フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE124 散りゆく命

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「照準ミラーブロック、換装まだか!?」

 

 ヤキン・ドゥーエの指令室では、なおも激戦の続く戦闘宙域の様子が刻々と映し出されていた。

 指令室の上層でそれらの映像を眺めていたパトリックが、苛々した様子で怒鳴る。

 

「光軸偏差の修正値を転送。三号ユニットは最終撃発座標へ」

 

 パトリックの眼下にいるオペレーター達─────戦況を見て、整理し、報告を上げる者達と上からの命令に従いジェネシスの起動シークエンスを進める者達。

 

 ジェネシスのミラーブロック換装は進む。パトリックの傍らに立つレイ・ユウキはそれを見つめながら不安を募らせていた。

 ずっとまさか、と自身の不安を打ち消し続けていた。今もその気持ちは変わらないし、変えたくはない。だが─────もしや、この男は本気で第三射を、地球へ向けて撃とうとしているのか…?

 

 困惑の中でユウキはモニターの一つを見遣る。そこには地球軍の艦艇に混じって浮かぶエターナルの姿が映し出されていた。先程地球軍の核攻撃部隊がプラントへ核を放とうとした時、それを抑えたのはフリーダム、ハイペリオンを始めとしたクライン陣営のモビルスーツだったという報告を受けていた。

 この戦い以前のプラント侵攻戦の折も、彼らの援護を受けたという者がいた。それなのに今、エターナルは地球軍に混じってこちらを攻めている。

 

 彼らは一体敵なのか?それとも味方なのか?

 

 混乱を深めるユウキの耳に、聞いた事のある凛とした声が飛び込んで来た。

 

『ザフトは直ちに、ジェネシスを停止しなさい!』

 

 その声の主が何者なのか、ユウキを含めてこの場に居る誰もが即座に悟る。

 

「ラクス・クライン─────」

 

『核を撃たれ、その痛みと悲しみを知るわたくし達が、それでも同じ事をしようというのですか!?』

 

 管制室でざわめき広がっていく。ラクスの声が、上の命令にただ従い、敵を滅ぼそうとするだけだった者達の心の中で波紋を起こしていく。

 

『撃てば癒されるのですか!罪なき人々や子供を─────これが正義だと!?』

 

 ()()─────違う、違う違う違う…!先に撃ってきたのは向こうじゃないか!だから我々は撃ち返すしかなかったのだ!撃ち返して─────奴らがしたように、罪のない人達を…殺して来たというのだろうか…?

 

 祖国を守る為に、撃たれる前に撃つべきだと割り切り続けていた。だが()()は─────地球を滅ぼす事は、祖国を守る為に果たして必要な事なのだろうか?

 

『互いに放つ砲火が何を生んでいくのか、まだ分からないのですか!?まだ犠牲が欲しいのですか!?』

 

「…議長」

 

 このまま突き進んでしまえば何が起こるのか、ここに至ってようやく気付く事のできたユウキが、前に座すパトリックに声を掛ける。

 するとパトリックは嘲笑うように鼻を鳴らした。

 

「裏切り者の言葉に等、耳を傾けるな!」

 

「しかし─────」

 

「奴らはこちらを撃ってきているではないか!」

 

 ラクスの訴えを一蹴したパトリックへと更に言い募ろうとしたユウキだったが、振り返った彼の目を前にして言葉を呑むしかなかった。

 

 彼らはこちらを撃ってきている─────それは確かにその通りだ。だがその言葉を発したパトリックの目には憎悪が満ちていて、爛々と輝いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリーダム、ハイペリオン、そしてプロヴィデンス─────三機は凄まじい速度で交錯しながら尚も激闘を繰り広げ続けていた。

 主にハイペリオンが前衛でプロヴィデンスを引き受けながら、片腕を失いながらしかし強烈な火力を誇るフリーダムが後衛で支援をする。

 

