フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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本日二話目の投稿です。


PHASE14 合流前の衝突

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今頃、アスランがラクスの行方不明について知った頃だろうか?

 それともとっくにその事を知って、プラントを旅立った頃か…。

 

「ミトメタクナイ!ミトメタクナーイ!」

 

「あらあらピンクちゃん、ユウが困っていますわ。こちらへいらっしゃい?」

 

「テヤンデー!」

 

「…」

 

 もし後者だとしたら、アークエンジェルはそろそろ先遣隊に接近する頃の筈だ。

 ここまで色々と原作から掛け離れた出来事が起きてきたが、艦の航路自体は原作と殆ど変わっていない。

 それなら、この展開は恐らく原作通りに起こると思われる。

 

「あ、あの…。どうして部屋の外に出ているんですか…?」

 

「ごめんなさい。このピンクちゃんが勝手に部屋の鍵を開けて、出て行ってしまうのです…」

 

「アカンデー!」

 

「…」

 

 原作では、先遣隊は全滅、旗艦に搭乗していたフレイの父親、ジョージ・アルスターも戦闘に巻き込まれ死亡するという事態が起こる。

 結果、父を守ってくれなかったキラと父を殺したコーディネイターへの憎しみを募らせたフレイが、物語の中盤にかけてキラを追い詰めるという展開となる。

 

 ただ─────果たして今のフレイが、仮に父が死亡したとして、キラへ憎しみを募らせるかどうかは甚だ疑問ではあるが。

 勿論、全力でジョージ・アルスターを守れるよう努めるつもりではいる。

 

「ハロ!ハロ!」

 

「鍵を開けるって…。どういうプログラムなんだろ、ちょっと調べてみたいな…」

 

「よろしければお貸し致しましょうか?」

 

「え、いいの?」

 

「はい」

 

「アカンデェー!?」

 

 …なんか今、ハロの声に感情が…危機感の様なものが感じ取れたのは気のせいだろうか?

 

 というか、現実逃避はもうやめよう。

 

 状況はこの通りだ。

 今、俺達は食堂に居る。

 食堂へ向かう途中、まずキラと合流し、その後通路の角から飛び出してきたハロを目撃。

 そして、ハロを追い掛けていたラクスと出くわした俺達は、三人で食堂へとやって来たのだった。

 

「ミトメタクナイ!ミトメタクナァァァァアイ!!!」

 

「…」

 

 ハロってこんな叫ぶ設定だったっけ?

 それにキラの手から逃れようと必死になってるようにすら見えるんだが…。

 

 うん、気のせいだな。

 大人しくキラに解剖されてくれ。

 大丈夫、キラならお前を壊しはしないさ。南無。

 

「キラ!ユウ!ここに居た─────って、はぁ!?」

 

 ラクスが現在どういう立場であるかを忘れ、この後キラの部屋でラクスと一緒にハロを調べようという約束が二人の間で交わされた直後、食堂へ飛び込んでくる人物があった。

 

 その人物─────トールはキラ、俺の順で視線を見回し、そして最後にラクスの姿を見て大きく目を剥いた。

 

 そりゃそうだろ。

 殆ど捕虜に等しく、個室で待機をしている筈のラクスがこんな所に居れば、事情を知らない人からすれば驚くのは当然だ。

 

「こんにちは。貴方は…ユウとキラ様のご友人でしょうか?」

 

「え?あ、えっと…?はい」

 

「…」

 

 ラクスの問い掛けに頷くトール。

 キラはともかく、俺も友人のカテゴリーに含んでくれた事が、少し嬉しかったり。

 

「おい…。なんでこの子がこんな所に居るんだよ…」

 

「え?…さぁ?」

 

「さぁ、って…」

 

 首を傾げるキラに苦笑を向けるトール。

 

「で、どうしたんだ?俺とキラを探してたみたいだけど」

 

「っ、そうだった!朗報だぞ二人共!」

 

 脱線しかけていた話を戻す。

 問い掛けると、表情を輝かせながらトールが答えた。

 

「さっき第八艦隊の先遣隊と通信が繋がったんだ!もうすぐ、先遣隊と合流できるって!」

 

「っ!それって!」

 

「あぁ!やっとこの艦から降りられるぞ!」

 

 笑みを浮かべ喜び合うキラとトール。

 

 そんな二人を横目に、ラクスが俺の方へと近づいてきた。

 

