フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE127 妄執は晴れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 睨み合う親子と、衣擦れさえ絶えた沈黙の中で固唾を呑んで状況を見守る者達。

 

 凍り付いたような時間がどれほど流れただろうか。先に口を開き、重々しく声を発したのはパトリックだった。

 

「よくも私の前にのこのこと顔を出せたものだな。─────アスラン」

 

 眉間に寄った皴は、この上ない苛立ちによって形取られている。あと一歩で全てが手に入る所まで来て、その一歩が中々踏み出せない現状と、何より本人は決して認めはしないだろうが、誰を於いても最も信じる事の出来た息子の裏切り─────強い信頼は反転し、より強い憎悪となってパトリックの胸中を占めていた。

 

 何故裏切った?母を喪ったあの哀しみを忘れたというのか?あの苦しみを、あの虚無感を、あの怒りを─────パトリックは今になっても忘れていない。核の炎に包まれたユニウスセブンは、彼の眼に刻まれ、今になっても鮮明に映像として呼び起こされる。

 

 あの炎に灼かれてレノアは死んだ。さぞ熱かっただろう。さぞ苦しかっただろう。それとも痛みも感じない程に一瞬の出来事だったか─────だとしても、さぞ無念だっただろう。約一年半という年月を経ても尚、時折パトリックは当時の事を思い出し、愛する妻に想いを馳せる事がある。その度に彼の心は黒く燃え上がり、何度も何度も憎悪を強く膨れ上がらせていた。

 

 アスランも同じだと信じていた。レノアを、母を奪ったナチュラル共を許す事は出来ないと、奴らを一掃する事こそ母への手向けになるのだと、その思いを共有しているとばかり考えていた。

 ─────それは間違いだった。長い戦いの日々が、コーディネイターの栄光の刻がすぐ手の届く所にあるというのに、唯一信じられる筈だった息子は裏切ったのだ。

 

「父上。撃つつもりなのですか、ジェネシスを」

 

 パトリックの憤怒と憎悪に満ちた瞳を怯む事なく見返しながら、アスランは淡々と問いを投げ掛ける。パトリックは間髪置かずに答えた。

 

「当然だ!地球を撃てば我らの勝利なのだからな!」

 

「いいえ。この戦争はすでに我らの勝利です。父上が地球軍へ停戦を持ち掛ければ、無駄な犠牲を払わずに戦争は終わります」

 

 アスランの口からパトリックが考えもしなかった言葉が飛び出し、彼の思考は一瞬空白に染まった。

 

 停戦─────?何度も何度も歩み寄ろうとして、奴らの理不尽な要求にも出来る限り呑み続けて尚歩み寄ろうとして、その結果があのユニウスセブンの惨劇─────。

 

「ヤツらが─────まだそこにいるのに…それを撃つなと言うのか?」

 

「父上…?」

 

 パトリック自身、自覚がないままに震わせた声を聞いたアスランが静かに呼び掛けて来る。その呼び掛けに応えないまま、パトリックはアスランが放った言葉を心の中で反芻していた。

 

 停戦…停戦…?停戦だと?それで我らの勝利だと?─────笑わせるな。我らが勝利を掲げる瞬間は、ただ一つ!

 

「撃たねばならんのだ!撃たれる前に!敵は滅ぼさねばならぬ─────何故それが判らん!?」

 

 そう、撃たなければならない。滅ぼさなければならない。それこそが奴らに相応しい末路なのだと、何故分からない。

 至極真っ当な事を言っている筈の自分を、信じられない何かに向ける目で見て来る部下達も─────未だに哀れむ様な目つきで見つめて来る息子も!皆、皆、皆─────愚かしさ極まりない!

