フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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プロローグと合わせて丁度100話目です。
可笑しいな…、書き始めた当初は50話くらいでSEED編を締められると思ってたのにな…。
まあ書き始めたらあれやこれやと書きたいものが増えて話数が嵩んでくのはいつもの事なので、諦めます。

という事で、本格的にメンデル編が始まります。


PHASE99 真実への誘い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ…、今度は貴様がソレのパイロットか。ムウ・ラ・フラガ!」

 

「ラウ・ル・クルーゼ…!」

 

 ゲイツとストライクが互いの位置を入れ替えながら、激しく砲火を撃ち交わす。

 

 放たれるビームを機体を横へ移動させて躱したストライクが、腰溜めに構えたアグニを撃つが、ヒラリと翻りながらあっさりと強烈な砲撃を躱してみせるゲイツ。

 

 近接戦闘の手段を持たないストライクは、徹底してゲイツに距離を詰められないよう努めていた。

 対してゲイツはストライクを牽制しながら、敵との距離を詰めようと画策する。

 

 状況的に厳しいのは圧倒的にムウの方だ。懐に入り込まれたら終わり─────しかし、対モビルスーツの遠距離戦で優位に持ち込める武装でもない。

 ランチャーストライカーは本来、対艦戦闘を想定した武装。火力は圧倒的でも、小回りの利くモビルスーツ相手では相性が悪い。

 

 急激な方向転換を繰り返し、ゲイツがストライクへと向かってくる。

 右肩部のウェポンポッドを開き、二門のガンランチャーをゲイツに向けて撃ち掛けつつストライク自身もゲイツから離れるべく後退。

 

「くそっ、このままじゃ…っ!」

 

 ムウの中で焦燥が募っていく。ムウ側でも未だ被弾はないが、危うい場面は何度もあった。

 対してクルーゼ側は違う。ストライクの火力を容易く躱し、その動きには余裕さえ感じさせる。

 

 それにムウにとって問題なのは装備の相性の悪さだけじゃない。ストライクのバッテリーもそうだ。

 コロニー外部での防衛戦と、コロニー内部でのゲイツとの交戦─────すでに何発もビーム兵器を撃ち放っているストライクのパワーは、すでに注意域を割っている。

 

 恐らくクルーゼも、ストライクのパワーに余裕がない事は察しているのだろう。だからこそ無理に勝負を急がず、ムウの攻撃を誘いながらストライクの消耗を促している。

 

 横目でこことは別の戦闘を見遣る。

 視線の先では、バスターの砲撃を掻い潜り、デュエルと斬り結ぶスピリットの姿がある。

 

 あちらも厳しい戦いを強いられているらしい。一対二という戦況そのものではなく、仲間であった人物と対峙を強いられているパイロットの精神的な意味でも、きっと─────。

 

「余所見をしている暇はあるのかな?」

 

「ぐっ…!?」

 

 ムウの意識が僅かに逸れたのを見逃さず、クルーゼが機体を駆る。

 すぐさまバルカン砲を放ち牽制、あっさりとゲイツは後退していくが、その動きがまたムウの癪に障る。

 

 今のだって、危険は伴うがやろうと思えばストライクの懐へ飛び込む事が出来た筈だ。憎らしいが、クルーゼならばそれをやってのける腕を持っている。

 だが、それをしない。まるでゆっくりと消耗していくムウを見て、楽しんでいるかのように─────。

 

「舐めやがってっ!」

 

 焦燥に呑まれそうだったムウの心が、怒りによって発奮する。

 

 そっちがその気なら、付き合ってやろうじゃないか。そしてその余裕そうな面に、一発喰らわせてやる。

 

 ムウは再びアグニを構え、動き回るゲイツへ向かって撃ち放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミゲルは迷っていた。ユウ達と歩む事になった今、いずれは直面する事実である事は承知だったし、ムウ達に語った覚悟は本物だった。

 かつての仲間でも、撃つ覚悟はあると─────その時は本当にそう思い、覚悟をしたつもりだったのだ。

 

 なのに、いざ向かい合ったら引き金に指を掛ける事も出来ない。

 

 デュエルはシヴァと肩のミサイルポッドからミサイルを立て続けに放ってくる。

 その後方からはバスターがガンランチャーとライフルを連結させ、長射程の銃口を向けてミゲルを狙う。

 

 スピリットの機動力を駆使して射線を振り切りながら回避する─────が、反撃の一撃をどうしても向ける事が出来ない。

 やらなければやられる、分かっているのに、銃口を向けようとする度にかつての仲間の─────イザークとディアッカの顔が脳裏に浮かび、ミゲルの手の動きを止めてしまう。

 