 現時点で最も高い性能を誇る一機に数えられるフリーダムとハイペリオン、これらの機体の性能を余す事なく引き出すパイロットであるキラとカナード。そんな彼らが相並び、束になって掛かっても、未だプロヴィデンスを仕留めるには至らず戦いは膠着を続けていた。

 

 数的優位を持っているキラ達が苦戦をしている理由は主に二つある。一つ目はフリーダムが先のイーラとの戦いで部位的欠損を受けている事。そしてもう一つは、プロヴィデンスに搭載されている遠隔武装ドラグーンの存在だ。

 

「キラ!」

 

「分かってる!」

 

 ハイペリオンと斬り結んでいたプロヴィデンスのバックパックから放出される端末、ドラグーンがフリーダムの周囲で踊り飛ぶ。

 降り注ぐビームの雨を必死に回避しながらキラはプロヴィデンスと交錯するハイペリオンを見遣る。

 

 クルーゼはカナードと高度な近接戦を繰り広げながら、その傍らでドラグーンを操ってキラを近付けまいとしている。

 決してカナードの攻勢が甘い訳ではない。むしろプロヴィデンスを激しく攻め立てている─────が、クルーゼのドラグーンの操作精度は全く落ちない。

 

 培われた多くの戦闘経験と、人並外れた空間把握能力、そして把握した情報を処理する能力─────それら全てを兼ね備えたパイロット、それがラウ・ル・クルーゼだった。

 

「このッ!」

 

 ぶつかり合った後に距離を取ったカナードは、フリーダムの動きを阻むように展開されたドラグーンを見て、すぐにフォルファントリーでプロヴィデンスを狙う。

 緻密にドラグーンを操っているクルーゼだが、それでも尚機体本体の操縦精度も落とさない。連射される高出力のビーム砲を巧みに躱しながら、隙を見てビームライフルで反撃をする。

 

「これが…っ」

 

 ドラグーンによる波状攻撃から抜け出したキラだったが、それに感づいたクルーゼが機体左腕のビーム砲をフリーダムへ向けて撃ち放つ。

 それによって動きを僅かに阻害されたフリーダムを、再びドラグーンが取り囲む。

 

「これが─────ラウ・ル・クルーゼ…っ!」

 

 キラとカナードの二人掛でも互角、或いは押し込まれているこの状況。キラもカナードも激しく続く戦闘の中で疲労し、片やキラは愛機に損傷を受けている。それでいても、この二人を同時に相手取りながら互角以上に渡り合うクルーゼの凄まじさを、今になってキラは犇々と感じていた。

 

 ─────こんな人をずっと相手にしていたの、ユウは…!?

 

 ダメだ、とキラは危機感を覚える。この人とユウを会わせる訳にはいかない。何としてもここで仕留めなければいけない。

 

 そう感じた瞬間、キラの中で何かが弾けた。クリアになる視界と思考、冴え渡る集中がキラを後押しする。

 

「なに─────?」

 

 突如動きが変わり、ドラグーンを躱してすり抜けたフリーダムに初めてクルーゼが余裕以外の表情を浮かべる。微かに漏れた声には僅かな戸惑いが、しかしすぐに気を取り直したクルーゼは向かってくるフリーダムと機体を向き直らせる。

 

「貴様の相手は、この俺だろうがァッ!!!」

 

「っ、ちぃ…!」

 

 ドラグーンを動かしても接近してくるまでに間に合わないと判断したクルーゼだったが、その背後からカナードのハイペリオンが襲い掛かる。

 フォルファントリーを三連射、そしてビームナイフを構えて突撃してくるハイペリオン。対してクルーゼはビーム砲を躱した後にシールドを掲げる。

 

 その間にもキラはフリーダムを向かわせていた。彼女の目の前でハイペリオンとプロヴィデンスが、幾度目かの衝突をする。グレーの機体の背中を目掛けて、バラエーナとビームライフルの銃口を掲げて─────

 

「っ─────!」

 

 その前にプロヴィデンスが動いた。ハイペリオンの斬撃を受け止めながら、もう一方の肩に担いだビームライフルを向かってくるフリーダムへ向けて撃ち放ったのだ。

 

