自爆シークエンスが進み、振動と爆発に包まれる基地内を引き返したアスラン達はそれぞれの機体に飛び乗りヤキン・ドゥーエを脱出していた。
「─────っ」
基地を脱した後、僅かの間振り返り、所々で爆発を起こしながら崩壊を始めるヤキン・ドゥーエを見遣ってから、アスランは機体を発進させた。
微かな逡巡はこれから自分がすべき事への決意を固める時間─────今のアスランに、もう迷いと未練は存在しなかった。
『おい、待てよっ!』
発進したジャスティスをルージュが追随する。真っ直ぐなアスランの行動を見たカガリが尋ねて来た。
『どうするつもりだ!?』
モニターに映る、焦りを滲ませたカガリの顔。思えば彼女とは不思議な縁を繋いだものだ。初めて通信越しにカガリの声を聞いた時─────後に再会し、互いの戦いへの思いを打ち明け合う事になるなんて、そしてまた敵同士として再会し、しかし最後の最後で背中を預け合いながら戦う事になるなんて、思いもしなかった。
そして、アカデミー時代から共に過ごし、戦い続けたイザークやディアッカと比べて圧倒的に交わした時間は短かったというのに、何の躊躇いもなく彼女が傍にいる事を受け入れていた自分も─────。
「ジェネシス内部で、ジャスティスを核爆発させる。お前は戻れ」
だから、彼女に自分の贖罪に付き合わせたくはない。答える間にも巨大なミラーに迫ったアスランは基部のハッチに向けて機体の背部の火器を斉射する。一瞬にして吹き飛んだハッチから内部へと侵入したジャスティスの背後では、尚もルージュが追い縋っていた。
『そんな…っ、そんな事をしたらお前はッ!?』
「それしか方法がないんだ!」
カガリの驚愕と共に響いた叫びへ、アスランも叫び返す。
ここまで来る途中、アスランはジェネシス付近で停止していたアークエンジェル、エターナル、クサナギの三隻を目にしていた。この状況に至るまでの間、ジェネシスを破壊する為に努めていた筈だ。エターナルとクサナギに関しては、アスランが一度ヤキンに侵入する前にはもうジェネシスへ到達していたのだから、当然破壊を試みていた筈だ。
それでもジェネシスは目立ったダメージは見られず健在だ。ならばもう、堅固な外部からではなく、内部から強烈な衝撃を与えるしか破壊する方法はない。ただのモビルスーツの爆発よりも、もっと強烈な衝撃を─────。
『アスランっ!』
アスランに戻るよう言われたカガリだったが、かといって放って行く事など到底出来ずに尚ついてきていた。背後の映像をモニターで見て、それを確認したアスランは機体の背中のファトゥムを分離する。
モビルスーツ一機がギリギリ通り抜けられる程の広さしかないシャフトの中で、ルージュは避ける事が出来ないまま、まともにリフターに激突した。
『アスラン─────!』
悲痛な声が胸を抉るが、それを振り切る。
戦いのない世界で、これからを生きられたらどれ程幸せだろう。イザークやディアッカと、まだ自分を友達と呼んでくれるキラと、仲間達と─────その中にカガリも居てくれたら。だが、そんな事は許されない。
シャフトを抜けたアスランは、ジェネシス基部の中枢らしき空間に出た。この巨大なカートリッジ内で核爆発を起こし、γ線を乱反射させて放出するのだろうか─────その装置をこれから破壊するのも核の力である事を思うと、少し不思議な感覚がした。
アスランは小さく息を吐いてから手元のボタンを押して、テンキーを引き出す。暗証番号を入力しながらふと、以前にも同じような事があったなと思い返した。あの時は不本意にも生き残ってしまったが、今回は無理だろう。いやむしろ、それが正しい結果だ。
こんな恐ろしい兵器を作り、実際に撃って何万もの命を奪ったのは自分の父だ。こうなる前に止めるべきだったのに、すぐ近くにいて止める事はできた筈なのに。それは仕方のない事なのだと、戦争に勝つ為にはやむを得ない事なのだと諦めて、父の暴走を許してしまった。父が大罪を犯してしまったように、子である自分も大罪を犯してしまった。