「ユウ。お二人は地球軍の方ではないのですか?」

 

「あぁ。経緯は俺と同じだよ。成り行きでキラはモビルスーツに乗る事になって、トールもこの艦に乗ってるのはただの偶然」

 

「…そうなのですね」

 

 あの部屋で話した際、俺がこの艦に居る経緯は話したが、キラやトール達については話していなかった。

 ラクスからの問い掛けに答えると、彼女は少し表情を曇らせながら視線を二人へと戻す。

 

 彼女は、二人を見ながら何を思っているのだろう。

 不本意ながら戦争に巻き込まれ、戦う事になってしまった二人を憂いているのか。

 

「ユウも、艦を降りるのですか?」

 

「…いや」

 

「え…?」

 

 再度向けられた問い掛けに、俺はキラがトールとの話に集中しているのを確かめてから、小さく否定した。

 

 否定の答えを聞き、ラクスが驚き目を見開いた。

 

「それはなz…」

 

『総員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!』

 

 ラクスが三度俺に何かを尋ねようとした、その時だった。

 艦内に放送が響き渡る。

 

 第一戦闘配備─────その声を聞いた途端、キラもトールも弾かれるように駆け出し、食堂を出て行く。

 

「ユウ!」

 

「すぐに行く!」

 

 その途中、キラが振り返り俺へ呼び掛ける。

 

 俺はキラへ返事を返してから立ち上がり、未だ座ったままのラクスへと視線を下ろした。

 

「ラクスは部屋へ戻るんだ。いいか、戦闘が終わるまで絶対に出るんじゃないぞ」

 

「ユウ…」

 

 不安げに見上げてくるラクスが安心できるよう、笑みを向けてから俺もキラに続いて食堂を出る。

 

 更衣室でパイロットスーツへ着替えてから格納庫へ、待ってましたと言わんばかりのマードックの出迎えを受けながら、スピリットへと乗り込んだ。

 

『敵はナスカ級にジンが三機と()()()()()()()()()()!それとイージスとシグーがいるわ!気を付けて!』

 

 スピリットのシーツへ着き、システムを立ち上げている間にミリアリアが状況を教えてくれる。

 

 ─────シグー…またクルーゼが来るのか。だが、ハイマニューバだって?

 

 シグーが居る以上、乗っているのはクルーゼではあるまい。

 イージスには当然アスランが乗っているので除外。

 だとすれば、ハイマニューバに乗っている可能性があるのは…ミゲルか…!

 

『…キラ、ユウ』

 

 状況が困窮している現状に、小さくない焦燥感を覚えていると、割り込むようにしてフレイから通信が入った。

 

 フレイは何かに迷う様に視線を彷徨わせながら、やがて何かを決意したようにその視線に力を込めた。

 

『先遣隊に、パパが居るの』

 

 フレイの口から出て来たのは、力が籠もった視線とは相反して、震えた小さな声だった。

 

『二人にこんな事、お願いしたくない…。でも頼めるのは二人しかいない…!お願い、パパを助けて…!』

 

 フレイは恐らく、分かってる。

 このお願いが、俺とキラにどれだけ重荷を背負わせるのは、分かっている。

 

 それでも、愛する父と、唯一残された家族と別れたくない一心で、俺とキラにそうお願いをしてきたのだ。

 原作のものとは違う、苦渋に満ちたその懇願に、俺も一言、任せろと答えたかった。

 

「…確約は出来ない」

 

『っ…』

 

『ユウ…!』

 

 キラは原作の様に、分かったと請け負うつもりだったのだろうか。

 フレイを突き放すような答えを返した俺を、責める様な声質で呼んでくる。

 

「だけど、全力は尽くす。それだけは約束する」

 

『ユウ…。私も、全力で戦う。だから、泣かないでフレイ』

 

『…キラ、ユウ。お願い…!』

 

 その一言を最後に、フレイとの通信が切れる。

 

 フレイにも言った通り、フレイの父親を絶対に助けるなんて確約は出来ない。

 だが、元から彼を助けられる様全力を尽くすつもりではいた。

 

 というより、この戦いに限らず、今までのどの戦いでも手を抜いた覚えはない。

 

 やる事は今までと一緒だ。

 死なないように、誰かを守れるように、全力を尽くす。

 

「ユウ・ラ・フラガ!スピリット、発進する!」

 

 カタパルトへと誘導された機体が、ハッチから宇宙空間へと飛び出していく。

 