 咄嗟の反撃の一射─────対してキラは迷う事なく突貫の一手を取った。スピードを緩めず、機体を傾け回避行動を取るも躱し切れなかった光条がフリーダム右肩のバラエーナを右翼上部ごと抉り取る。

 

 しかしキラは止まらない。操縦桿を押し込む手に力を込めたまま、フリーダムを突き動かす。

 

 愛する人を守る─────例えその為に、自分の手が再び汚れる事になるとしても。絶対に。

 

「貴方は─────貴方だけはっ!」

 

「ふんッ!いくら叫ぼうが、今更!」

 

 ハイペリオンの押し込みに対し、加わる力を上手く受け流しながら弾き飛ばしたクルーゼが今度こそフリーダムと対峙する。

 ビームライフルとビーム砲を突っ込んでくるフリーダムへ連射─────同時に、先程までフリーダムを追わせていたドラグーンは、今度はフリーダムの支援に入ろうとするハイペリオンの牽制に向かわせる。

 

 最小限の動きで、致命的な軌道でない光条は避ける素振りも見せず、キラはバラエーナとビームライフルをプロヴィデンスへ向けて撃ち放つ。

 

 ハイペリオンとの交戦によって動きを止められた事で、両者の距離は詰まっていた。回避は間に合わないと、クルーゼは防御を選択─────シールドを掲げてフリーダムの砲撃を寸での所で受け止める。

 

 ─────カナード…!

 

 砲撃をやり過ごしたクルーゼが、砲火の向く先をフリーダムへと定めたその時。ドラグーンの砲火に晒されながらも何とか避け続けていたハイペリオンが、クルーゼの死角から照準を合わせていた。

 

 一方のキラも、クルーゼへ決戦を挑む覚悟でいた。右手のビームライフルを投げ捨て、左鞘のビームサーベルを抜き、続けて右鞘のサーベルと連結─────アンビデクストラス・ハルバードでプロヴィデンスへ斬り掛かる。

 

 片やクルーゼ。キラとカナードの連携攻撃に晒されようとする中、彼は冷静だった。

 

「甘いな」

 

 背後から自身を狙うカナードと、必死の攻勢を仕掛けようとするキラ。二人の連携を、彼は嘲笑う。

 

 ─────キラ君が先に向かってくるなら位置を入れ替えて射線を阻む。カナードが先に撃って来るなら躱して…。

 

 クルーゼはフリーダムとの迫る距離を推し量りながら、横目で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の位置を確認する。それはキラ、カナード共にプロヴィデンスへ意識が向かう中で気付かれず、射線を確保していた端末─────その銃口の向く先にいるのは、()()()()()

 

 そうどちらが先に仕掛けて来ようとも関係がなかった。すでにクルーゼは、決着への道筋を開いていた。哀れな兄妹は命を落とし、勝者であるクルーゼが生き残る─────未来は定まっていた筈だった。

 

「っ、なに…!?」

 

 忌み嫌いながらもこの感覚に何度助けられたか─────その事実こそが尚の事、神経を逆撫でさせる。だがこの時ほど、クルーゼは()()()()()()()()()()()に感謝を覚えた事はなかった。

 

 まだ少し距離がありながらも、確かにクルーゼの元へ近付いてくる()()()()()に意識を向け過ぎたか。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()がいる事に気付くのが、僅かに遅れてしまった。

 

「あの機体─────!」

 

()()()!?」

 

 クルーゼに続き、キラもまた、この場に現れたもう一機─────リベルタスの存在に気が付いた。

 

 リベルタスはフォティアの砲口をプロヴィデンスへ向ける。クルーゼの背筋が冷たく粟立った。ユウとの戦い以外では久しく味わっていなかった、明確な死の感覚。フリーダム、ハイペリオンへ向けていた集中を引き戻し、全神経を今この瞬間の回避に集中させる。

 

「貫け─────!」

 