ならばせめて、命を賭してもこの兵器を破壊しなけれならない。地球に向けて死の光を放つ前に。
それでも少しだけ、やっぱり死ぬのは怖くて─────パスワードの最後の一文字を入力しようとする手が一度止まったその時、耳元に少女の声が響いた。
『アスラン─────っ!』
「なっ…!?」
直後、シャフトから飛び出して来た紅の機体を目にしたアスランは思わず絶句し息を呑む。
もし今、死の怖さの余りに手を止めずパスワードを打ち終えていたら─────自分はこの少女を殺してしまっていたのだと思うと、意思とは関係なく身震いした。それと同時に、ついて来るなと、戻れと言った筈なのにこんな所にまで来てしまったカガリへ怒りが湧いた。
「何故戻って来た!?戻れと言った筈だ!」
その衝動に身を任せて怒鳴るアスラン。それに対してカガリは毅然として怒鳴り返す。
『うるさい!お前の方こそ逃げるな!』
カガリから返って来た言葉は、アスランにとって思いも寄らないものだった。突拍子もなく、だけどその声の真摯さに胸を打たれたアスランは息を詰まらせる。
『お前の考えてる事なんて手に取る様に分かるぞ!お父さんのやらかした責任を命で負うとか、そんな所か!?だけどな─────』
何で分かる、等と問いを挟める暇もない。カガリの勢いは止まらず、最後に高らかに叫ぶのだった。
『生きる方が、戦いだ!』
呆れる程に真っすぐで、力の籠った言葉は、袋小路に入り込んだアスランの前に道を拓いた。
ユウとクルーゼの死闘は続いていた。あれからユウはドラグーンを更に一基を落とし、残る端末は三基。だがこれまでの戦いでゼノスは傷つき、最早限界を通り越していた。左腕と右脚を失い、所々ビームに灼けて装甲の内部が露出した箇所を作りながら、それでもパイロットの意に従い動き続ける。一方のプロヴィデンスも同様だ。こちらも片腕片足を失い、極限状態で戦い続けている。
スキュラが放たれ、ドラグーンを巻き込んで熱線が直行する。傍らで端末が爆散するのに構いもせず、クルーゼは迫るゼノスの光刃を防盾で受け止める。
途中、冴え渡るクルーゼの動きについていけずに数瞬置いていかれ続けていたユウの動きもより洗練されていく。
ゼノスがプロヴィデンスを蹴り飛ばせば、追撃を仕掛けようとしたゼノスにドラグーンがビームを撃ち掛け動きを止める。その間に体勢を整えたプロヴィデンスがビームサーベルを出力して斬り掛かり、対するゼノスが応戦する。
一見単純な攻防の中で、二人の研ぎ澄まされた感覚は幾つもの展開を先読みし、最善策を取り続ける。ここに至って、両者は完全に互角の戦いを繰り広げていた。
「クルーゼ─────ッ!」
「ユウ─────ッ!」
交わす言葉はない。どれだけそれを積み重ねても、両者はどこまでも交わる事のない平行線─────だからこそ、決着が訪れるまでもう、どちらも止まる事はない。
衝突の衝撃でそれぞれの装甲の破片が飛び散る。衝突の度に、機体に機動を施す度に、コックピット内に響く嫌な衝撃と異音。
それを意に介さず二人はひたすらに進み続ける。そして二人が戦い始めてから幾度目の衝突だっただろう─────直後、二人を白い世界が包み込んだ。
刻を置き去りにして、二人は分かり合う─────分かり合ってしまう。交わる事のない平行線が、どれだけ言葉を交わしても分かり合う筈のなかった二人が、宇宙の何物にも干渉される事のない共感覚に包まれる。
互いの中に伝わって来る、
「ユウ…、お前は─────」
「何故…、貴様はッ!」
ユウが何者でも構わない。経緯がどうであれ、そんなものはどうでもいい。今の彼にとって大事なのは、ユウがこの世界の行く先を知っている事であった。