 無重力へと飛び出したスピリットのスラスターを吹かせ、すでに戦闘が始まった宙域へと、キラのストライクと一緒に急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る─────。

 

 アークエンジェルが先遣隊との通信が繋がり、合流するべく針路をとった頃、その動きを察知した者達が居た。

 

 それが、この後アークエンジェルと先遣隊が合流するかという時に襲撃をした、クルーゼ隊である。

 

 クルーゼが先遣隊がアークエンジェルの補給、或いは出迎えの艦艇である事を見抜くと、すぐにパイロット達に出撃の準備をさせる。

 

 現在、クルーゼ隊はユニウスセブンにて消息を絶ったラクス・クラインの捜索を命じられていたが、だからといってザフトの脅威となるアークエンジェルを見逃す訳にもいかない。

 クルーゼはヴェサリウスの格納庫にて、出撃する他のパイロット達と一緒に準備を進めていた。

 

「ミゲル。新しい機体は動かせそうか?」

 

「えぇ。性能こそ上がってはいますが、ベースはジンですからね。問題はありませんよ」

 

 その途中、近くを通りかかったミゲルにクルーゼが問い掛ける。

 

 機体へと乗り込もうとしていたミゲルはその場で止まり、笑みを浮かべて自身が乗り込もうとした機体を見上げながらそう答えた。

 

 クルーゼもまた見上げた視線の先には、オレンジ色のジンが鎮座していた。

 

 正確には、ジンとは違う。

 機体名、ジン・ハイマニューバ─────ジンのメインスラスターに改修を施し、宇宙における加速性、航続距離が飛躍的に向上した機体だ。

 ミゲルは、自身のパーソナルカラーに染まったこの機体を、査問会の為にプラントへと戻った際に受領したのだ。

 

 新しい機体を受領して間もないが、飽くまで機体のベースはジンであり、更に卓越した操縦技術もあり、ミゲル自身何の違和感もなくシミュレーションではスコアを稼いでいた。

 実戦とはまた勝手が違う事はミゲルにも分かってはいたが、新しい機体での初陣という点においての不安感は全く抱いていなかった。

 

「そうか。なら、良い働きを期待する」

 

「了解!」

 

 ミゲルは一言そう言いながら、クルーゼへ敬礼をとってから改めて機体へと乗り込む。

 その姿を見届けてから、クルーゼもまた自身の愛機であるシグーへと乗り込んだ。

 

「(さて…。足つきはどういう選択をとるのかな?)」

 

 合流の直前に先遣隊が襲われている所を目の当たりにしたアークエンジェルが、次にどの行動を起こすか。

 

 厄介事に巻き込まれるのは御免だと尻尾を巻いて逃げるか、或いは仲間を助けるべく戦闘に介入してくるか。

 

 クルーゼとしては、後者を期待していた。

 

「(中々に早い再会となるかもしれんな。…ユウ・ラ・フラガ)」

 

 もしアークエンジェルが戦闘に介入してきた場合、当然スピリット─────ユウ・ラ・フラガも出撃するだろう。

 

「(今度こそその息の根を止めてみせる)」

 

 クルーゼ隊に合流したジン三機が、ミゲルのハイマニューバが、アスランのイージスが発進していく。

 

 そしてクルーゼのシグーもまたカタパルトへと運ばれていき、出撃の時が訪れる。

 

「ラウ・ル・クルーゼ!シグー、出るぞ!」

 

 ハッチから飛び出した機体を先遣隊へと向け、クルーゼはスラスターを吹かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーナード沈黙!イージス、ローに向かっていきます!」

 

 ユウ達が出撃し、アークエンジェルが戦闘宙域へ介入した時には、すでに先遣隊の護衛艦の一隻が行動不能に陥っていた。

 

 更にイージスが新たな艦へと牙を剥くべく接近していく。

 

「ゴットフリート一番照準合わせ!ってぇ!」

 

 ナタルの号令に従い、放たれた砲撃が真っ直ぐイージスへと向かっていく。

 

 が、砲撃は躱され虚空を横切っていく。

 

「ゼロ、帰還します!機体に損傷!」

 

 一番早く出撃したムウのゼロが、ジンを一機落としたものの、もう一機との交戦の末損傷を受けて撤退を余儀なくされる。

 

 目まぐるしく変わる戦況が映し出されるモニターを、フレイは青ざめた顔で見ていた。

 

