フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE10 ユウ・ラ・フラガ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂から連れ出され、そのまま格納庫へと連行された俺は現在、スピリットの前に立たされていた。

 

 見上げれば、すでにコックピットの中には技術者が入り込んでいた。分かってはいたが、入港してからすぐにOSのロックを外そうと作業を始めていたらしい。

 

「OSを外すのはスピリットでよろしいですね?」

 

「あぁ。…だが、それ以外にも君ならば、色々と出来るんじゃないのかな?」

 

「…色々、とは?」

 

 俺の問い掛けにガルシアが頷いたのを見てから、スピリットのコックピットへと向かおうとした直後、ガルシアの口から更なる言葉が続いた。

 

 その言葉の意味を俺は理解しながら、惚けたふりをして問い返す。

 

「そうだな。例えば、こいつの構造の解析。他にも同じものの開発、改造─────或いは、こいつの性能を凌駕したモビルスーツの開発、とか」

 

 ─────こいつ。

 

「…そうですね。ここにちゃんとした設備と人員が揃っていれば、それも可能だったかもしれません」

 

 俺自身、挑発の意も込めた返答だった。

 ガルシアの眉が僅かに吊り上がり、周囲の技術者からの目線も鋭くなる。

 

 そんなものは気にせず、俺はコックピットに乗り込み、先に居た技術者を追い出してからOSのロックの解除を始める。

 

 ─────さて、と…。そんじゃま、のんびりと、時間を掛けつつ作業を進めますかね。

 

 もしかしたらその前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()しれないけど、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピリットの性能を凌駕したモビルスーツの開発、か。

 確かガルシアって、階級は中将だったよな。それなら話くらいは知っててもおかしくない、のか?

 

 いやそれにしたって、俺は絶対に口外しない、外部に漏らさないようにという契約で()()の開発者を名乗り出た筈なんだけどな…。

 

 もしかして、ラミアス大尉やバジルール少尉のあの時の反応も、それが原因?

 そうだとしたら一言くらい文句言っても罰は当たらないよな。…落ち着いたら緊急として通信を入れてやろう。

 

 大体、あれを使えば一先ずNジャマー下にあっても通信状況は一気に改善されるってのに、それをそっちのけにして過激派は()()()()()()の方の開発に躍起になってるらしいし…。

 あれは飽くまでNジャマーの副作用を解決するものであって、効果そのものに対して干渉する物ではないって()()から説明を受けてる筈なんだけどなー。バカなのかな?

 

 こんな事になるんなら、やっぱ開発するんじゃなかったなー…。

 今更だけど、後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウが士官達に連れて行かれてから、まだ食堂内ではざわつきが収まっていなかった。

 

「ミリィ、腕は大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう、トール」

 

「いや。…お礼は、あいつに言った方が良いよな。俺も、ミリィも」

 

 話題は当然、ユウの事についてだ。

 キラは勿論、同じくユウに助けられたミリアリア。フレイにトールも、この食堂に居る、ユウを知っている者達は誰もがユウを心配していた。

 

「…あの」

 

 そんな中、遠慮がちに小さく声を上げる者が居た。

 

 その声を聞いた全員が振り向くと、そこにはやや不安げにカズイが、ノイマンの方へと目を向けながら手を上げていた。

 

「あの人…。ユウ・ラ・フラガって、何者なんですか?ここでもそうですけど、艦長達に自己紹介をした時も、あの人の名前を聞いて皆、驚いてたみたいだし…」

 

 カズイとて、友人を助けた挙句連行されていったユウの事を心配する気持ちは持っていた。

 されど、その気持ちを押し退けてしまう程に、ユウ・ラ・フラガという男の正体について気にもなっていた。

 

 名乗るだけで軍人達を驚かせる。更には、基地の司令官であるガルシアですら驚愕させる程の有名人。

 だというのに、自分達はその名を聞いた事もないのだ。

 ユウが何者なのか、カズイが気になってしまうのは至極当然の事かもしれない。

 

 そして、ユウが一体何者なのか気になるのはキラも同じだった。

 もしカズイがここで尋ねなければ、キラ自身がノイマン、或いはマードック辺りにでも尋ねていただろう。

 

