ロコンスグリネタ   作:すぺしうむ

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第3話

-おれとアカマツ-

 

テラリウムドームの光が生徒たちを包み込む中、もっと強くなろうとサバンナエリアの一角で新しいポケモンを捕まえようと奮起している俺。そしてそんな俺へ、ブルーベリー学園四天王のうちの一人であるアカマツがボールの投げ方やバトルの仕方を伝授してくれている。...のはいいんだけど。

 

「もっとこうバシュ!って感じ!」

 

「バ、バシュ?こ、こう?」

 

言われたとおりに、あと少しで倒れるドードーにボールを投げてみる。胴体部分に赤と白でできた縁起のいいボールがヒットし、数回揺れた。ドキドキしながら見守っていると、星を散らす。ドードー、捕獲完了。当たって捕まえられたはいいもののアカマツ君から指摘が飛んできた。手持ちでなんとか倒せたし、捕まえられたしでこれ以上言うことはないでしょ。

 

「うーん、なんか違うんだよね。いっそフライパンで投げてみる?」

 

「そ、それできるの...アカマツだけだべ」

 

テラスタルさえもフライパンでぶん投げてしまうのは本当に意味が分からない。この人こそ俺たちと同類なのではないだろうか。だが匂ってみても香辛料がツンと鼻に効くものの人間の匂い。世の中には不思議な生物もいたものだ。俺が言えたことじゃないけど。

なんて考えていたらぐぐっとお腹が鳴った。確かに熱中してはいたけどもうそんなに時間がたっていたか。地面に棒を突き立てると、いつの間にか1時間半ほど経過していた。

 

「お腹空いたの?」

 

「え、あ、うん」

 

「なら俺のサンドイッチ食べてく?」

 

「え、悪いよそんな。おれ、なんかに」

 

手に持ったバケットから、サンドイッチを取り出し笑顔でこっちに渡してきた。断ると悪いので受け取ろう。

すごくいい人だし、なんというか裏表がないんだな。接していて気楽ではあるんだけど、将来が不安になる。変な大人に騙されないといいな。

 

「あ、あんが、と」

 

食べ方の作法を知らないので、そのままかぶりつく。舌にくるビリビリとした香辛料の感覚とどんどんと熱くなってくる体。うん、結構辛いけどいけるな。次も欲しくなってきた。バクバクと食べ進めていると、アカマツがバケットの中を漁り、怯えた表情でこっちを見てくる。

 

「ご、ごめんそれほのおポケモン用に作ったやつだ!?スグリが燃えちゃう!?」

 

「も、燃える?おいしいし熱くはなるけど、燃えないよ?」

 

あっという間にすべて食べ終えた。おかわりが欲しいが図々しいので言えない。ほのおポケモン用ってそんなの人間の俺が。って俺ロコンじゃん。人間の社会で暮らしていると時々忘れそうになる。手を合わせ、ご飯をくれた人に感謝を述べる。

 

「ごちそうさまでした」

 

「お、お粗末さまでし!??!」

 

今度は俺の頭を上を見上げ、あんぐりと口を開けた。

 

「こ、今度はなに?」

 

「スグリ、耳生えてる!?って尻尾も!」

 

頭と腰を触ってみると、毛のモフモフした感触が。今食べたサンドイッチのせいで変化が若干解けてしまった。頭が真っ白になる。ヤバいと頭で考えてはいるものの上手く言葉が出ない。あの、えっととどもりながらなんとか口を動かす。もはや考えてはない。

 

「コ、コスプレ!そうコスプレだべ!」

 

「そうなの?でもなんで今?さっきまでなかったよね?」

 

「...ポ、ポケモンの気持ちに、なるの大事だから」

 

「そ、そうなんだ」

 

アカマツの頭が悪くて助かった。こんな状況でポケモンの気持ちになりたいからって急に耳と尻尾を生やすのは意味がわからない。いくら田舎暮らしで山育ちとはいえ、これぐらいはわかる。

その後、色々と触られたが、コスプレと言って押し通した。

 

 

 

 

 

 

 