 フレイがトリガーを引き、砲撃が撃ち放たれる。真っ直ぐに、プロヴィデンスのコックピットへと極太の火線が突き進む。

 

「う─────ぉぉぉおおおおオオオッ!!!」

 

 雄叫び─────撃たれてなるものかというクルーゼの気迫が機体を突き動かす。

 直後、ギリギリの所で回避が間に合い、フレイが放ったフォティアの砲撃は空を貫くのみに終わる。

 

「ッ─────!」

 

 しかしそこでクルーゼの動きは止まらない。何故なら、彼らの攻撃はこれで終わりではない。

 

 回避に全神経を注いだ事で疎かになってしまう()()()()()()()()。その隙を突いて包囲を潜り抜けたハイペリオンが、二連装のフォルファントリーを噴かした。

 

 リベルタスの砲撃を寸での所で回避し、体勢に余裕がないプロヴィデンス。普通ならばこの攻撃で撃ち抜かれ、戦闘が終わりを迎えていた事だろう。

 

 だが、ここに居るのはザフトの絶対的エース、ラウ・ル・クルーゼである。

 

「なっ─────」

 

「なんだとッ!?」

 

 機体の体勢が不安定だったにも構わず、スラスターを全開で吹かしたクルーゼはその場から退避─────フォルファントリーを回避しながら神懸かり的な姿勢制御を見せつけられたフレイとカナードが、驚きの余りに言葉を失う。

 

 フレイとリベルタスによる第一の矢─────そしてカナードとハイペリオンによる第二の矢、必殺になり得るどちらの一撃も躱してみせたクルーゼは、しかしそれでも尚、一息吐く事を許されない。

 

 まだ()()()()()()()()()()()()()()()が残されている。

 

「これで─────」

 

「─────」

 

 アンビデクストラス・ハルバードで斬り掛かって来るフリーダムは、プロヴィデンスの回避行動を隙としてすでに懐まで潜り込んでいた。

 

 この瞬間、この一撃にキラは己の全てを賭けていた。予期せぬフレイの援護と、カナードの執念の砲撃─────そしてキラの全身全霊の一撃がクルーゼを襲う。

 

「見事だ」

 

「っ…」

 

 クルーゼ自身、認めざるを得なかった。特にフリーダムは片腕を欠損し、万全とは程遠い機体状況で─────決して相容れない筈だった二人の連携と、思わぬ場面での仲間の支援。

 それは己の生を以て力を求め続けたクルーゼとは違い、他者との繋がりを大切にし続けたキラだからこそ起こった奇跡。

 

「…だが、残念だ」

 

 この奇跡によって果てるのなら─────微かにでもそう思えてしまったからこそ、惜しい。原因は果たして何だったのか。

 

 止めを刺す役割を、スラスターの片割れをも失ったフリーダムに任せてしまった事か。クルーゼの感知能力を可能な限り掻い潜り、リベルタスが近距離での不意打ちを試みるべきだったのか。

 

 それは誰にも分からない。一つだけ確かな事は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 プロヴィデンスのシールドがフリーダムの斬撃を受け止めている。キラはビームハルバードの刃が阻まれている光景を目にして、ただただ愕然とするしかなかった。

 

「キラッ!避けろォォォオオオオオッ!!!」

 

「あ─────」

 

 ここに至って初めて、キラとカナードは一基離れた位置に浮いていたドラグーンの存在に気が付いた。フリーダムへと真っ直ぐに向けられた砲口が、キラが動くよりも先に火を噴こうとしていた。

 

 キラとカナードが操縦桿を握る手に力を込める。しかし、それよりもフリーダムが光条に貫かれるのが先なのは火を見るよりも明らかだった。

 

「キラ!」

 

 だがこの場に居るのはキラとカナードだけではない。フレイがプロヴィデンスを含めて最も高い機動力を誇るリベルタスを飛ばして、フリーダムの前に割り込んだ。

 

「フレイ─────」

 

