フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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曇らせ話になると筆が軽くなる自身の性格の悪さに苦笑いしながら、

~前回のあらすじ~
カガリ「アスラン…」
サトー「パトリック・ザラが正しいのだァッ!」
シン「(気絶)」

それと本編が始まる前に一言─────お待たせしました。


PHASE16 逃れられない咎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その名前を耳にした時、彼は忘れかけていた悪夢を思い出した。逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げ続けた果てに纏わりつく憎悪の霧。どれだけ耳を塞ごうとも、聞こえて来る怨嗟の声。何故殺したと、かつて()()()()()()()が殺して来た者達は決して逃さない。

 

 ─────罪から目を逸らそうとする彼を、絶対に許さない。

 

 冷たい手が足を掴む感触─────久しく忘れかけていた感覚に身を震わせた直後、がら空きになった右方に攻撃を受けるアスラン。ビームアックスを握っていたザクの右腕は斬り飛ばされ、衝撃にたたらを踏む。

 

『アスランさん!』

 

 損傷を受けたアスランのフォローに入るべくすかさず動き出すインパルスだが、それよりも先にもう一機のジンが飛び掛かる。ビームサーベルを振り抜き、ジンの片腕を斬り落としたのも束の間。尚も追い縋るジンによってインパルスは組み付かれ、そしてアスランの目を閃光が覆った。

 

 ジンによる自爆─────それによってインパルスは大きく吹き飛ばされ、地表に叩きつけられる。機体自体は無事なようだが、相当な衝撃をパイロットが受けたのは見受けられた。今もインパルスはぴくりとも動かず、地表に転がったまま…あれでは果たして、中のパイロットも無事なのかも怪しい。

 

『アスラン…ザラ…』

 

「っ!」

 

 僚機の戦闘不能に意識を向けかけた時、呆然と自身の名を呟く敵パイロットの声がして我に返る。

 

 重斬刀を握り構えるジンと、ライフルの銃口を向けて対峙する。機体状況としては片腕と近接武装を失い、大して相手は五体満足の上に武装の損失もなし。機体性能ではこちらが上回っているとしても、総じて戦況は圧倒的にアスランが不利であった。

 

 操縦桿を握る手に、ヘルメットの中の彼の顔に汗が滲む。アスランにとって危機的なのは、戦況だけではない。今こうしている間にも落下を続けるユニウスセブン。その上に乗るアスランもまた、急速に地球の重力によって惹き込まれている。

 

 上昇していく温度─────いよいよ大気圏に突入しようとしているのだ。これ以上ここに居続けては、ミネルバに戻る事も出来なくなる。だが。

 

「…」

 

 横目でメテオブレイカーを見遣る。あと少しで設置が終わるという所、せめてあれだけは─────地球の為にも。それにインパルスの事も捨て置いてはいけない。ならば、すべき事は一つ。

 目の前の敵はアスランの行動を見過ごしてはくれないだろう。残された時間は少ないが、残ったジンを撃ち、メテオブレイカーの起動とインパルスの回収を行うしかない。

 

『生きていたというのか…!この偽善者がァッ!!』

 

 意を決して前を見据えた直後、怒りを吐き捨てながらジンが突っ込んで来た。斬撃をシールドで受け止め、伝わって来る力を受け流しながらジンを押しやる。二、三歩、アスランに背を向けてよろけるジンへビームを放つが、その攻撃を予期していたらしい相手はすぐにスラスターを吹かして退避。アスランのビームは地表を微かに灼くだけに留まった。

 

『何故だ!何故貴様は()()、我らの邪魔をしに現れる!?』

 

「何を…、言っている!」

 

 振り返ったジンが、今度はライフルで狙ってくる。対してアスランは、背後にメテオブレイカーを守る体勢でいる。本来ならばこの場から退避をしたい所だが、それではメテオブレイカーが狙われる─────故に、その場から動かないまま防御の手を取るしかない。

 

『ザラ閣下が生んだ創世の光でナチュラル共を一掃できる筈だったヤキン・ドゥーエもそうだ!世界が正しき方向へ歩み出そうとするのを何故、貴様は邪魔をする!』

 