「っ!」

 

 思考にのめり込んでしまった故に、ミゲルが駆るスピリットの動きが単調になる。

 機動力で劣ろうとも、相手がどこへ向かおうとしているか分かってしまえば、先回りは容易い。

 

 ミゲルが行く先に立ちはだかるのは、デュエル。スピリットの前方に回り込んだデュエルが背部からビームサーベルを抜き、眼前の仇敵目掛けて振り下ろす。

 

 シールドを掲げて防御態勢をとり、ミゲルもまた腰の鞘からビームサーベルを抜き放つ。

 咄嗟の迎撃、スピリットとデュエルの斬撃が互いのシールドを打ち、激しいスパークを起こす。

 

 ─────駄目だ。

 

 撃てない、撃てる訳がない。目の前の相手を、撃つべき敵と思う事が出来ない。

 

 それ以前に、自分はこういうのが嫌で…どこまで殺し合うしかない世界が嫌だから、ユウ達と共に往く道を選んだのではないのか?

 ならば、するべき事は一つじゃないか。

 

「イザーク!ディアッカ!」

 

『『ッ!?』』

 

 周波数帯は以前と同じだった。通信回線が開き、ミゲルの声を聞いた二人が鋭く息を呑む音が聞こえた。

 

『ミゲル…?』

 

『生きていたのか…?本当に、貴様なのか?』

 

 ディアッカが信じられないといった様子で呟き、イザークが囁くように尋ねる。

 

 ミゲルはモニターとカメラもONにして、頷いた。

 

「あぁ、そうさ」

 

 スピリットのモニターにも、懐かしい二人の友の顔が映っていた。

 

 二人はしばらく唖然と目を見開き、モニター上のミゲルをまじまじと見つめていた。

 信じ難い、というような表情は徐々に強張り始め、特にイザークに至っては激情を浮かべた表情でミゲルを睨みつける。

 

『何故、ストライクと共にいる!どういう事だ、貴様ァッ!!?』

 

『生きていてくれた事は嬉しいさ。けどよ…、事と次第によっちゃぁ、俺達はお前を撃たなきゃならねぇ』

 

 イザークは微かに目を潤ませながら、ディアッカもその声を震わせながら詰問する。

 

「…」

 

 ミゲルは二人に対して口を開けないでいた。どう説明をしたらいいか、整理がつかないからだ。

 

 どう説明しても、言葉を思い浮かべても、自身の行動は彼らにとっての裏切りに他ならない。

 

 どうすれば、何を言えば二人を納得させられる?ミゲルが答えあぐねている時だった。

 

『ミゲル!』

 

「キラ!?」

 

 通信に彼ら以外の声が割り込む。ミゲルはモニターを見遣り、港の方からフリーダムが飛来するのに気付く。

 

『イザーク、あの機体は!?』

 

『チィッ!』

 

 ディアッカが驚きの声を上げ、イザークが微かな躊躇いの後に機体を向ける。

 

 まずい─────ミゲルは咄嗟に機体を割り込ませ、素早く両者の間に入り込んだ。

 

「やめろ!キラも、ここは俺に任せてくれ」

 

 ミゲルが叫ぶと、状況を悟ったらしいキラが制動をかけてスピリットの手前で静止する。

 

『…いいんですか?』

 

 二人と戦うのは嫌だが、二人とキラが戦うのだってそれと同じくらいに嫌だった。

 

 キラが気遣わし気に尋ね、ミゲルは「あぁ」と出来る限り声に力を込めながら答える。

 

『分かりました。…でも、私とアスランみたいな事には、ならないでくださいね』

 

 キラは機体を引き、去り際に呟くようにそう言った。

 

 去って行くフリーダムの後ろ姿を見つめながら、ミゲルははたと気付く。

 

 そうだ。友達なのに敵同士に別れて殺し合う─────このままでは、自分達に訪れるのはそんな残酷な未来だ。

 

『アスラン?』

 

 二人もフリーダムに見覚えがあるようだった。ならば、連合側で戦っていたキラとアスランの関係を不思議に思うだろう。

 

 説明しなくてはならない事が山ほどある。そうして分かって貰えるかは分からないが─────殺し合いたくないのなら、残された選択は一つ。話し合いだ。

 

 ミゲルはハッチを開く。その様子に、イザークとディアッカがハッと息を呑んだ。

 

「銃を向けずに話をしよう。イザーク、ディアッカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲイツがビームライフルでストライクを狙う。

 