-おれとネリネ-

 

 

ポーラスクエアの近く。そこで姉ちゃんの数少ない理解者であり友達であるネリネ先輩に指導鞭撻を頂いている。ネリネ先輩からはゼイユの弟なら先輩呼びしなくてもいいよ言われたが、人間社会という都合上そういうわけにもいかない。俺たちはあくまで社会とバトルの勉強のためにこの学校に通っているんだ。それを忘れないようにしないと。

 

「さ、寒いですね」

 

「ええ、ポーラエリアは寒い気候で暮らすポケモンのために作られているので」

 

「あ、うん」

 

会話が続かない。というかネリネ先輩が機械的にしゃべるから感情がうまく伝わってこない。さっきからアドバイスをもらっているが、この喋り方のせいでアンドロイドを相手にしているみたいだ。姉ちゃんが面白い女って言ってたからある程度は信用に値すんだけど。...ひょっとして俺になにか思うところでもあるんだろうか。

 

「えと、もしかして、怒ってたりしま...すか?」

 

「...?ネリネは疑問。なぜそう思ったのか」

 

「会話とかうまく続かないし。もしかして、なんか、ダメなことしちゃってたり」

 

「否定、別にそのようなことは」

 

「あ、はい。...ごめん」

 

もう長いことバトルしたりポケモンを捕まえたりで付き合ってもらっているが、どうしたものか。いっそのことさっさと解放してあげて一人で構築を考えたりした方がいいのかもしれない。ネリネ先輩も俺なんかに付き合うよりも、生徒会やリーグ部の仕事を優先した方がいいだろう。

 

「ねえ、ネリネ先輩。そろ、そろ解散しよっか」

 

「もう少し時間がある。何か別の用事が?」

 

「いや、別、に」

 

ネリネ先輩が時計を確認する。よくみると少し震えているな。流石に生徒が凍死なんてことをしないように設計されているとは思うが、見ていて心が痛い。俺は体質的に、飢えて体が弱らない限りはある程度は雪山の中でも生活できるので問題ない。だが人間は違う。人間は1時間も寒空の下に居たら体温も低下してしまう。もしかして俺との約束を無下にしないために無理をしてくれているのではないだろうか。

手だけでもいいから温めておこう。

 

「...っと手借りるね」

 

ネリネ先輩の手を俺の手で包み込む。ひんやりしていて、まるで川辺の石のよう。ふぅーっと息を吹きかける。手先を温めるならこれが一番早い。村の人間に寒いときによく強請られていた。火をおこしたり、抱き着いたりすればもう少し暖かくなるんだけど。

 

「暖かい」

 

「でしょ?ネリネ先輩の手、冷たそうだったから。...ネリネ先輩は優しい人なんだね」

 

「疑問。どうして?」

 

今になって、以前にじーちゃんが言っていたことを思い出した。手が冷たい人と手が温かい人がどうのこうのだとか。

 

「じーちゃんが言ってたんだ。手が冷たい人は心が温かいんだって。ってこんな寒いところにいたら誰だって冷たくなるか。...ニヘヘ」

 

笑ってごまかす。何度かもわからないような極寒の場所に何十分もいればほのおポケモンだって少しは冷たくなる。でも、姉ちゃんがあれだけ懐いているんだから、暖かい人なのは絶対そう。今日はもう解散だけど、明日からもたまにでいいから付き合ってほしいな。本人には言えないけど、心の中でそう思っておく。

突然ネリネ先輩のメガネが曇った。何事だ。

 

「失礼、動揺につきメガネが曇りました」

 

都会の人は動揺したらメガネが曇るのか。面白い仕掛けだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

-おれとタロ-

 

 

 

リーグ部の部室、四天王のうちの一人であるタロ先輩に、書類の整理が終わったら来てほしいと言われた。ブルレクも終わり、特に用事もなかったので行ってみたら。

 

「ぎゅー」

 

抱き着かれた。他の部員がいないのでいいものの、なんだか気恥ずかしい。近所でもよく毛深いポケモンに対して、抱き着いたり吸ったりしている人がいるが、こんなことをして人間は何が楽しいんだろうか。