「…ユウ・ラ・フラガ。地球連合の一部の高官達からは、神童って祭り上げられてるよ」

 

 カズイの質問から少し間を置いてから、溜め息混じりでノイマンがそう答える。

 

「イギリスのケンブリッジにある大学、知っているだろ?去年、あの子はそこに飛び級で合格したんだよ。それも首席で」

 

「と、飛び級!?」

 

「飛び級の上に首席って…。あそこの大学って確か、コーディネーターも多く通ってるんですよね?」

 

「あぁ。大西洋連邦の所属国だけど、首都から遠く離れてるからか、あの辺はコーディネーターも多く住んでるからな」

 

 地球連合の中でも、大西洋連邦はコーディネーター排斥派が高官の中で多くを占めている。

 だが、その大西洋連邦の中でもイギリスという国は、首都のワシントンから遠く離れ、更には中立国のスカンジナビア王国が近接しているからか、その風潮は他の国と比べても薄い。

 

 だからだろう。イギリスには大西洋連邦の他の国と比べて圧倒的に多くのコーディネーターが暮らしている。

 そして、先程ノイマンが言った大学にも多くのコーディネーターが通っていた。

 

「まあ、一年と経たずに退学したみたいだけど」

 

「「「はぁ!?」」」

 

「ただ、その一年に満たない在学期間中に、あの子はとんでもない事をした。…いや、これは噂でしかないんだが」

 

 ノイマンが頬を掻きながら、どこかハッキリとはしない口調で続ける。

 

「先月、話題になったろ。Nジャマーの影響を受けず、長距離でも繋がる通信機が完成したって」

 

「あー、ありましたね。あれから全然続報が上がらなかったから忘れてたけど」

 

「そういえば、通信機の発表をしたのって、確かその大学でしたよね?…あの、すいません。まさか」

 

 ノイマンの話にトールが初めに反応し、続けてサイが補足をした。

 しかしその後、サイの目がゆっくりと見開かれ、サイはノイマンを見ながら震えた声で問い掛けた。

 

「あぁ。その通信機を発明したのが、ユウ・ラ・フラガじゃないかって噂が流れてるんだよ」

 

「い、いやいやいや。そんな馬鹿な。だって彼、僕達よりも年下ですよ?…いや、飛び級で、それもコーディネーターを差し置いて首席で合格するような人に、年齢も何も関係ないかもしれませんけど…」

 

 引き攣った笑みを浮かべるサイ。

 表情は違えど、サイの隣に居たフレイは勿論、トール、ミリアリア、カズイも皆、ノイマンの話が信じられないといった表情を浮かべていた。

 

 そしてそれは、黙って話を聞いていたキラも同じだった。

 キラも工学を専門としたカレッジに通っていたから分かる。ノイマンの話がどれだけ眉唾物か─────そして、仮にその話が本当だった場合、それが何を意味するものなのかも。

 

 もし本当だった場合、地球に暮らす人々にとって、ユウは英雄に等しい。

 

 Nジャマー─────その影響範囲にある全ての核分裂を抑制し、核兵器は勿論、原子力発電なども使用不可となる。また、副作用として電波の伝達も阻害され、それを利用した長距離通信が使用不可能となった。

 

 オペレーションウロボロス。C.E.70 4月1日に血のバレンタインの報復として地上にNジャマーが散布された。

 その結果、地上に深刻なエネルギー危機が起こり、窮乏、多くの餓死者も出た。これによって出た死者は億単位、なおもその影響による死者は増え続けている。

 

 その中で、Nジャマーの影響を受けない機械が完成した。それは、Nジャマーによるエネルギー問題を解決する為の大きな一歩となる。

 

「まあ、飽くまでも噂だよ噂。開発者も大学の教授だって正式な発表があったし」

 

「…そうですよねぇ」

 

 今までの話を噂と笑い飛ばすノイマンを見て、サイ達は顔を見合わせながら抜けた笑顔を浮かべる。

 

 そんな中、唯一キラだけが、引き締めた表情のまま変わらなかった。

 

「(正式な発表…。だけど、もし…)」

 

