久し振りの文字数一万文字超え。キリが良い所までと書いてく内にここまで膨れ上がってしまいました。
~前回のあらすじ~
ジブリール「ぐぬぬぬぬ…!」
ミナ「来ちゃった」
カガリ「来るな」
「それで、一体何なんだ?とっとと用件を言え」
「…先程も言ったが、くたびれてる代表を心配して───「くどい」…」
カガリの悪態を受けて、流麗に肩をすくませながら笑みを零すミナ。本当に一体何の為にこんな所にまで来たのか、少なくとも彼女の言葉通りの理由で来たのではない事など分かり切っている。
「荒れているな。セイランの若僧とすれ違ったが、随分と情けない顔を晒していたぞ。何があった?」
「ユウナ?…いや、別に何もないが」
ミナは笑みを収めて問い掛けて来る。いつまでも本題に入ろうとしない彼女の姿勢に苛立ちを覚えつつ、しかし何故そんな事を聞いて来るのかという疑問を湧かせながらカガリは返答する。情けない顔─────それがどんなものだったのか、直接見ていないカガリには分からないが、どうもユウナの気を悪くさせてしまったらしい。
別に彼の機嫌がどうなろうが心の底からどうでも良いのだが、理由がさっぱり分からなかった。恐らく原因があるのは先程のユウナとのやり取りなのだろうが、あの中に何か彼の気を損ねる様子はあっただろうか?ミナの問い掛けに反射的に何もないと答えてからも、少しの間考えてみるがやはり何も思い当たらない。というか、何故自分はユウナの為にここまで頭を働かせなければならないのだ?疲れているというのに…、それも全部ミナがさっさと本題に入らないのが悪い。
そう断じたカガリが鋭い視線を向ければ、ミナはカガリの苛立ちに恐らく気付いていながらも全く効いた素振りも見せずに口を開いた。
「奴の事は置いておこう。時間が勿体ない」
哀れ、と思わなくもないがそれ以上に同意の念が勝った瞬間だった。それと同時に、ならば話題に出さなくても良かっただろうという思いがあったが、それを口に出せばまたややこしくなりそうだから止めておく。ミナの方も詳しく追及するつもりは殊更なかったのか、あっさりと言葉の矛を収めるのだった。
「
「─────なら…」
「一度オーブへ戻るよう要請を…は無理な話だな。艦と機体の整備を終えてすぐにまた出港したらしい」
「…クソッ。
ミナの口から出て来た最初の言葉に対し、カガリは一瞬表情を和らげかけた。が、すぐにその顔はまた憮然としたものへと戻ってしまう。
一度国を出て行ってから、帰国は愚か連絡を取る事すら一苦労の心強い友に、一瞬でも力を借りられるかもしれないという希望が湧いてしまった分、それは不可能だと突きつけられた事への失望は一入だった。友─────ユウへの悪態が、思わず勢いよく飛び出てしまう。
「貴様の耳に入れておきたい話はこれからだ。…アメノミハシラへと入ったサッバーフは、今までになく損傷を負っていたらしい。機体の方も同様との事だ」
「…っ─────」
ミナの言葉の意味を明確に悟るまで数瞬。話の理解が進む毎にゆっくりと見開かれていく目を、カガリはミナへと向ける。ミナは、カガリの前では滅多に見せた事のない、渋い顔をしていた。それは彼女もまた、カガリよりも先に同じ答えへと辿り着き、この先どうするべきかと迷いを抱いているが故なのだろう。
「ユウ達は無事なのか…?」
「死傷者はなし。だが…、
戦闘という点において、カガリが知る限りユウの右に出る者はいない。ミナですら、ユウの力は自身の上に立つと認める程だ。ユウというパイロットを知る人物は、全員彼に全幅の信頼を置いている。 そのユウが、
「敵の詳細は?」
「ダンマリだそうだ。…ユニウスセブンへ向かう途中で襲われた、というのは確からしいが」
「ユニウスセブン…っ、そうか。
ユウを追い込んだという敵の詳細について、彼らは語らなかったという。それは知っていて隠しているのか、はたまたまだ正体に辿り着けていないのか─────どちらにしてもまた厄介な問題が出て来たと思うと同時、ミナが言った一言によってカガリは一つの真実に辿り着いていた。
ユニウスセブンの破砕作業に出たアスランは帰艦に間に合わず、ザクに搭乗したまま大気圏を突破する事となった。しかしその途中、巨大な破片が彼の眼前にまで迫っていたという。重力に引かれた状態で身動きもとれず、死を覚悟したその時─────どこからか降り注いだ砲撃がアスランが乗っていたザクを押し潰そうとしていた破片を貫き、砕いたという。その砲撃は、ミネルバがいた方角とは別の方角から飛来したと。一体誰が自分を助けてくれたのかと、アスランは不思議そうに話していた。