 

「我らの世界を奪った報いを、奴らに味わわせてやるのだ!このジェネシスで、レノアが感じた痛みを思い知らせてやる!」

 

「─────父上…っ」

 

 許しておけない。生かしておけない。貴様らに生き延びる価値など一切合切存在しない。全てを否定し尽くし、一掃する─────それこそ、次世代の子供達が幸福に生きられる世界への第一歩なのだ。

 

 愛する妻を奪われた上、残った息子までも自分の元から奪っていったナチュラルへの憎悪は、とっくの昔に一線を超えていた筈が更なる境地へと達する。だから、だろうか。

 真っ直ぐに父の目を見返していた筈のアスランの目がたった今、初めて微かに揺れたのにすら、憎しみに目を曇らせ切っていたパトリックには気付く事すら出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまで─────父はここまで堕ちてしまっていたのか。

 

 爛々と醜悪な炎に瞳を焦がした父の姿を見て、アスランは内心愕然としショックを隠せずにいた。

 

 過去に囚われたまま不明瞭な言葉を喚く父の目にはもう、自分の姿など見えていない。パトリックの中ではもう、他の人間は敵か味方かという枠組みでしか捉えられなくなっていた。己の世界を害する者は敵、そうでなければ味方─────例え後者であっても自分の意に反する行為の片鱗が見え隠れしただけで、簡単に評価が一変してしまう程の薄い価値観。

 

 息子であるアスランですらも─────いや、もうとっくにパトリックはアスランを息子として見ていなかったのだ。母が死んだあの瞬間から、パトリックにとってのアスランはナチュラルに憎悪を燃やし、ナチュラルを一掃する為の同士─────或いは道具か。その程度にしか思われていなかった。

 

「っ─────、…父上」

 

 次の瞬間、パトリックが手元に取り出した物を見てアスランは今度こそ明確に、悲し気に表情を歪ませた。

 

 司令室のライトに反射し、薄く黒光りした銃口を向けたパトリックは醜悪な怒りに染まった顔でアスランへと問い掛ける。

 

「戻ってくる気はないのだな、アスラン?今ならば特別に一時の裏切りは不問にしてやるぞ」

 

「…」

 

 背後で護衛に庇われながらも心配そうに見つめて来るカガリの視線を感じながら、アスランはパトリックの問い掛けに答えない。ただパトリックの顔を見上げたまま─────その瞳の奥に憐みの色を浮かべながら、無言で訴える。

 

 もう、貴方の思想に賛同する事は決してないと─────無言の決裂を叩きつけた。

 

「そうか。ならば、もういい…貴様は用済みだ、アスラン」

 

 淡々と告げたパトリックは引き金に掛けた指に力を込める。咄嗟にアスランは膝を曲げて身を沈め、拳銃をその手に触れさせる。

 

 本当ならば話し合いで済ませる事がベストだったが、相手はとうに話の通じる状態ではなかった。

 

 パトリックがどれほど武に優れているかは知らないが、政治に携わるようになってから実戦から遠ざかって久しい。アスランならば、彼を殺さずとも無力化させるのは容易だった。

 

 だが。

 

「お待ちください、議長っ!」

 

 緊張感で膨れ上がりそうな空気を切り裂いて、親子が銃を撃ち合うよりも先に割り込む者がいた。

 

「アスランの言う通りです…。これ以上の犠牲はもう必要ない!地球を撃つ必要もない!月基地を撃たれた地球軍にはもう、我らに抵抗する力はありません!だからもう、ジェネシスを停止させてください!」

 

「ユウキ隊長…」

 

 戦闘中、部隊へ指示を出すパトリックの傍らに立ち続けたユウキだった。ユウキは銃を握るパトリックの手を掴み、アスランを撃たせまいと力を込めて握り締める。

 

「手を離せ」

 

「いいえ、出来ません。議長、撃てば地球上の生物の半数が死滅するのですよ?それを分かった上でジェネシスを撃とうとしているのですか!?」

 

 ユウキと睨み合うパトリックが、彼に問われた瞬間カッと目を見開き牙を食い縛る。直後、ユウキに掴まれた腕を大きく振り回してユウキを振り払うと、無重力の中で体勢を整えようと苦心する側近へと銃口を向けた。