 キラの胸中を過る一つの可能性。

 もしその正式な発表とやらが、嘘だったなら。

 疑い出したらキリがない事は分かっている。だがもし、その発明をした人物が別に居て、それがユウだったとしたら。

 

「(…だからって、何かが変わる訳じゃないけど)」

 

 ユウが何者であろうと、キラにとっては関係ない。キラからユウへの付き合い方が変わる訳でもないし、印象が変わる訳でもない。

 

 ただ、どうしても知りたいという欲求が滲み出るのを抑える事が出来なかった。

 

 ユウ・ラ・フラガを知りたい─────他人をそんな風に思う事は初めてで、自分の中の感情に戸惑いを覚えながら、今頃格納庫で兵士達に囲まれながら作業をしているであろうユウに、キラは思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ─────!」

 

 冷たく、嫌な感覚を覚え、ここへ何かが近付いてくるのを察する。

 

 …やっと来たか、もう少しでOSのロック解除が終わる所だったぞ。

 もしかしたら、何らかの影響でアルテミスへの襲撃を諦めてしまったんじゃないかと心配にすらなったわ。

 その心配が杞憂に終わり、とりあえず一息吐く。

 

 流石にね、俺もあんまり無暗に他人を脅すとか、そういう事はしたくはないんですよ。

 ガルシア君にストレスを掛ける事で、育毛の邪魔になるのは俺の本意じゃないんでね。

 

 …ガルシアが育毛をしてるかは知らないけど。

 

「な、なんだっ!?」

 

 そんな下らない事を考えていると、どこからともなく響き渡る爆発音と同時に施設が大きく震動する。

 

 スピリットの足下で慌てふためくガルシア達を尻目に、コックピット内に居た技術者を外へと蹴りだし、コックピットハッチを閉める。

 

「き、貴様っ!?」

 

 追い出された技術者が何やら喚いているが知った事ではない。

 スピリットのPS装甲を展開し、ゆっくりと機体の足を踏み出させる。

 

 アークエンジェルに侵入したユーラシアの兵士達は外へ追い出せただろうか?

 兄さん達は上手く脱出出来ているだろうか?

 

 懸念は残っているが、ここで俺が出なければブリッツに好き放題やられてしまう。

 

「踏みつぶされたくなければそこをどけ!」

 

 未だにその場に留まっているガルシア達へ脅しをかけると、すぐにその場から逃げ出していく。

 

 それを見てから、スラスターを吹かせて外へと飛び出していく。

 

 ブリッツはすでに基地内部へと侵攻し、そこかしこへ攻撃を仕掛けていた。

 

 周囲は火の海となり、にも関わらず未だアルテミスからの迎撃部隊は出撃していない。

 

「っ、居た!」

 

 アークエンジェルを探しているのだろう、攻撃を続けながら飛行するブリッツを発見。

 

 ブリッツ側も俺の接近に気付き、機体がこちらを向く。

 

 目的はアークエンジェルの発進までの時間を稼ぐ事。

 

 自分がすべき事を頭の中で整理してから、相手に先制される前にこちら側から武器を抜く。

 ビームライフルの銃口をブリッツへと向け、三射放つ。

 

 ブリッツが回避行動をとっているその内に、右手のライフルからビームサーベルへと持ち替え、スラスターを吹かせてブリッツへと接近する。

 

 ブリッツは後退して距離を保ちながら、こちらへ向けて有線式のロケットアンカー、グレイプニールを射出。

 アンカーを躱し、軌道が再度こちらを向く前にアンカーとブリッツとの接続をサーベルで斬り払う。

 

 スピードはそのままに、ブリッツへと眼前へ迫った俺は一気にサーベルを振り下ろす。

 が、辛うじてブリッツの防御が間に合う。

 

 サーベルの軌道上にトリケロスが割り込み、斬撃と衝突。

 

 しかし、優勢なのはこちらで変わらない。

 

 トリケロス─────ブリッツに搭載された攻防一体型の装備。

 そこにはビームサーベル、ビームライフル、三連装の貫徹砲を備えながら、盾にもなるという複合武装だ。

 ミラージュコロイドという大きな特徴があるブリッツの、もう一つの特徴でもある。

 