 ムウはそれを躱し、ガンランチャーを放つが当たらない。クルーゼの見事な機体捌きであっさりとムウの反撃を回避すると、左手シールド部にマウントされたビームサーベルが出力される。

 さながら長大な爪と化した左腕を翳して打ち掛かって来る。

 

 徹底的に保たれ続けた両者の距離が、いよいよゲイツによって侵される。

 しかしムウの反応も早かった。機体を回り込ませた次の瞬間、両者は激突する。

 ストライクはゲイツのビームライフルと、ビームクローを展開した左腕を押さえ込んで獲物を封じた。

 

『フッ…貴様に討たれるならそれもまた、とも思ったがな!』

 

 突然酷く明瞭な声がスピーカーから入り、ムウは驚きに目を瞠る。

 それはアラスカで一度聞いた、あの声だ。クルーゼは挑発のつもりか、通信回線を開いて呼び掛けて来たのだ。

 

 JOSH-Aに入り込んだ奴の事だ、こちらが使用している周波数を承知していても可笑しくはない。

 だがこんな状況だというのに、ムウはまたもこの声をどこか別の場所で聞いた事があるような気がして戸惑ってしまう。

 

『だが、どうやらその器ではないようだ』

 

 先程まではどこか興奮が混じった様な声質が、冷たいものへと変わる。

 

 ストライクがグイッと引き寄せられ、次の瞬間には強く蹴り飛ばされる。

 

『所詮、()()()()()()()()─────という事かな?』

 

「なに!?」

 

 相手の言葉の意味が分からないまま、ムウはランチャーパックをパージする。

 

 ストライクのバッテリーも限界に近い。どうせこれ以上パワーを喰うランチャーを撃てないならば、身軽になった方が良い。

 機体の両腰からアーマーシュナイダーを射出し、両手に構える。

 

 その直後、それを見て取った敵から何か光るものが二つ射出される。

 

「っ!」

 

 放たれたのはワイヤー付きのアンカーだ。そうだと悟った時にはすでに、その片方がビームを発してストライクの右腕を抉り、同時にもう一方がコックピットを襲っていた。

 

 直撃は辛うじて避けたものの、ストライクの腹部が抉られてコックピットまで達し、飛び散った破片がムウの脇腹を裂く。

 

 痛みに顔を歪ませながら、咄嗟に機体を立て直す事が出来ずにストライクは背部から地表に叩きつけられる。

 

『運命は私を選ぶ、か─────なに?』

 

 どこか失望が含まれたクルーゼの声を聞きながら、ムウはゲイツのビームライフルが火を噴くのを待つ事しか出来ないでいた。

 

 万事休すかと思われた、だがその時だった。

 何かを感じた様にクルーゼが振り返りかけ、ムウも微かに何かが近付いてくるのを感じ取る。

 

『ムウさんっ!』

 

 キラの必死の叫びが耳を打ち、同時にゲイツのライフルにビームが命中し爆散する。

 

『フリーダム!?』

 

 驚きを隠せないクルーゼは声を上げながらも、しかしその素早い反応は流石だった。

 

 自身の得物が失われた事には見向きもせず、飛来するフリーダムと向き直りながらビームクローを展開する。

 だがそこから反撃の行動に出る前に、フリーダムのライフルから再度ビームが放たれる。ゲイツの頭部が宙に舞い、それが落下し始めるより早く迫るフリーダムがビームサーベルを抜き放ち、すれ違いざまにその両足を薙ぎ払った。

 

 ゲイツはあれよという間に大破し、コロニーの赤茶けた地平に転がる。

 

 コックピット部は無傷だが、地上に叩きつけられた衝撃は相当の筈だ。中のパイロットは果たして無事か─────ムウが見遣る視線の先でゲイツのハッチが開き、中からザフトの制服を着た金髪の男が飛び出す。

 

「あいつ…!」

 

 ラウ・ル・クルーゼだ。ムウも続けてハッチを開き、拳銃を手に取りシートから立ち上がる。

 脇腹に負った傷が鋭い痛みを発したが、構わず外の様子を窺おうとして、ムウが撃つよりも早く銃声が響いた。

 ハッチの横に弾丸が跳ね返るのに構わず、ムウも機体に身を隠しながら撃ち返す。

 

「今日こそつけるかね!?決着を!」

 

「あの野郎、何を…!」

 

 挑発しながら走り去るクルーゼの後ろ姿を狙い、再度引き金を引く。

 

 駆ける男の足下に弾丸が当たった直後、クルーゼは一度振り返って撃ち返す。

 

「ならば来るが良い!引導を渡してやるよ─────この私がな!」

 