人は変わらず、どこまでも戦い続ける。ユウはその未来を知っていた─────なのに奴は希望を語り、この醜い世界を生かそうとしている。
腐り切った世界の中でも美しく生きる人達も見た。だが─────やはり、こんな世界にそんな価値はない…彼らが生き、守る価値などあって堪るものか。
「…見たのか、クルーゼ」
衝突の衝撃で離れ合ったプロヴィデンスを見据えながら、先程の感覚を思い返しながらユウは呟いた。
クルーゼが自身の中に入って来たのが分かった。そして自分もまた、奴の中へ溶け込んだのも─────そうして伝わって来た、生まれた瞬間から今の今までにクルーゼが見て来た全てをユウは知った。
クルーゼがこの世界に抱く憎しみの根幹を─────自分へ向ける殺意の意味を─────何故こんな事になってしまったのかという彼の中で渦巻く強いもどかしさを。
「俺は諦めないぞ。クルーゼ」
「ッ─────!」
同情をしたつもりはなくとも、流れ込んで来た景色を前にしてほんの少しだけ心が軋んだ事は認めよう。だが、それはユウにとって決して、諦める理由にはなり得ない。
「貴様の行く先は地獄だと分かっていても」
「それでも俺は─────俺の望む未来を、絶対に諦めない」
言った瞬間、誰かがそっとユウの背中を後押しした気がした。
そんな感覚と共に前へ出るユウ。ビームサーベルを抜き放ち、前方から放たれるビームを打ち払いながら突き進む。
プロヴィデンスの懐へと潜り込み、斬撃を防ごうと防盾が持ち上がるよりも前に刃を振り抜きその左腕を斬り落とす。堪らず後退していくプロヴィデンスを間髪置かずに追い掛ける。
残ったドラグーンがゼノスへとビームを放つ。バレルロールしながら回避を試みるが、躱し切れなかったビームが機体の脇を掠り、頭部を捉える。しかしその勢いを止める事は出来ず、プロヴィデンスへと追い着いたゼノスの刃の切っ先が真っ直ぐに突き出され、白銀のコックピットへと吸い込まれていく。
「────、──」
ユウの手に確かな手応えが伝わってきた直後、ふと小さな声が耳朶を打つ。それと同時に、ユウの視界一杯に閃光が広がった。
ゼノスとプロヴィデンス─────ユウとクルーゼ─────子と父の死力を尽くした戦いに決着が訪れた次の瞬間、全てが爆発した。
ヤキン・ドゥーエの司令室からあらゆる施設が吹き飛び、港口から炎が溢れ広がっていく。そしてジェネシスの基部が凄まじい閃光を迸らせた。臨界する直前のカートリッジが破壊され、巨大なミラーはひび割れ閃光に呑み込まれていく。
ジェネシス付近で漂っていたプロヴィデンスが爆発に巻き込まれていく。それに留まらず、誘爆を引き起こしながら閃光は更に広がっていき、爆発に巻き込まれたプロヴィデンスを見つめていたユウを、ゼノスをも呑み込んだ。
光が広がっていく光景はエターナルにも届いていた。クルー達が呆然とその閃光を見つめる中、ラクスがシートから飛び出す。
「ユウっ!」
愛する人の名前を叫びながらガラスに飛びついたラクスは、やがて消えゆく光を心配げに見つめていた。収まっていく光の中に、ぼんやりと巨大なミラーの残骸が目に出来る様になる。
艦橋にいる多くの者達が、この光景を目にした多くの者達が肩から力を抜く。─────彼らは生き延びる事が出来たのだ。地球に生きる多くの生命も。
『─────宙域のザフト全軍、並びに地球軍に告げます』
その時、周辺宙域に音声が響き始めた。それはザラ派によって拘束されていた筈のクライン派の議員、アイリーン・カナーバのものだった。
戦闘の混乱に乗じて彼女はクーデターを起こしていた。決して勝算の高い賭けではなかったが、それでもこうして賭けに勝つ事が出来たのは─────それだけこれ以上の争いを、犠牲を善しとする人達が多かったから。
パトリック・ザラを筆頭とした者達の声に遮られていたと思われたラクスの声は、確かにプラントの住人達へ届いていたのだ─────。