その答えは、意外にも身近にあったのだと、カガリは少しだけ可笑しく思えた。
「…何を言っているのかは知らんが、厄介な事になっているというのは分かってるな?」
「─────あぁ」
言葉少ないミナの言いたい事は、直接的でなくとも察せられる。ユウが手古摺ったという事実もそうだが、その敵がユウを襲ったタイミングがそれ以上に問題だ。
「プラントに伝えるべきか…?」
「やめておけ。阿呆どもを刺激しかねんぞ」
「…だが」
「伝えるとして、相手は果たして信じてくれるのか?私達は情報を裏付ける根拠を一つも持っていないんだぞ」
大西洋連邦、カガリとは対峙する形でいる閣僚達へとプラントとの繋がりを持とうとしている事がバレれば、ミナの言う通り厄介な事となるだろう。その上、カガリが伝えようとしている情報は、飽くまで第三者からの又聞きでしかない。本人達を捕まえて吐かせようにも、すでに彼らは手の届かない所へと行ってしまっている。
「奴らに任せるしかなかろう。…アズラエルの事だ。手が詰まった時には迷わず我らに助けを求めるだろうよ」
「…だといいが」
ユウ一人であれば、カガリや他の仲間達に迷惑は掛けられないと無理をしかねないが、そうではない。今、ユウのバックには
「なぁ、ミナ。この話、キラとラクスに伝えるべきだと思うか?」
「…龍虎の尾を踏みたければ、好きにするといい」
「………」
黙り込むカガリ。嘆息しながら頭を振るミナ。分かり切った事ではあるが、やはり愚問だったらしい。
「ところで、話は変わるが代表。同盟の件は先程の閣議で言った通りに進めるのか?」
二人の間に沈黙が流れ、室内に時計の針の音のみが微かに響く。不意にその静寂を破ったのはミナだった。
初め、カガリはミナの口から出て来るには余りに意外過ぎる質問に面を喰らいながらも、すぐに視線を鋭く、ジッと彼女を見つめるミナを睨みつけながら返した。
「そのつもりだが、まさかお前はウナト達と同じ考えとは言わないだろうな?」
「戯け。奴らと同じ括りに含めるな─────立場を無視して捻り潰したくなるだろう?」
カガリが問い掛けた途端、ミナから膨れ上がる殺意。ゾワリと、カガリの背筋に奔る悪寒。額に滲む冷たい汗。それらを悟らせないよう、カガリは視線に力を込め続ける。ミナの殺意とカガリの勇気がぶつかり合い、弛緩していた空気が一瞬にして凍り付く。仮にこの場にユウナがいれば腰を抜かしかねない緊張感の中、またも先に口を開いたのはミナだった。
「だが…、奴らの出鱈目の中でも一理あると思わされた部分もあるというだけだ」
「…また大西洋連邦が、オーブを攻めて来ると」
「二年前とは違い、オーブに攻め入る利はない。だが、馬鹿に理屈は通じないだろう?…
恐れを知らないミナの物言い。もし今の発言が本人の耳にでも入れば、烈火の如き怒りがオーブへと降り注ぐのは間違いないだろう。だが、ミナの発言の大部分に同感なのはカガリもだった。
大西洋連邦主導による地球連合のオーブ侵攻─────マスドライバー奪取を目的とした戦いは、ザフトの介入によって混沌と化したが、結果だけで言えばたった数時間でオーブが勝利を収めたという形で終わった。
「次は
「…」
すぐに可能だと答えられなかった、その無言の空白こそカガリの答えだった。
二年前はロールアウトしたばかりのストライクダガーや、第二期GATシリーズの実験の要素が大きいオーブ侵攻だったが、次はそうはいかない。地球連合は本気でオーブを墜とすべく攻めるだろう。実験の要素が大きかった二年前ですら、ザフトが介入してくるまで、そして
「私が間違っていると…?」
「別の考え方もある、と言っている」
「敵と味方で二分される世界に、オーブを巻き込めと?」
「冷静に今のオーブの戦力を見極めろ。あの時のように連合に抵抗する力は─────ない」
ユニウス条約によって保持できる戦力に制限が掛けられている中でも精一杯の軍備は調えているが、では二年前と比べたらと問われたら、戦力は縮小されていると答えざるを得ない。アスランがいる。カナードもいる。必要に迫ればミナもカガリに協力をするだろう。
「だが…、世界に
「なに─────?」
「
ミナの目が真っ直ぐにカガリへと向けられる。害意も敵意もなく、ただ真摯に、彼女はオーブ連合首長国の代表へと進言する。
「
「っ…。ミナ、お前…っ!」
「戦争を止める…。ならば、我々は知らなくてはならない。今、この世界で何が起きているのか─────その為に手っ取り早いのは、
「ふざけるなッ!