「正しい方向だと…、これが!?こんな事が!!?ただ必死に生きているだけの者達諸共一掃する事が、正しいと、本当にそう思っているのかっ!!!」

 

『もういい!貴様の偽善は、聞き飽きたッ!!!』

 

 ライフルを撃つ手を止め、再び迫るジンに対してアスランもまた足を踏み出す。直後、激突した両者は激しく交錯する。

 

 ─────何だ…、この既視感は。

 

 ジンと交錯を繰り返しながら、アスランは違和感を覚えていた。知っている筈のない目の前の相手に覚える既視感。今思えばいつかどこかで、似たような会話をした事がある気がする。あれは─────そうだ。たった今、奴も言っていたじゃないか。ヤキン・ドゥーエ…ジェネシスを止める為に潜入した要塞の中で、自分は名前も知らないザフト兵の男と対峙した。あの時確かに、自分は今のような会話を─────

 

 そして、アスランは思い出すと同時に、全身をぶるりと悪寒で震わせた。

 

「─────まさか、貴方は」

 

 ザクとジンが衝突し、ギリギリと押し合う。映像に映るジンのモノアイの顔面が、憎悪に歪んだザフト兵の男の顔と重なった。

 

『進化を遂げようとする世界の邪魔をするだけに飽き足らず、死んでいった者達の嘆きと悲鳴をも忘れる!その罪深さ─────万死に値するッ!』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()─────あぁ、確かにそうだ。自分は、自分の罪から逃げ続けていた。目を背け、耳を塞ぎ、心を許せる誰かに守られて─────罪と向き合う事すらもしなかった。

 

 だからなのか。これは罰とでもいうのだろうか。父と同じ思想に取りつかれ、憎悪に堕ちた者によってこれから、自分は殺される─────それこそが、贖罪だというのか。

 

『死ね、アスラン・ザラ!せめて、新たなる世界の礎となれッ!!』

 

 男の声が遠く聞こえる。全身が冷たい闇に包まれていく。思うように身体が動かない─────本当にすべき事は分かっているのに。愛する人の元へ帰りたいと、こんなにも強く思っているのに!

 

 ─────そんな資格が、貴様にあると思うのか?

 

 耳元で、知っている声がした。戦慄を覚えるアスランへ、声は更に語り掛けて来る。

 

 ─────私を裏切り、殺した貴様が…何もかもを忘れて幸せになるなど、断じて許さん。

 

 ゆっくりと…、怨念の手が自身の首元へと伸びる。アスランの身体は灼熱の中にいながら寒さに震え、未だ動けずにいた。

 

 ─────アスラン…。アスラン…!

 

「ちち、う、え─────」

 

 目の前で、最後に見たあの狂信的な眼差しを浮かべた父が手を伸ばしてくる。その手によって、これから自分は絞め殺されるのだろう。

 それでいいのかもしれない。あの時、死なずに生き残ったのがむしろおかしかったのだ。こんな罪に塗れた人間は、早々に立ち去った方が世の為人の為となる。

 

 アスランは最早諦めの境地に立っていた。生きる気力も執着も持たず、運命を受け入れるだけの器と成り果て、ただ断罪の刃が振り下ろされるのを罪人として待つのみ。

 

 しかし彼には、彼の帰りを待つ者がいる。それすらも今のアスランは忘れていた。

 

()()()()()()()()()!』

 

「─────っ!」

 

 いつか聞いた言葉が脳裏を過り、瞬間全身に纏わりつく寒気が柔らぐ。諦念に満ちたアスランの瞳に力が戻り、その目がようやく彼が囚われた幻ではなく現実を見通し始める。自身を殺そうとする父の姿はもう見えなかった。

 

 すでにジンはザクの懐に飛び込もうとしていた。我を取り戻したアスランの反応は辛うじて間に合い、刃を掠らせながらも斬撃を躱す。

 

「ウォォォオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 無意識に上がった叫びは、まだ心の内にこびりつく戦慄を振り払う。刃を空振ったジンの懐へ潜り返したアスランは、機体の肩部を跳ね上げ突進する。

 

『なんっ、グオォッ!?』

 