『現在プラントは、地球軍及びプラント理事国との停戦協定に向け、準備を始めています』
カナーバの声は流れ続ける。それは、血のバレンタインが引き金となり、長きに渡って続いた戦争の終わりを告げるものだった。
『それに伴い、プラント臨時最高評議会は、現宙域における全ての戦闘行為の停止を地球軍に申し入れます』
艦橋にいたクルー達が、カナーバの声を背景として大いに喜びの声を上げた。互いに肩を叩き交わす者、涙を浮かべながら安堵の息を漏らす者、そして愛する者同士で笑みを向け合う者達─────クルー達が様々な反応を示す中、ラクスは瞳を揺らしながら窓外を見つめ続けていた。
月基地を潰された地球連合軍はこの申し入れを呑むだろう。恐らく両者の間には停戦協定が結ばれる。長かった戦いが終わるのだ。
ナチュラルとコーディネイターの違いがなくなった訳ではない。二つの種族の蟠りが完全に融和するまでの間、また何度も争いは起きるだろう。だがこれは、この停戦は始まりの一歩になるだろう。いや─────そうしていかなくてはならない。
「ユウ…!」
これは、父の意志を継いで派閥を率いたラクス・クラインの思いだ。それはそれとして、今の彼女にはもう一つ─────それ以上に、一人の少女として気が気でない事があった。
「ダコスタ!ゼノスのシグナルは!?ストライクルージュもだ!」
「あ─────は、はいっ!」
クルーゼとの死闘の果てに、ジェネシスの爆発に巻き込まれたユウ。そして、アスランを追ってジェネシス内部へ侵入したカガリ。ラクスの呟きを微かに耳にしたバルトフェルドが、戦いが終わった事への安堵感を吹き飛ばしながらダコスタへ捜索を命じる。
戦いは終わり、ジェネシスも撃たれなかった。多くの犠牲を払ったが、彼らは確かに本懐を叶えたのだ。
だがその代償に彼らの命が燃え尽きたのでは─────やがて、計器と目を合わせていたダコスタが振り返って声を上げる。
「ストライクルージュのシグナルを確認、無事です!ゼノスは…」
上がった声は明るいものだった。シグナルが確認出来た以上、少なくともカガリは生きている筈だ。どのような状況でいるか分からない為、すぐに助けに行かなければならないが一先ずバルトフェルドは安堵の息を漏らす。
しかし、ダコスタはその後に続く言葉を噤んだ。
「どうしたダコスタ!ゼノスのシグナルは!?」
「…」
続けざまに掛けられたバルトフェルドの問い掛けにダコスタは黙ったまま答えない。その沈黙こそが、彼の返答を物語っていた。
「そんな…」
誰かが絶望の声を漏らした。あれだけ歓喜に湧いていた艦橋が、今は静まり返っている。その不自然さに最初に気付いたのは、バルトフェルドの傍らにまで来ていたアイシャだった。
「…ラクス?」
愛する人の生存が危ぶまれている。というよりも、最早絶望的だというのに、彼女は沈黙していた。声を上げる事もなく静かに泣いているのかと、心配の念を抱いて振り返ったアイシャの目に映ったのは、何かを念じるように瞳を閉じるラクスの姿だった。
─────感じる。ユウ、貴方の存在がわたくしには分かります。
ラクスは絶望などしていなかった。何故なら、彼女には確かに分かったから。ユウの存在が─────彼の鼓動が、この広い宇宙の中で確かに感じられたから。
ユウが生きていると分かったなら、やるべき事は一つだった。これから自身がするべき事を定めたラクスが目を開けて、艦橋の後方のエレベーターへと足を向けようとした直後。回線が繋がり、艦橋のモニターに一人の少女の顔が映し出される。
『ラクス』
「…えぇ、分かっています。わたくしも共に行きますわ。キラ」