 直後、銃声が鳴り響く。しかしそれはユウキへ向けられたパトリックの銃からではなく、ユウキの後方─────アスランが取り出した銃からの音であった。アスランが放った銃弾は正確にパトリックが握っていた拳銃に命中し、彼の手の中からソレを弾き飛ばした。銃弾による負傷はなくとも、拳銃を弾き飛ばされた瞬間の衝撃によって生じた痛みに思わずパトリックの顔が歪む。

 

「アスラン─────!貴様ら、何をしている!?あの裏切り者共を、とっととひっ捕らえろ!」

 

 忌々しくアスランを睨みつけた後、司令室の中にいる部下達へ口早に命令を放つ。しかしパトリックの命令に対してすぐに動ける者は誰もいなかった。

 

 たった今躊躇いもなく自軍の指揮官と、その次に何億もの人間と、そしてそれ以上の数の生命を撃とうとしている男と、裏切り者の立場でありながらも人望厚い自軍の指揮官を救った少年。

 何が正しく、何が間違っているのか─────自分達は何をすべきで、何をすべきでないのか。誰もが分からなくなり、迷っている。

 

「父上…、もう止めましょう。これ以上の戦いは、もう─────母だって、喜ぶ筈がない」

 

「なんだと…!貴様、どの口でレノアを語ろうと─────」

 

「忘れてしまいましたか、父上。母は最期まで、ナチュラルとの共存を心の底から信じていた事を」

 

 母、レノアは心優しく、いつかナチュラルと共存する事が出来ると信じ切っていた。レノアが死ぬ前からナチュラルとの共存に懐疑的だったパトリックも、彼女には勝てなかった。

 それ程までに強くナチュラルとの共存を信じていたレノアが今のパトリックを見たらどう思うか─────ここに来るまでに出会ったザフト兵に語った通り、少なくとも喜ぶ事はないだろうとアスランは思う。

 

 それとも父は違うのか。父は、レノアが感じた痛みを思い知らせると言った。─────それをあの優しかった母が、望んでいると本当に思っているのか?

 

「思い出してください、父上。あの優しかった母を…」

 

「─────」

 

 もう一度静かに訴え掛けるアスラン。パトリックは先程まで銃を握っていた手をもう一方の手で押さえたまま俯いた。

 

 管制から入る通信のみが妙に浮き上がって響きながら、凍り付いた様に流れるこの時間は先程司令室に侵入したアスランとパトリックが、最初に睨み合ったあの瞬間の再現の様だった。

 あの時と違うのは、今の両者は睨み合っているのではなく、俯くパトリックをアスランが見つめるという形。

 

 パトリックが微かに震えているのは、どういう心境の上なのだろうか。アスランの言う通りに、かつての母の笑顔を思い出しているのだろうか。母の優しさを思い返しているのだろうか。

 

 アスランとて、パトリックの気持ちが全く理解できない訳ではない。あの心優しい母を奪った核と、核を放ったナチュラル─────許しては置けないと、憎悪に身を焦がしそうになった事もあった。だが今、アスランはその憎しみを乗り越えてここに立っている。ただやられた事をやり返すだけでは駄目なのだと、今のアスランは気付く事が出来た。

 

 だから、父も─────自分の様に。

 

「…レノア、私は─────間違っているのか?」

 

「父上…」

 

 俯いた事で陰に包まれた父の顔は見えない。だが、アスランの耳に微かに震えたパトリックの声が届いた。

 

「お前は、望んでいないのか…?お前を苦しめたナチュラルが…憎くはないというのか…?レノア─────」

 

 パトリックは自問自答していた。頭の中で愛する妻を思い浮かべながら、脳裏に過る愛する笑顔を思い出しながら、湧き上がる黒い炎と必死に戦っているのだ。

 

 アスランはもう信じる事しか出来ない。父ならば乗り越えてくれると─────これ以上、憎悪に呑まれる事はないと。信じて、見守る事しか出来ないのだ。

 