 狼狽え、呻き声を上げながら相手が上方へ大きく跳ね上げられる。浮かび上がったジンへとライフルを向けて引き金を引く。ジンは体勢が不安定なまま構わず翻り、寸での所で直撃を避けるが、代わりに刀を握った右腕が吹き飛ばされる。

 

 吹き飛ばされたジンの右腕が空中で爆散し、直後散らばった破片が一部メテオブレイカーに叩きつけられた。まだ設置が不十分なメテオブレイカーが起動を始め、本体が地中へと飲み込まれていく。これはアスランにとっても、作業を阻止しようとしていた相手にとっても思わぬ事態だった。

 

 両者は固唾を飲んでメテオブレイカーの作動を見守る。切り取られた大地が大きく跳ね上がる─────だが、起こったのはそれだけだった。破片は割れず、じりじりと地球へと落ちていく。最後のメテオブレイカーは、無駄に費やされてしまったのだ。

 

「くっ…!」

 

 悔いは残るが、こうなってしまってはもう仕方ない。これ以上この場に留まっている訳にはいかない。まだ動かないでいるインパルスを回収して、ここから離脱しなければ─────そう考え行動に奔ろうとしたアスランは、だしぬけに上がった雄叫びの様な声に振り返る。

 

『逃がすものか!』

 

 ジンが突進してくる。アスランは飛び上がって躱そうととしたが、ジンの片腕がザクの足に巻きついた。

 

 機体がガクン、と引き下ろされる。再び、過去の怨念にしがみつかれた様な気がした。

 

『我らと共に地獄へ落ちろ、アスラン・ザラ─────ァッ!』

 

「…そうだ。俺が最期に辿り着くのはきっと、地獄だ。けどそれは、今じゃないっ!」

 

 しがみつくジンの顔面へ、自由なザクの片足を叩きつける。決して離すまいと腕に力を込めるジンと、押し返すザク。次の瞬間、アスランは強烈な衝撃と共に解放されたのだった。

 

『なっ─────!』

 

()()()()()!?」

 

 気絶から立ち戻ったシンが、ビームサーベルで取りついたジンごとザクの足を切り離したのだ。

 

『摑まって下さい!』

 

 間髪入れずにサーベルを投げ捨てたインパルスがザクへと手を伸ばし、その腕を掴む。アスランもまた白い腕を掴み、インパルスと一緒になってバーニアを全開にして吹かした。

 

『アスラン・ザラ!よくも…、よくも─────ォ!!!』

 

 こちらを見上げ、両腕を広げて落下していくジンから伝わって来る声が遠くなっていく。やがて、熱せられた機体が推進剤から爆発を起こし、そして燃え尽きていく。

 

 アスランは一瞬、瞑目した。

 

 男もまた、アスランと同じユニウスセブンで大切な人を亡くした─────いわば分身の様なものだった。しかし、アスランは周りの人達に助けられながら怒りと憎しみを乗り越え、男はそうは出来なかった。歩む道を違え、最後には対立するしかなかった男へと、アスランは冥福を祈らずにはいられなかった。

 

『くそっ!上がらない…!』

 

「っ…、上だ!」

 

 殺意を持った明確な敵がいなくなろうとも、まだアスラン達の戦いは続いていた。この重力の顎から抜け出し、ミネルバへと戻るというミッションが残っている。しかし、二機の推力でも最早機体を上昇させる事は困難だった。

 そして二人にとって脅威なのは、重力だけではない。周囲には、砕かれたユニウスセブンの破片が無数に存在している。その内の一つにでも衝突すれば、二人が乗る機体は一溜りもない。

 

 無数の破片の内、一際大きなものが向かって落下してくるのに先に気付いたのはアスランだった。呼び掛けられ、少し遅れてシンもその存在に気付くが、重力に引かれるまま身動きを取る事も難しい状況では如何ともし難かった。

 

『こんな、所で─────』

 

「…ッ」

 

 迫る絶望を前に、気を吐こうとするシンだがその声に力はない。一度は悪夢を振り払い、生きる力を取り戻したアスランも今ではただ息を呑むしか出来ない。

 死という逃れられない結果が、二人へと牙を剥く─────。

 