 自分の役割など、果たせる筈もない。

 父が、あの地獄に巻き込まれているのだと思うと、モニターからどうしても目を離す事が出来なかった。

 

「パパ…!」

 

「ストライク、イージスと交戦開始!スピリットもシグーと会敵します!」

 

「ジン・ハイマニューバ、ローへと接近しています!」

 

「イージスとシグーは二人に任せるしかないわ!ゴットフリートの照準をハイマニューバに!ローを沈ませないで!」

 

 残りの二機は、先遣隊のメビウス隊に任せる他がなかった。

 

 キラとユウにはイージスとシグーの相手を任せ、アークエンジェルはまずジン・ハイマニューバの足を止めさせ、注意をこちらに向ける。

 

「ってぇ!」

 

 再度響くナタルの号令。

 

 アークエンジェルの艦橋では、戦況を伝える声とクルー達への指示の声が引っ切り無しに響き渡っていた─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ムウから少し遅れて出撃したスピリットとストライクは、すぐに出撃に気付かれる事となる。

 

 その事に真っ先に気付いたシグーが二機へと接近、そしてシグーの動きに気付いたイージスもまた、二機の方へと向いた。

 

 イージスがビームライフルをこちらに向け、引き金を引く。

 

 スピリットとストライクはそれぞれ別の方向へと避け、するとイージスは迷いなくストライクの方へと向かっていった。

 

「キラ!…っ!」

 

 ユウがキラの支援へと向かうべく機体をそちらへ向けようとしたその時、敵意の接近にその手を止める。

 

 直後、フットペダルを踏んでスラスターを吹かせて機体を上昇させる。

 つい先程までスピリットのコックピットがあった位置を正確に、一条のビームが貫いていった。

 

「やはり来たか!ユウ!」

 

「クルーゼ!」

 

 スピリットへとビームを向けたのは、クルーゼが駆るシグー。

 

 シグーはライフルから重斬刀へと持ち替え、更にもう一方の手にシールドを握る。

 

 それに対し、ユウはスピリットのスラスターを吹かせてシグーへと接近。

 瞬く間にシグーの眼前へと迫ったスピリットは右腰のビームサーベルを抜き、シグーへと振り下ろす。

 

 振り下ろされたサーベルは割り込んで来たシグーのシールドに防がれる。

 

「(くそ…!前もそうだったがこのシールド、対ビームコーティングがされてる!それにあのビームライフル─────シグーにビームライフルは搭載されてなかった筈だろ!)」

 

 ユウには知る由もない事だが、現在シグーが装備しているビームライフルは、現在ザフトが開発している次世代の量産機に搭載する予定である武装の試作機だ。

 

 Xナンバーの機体が装備している、機体自体のバッテリーを消費してビームを放つライフルとは違い、ライフル自体のエネルギーを消費してビームを放つこの武装は、Xナンバーが所持している物と比べても撃てる弾数が少ない。

 

 故に、クルーゼはこの唯一PS装甲を貫けるこの武器を、使い所を考慮しながら使用しなければならない。

 

 基本的にはスピリットと格闘戦を余儀なくされる、が、スピリットの火力がない事を鑑みても、常識離れしたその推力はクルーゼにとっても脅威であった。

 

「ちぃっ!」

 

 反応は出来る。対処も出来る。

 が、次の反撃に繋げるにはどうしてもギリギリの対応を要求される。

 

 それだけではない。

 スピリットの動きが前回戦った時よりも良くなっている事が、クルーゼの神経を擦り減らす。

 

「えぇい!厄介な存在だな、君は!」

 

「アンタこそ、性能で劣る機体で何でついてこれるんだよ!」

 

 一方、神経を擦り減らしているのはユウも同じだった。

 

 シグーと戦闘を繰り広げながら、前回よりも良く動くクルーゼの実力に戦慄する。

 

 性能ではスピリットが勝る。

 その性能に物を言わせ、基本的に攻めているのはユウの方だ。

 だというのに、気付けば追い詰められ、辛うじて攻撃を回避するという展開が続く。

 

 その戦闘の様相は前回のものと似たものだった。

 だが、その展開は前回よりも速く、激しく、二機は激突を繰り返す。

 

 スピリットとシグー。

 ユウとクルーゼ。

 

 二人の戦いは時間が進むごとに、更に苛烈さを増していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回へ続きます。
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