デブリの中に、ディアクティブモードのストライクルージュが漂っていた。コックピットが開き、中から赤いパイロットスーツの人影が周囲を窺う。アスランだった。ジャスティスの自爆装置を起動させた後、彼はルージュのコックピットに飛び込んでカガリと共にジェネシス内部から脱出していたのだ。
アスランは無数のデブリが漂う宙域を見回してから、とある一点に目を向けてその場所を見つめる。彼の視線の先には猛威を振るい、幾万もの命を奪ったジェネシスの残骸が浮かんでいる。ジェネシスが撃たれる事はなく、人は決定的な過ちを犯す前に暴走する足を止める事が出来たのだ。
「…」
アスランは再び周囲の光景に目を回し始めた。数知れぬデブリ─────至る所に浮かんだ破壊の跡。数多の戦艦、モビルスーツ、それらが藻屑となって暗闇の海を漂っている。この光景を作り出した一人は、紛れもない自分自身なのだと、ジェネシスの発射を阻止したという達成感など微塵もない─────アスランの内心を満たすのは決して逃げる事は許されない罪の重さだった。
打ちひしがれそうになるアスランの肩を、優しい感触が叩いた。コックピットから身を乗り出したカガリが、アスランの傍らに寄り添っていた。
あの時─────彼女に止められる事もなかったらあの時、ジェネシスと共にその身を散らし、こんな気持ちにはならなかったのだろうか。重くて、辛くて、苦しくて、痛い─────この罪をこれからずっと、背負いながら生きていかなくてはならないのか。
─────それでも俺は、
微笑みを浮かべるカガリの金の目と見合わせながら、アスランもまた微笑む。
多くの人が死んだ。たった一人の家族を、父も、アスラン自身が死なせた。この戦いで失われた多くの命─────その責任の一端が自分にあるのだとしても、生き続けなければならない。命は費やすべきものではなく、継続し、育むべきものなのだから。
もう、アスランの目の中に昏い色は存在しなかった。どこまでも澄んで迷いのない彼の目は、不意にあるものを捉えて、だけどアスランは小さく微笑んでから前を見据えた。
「おい。追わなくていいのか?」
カガリからの問い掛けが、先程通り過ぎていった
アスランは頭を振ってから口を開いた。
「いいさ。あいつとはいつでも会える。だって─────」
一度そこで言葉を切ってから、何度も遠回りをし続けたその先で今、彼はようやく本当の意味でその一言を発する事が出来たのだった。
「俺達は、友達だからな」
「ここ、は…?」
目を開けてみれば、周囲には吸い込まれるような星空が広がっていた。美しくも恐ろしい星々は、瞬きもせずこちらを見つめている。
「…我ながらしぶといね。ホント─────」
全身を包む浮遊感、無重力の中で落下しているのか、上昇しているのか掴めない感覚の中で視線を転じれば、そこには大破したモビルスーツや戦艦の破片と、その彼方に白く輝くプラント群が見えた。
それを見て、俺は生きているのだと認め、ついつい苦笑いを浮かべてしまう。
プロヴィデンスとジェネシス、二つの核爆発に巻き込まれながら生きていた。原作のキラと同じ道を不本意ながら辿る事となった俺だが、キラと違ってナチュラルの筈なんだがな…。いや、原作の兄さんは宇宙空間でヘルメットが外れていたのに生きてたりとか、フラガ一族は本当に人間なのか怪しいくらいの生き物ではあるのだが。
俺のヘルメットは外れていないし、生きてるのも当然なのかもしれない─────いや、この理論は流石に可笑しい。絶対に可笑しい。
「─────クルーゼ」
ついさっきまで死力を尽くして殺し合った男の事を思い出す。結局俺は、あいつを否定する事は出来なかった。それは違うと言い募っても、あいつを納得させる事が出来なかった。
人は憎しみのままに撃ち、撃たれた憎しみはまた別の憎しみを生む─────その繰り返しから逃れる為にはどうすれば良いのか、分からないままあいつと戦ってしまった事。俺は…、後悔しているのだろうか?クルーゼを殺した事を?