 ─────その瞬間、明後日の方向から二人の視界を横切って、極太の熱線が頭上から迫る巨大な破片を薙ぎ払った。

 

 真っ二つに割れた破片が双方へと別たれていく。更にもう一度、熱線が破片を再び薙いで四分割に割く。それによって、破片はアスランとシンがいた地点を中心として四方向へと分かれていく。

 

「なにが─────っ!」

 

 反射的に、破片を貫いた光条が放たれた方へとアスランは視線を向ける。そこで一瞬、彼は()()のモビルスーツを垣間見た。何者かとカメラを向けようとするが、その機体はすでにそこに姿はなく、彼もまた重力によって急速に地球へと引かれた為に機体制御に意識を割くしかなくなる。

 

 しかしアスランの努力も虚しく、インパルスの手は離れ、二機は抗う術もなく大気の底へと落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落下シークエンス、フェイズ・ツー!」

 

「インパルスと彼のザクは!?」

 

「ダメです!位置特定できません!」

 

 ミネルバの艦橋、後部シートに着いていたカガリは、モニターを祈るように見つめながら最早悲鳴も聞こえるクルー同士の会話を耳にしていた。

 

 モビルスーツを収容する事はもうできない。だが、それにより深刻な問題が起こっていた。大気との摩擦熱によってセンサーが障害を起こし、小さなモビルスーツの位置を掴む事ができなくなっていたのだ。

 

「間もなくフェイズ・スリー!」

 

 彼らの焦りを余所に、事態は刻々と進んでいく。砲撃を撃つにも、高度が限界に近付いている。かといって、未だ宇宙に出たままのインパルスとザクの位置が掴めない現状では、彼らを巻き込んでしまう恐れがある。

 タリアもそれを危惧して、中々決断を下せずにいた時だった。

 

「っ…!艦長、十時の方向より熱源!これは─────」

 

 バートが突如声を張り上げる。その直後、彼らの目の前で、宇宙空間に散らばった破片の中でもより巨大な破片をバートが告げた方角より放たれた砲撃が二つに裂いた。間髪置かずに再び放たれた二発目によって破片は四つに割かれる。

 

 一体何が起きているのか、誰が起こしたのか─────何が何だかさっぱり分からない中でも、カガリはまさかと予感した。

 

 そこにいるのか、アスラン─────!

 

「タンホイザー起動!照準、右舷前方構造体!だけど、さっき割れた破片の方には()()()()()()()!」

 

「─────ハイッ!」

 

 タリアもまた、カガリと同じく根拠のない予感を感じ取ったらしい。謎の熱源についても気になるが、それよりも時間が惜しい─────照準命令の後に下された不可解な命令に、微かな困惑の後に火器担当のクルーが従って動き出す。

 

「アスラン…!」

 

 艦首砲の発射は避けられない。そうしなければ、二人の命の為により多くの─────何万を超える数の命が犠牲になる。

 

 今すぐに泣き叫びたい。タリアに縋りついて、命令を取りやめるように言ってやりたい。それは決して許さないと自身に言い聞かせながら、カガリはせめてもと、両手を握って祈る。

 

 ミネルバの艦首が開き、中から陽電子砲タンホイザーの砲口が覗き、灼熱する巨大な塊へと向けられた。

 

「ってぇー!」

 

 陽電子の渦が迸り、眼前の巨大な大地の欠片を撃ち砕く。中央から破片が蒸発していき、爆発を起こすと勢いよく四散した欠片が飛び散り、そして周囲の欠片と衝突しまた砕く。

 瞬く間に炎に包まれていく空間を見つめながら、カガリはただ、あの炎の中に愛する人がいない事をひたすらに祈り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…クソッ」

 

 炎に包まれ落下していく流星の数々を見下ろしながら、胸を焦がす怒りをただ拳で叩きつける事しかできない。もっと早く駆け付ける事ができれば、ユニウスセブンの落下そのものを阻止する事だってできたかもしれないのに─────それはとある()()()()()()によって妨害されてしまった。

 

 俺ができた事といえば、大地の破片に押し潰されそうになった()を救う事だけだった。それだって破片を砕く事ができただけで、果たしてあいつが無事に地球へ着陸できるかどうか─────どうして肝心な所で間に合わせる事ができないんだ。なんで…ッ!