「ならば進むがいい。二年前のようにとは言ったが、状況はまるで違うぞ。私達は、何と戦うべきかすら定まらない─────その上で、民に戦えと、告げて来るがいい」
二年前は矛を向けるべき先が分かり切っていた。ジェネシス、核、それらを振り翳し、人を屠り続ける者達─────なら、今は?
宣戦布告した地球連合と戦えばいいのか?それとも、応戦をしたプラント、或いはその両方?
…違う。カガリはすでに予感していた筈だった。ブレイク・ザ・ワールドの淵に立ち会ったあの時から、何かが水面下で蠢いていると。誰も知らない所で、何者かが悪意を振り撒いていると─────なら、それと戦えばいいのか?自分はそれが一体何なのか、知りもしないというのに。
あぁ、ミナの言う通りだ。自分は何も知らない。世界に何が起きているのかも、戦うべき相手が何者かすらも。だからまずはそれを知る為に動く─────ミナの言っている事はきっと正しいのだろう。だが。
─────キラ…!
カガリの脳裏に浮かぶのは、血を分けた姉妹の笑顔。心優しく、戦いなんて好まない。なのに望まないまま力を与えられて生まれ落ちた彼女を、今度は自分の手でまた戦いの場に送り込めというのか。
キラだけじゃない。二年前の戦いで傷つき、疲れ果てた人達に再び銃を握れと命令を下す─────
「─────悪いが、すぐには決められそうにない」
「…貴様の思いは分からんでもない。が、時間はそう残されてはいない。それを、肝に銘じておけ」
カガリへ伝えたい事は全て言いきったのだろう。ミナはそれ以上は何も言わず、執務室を去る。
その後、カガリはソファに腰を沈めて黙り込んだまま動けないでいた。頭の中では同じ思考が堂々巡りしている。
自分は、一体どうするべきなのか─────カガリは自問自答を続けるのだった。
地球連合からプラントへの一方的な宣戦布告と核攻撃。ブレイク・ザ・ワールドから始まった混乱が更に深まる世界情勢の中で、ミネルバはオーブでの停泊を続けていた。艦の修理も物資の積み込みも終わっていない状態で出航など出来やしないので、仕方のない事ではあるが─────そんな風に割り切れるクルーは少ない。
副艦長であるアーサーもそうだったが、開戦という現実を前に浮足立つのは仕方のない事なのだろう。しかも回避に成功したとはいえ、地球軍はまたも核を持ち出しプラントへ向けて来た。祖国が危機に晒されている中、自分達は他国に居座り続けている場合なのか。そんな考えが浮かび、焦燥しているのだろう。
なお、艦長であるタリアは物事を冷静に見られる側であった。開戦したとはいえ、第一波の核攻撃を躱されて呆然としているのか、地球軍はザフトの主要軍事施設を包囲こそすれどその場から動けないでいるという。少しの間ではあろうが、この微妙なバランスを保ったまま静寂が続くというのが今後のタリアの見立てだった。その中でミネルバが下手に動けば、戦いが激化する火種になりかねない。
タリアとて、プラントには夫と息子がいる。心配な気持ちは当然ある。それをおしてでも冷静な判断を下さなければならない─────それこそがプラントとと、そこに暮らす大切な家族を守る為に繋がると信じて。
─────問題は…、やっぱり
ただその判断は危険な綱渡りの上に成り立っている事も自覚していた。何故なら、彼女が拠り所にしているこの場所は他国─────地球連合に与してはいないとはいえ、間違いなく同盟への圧力は掛けられているであろう地球の一国家なのだから。
あの年若い国家元首が、そう簡単に首を縦に振るとは思えない。しかしそれもいつまで続くか。中立と謳うオーブであるが、実際にこの場に立っているからこそ分かる─────反プラント、反コーディネイターの感情を持っている者はこの国の中でも、決してゼロではないのだ。それはきっと、オーブの閣僚の中にも…それがどの程度の割合で存在するかまでは知らないが。
外部からだけではなく、内部からも圧力を掛けられながらカガリがどこまで保つか。少なくとも、作業が終わるまでは大丈夫とは思うが…。