「お前は本当は…何が欲しかったんだ?」
人は滅ぶべきだと奴は何度も怨嗟を叫んだ。俺がその怨嗟を受け入れる事はないと分かっても尚、まるで呼び掛けるように。
「お前は…何故最期に、あんな事を言ったんだ…?」
ラウ・ル・クルーゼ─────俺の手によってその命を散らす直前、奴が俺へと託した短い言葉を思い出す。
『足掻けよ、ユウ』
ずっと俺へと向けられた怨嗟と憎悪の色はなく、送り出す様な優しい声質で聞こえて来た最期のクルーゼの言葉。その真意を知る前に、あいつは逝ってしまった。もう二度と、俺が知りたい事を知れる機会は訪れない。
「…足掻いてやるさ」
どういうつもりで言ったのかは分からないが、言われるまでもない。俺は奴の言葉の一切を認めない。奴は強い愛の感情はより強い憎しみとなって反転すると言ったが、それが成り立つのなら、その逆だって然りだ。あのカナードだって、あれだけ激しいキラ絶対殺すマンだったのだが、今ではただの激しいシスコンだ。
憎しみは克服出来る。止める事が出来る。どれだけ時間が掛かろうとも、いずれは、絶対に。
だから人の営みは悪ではない。先を目指す事は決して間違いではない。だって、そうした人の進歩の先で俺は、二人と出会えたのだから─────。
星の一つがゆっくりと落ちて来る。それは、俺に向かってくる一機のモビルスーツだった。コックピットは開かれ、中に見える二人の人影─────近付くにつれ、太陽光の中でハッキリと二人の顔が照らし出された。
コックピットの中で操縦桿を握るキラと、傍らで体を固定するラクス。二人共、涙の粒を浮かばせながら微笑んでいた。
「約束は守ったよ。俺は、生きてる」
あぁ─────生きている。俺は、生きている─────!二人の顔を見て改めて、実感と喜びが湧いてきた。
人を殺した。─────父を殺した。だけど、俺は生きている。生きて二人の元へ帰れたのだ。両手を広げて迎え入れてくれる二人の腕の中に収まった瞬間、堰を切ったようにキラもラクスも声を上げる。
冷たい宇宙から引き上げられ、二人の体温を感じた俺も同様に涙を零す。
最期までクルーゼが持とうとしなかったもの…帰るべき場所が、俺にはある。それが、俺とお前との違いだった。だから俺は最後まで諦められなかったんだ。どれだけ否定されても、死が別つその時まで、俺の帰るべき場所は変わらない。
明日も、明後日も、そのまた次の日も、どれだけ時間が経とうとも…最後は必ずここに─────。
「ただいま」
「「お帰りなさい」」
はい、という事でFINAL PHASE 帰るべき場所にてSEED編完結(嘘)です。去年の二月から始めたこの小説ですが、一年半という長い期間を経てようやく…ようやくSEED編が完結(嘘)しました!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!
はい、嘘です。正確にはあと三話か四話くらい、エピローグ的な話を書くつもりです。戦後のユウとかアスランとかその辺の話をちょろっと流していこうと思ってます。
ですが本編はここまでという事で、ちょっとつらつらと後書きの方を並べていきます。まだ終わってねぇのに早ぇよイカ野郎って思われる方々、すみません。後書きに移ります。
………………楽しいけど疲れた!この話を書き上げて真っ先に思った事はこれですね、いや本当に疲れた(笑)。
元々ユウ・ラ・フラガという主人公を軸とした物語のネタは考えていたのですが、去年にSEED FREEDOMを見て、SEED熱が燃え上がって軽い気持ちで書き始めたのが運の尽き─────種と種運命は五十話ずつくらい、FREEDOMは十話くらいで完結するっしょ!←これが物語書きたての私の練乳よりも甘い見立てでした。
いやもうね、砂漠編辺りで百話くらい行くわとなり、それでも一年でSEED編は終わると思いきや…。どうしてこうなった?たまに話の後書きで書いた事ありますが、本当にどうしてこうなった…???