「レノア─────あぁ、そうだな…。お前は…、お前だけは違う…」

 

「ちち、うえ…?」

 

 その時、パトリックの微妙に調子の外れた静かな口調にアスランは違和感を覚えた。調子の外れた口調でありながら、発せられる声にはしっかりと力が込められている。そして何より─────父の低い声からは、未だ強い憎悪が残っていた。

 

「お前だけは私を裏切らない。私は決して間違っていない。間違っているのはこの愚か者共だ。…あぁ、分かっているとも。お前の無念は、私一人でも晴らしてみせる─────」

 

「父上…!」

 

 ゆっくりと持ち上がるパトリックの顔。そこに浮かび上がった表情を見て、アスランは父は乗り越えられなかったのだと悟った。あの母の優しさですら、パトリックを救いあげる事が出来なかったのだと─────その一瞬のアスランの愕然が、パトリックの行動を許してしまった。

 

 パトリックが突然、発射システムに繋がるコンソールに突進する。コンソールの前にいた兵士を突きのけて、発射シークエンスを開始しようとする。

 

「ぎ、議長!?射線上にはまだ我が軍の部隊が!」

 

 パトリックの意図に気付いた勇気が焦って背後から制止の声を掛けるが、その言葉に心を動かされた様子もなくパトリックは言い放つ。

 

「勝つ為に戦っているのだ!みな、覚悟があろう!?」

 

 ぎらぎらと光る眼で睨まれたユウキは、慄然として立ち尽くした。自分達の司令官は、味方をも撃って構わないというのだから。

 ユウキだけでなく、この場にいる誰もが、戦場で今も戦い続ける皆がこれまで指導者として仰ぎ続けた男の目には、最早敵への憎悪と勝利への執着しか映っていなかった。

 

「…母上、申し訳ありません」

 

 誰もが愕然とするしかない中で、そうでない者が一人だけいた。

 

 コンソールを叩く父に狙いを定めて銃を構えるアスランだった。

 

 本当はこうなってほしくなかった。いや、こうなる前に、もっと早く父と話すべきだったのだ。だが自分はそうしなかった─────だから、せめて。せめてこの役目だけは、自分の手で。

 

「父上─────」

 

 引き金を引く直前、小さく零れたアスランの声。未だコンソールの前にいるパトリックには届く筈もない、そんな小さな声。

 

 だがパトリックは一瞬動きを止め、アスランの方へと振り返ったのだった。

 

「っ─────」

 

 父と交わされる視線。父の口元が動こうとしたのを見て、アスランの中で微かに躊躇いが生まれる。

 

 本当に、これしかないのか…?だが躊躇いが生まれるよりも先に、アスランの指はすでに引き金を引いてしまっていた。

 

 鳴り響く銃声。アスランが澄ました狙い通りに、銃弾はパトリックの胸部を貫いた。

 

 彼の身体から大量の血が飛び散り、辺りに漂う。暫し室内にいた者全てが、慣性のまま宙に浮きあがった人影に目を奪われる。やがて、誰かが席を立った。その際に響いた椅子が動く音が切っ掛けになったかの様に、一人、また一人と席を立って出口目掛けて飛び出していく。

 

 アスランはエレベーターへ向かう人並みに逆らって、ふらりと足を踏み出した。宙を漂う父の身体へと触れようと手を伸ばし、しかし触れるのを躊躇ったアスランは手を引っ込めてしまった。

 

「れの、あ─────」

 

 聞こえて来た声にアスランはハッと顔を上げた。パトリックはまだ絶命してはいなかった。その手を震えながら持ち上げて、どことも知れない誰かへと伸ばしている。

 

「おまえの…せかいを…、わた、しは…」

 

 いや、彼には見えているのだ。彼にだけ、見る事が許されているのかもしれない。掛け替えのない、失った事で闇の底まで堕ちてしまう程に愛していた妻の姿を。

 