「艦長…」
自身の判断を取り巻く懸念材料に思考をとられていたタリアの耳に、バートの呼び掛けが届いた。さっ、と緊張した顔を向ける彼女だったが、呼び掛けた当の本人は緊迫した様子はなく、代わりにその顔には戸惑いの感情が浮かんでいた。
「どうしたの?」
「それが…」
タリアが彼の席に歩み寄ると、バートはスピーカーに切り替えて彼にのみ聞こえていた音声のボリュームを上げた。
『…ミネルバ、聞こえますか?もう猶予はありません』
ノイズに混じって男の声が聞こえ、今度はタリアが戸惑いの表情を浮かべた。
「秘匿回線なんですが、さっきからずっと…」
バートの報告を聞き、タリアは表情を硬くした。付近にザフトの部隊はいない。だというのに、外部の者が知る筈のない周波数で通信を繋げている。所属も明らかにされない。信じ難いが、この声の主は外部の者、なのだろう。
『ザフトは間もなく、ジブラルタルとカーペンタリアへの降下揚陸作戦を開始します。そうなれば、オーブ内も慌ただしくなるでしょうねェ』
「っ…!」
突然飛び込んで来た、タリア達ですらまだ知らないザフトの内部情報に、思わず彼女は身を乗り出した。
『脱出されるのをおすすめします。面倒な事になる前にね』
この男は何者なのか。ザフトの内部事情を知っていて、しかも自分達に報せる事に一体何のメリットがあるというのか。
「…」
一瞬の躊躇いの後、タリアは手を伸ばしてスイッチを切り替える。ミュートが解かれ、こちら側の音声が届くようになったのを画面のアイコンを見て確認したタリアは、正体不明の通信者に応答した。
「ミネルバ艦長、タリア・グラディスよ。貴方は一体何者?この通信は何?」
『おやおや…。ようやく返答が聞けて嬉しいですよ。まさか艦長さんが直々に出張ってくれるとは思いませんでしたが』
男は上機嫌で答える。
『しかしかのザフトの最新鋭艦の艦長が女性の方とは…。お仕事は大変ではありませんか?』
「雑談に興じるつもりはないわ。それよりも、質問に答えなさい」
先程からそうだが、この男からは緊張感というか、そういった空気が一切感じられない。嫌に余裕で、まるでこちらが見下されているようで、その態度に苛立ちを覚えながらタリアは語気を強めて問い詰める。
『
「いいえ、結構よ。けれど、匿名の情報なんて正規軍が信じる筈ないでしょう。貴方は誰?目的は?」
男からの挑発にも聞こえる気遣いをバッサリと切り捨てて、タリアは再び詰める。
またどうせ、碌な答えなんて返って来ないのだろうが…なんて期待をしないで返答を待っていたのだが、通信の向こうの男からの声が中々聞こえてこない。
『
「─────砂漠の虎」
呆然と呟くタリア。彼女の傍らで話に耳を傾けていたバートも、思わぬタイミングで、思わぬビッグネームが飛び出て来た事に驚愕を表す。
かつて砂漠の虎と呼ばれたザフトの指揮官がいた。その名は、アンドリュー・バルトフェルド─────獣型モビルスーツ、バクゥを操り英雄とも呼ばれた名高いパイロットだったが、後に連合のスピリット、ストライクとの戦いで敗走。戦いに敗れた事で彼の地位も一時は危ぶまれたが、シーゲル・クラインの後を継いで最高評議会委員長に就任したパトリック・ザラが彼を招集。当時の最新鋭艦、エターナルの艦長に任命した。
その彼がエターナルを奪って脱走した時は、軍部が騒然となったものだ。
『貴女方へこちらが言いたい事は以上です。アスハ代表も堪えてはいますが…まぁ、時間はそう残されていないようですよ?』
男の言葉に耳を傾けつつ、タリアは思考を走らせる。
バルトフェルドは戦後、何処かに姿を晦ましたまま消息を絶っている。だが同じヤキン・ドゥーエの英雄であるカガリやアスランがこの国にいるのだから、彼もオーブに身を隠している可能性はある。つまり、この通信をバルトフェルドを知る者がしてきたという事もあり得る訳だ。
『忠告はしましたよ?後は貴女の判断次第です。…それでは、幸運を祈ります』