暖をとる目的なら部室は空調がきいているので寒くも熱くもないので意味はない。同級生の子たちにもたまに抱き着かれているけど、正直怖い。

 

「かわいい成分補給です」

 

「わ、わやー」

 

カワイイ成分とやらが俺から出ているのか。人間の皆は俺からそういうのを摂取しないと生きていけないのか、難儀な生物だな。俺は人間とポケモンのハーフだからそんな成分が欠乏していても大丈夫なんだろう。今度から積極的にクラスの子たちにかわいい成分を補給してもらわないと。

 

「あ、こんな状態で話しかけるのもあれなんだけどさ。勉強とかついていけてる?」

 

「...全然わからねえことばっか。理解すんのがやっと、です」

 

「去年のノート貸してあげよっか?」

 

願ってもない提案だ。タロ先輩と言えば2年でも上から数えた方が早いぐらい成績が優秀な人。性格もまめなタイプと姉ちゃんから聞いているので、ノートもさぞ綺麗でわかりやすいんだろう。俺の中のかわいい成分とやらを売りに出してよかった。いつかなくならないか心配だけど。

 

「え、いいん...ですか」

 

「いいよー、むしろギブアンドテイクっていうかさ。成分補給させてもらってるから、ちゃんと返さないと」

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

コミュニケーションが下手なせいか、どうにも話すときにどもってしまう。気持ち悪い奴と思われていないといいな。普段は姉ちゃんの陰に隠れて生きているので、自分という存在がよくわからない。はやく友達とか、作ってみたいな。

 

「だから、もうちょっと補給させて」

 

「わやー、かわいい成分なくなっちゃうべ」

 

 

 

 

 

 

 

 

-おれとカキツバタ-

 

 

「よう、スグリ後輩。調子はどうだい?」

 

「え?」

 

廊下を歩いていると、この学園のチャンピオンの座に位置している人、カキツバタ先輩から声をかけられた。姉ちゃんからこの男だけは絶対に信用するなと言われているので、できればあまり話したくない。

 

「えと、いい感じです、多分」

 

「そーかい。なんか困ったことがあればツバッさんに言いねい」

 

「あ、はい、ありがとうございます」

 

できる限り目を合わせないように、うつむいて話を続ける。この人の場合は話していても底が見えないので怖い。冷静沈着と言葉で表せばかっこいいが、見ている側は掴みどころがなくて合わせ辛い。匂いは、甘いお菓子の匂いがしていてどっちかというと嗅いでいたくはない方か。

カキツバタ先輩が妙に手首を気にしているので視線を向けてみる。...擦りむいているしちょっとばかし出血しているな。

怪我の部分を指さし、質問する。

 

「あの、それ」

 

「んん?ああ、これか。さっき転んじまってな。つばでもつけてりゃ治るよ」

 

人間はつばをつけたら治るのか。うーん、何かあれば相談してこいって言ってくれた人をケガしているのに送り返すわけにもいかないし。かといってキュウコンの血も入っている俺にその効果があるのかどうか。...いや、待てよ。そういえば俺がもっと小さいころ姉ちゃんに転んだ部分を舐めてもらっていたかも。だとすると俺もその効果があるのではなかろうか。

カキツバタ先輩の手を持つ。なぜか少し怖くなってきた。

 

「どうかしたか?」

 

「失礼、します」

 

ケガしている部分をぺろぺろとなめる。範囲自体はそこまで大きくないので、数度舌を前後させるだけで済んだが、舌に血と皮膚の味が残っていてなんだか気持ち悪い。さっさと別のもので洗い流したいが、汚いものに接しているみたいで無礼だろうからやめておこう。

 

「これで大丈夫ですか?」

 

「...........................おう」

 

「じゃあ、次移動教室だから。また、部活で」

 

それだけ言い残し去っていく。周囲から女性の沸き立つような声が聞こえてきたが、祭りでもやっているんだろうか。

里帰りしたら、またお祭り行きたいな。

 

 

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