション。お姉さんって呼んでくれてもいいよ?」

 

自己紹介に付け加えられた言葉には、どこか彼女からの期待を感じさせられた。

 

「お姉さん」

 

と、それだけ返し、名前についてはスルーした。

すると、ルーストと名乗った彼女は、ニコニコしながらもため息をついた。

 

「お家を聞いても分からない、名前を聞いても分からないってもー、■■■■(おまわり)さん困っちゃうよー」

 

あっ、別に私がそういう仕事してるってわけじゃないけどね、と彼女は付け加えると、彼女は唸って、どうしよっか、などと呟きながらこの状況への対処を考えていた。

少しして、彼女はその結論が出たのか再び私に話しかける。

 

「んじゃあ、とりあえず、ウチ来る?外はもう暗くて危ないし」

 

私は小さく頷いて答えた。

 

 

 

 

「はぁー、■■■■(ただいま)~っと」

 

そのままお姉さんについて行くと、三階建てのアパートに到着した。

一人暮らしの部屋という感じで決して広くはない。

 

■■■(おやつ)食べる?」

「はい、欲しいです」

 

小さいチョコレートが包装されたお菓子がビニール袋から取り出され、私に手渡される。

せっかくなので、もらったお菓子で、人間への擬態時の味覚を試すことにした。

 

口に入れると、チョコの風味や甘さ、口の中で溶けていく感触が感じられた。

人間に擬態していれば、別に味覚などは問題ないようだ。

むしろ、強化されているかもしれない。

 

■■■■(泊まって)いきなよ、帰りたくないんでしょ」

「···はい」

 

どちらかというと、帰りたくない、というか、帰る家が無い、が正解だが、一人寂しく公園のベンチで佇み、夜を過ごすよりもずっと良いと思い、その厚意に甘えさせてもらうことにした。

というか、今気づいたが、もはや知らない言葉でもなんとなく理解出来るようになってきている気がする。

 

「もうご飯は食べたの?」

「食べました」

 

流石に、泊めてもらった挙げ句、夕飯まで作ってもらうのは気が引ける。

というか、私は食事が無くてもおそらく生きていけることがわかっている。

 

「···ん〜」

 

それから少しの間、互いに無言が続く。

すると、彼女は何か思いついたのか、あっ!、と声を上げた。

 

「私さぁ~、■■■(冷蔵庫)に食べ切れなかったご飯が残ってるんだよね」

 

ニヤつきながら彼女は冷蔵庫を指差す。

 

「このままだと食べ切れなくて■■(捨て)ちゃうかもしれないんだよね~」

 

そうきたか。

どうやら、こちらが遠慮して食べてくれないのなら、逆に、食べてくれた方が自分が助かる、という方向で食べさせるつもりのようだ。

まぁ、せっかくの厚意だ。

 

「もったいないし、誰か食べ切るの手伝ってくれる子いないかな〜?」

「···じゃあ、食べます」

「おっけー!」

 

彼女は米を取り出して解凍し、タッパーを取り出すと、温めてそれらを皿に盛り付けた。

そうして、テーブルにカレーが置かれた。

 

「先、■■■(お風呂)入ってるね」

 

そう言って彼女は浴室を指差した。

そして、彼女は浴室へ歩いて行った。

 

私はスプーンでカレーと米を掬い、口に運ぶ。

美味しいが、ピリつくような刺激は一切感じられなかった。

甘口のカレーだ、彼女は辛いのが苦手なのだろうか。

 

彼女が出た後、私もお風呂に入り、その際に怪しまれないよう、私の身体の一部が擬態しているだけの服を切り離して置いておいた。

 

お風呂から出た後は、一応服はさっき着ていた物しかないという事になっているので、彼女の使っていないパジャマを貸してもらったのだが、

 

「うわぁ~、ダボダボだ!」

 

私の身長は135cm程度で、45cm程身長差があるので、私には彼女の服のサイズが当然ながら大きすぎた。

袖は、私の腕の長さを越え、私の手の所で重力に従って下を向き、足はズボンが長すぎて、転んでしまいそうになっている。

肩も大きすぎて片方が出てしまいそうだ。

 

「私の■■■(ベッド)使う?」

「いいですよ、お姉さんが使ってください」

 

彼女の気遣いにそう返すと、彼女は唇を尖らせる。

 

「もー、■■(遠慮)しなくてもいいのに」

 

ランプの明かりが消され、部屋が暗くなる。

私は毛布だけを借り、安楽椅子の上で脚を曲げ、丸くなると目を閉じた。

 

 

 

 

結局、私は眠ることが出来ず、彼女が寝息を立てた頃に目を開いた。

 

そういえばと、あの魔法少女達のことを思い出す。

あの後、魔法少女達から離れてから、数時間程して、魔法少女から情報を得るために体内に送り込んでおいた私の身体の一部が消滅していたのだ。

この現象が魔法少女が持つ免疫機能のようなものなのか、治療などによるものなのかはわかっていない。

 

これ以上遠隔から情報を得ることができないのは残念だが、魔力の知覚など、得るものは大きかったので、とりあえずは良しとしよう。

魔力の知覚によって、私は大気中には魔力があることや人間の魔力の特徴などを理解した。

これによって擬態のクオリティーを上げることができ、もはや魔法少女らに擬態が気づかれる可能性は低くなった。

さらに、彼女らの魔法を使うこともできるようになったのだ。

しかし、模倣の時間があまり足りていなかったので、オリジナルにはかなり劣るが。

 

ディステと呼ばれたメイド服の魔法少女の魔法は、糸の魔法。

ある程度の性質の変更が可能な魔力で出来た糸を生み出し、操る魔法だ。

 

アルバと呼ばれたキトンの魔法少女の魔法は、自然を操る魔法と言うべきだろうか。

例えば、植物、光、風、水、土など自然由来のものを操る多彩な魔法が使える。

ただし、例外として炎、氷は使えない、おそらく、この自然を操る魔法が植物を軸としていて、それを育む要素を操っているからだろう。

何故あの戦闘で、光の矢以外、まともに使わなかったのかが良くわからない。

 

ちなみに、自然を操る魔法の万能性は、逆に言えば、器用貧乏といった感じになってしまい、私はその劣化版を扱うことになるので、そこまで威力を発揮する魔法は使えないようだ。

 

どこかで、魔法について実験したくはあるが、変なところでやれば面倒なことになりそうだと思った。

 

 

 

 

日が昇るまで窓からの景色を眺め続けていると、ゴソゴソと毛布が動く音がした。

 

「もう起きてたんだ、■■■(おはよ)

 

挨拶の代わりに、ぺこりと頭を下げる。

パジャマから、籠の中に入れられていた私の身体の一部である服に着替える。

 

「せっかくだし、()ご飯食べてきなよ」

「はい」

 

後は、お礼の言葉を伝えてここを去るか、と考えていると、お姉さんから提案を受けたので、朝食を食べる。

朝食は食パンとフレークだった。

 

そして、私達は玄関の前に立っていた。

 

「泊めてもらってありがとうございました」

「いーよ、わざわざ■■(お礼)なんて、どうってことないし」

 

お礼の言葉を言い、頭を下げると、彼女は笑ってそう返し、私の頭を優しく撫でる。

 

「じゃーね、何かあったのかはわかんないけど、ちゃんと家に帰りなよ?」

「はい、ありがとうございました」

 

その言葉に対し、実行されることのない返事をして、このアパートを出た。

外に出てふと空を見ると、雲の隙間から陽の光が差しているものの、その空は晴れきれずにいた。




あああプレッシャーあぁぁ
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