「とり、もど、し…た──────」

 

「─────父上…っ!」

 

 レノアへと向けられた懺悔は、喉から溢れ出した出血に遮られて絶える。血に濡れた身体が痙攣し、やがて弛緩した。

 

 アスランは堪え切れず嗚咽を漏らす。最期の瞬間、父の頭を占めていたのはやはり、恐るべきあの兵器を敵に向けて撃ち込む事だけだった。アスランの願いも叶わず、パトリックは妻を奪った核の呪縛から逃れる事が出来なかった。彼の築き上げた世界を壊した者達を、打ち倒す事しか考える事が出来ないまま─────。

 

 最後まで父は、自身の手元にまだ、愛すべき家族が残っていた事に気付く事すらしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 司令室にいた兵達の誰もが我先にと逃げ出してしまった中、まだレイ・ユウキだけはその場に残っていた。アスラン・ザラとパトリック・ザラ─────母と妻を失った親子同士で、こうも道を違えてしまった二人が迎えた結末は余りにも残酷なものだった。

 

 ユウキは少なからずその責任を感じていた。大人である自身がもっとしっかりしていれば…パトリックの変貌にもっと気を配っていれば…そして、あの時に彼を撃つべきだったのは自分であった、と。全部をまだ子供のアスランに押し付けてしまった。結果、実の父親を撃ち殺すという救えない結末を迎えさせてしまった─────。

 

「─────?」

 

 父の遺骸を横たえて涙を零すアスランの傍らで、共に司令室へと侵入していた金髪の少女が寄り添う。そんな二人の後ろ姿を見つめていたユウキは、彼らの横のコンソールがアラートを発しているのに気付く。

 

『自爆装置作動。爆発まで一八〇〇秒です。総員、速やかに施設内より退去してください。繰り返します─────』

 

 自爆、つまりヤキン・ドゥーエは放棄されるという事。だが、何故?

 

 ユウキは違和感を感じた。死す直前までコンソールを操作してたパトリック─────ヤキンの自爆装置が作動したという事はつまり、彼がそれを操作したという事になる。しかし、あれだけジェネシスを撃つ事に固執していたパトリックがあの時、ヤキンの自爆()()を行っていた等到底思えない。

 

 気掛かりなものを覚えたユウキはコンソールへと駆け寄り、素早く指を走らせた。途中、アスランや傍らの少女、二人の護衛の男がユウキの背中に視線を向けたのを感じながら、ユウキは自爆シークエンスの詳細が表示された画面を素早く読み取っていく。

 

 そして目に映った一つの情報にユウキは息を呑んだのだった。

 

「ヤキンの自爆シークエンスに─────ジェネシスの発射が連動している…!」

 

 そう、パトリックは志半ばに散った訳ではなかったのだ。最後の最後に仕掛けを施し、そして死して尚ナチュラルへと自身の憎悪と痛みを刻みつけようとした。

 

 そこまで…、そこまでして、この男は。

 

「こんな事をしても、戻るものなど何もないのに…!」

 

 ユウキが零した言葉に瞠目していたアスランが、背後に横たわる男を見遣った。彼の内心ではきっと、やり切れない思いが渦巻いているのだろう。

 

「アスラン、今はここから逃げなきゃ!」

 

「─────クソッ、ユウキ隊長!」

 

「私は大丈夫だ!君達も早く脱出を!」

 

 この期に及んでアスラン達と敵対するつもり等毛頭なかった。残る時間は僅か、こうしている間にもシークエンスは進み、基地全体で振動が起こり始めているのだから。

 

 彼らは、憎しみに囚われ続けた男の遺骸だけが残った司令室を飛び出してエレベーターに乗り込む。

 

 乗り込んだエレベーター内にも当然、シークエンスが進むにつれて起こる振動は伝わって来る。

 

 それはまるで、死後にも現世へ残るかの如き強いパトリックの怨念が、ゆっくりと迫っている様にすら感じられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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