 こうして考えると便利であるように見えるが、同時に大きな弱点でもある。

 何しろ、こうして相手の攻撃を防いでいる間、ブリッツはトリケロスに搭載された武装を一切使えない。

 

 もう一つの武装であるロケットアンカーが左腕に備わっているが、それはさっき俺が斬り払った。

 つまり今、ブリッツは武装の一切を使えない。

 

 だがこっちは─────左手、もう一本のビームサーベルがある。

 

 後退の暇は与えない。左腰のサーベルを抜き、ブリッツへと振り下ろす─────前に、冷たい衝動に駆られた俺はその場から後退。

 ブリッツを蹴り飛ばしてから咄嗟に機体を後方へ向ける。

 

「デュエルにバスター!?」

 

 それは、援軍のあまりに早すぎる到着だった。

 

 デュエルはビームライフルを、バスターはライフルとランチャーを連結させ、インパルス砲をこちらに向けて撃ってくる。

 

 二機との距離はかなり離れている為、それらの砲撃は余裕を持って回避出来た。

 

 だが、状況は悪い。

 障害物だらけとなったこの環境で、スピリットで三機を相手にするのはかなり難しい。

 

 バスターはその場で停止、後方からの砲撃を再度スピリットへ浴びせてくる。

 その間にデュエルが、体勢を整えたブリッツがこちらを挟み撃ちにしようと前後から接近。

 

 とにかく、その場から逃れるべく、スラスターを吹かせようとしたその時だった。

 

「ユウ!」

 

 通信を通して響く少女の声。

 直後、三機それぞれを狙った光条が視界を横切る。

 

 それらは全て回避されてしまったが、こちらへの注意が逸れた。

 

「キラ!?」

 

 先程の声の主であり、こちらを助けてくれた恩人はキラだった。

 

 この襲撃を受け、キラもストライクで出撃していたようだ。

 

「ユウ、アークエンジェルが発進する!こっちに来て!」

 

「っ!」

 

 かなり危ない所だったが、目的は達成できたらしい。

 ストライクが先導し、その後に俺も続く。

 

 背後から追い掛けてくる三機だったが、基地内の爆発に遮られ動きが止まってしまう。

 

 最後の最後でアルテミスに助けられた事に内心感謝をしながら、ストライクと一緒に機体を着艦させる。

 

 スピリットとストライクが戻って来たのを確認してから、アークエンジェルがブースターを吹かせて発進する。

 あっという間にアルテミスから艦は脱出し、崩壊を続ける衛星を置き去りにしていく。

 

「…結局、補給も何も受けられなかったな」

 

 結局結末は原作通りに。アークエンジェルは補給を受ける事が出来ず、その場から逃げるしかなかった。

 

「(こうなったら、行く場所は一つ、か)」

 

 アークエンジェルに残された補給の手段は一つとなった。

 それは原作通りの流れであり、俺にも当然予想がつく。

 

 つまり─────キラとあの少女が遂に、運命の邂逅を果たすのだ。

 

 いや、もしかしたら少女じゃないかもしれない。というよりむしろそうであれ!

 キラが性転換してるんだから、()()()だって性転換してても不思議じゃないだろ!

 

 心の中でそう願いながら、アルテミスから離れていくアークエンジェルへの機体の収容作業を始める。

 

 ─────ん、待てよ?もしラクスが性転換してたとしたら、劇場版ってどうn…………

 

 俺は考えてはいけない気がしたから、それ以上考えるのを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




正直SEEDにわかなんで設定におかしい所があるかもしれません。
その時は教えてください。もし、致命的なずれがあればこの作品消して書き直します。

それと、ネタバレというか、予め言っておきます。
ラクスはTSしませんごめんなさい。
最後までどうするか悩みましたが、書ける自信がないので止めました。
いや、面白そうですけどね。ラクスが男になったら、面白くなる気しかしない。というか先の展開を思い浮かべながら一人で笑いました。
劇場版が┌(^o^┐)┐展開になるのか、それともオルフェがTSするのか。
ただ、繰り返しになりますが技量的に書ける自信がないので断念しました。
期待をしてしまった方へ謝罪します。

申し訳ありませんでした┌(^o^┐)┐

あ、間違えた。
申し訳ありませんでしたm(_ _)m
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