 クルーゼが駆け込んでいったのは、巨大な円筒型の建造物だった。ムウは血の滲む傷口を押さえながら機体から降り、その後を追う。

 

 巨大な金属のパイプから、いくつものボルトが突き出ている様な外観の建物は、放棄された研究施設の一つか。

 ムウは入口から足を踏み入れ、エントランスホールらしき部屋の前で足を止めて中を窺う。

 

 円形のホールに人影はなく、しんと静まり返っているが、奥の方から確かにクルーゼの存在を感じる。その感覚に身を委ね、ムウもまたどんどん奥へと歩を進める。

 

 吹き抜けになり、天井から取り入れられる外光に照らされながら、螺旋型にモチーフが巡る空間を走り抜ける。

 

 シャフトに飛び込んだ先で見つけた階段を駆け上がり、物陰に隠れながら先の様子を窺おうとしたその時、銃声が鳴り響いた。

 銃声の名残が未だ残る中、男の声が響く。

 

「ここが何だか知っているかね!?ムウ!」

 

 クルーゼ─────。

 

「知るか、コノ野郎ッ!」

 

 クルーゼからの問い掛けに対して悪態を吐き捨てながら、銃を撃ち返す。

 

 ムウが撃ち返した銃弾が命中した気配はない。その証拠に直後、再びクルーゼの声が続いた。

 

「ほぉ…、罪だなそれは。君がここを知らないというのは─────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「なに?」

 

 これまでに掛けられたクルーゼからの挑発を右から左へ聞き流していたムウも、その台詞までは同じ様に聞捨てる事が出来なかった。

 

 ─────知っている?ユウが、ここを?

 

「クッ…!」

 

 前方から足音が遠ざかっていくのが聞こえる。クルーゼは更に奥へと進んでいったらしい。

 ムウも立ち上がりってクルーゼを追い掛け、その途中で二重螺旋を模したものらしいモニュメントの陰に身を潜める。

 

「彼が知っていたので、てっきり君もと思っていたが…。フフッ、君を気遣ったのかな?お優しい弟じゃないか」

 

「何をふざけた事を!貴様にユウの何が分かる!?」

 

 身を乗り出し、クルーゼの気配がする方へと銃口を向けて撃つ。

 

 銃声が反響する中で、クルーゼの声は尚も響き渡る。

 

「分かるとも。彼が何を知り、何を背負っているのか─────のうのうと呑気に軍人などやっていた君より、私の方が彼を理解しているのは皮肉だな」

 

 何が愉しいのか、クルーゼの声は弾んでいる。それがムウの癇を尚更に逆撫でる。

 

「ムウさん!」

 

「っ─────キラ!?何で来た!」

 

 ただの挑発だ。そうだと分かっていても、怒鳴り返さずにはいられない。

 ムウが更に声を荒げようとしたその時、背後から彼の名を呼ぶ少女の声がした。

 

 建物へと入ったムウを心配したキラが、ここまで追い掛けて来たのだ。ムウとクルーゼの声と銃声がする方へ繋がる通路を辿り、ここまで追い付いて来た。

 

「あのまま外で待つなんて出来ませんよ…。何かあった時、ユウとマリューさんに何て報告すればいいんですか…!」

 

「…生意気だぞ」

 

 咄嗟に咎めはしたが、自身を気遣って追い掛けて来たという行為そのものに悪い気はしない。

 

 キラからの気遣いにいつも通りに振舞おうとするが、ムウの額に浮かぶ汗と、わき腹から流れる血は隠せない。

 

「ムウさん、その傷…!」

 

「大した事はない。それよりお前、撃つ気あるならセーフティ外しとけ」

 

 ムウに言われて慌てて自分の拳銃を見遣るキラ。微かに恥ずかしそうにロックを外すのを見届けてから、ムウは再度クルーゼの気配がする方へ視線を向ける。

 

「フフッ─────ユウがこの場に居ないのが残念だが、それも良い。ここで死んでいった者達もさぞ喜んでいるだろうな。夢と望みの一切を託して産んだ子供が、時を経て再び帰って来たのだから─────」

 

「子供…?」

 

 ムウ、キラ、クルーゼ、この場に居る三人の中で子供に当て嵌まるというならば、キラだけだ。

 キラもその事を察し、クルーゼの言葉に戸惑いを示す。

 

 先程から、クルーゼが何を言っているかは分かり兼ねる。

 ここがどこなのか、それをユウが知っていて、自分にそれを報せていないから何だというのか。

 

 そして何より、クルーゼの行動が気に掛かる。反撃にはこちらを射殺そうという苛烈さはなく、まるで自分とキラを奥へ、奥へと誘うかの様に。

 