 放たれた一射をシールドで防いだリベルタスは、キラの目の前で健在だった。フレイが無事だったことに安堵しながら、またも彼女に助けられたと、キラはお礼の一言を口にしようとした。

 

「っ、どいて!」

 

 その言葉は次の瞬間、リベルタスによって機体が弾き飛ばされた事で口から出る事が叶わなかった。

 

 突如コックピットに奔る衝撃に、歯を食い縛って耐えるキラ。その次の瞬間、先程フリーダムを狙ったドラグーンとは別のドラグーンが貫いた。

 

「え─────」

 

 リベルタスの胸部を貫いて走った光条の残滓。それによって空いた風穴を、キラは眉一つ動かす事もできずにただ見つめるしかなかった。

 

 貫かれた箇所から爆発が始まり、それが全身へと誘爆していく。

 

「待って…」

 

 ようやくまた会えたのに。これからも一緒に居られると思ったのに。その果てに待っていた残酷な未来を、キラは受け止める事ができない。

 

「フレイ─────ッ!」

 

 キラは絶叫した。爆発の衝撃で飛ばされた機体は、今この間にもフォローに動いていたハイペリオンが受け止めるが、それにも構わず爆発を起こす方向へと飛び出そうと身を捩る。

 

「キラ、ダメだッ!落ち着け!」

 

「フレイ、フレイ、フレイッ!どうして…、そんな、なんでっ!?」

 

 一人の友すら守れないで、何が最高のコーディネイターだ。この身体に備わったのは一体何の為の力だったのだ。

 

 ─────ごめんね。

 

 爆発の寸前、聞こえた声。

 

 何故─────何故、彼女は死ななければならなかった?

 

 ヘリオポリスのキャンパスで、まるで大輪の花のように、艶やかに笑っていたフレイ。あの幸福な少女を、何故そのままにしておけなかったのだろう?

 

 ─────私の所為だ。

 

 その疑問の答えを、すでにキラは持っていた。フレイはキラを守りたいが為に戦う事を選んだ。キラ・ヤマトという存在が居なければ、あの心優しい少女がこんな所にまで来る事はなかったのだ。

 

 ─────私が居なければ、フレイが死ぬ事はなかった…!

 

 悔しさと自責の念に苛まれるキラ。だが、忘れてはならない。

 

 ラウ・ル・クルーゼはまだ、そこに居る。

 

「さらばだ、キラ君。カナード」

 

「くっ…!」

 

 バックパックに一度収めたドラグーンを再び放出しながら、プロヴィデンスがビームライフルの照準を向ける。

 

 それを見たカナードがボロボロのフリーダムの前に躍り出て、守りの体勢をとる。

 

「カナード、ダメ…。もう私の事はいいから─────逃げて」

 

「ふざけるな!そんな事できる訳ないだろうが!」

 

 これ以上自分の為に命が果てる様を見たくないが故のキラの懇願を、カナードが一蹴する。

 

 そんな二人のやり取りを聞いたクルーゼが、小さく嘲笑を浮かべながら口を開いた。

 

「実に美しい兄妹愛だな」

 

 表向きは二人を称える言葉を吐きながら、銃口を向けるその手には何の躊躇いもなく、引き金を引く命令が下されるのを今か今かと待っている。

 

 だが、結果的に言えば、この引き金が引かれる事はなかった。

 

「…随分遅い登場だったな」

 

 キラ達との戦闘の最中でも、クルーゼは待ち人の位置を常に感じ取っていた。時折何かに邪魔をされるように動きを止めながらも、しかしこちらへ誘い込まれるように近付いてくる強い気配を─────彼は待ち侘びていた。

 

「クルーゼェェェェェエエエエエエッ!!!」

 

「待っていたぞ、ユウ・ラ・フラガッ!!!」

 

 真っ直ぐに軌跡を描きながら舞い降りる()()()─────ユウ。

 

 それをクルーゼは、哄笑を浮かべながら迎え撃つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




正直最後まで悩みましたが、当初のプロット通りに進める事にしました。ごめんねフレイ…。
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