いや、私のプロットの甘さが全ての原因なんですけどね。自分でも悪いとは思っていますが、書く前に簡単なプロットを組み立てはするのですが、細かな部分は物語を進めながら固めていくっていうスタイルが完全に裏目に出てます。そうして失踪してる作品があるのにね、学習しない作者ですみません…。
ですがこのスタイルは絶対に変わらないですね。悩むよりも行動してしまうので…、プロットに悩むよりまず書き始めてしまえ、と手を動かしてしまうので…。お陰で初めに薄っすらと考えていた展開が書いていく内に大きく変わる、なんて事もありました。ロイ・セルヴェリオスが正にそれで、彼初めは全く出す予定がありませんでした。ロイの登場について考え始めたのはもうハッキリと覚えていないのですが、多分一度目のオーブ来航辺りですかね?先の展開を考えるにあたり、心の底から悪!というキャラを描きたくなったのが切っ掛けでした。
予定外といえば、アスラン君も当初の予定ではジャスティス自爆でMIAという流れだったのが、爆発からのMIAからの生存、という流れがSEEDの中で在り来たりすぎてつまらないと感じてしまい、ならばその時点で死亡?いやでもアスランを殺すのは─────とこれについてはヤキン・ドゥーエを書いている時まで悩みに悩んだ結果、生存という形で落ち着きました。ここまでの暴れっぷりを思い出して、やっぱり死んだ方が良いのでは…とも思いましたが、私がアスラン・ザラというキャラが好きで生きて欲しいと思ったのもあるので…。
逆に初めのプロット通りだったのがフレイのラストですね。キラを庇って爆発─────ここもアスラン生存or死亡を悩んだように直前まで悩んでいました。予想外にフレイが人気になっていたので…、というか私もフレイを書く毎に好きになってしまったので、ここを生き残らせてキラ、ラクスと一緒にユウとのイチャラブエンドでも良いのでは?と…。
それとクルーゼのI am your father.これは投稿当時かなり反響があって、感想見ながらニヤニヤしてました。これに関しては初めも初めの方からちょっとした伏線があったりして、その話の感想で伏線を見破る読者が現れて冷や汗を流したりとかもして…最早懐かしいまでありますね。作者の気分でキャラが増えたり展開が変わったりするものだから、そりゃ話が長くなるってもんです。運命編でも苦労すると思いますが、お付き合い頂けると幸いです。
あ、運命編書きます。不安が過った画面の前のそこの貴方。大丈夫です、書きますよ(`・ω・´)
感想嬉しかったです(笑)。
感想といえば、途中から全く返信しなくなって申し訳ありませんでした。でも書かれた感想は全部目を通していました。やっぱり作品に反響があると嬉しいし、モチベーションになりますね。本当にありがとうございます。
つらつらと書き連ねてきましたが、まだまだ先は長いし、ここらで後書きはお開きにしたいと思います。これからは上記の通りエピローグ的な話を書いて、種運命へと繋げていきます。
それと、ここまで読んでRecollectionは?と思われる方がいるかもしれませんが、こちらを書く予定はありません。理由は、私がGジェネエターナルをやっておらず、やる予定もないからです。もう課金で失敗したくないからね…(汗)。
という事で、本当にここらでお開きにしたいと思います。この小説についてですが、一旦完結という表示にしたいと思います(まだエピローグがありますが、それがまずかったり種運命編もこの場で続けていく事になったら連載中表示に戻します)。
最後になりますが、長い間この小説にお付き合い頂き本当にありがとうございました。また近い内にお会いできると思いますので、その時はまたよろしくお願いします。
それでは─────!