 クルーゼを追っていく内に、ムウ達は奇妙な部屋に足を踏み入れた。

 部屋の床は何か青い液体を湛えた、恐らくは冷却装になっていて、直径百五十センチ程の竈の様な装置がずらりと並んで浸かっている。

 装置の上にはそれぞれモニターが着けられ、どうやら中の状態を随時モニタリングするものらしい。

 

 その装置は施設が閉鎖された今でも生きているらしく、モニター上ではムウ達には理解できない文字や数値が流れ、そして何か─────胎児の様な映像が映し出されている。

 

「懐かしいかね?キラ君」

 

 前方からクルーゼの声がし、ムウは反射的に装置の方へと気を逸らしたキラの頭をぐっと押さえつける。

 

 通路に伏せた二人の頭上を銃弾が通り抜けていく。ムウが素早く撃ち返す。

 

「君はここを知っている筈だ」

 

 キラがここを知っている─────?そんな筈はない。キラがL4に来るなど初めての筈だ。

 自分だってこんな場所とは何ら関係はない。例え奴の言う通り、ユウがこの場所が何なのかを知っていたとして、それは飽くまでも知識であり、縁も所縁もありはしない。

 

 だというのに、ムウの胸中を妙な胸騒ぎが包み込む。

 

 奥のドアは半分開いていた。ムウはその隙間に身を寄せて中を窺う。

 

「チッ…!」

 

 奥の暗闇から銃弾が放たれる。首を竦めてやり過ごしてから銃を撃ち返し、銃撃が止んだと同時にドアの隙間から身を躍らせた。

 

 ムウは銃を撃ちながら部屋を突っ切り、右手に置かれたソファの向こう側へ飛び込む。

 ソファの陰に身を潜ませ、不意にそこから身を乗り出すとクルーゼが居ると思しき部屋の反対側へと銃口を向ける。

 

 だがその前に、クルーゼが撃ち放った凶弾がムウの右肩を掠めた。

 

「ぐあっ…!」

 

「ムウさん!」

 

 部屋の外から中の様子を窺っていたキラが、夢中で部屋に飛び込んでくる。

 

 呻き声を上げ、右肩を押さえて蹲るムウの傍まで駆け寄ったキラが怪我の具合を見ようとする。

 

「殺しはしないさ」

 

 その時、含み笑う声が奥の暗がりから聞こえる。

 

 顔を恐怖の色に染めながらも、キラはムウを庇う様に銃を構え、そちらに向き直る。

 

「キラ…!」

 

「折角ここまでおいで願ったんだ。…全てを知って貰うまでは、死ぬ事など許しはしない」

 

 ぎこちなく銃を構えたキラの横に、不意に何かが床を滑って来る。

 硬いものがこすれ合って立てる音が妙に高く室内に響き、キラは微かに体を震わせながらそちらに目を向けた。

 

 クルーゼが投げて寄越したと思われるそれは、写真立て。そこに収まっているのは、二人の赤ん坊を抱いた若い女性の写真。

 

 ─────誰だ、この女性(ひと)は…?

 

「拾いたまえ、キラ君。君が知るべき真実の一つだ」

 

「っ…」

 

 油断なく銃口を向けながら、キラがソファの横に転がった写真立てを拾う。

 美しいその女性が浮かべる微笑みは慈愛に満ち、写真に写る彼女が産んだと思われる二人の赤ん坊へと向けられていた。

 

 不意にキラが写真立てを引っ繰り返す。

 

 Kira&Cagalli─────そこにはそう書かれていた。

 

「え─────」

 

 キラが呆然と声を漏らした直後、再度床を硬いものが滑って来る。

 分厚いファイルと、そこから何枚かの写真が飛び出して床に散らばった。その写真の一枚を見て、ムウは背筋を凍らせながら息を呑んだ。

 

「親父…!?」

 

 かつてのムウの幼い記憶、まだユウも産まれていない頃─────この写真はかつてのフラガ邸にも飾られていた。

 幼いムウを肩車する父親─────アル・ダ・フラガの写真。

 

「君も知りたいだろう?」

 

 ムウ達に銃を突きつけながら、ラウ・ル・クルーゼが闇から姿を現す。

 キラは慌てて銃を構え直すが、クルーゼは意に介さずねっとりとした口調で続けた。

 

「人の飽くなき欲望の果て─────進歩の名の下に、狂気の夢を追った愚か者達の話を…」

 

 仮面の下の口元が、笑みを浮かべたのが見えた。

 

「君もまた、その娘なのだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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