 

『悔やむのは構いませんが、ここに居続けては特定されかねません。いつ()()が戻って来るかも分からない。今すぐ帰投しなさい、()()()

 

「…了解」

 

 握った拳を再度、コンソールに叩きつけようと振り上げたその時、冷静な声が通信を通して割り込んで来た。その声を聞いて我に返った俺は拳を解き、一言返事を返してから操縦桿を握り直した。

 

 先程二発撃ち放ち、エネルギー切れとなった陽電子砲塔()()()()()を肩に担がせその場から離脱する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()に搭載された陽電子砲ローエングリンをモビルスーツの手でも撃てるよう開発されたのが、このヘリドーニだ。この中には独自のエンジンが積まれており、武装の中にエネルギーを充填する事でモビルスーツに負担を掛けずに強烈な陽電子砲を撃てる代物となっている。

 しかし武装単体に込められるエネルギーなどたかが知れており、フルチャージで撃てるのは二発までと燃費はかなり悪い。対モビルスーツよりも対戦艦を、更に戦闘場所も母艦周囲を理想とした高威力を誇りつつも取り合わせも悪い限定的な武器となってしまった。

 

 ()()ならば、ザフトが現れる前…或いはそれと同時に戦闘へ介入するつもりが先程言ったイレギュラーに遭い、それを撃退する事には成功したものの事はすでに進み過ぎていた。それ故にせめてもと、ヘリドーニを持ち出したのだが、それは正解だったらしい。対モビルスーツ戦闘を想定してこの武装を持ち出していなければ、友を─────()()()()を助ける事ができなかった。

 

「─────しかし、あいつら…」

 

 母艦への帰投途中、ふとこの場へ来る前に繰り広げられた()()について思い返す。

 

 襲い掛かって来たモビルスーツの数は四体。対してこちらは俺と()()()の二人という数的不利があったとはいえ、改造ジンを相手にかなり手古摺らされた。いや…メテラがいなければ、下手をすれば落とされていたのは俺の方だったかもしれない。

 

「…まさかな」

 

 洗練された連携と、()()()()()()()()()()()()かの様な適切な動き。それによって浮かんだ可能性を、頭を振って打ち消す。

 

 辻褄は合う。だがそうだとして、動き出すタイミングが早すぎる。まだ奴らの陣営には、そこまでの力はない筈だ。

 

 ─────けれど仮に、()()がこのタイミングで介入を始めたのだとしたら。

 

「クソッ、考えなきゃいけない事は他にもあるのに…!」

 

 そう、俺には先程襲撃に遭った謎の集団の他にも思考を割くべき事があった。

 

 襲い来るモビルスーツ隊を退け、ヘリドーニを持ってユニウスセブンへと急ぐ途中─────俺は懐かしい気配を感じて、急がなければいけない事も忘れて僅かに愕然とした。何故ならその気配は、とっくの昔に俺の前で死んだ─────()()()()()()()()のものだったから。

 

「フレイ…。お前は、生きてるのか?生きてるんだとしたら、どこで何をやっている?…何で帰って来ない?」

 

 ()()()()()()()()()─────俺にとって掛け替えのない女の子の一人だ。俺が弱いばかりに苦しめて、そして死なせてしまった人。

 だが分からないのは、生きているのならばどうして帰って来ないのか─────それとも、帰って来れないのか。

 

「…どっちでもいい。生きているのなら願ったり叶ったりだ。…覚悟してろよ、フレイ」

 

 ─────今度は、必ず。

 

 強い決意を胸に秘め、()()()()()()()()は小さく肉眼にも見えて来た、自身の帰りを待つ母艦へと機体を寄せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、やっと一言台詞を言い逃げするだけじゃない…何やら不穏なものを感じている我らが主人公の本格的な登場です。それでも短いですけどねー…。
それとさらっと名前だけ登場してるメテラさん…覚えてる人いますか?これから出番増えていくので、忘れた方はSEED編のPHASE EX.1を読み直してくださいね。
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