その言葉を最後に男からの交信は途切れ、通信機が沈黙する。
「艦長…」
「…カーペンタリアと連絡は取れない?」
困惑気味に見上げて来るバートへと、タリアは迷いながら命じた。ややあって、様々な通信手段を試してからバートは頭を振る。
「ダメです。地球軍側の警戒レベルが上がっているのか、通信妨害激しく、レーザーでもカーペンタリアにコンタクトできません」
返って来たのはある程度予測していた答えだった。タリアは瞑目し、迷いでぶれる心を定める。どうやら、覚悟を決める時らしい─────次に上がった彼女の顔にはもう、迷いの色は存在しなかった。
「いいわ。命令なきままだけど、ミネルバは明朝出航します」
タリアがそう口にした途端、アーサー達の顔が引き締まる。彼らの顔を見回しながら、タリアは命じた。
「全艦に通達。出れば遠からず戦闘になるわ。気を引き締めるようにね」
その命令は困難窮まる新たな旅が始まる合図でもあった。
「ふぅ…」
通信を切り、座椅子の背凭れに寄り掛かりながら息を吐く男の名は、ムルタ・アズラエル。つい先程まで、現在オーブに駐留中のザフト艦ミネルバとの通信を行っていた、謎の男の正体だった。
「さて…、真面な艦長さんであるならこれでオーブから出て行ってくれる筈ですが…」
「大丈夫でしょう。話が通じてそうな方でしたし」
「…貴方の勘ほど信じられるものはありませんよ」
部屋の戸口に立って、ミネルバ間の通信を聞いていた
ユウの勘─────フラガ家に代々通じる能力によって、二年間の旅の中で何度か九死に一生を得た事があった。知識としてフラガ家について知ってはいたアズラエルだったが、実際にそれを目の当たりにすればただただ感嘆の思いしか出て来ない。
「…
「その為にミネルバには何としてもオーブを出て行って貰いたい所でしたが…、まさか馬鹿正直な交渉を薦められるとは思いませんでしたよ」
「でも、これで正解でしょう?バルトフェルドさんの名前を出した時は、笑いそうになりましたけど…」
現在、地球へと降りて来たアズラエル達はオーブへと向かっている。同じくオーブへと先に向かっているであろう
オーブに着き、アコードと会敵すれば戦闘になるだろう。アコード側としてもまだ彼らの存在を明るみに出したくないと考えているだろうし、どこまでの規模のものになるかは分からないが─────彼らの力を考えれば、オーブという国を巻き込む規模になる恐れだってある。その為に、ミネルバが邪魔だったのだ。
『二人は巻き込んでほしいと、そう願っているのではないのですか?貴方のように』
その言葉に対し、ユウはこう返した。
『だから巻き込みたくないんですよ』
ユウが強大な敵と戦っていると知れば、二人は迷わずに飛び込んでくるだろうと。そして二人は危機に晒されるのだと。二人が傍にいてくれるのはとても心強いけれど、やはり一人の男としてそれは許せないのだ、と。
『下らない男の意地ですよ。笑ってください』
ユウが抱く愛情の深さに、アズラエルは笑う事など出来やしなかった。だから、出来る限りユウの願いに寄り添ってあげようと、力を尽くそうと決めたのだ。限界が見えた時には、協力を仰ぐ事に迷いはしないが、せめてそれまでは。
「オーブ近海へは、早くてもあと三日は掛かるそうです。…間に合えば良いのですが」
「…」
アズラエルの呟きは聞こえている筈だが、ユウは何も言わない。横目で彼の表情を見れば、特に変化はないように見えて、しかし微かに唇を噛み締めているように見えた。
今、アコードはどこにいるのか。自分達よりも先にオーブへと向かっているのは間違いないだろうが、彼らもまた地球軍の警戒網を潜り抜ければならないのは同じ。航海は慎重に、オーブへの到着には時間が掛かっている筈だ。
水面下の競争─────ユウ達が辿り着くのが先か、アコードが手を伸ばすのが先か。
地球とプラント間による戦いが一端の静寂を迎えている中、とある二つの勢力が火花を散らしている事にはまだ、誰も気付かない─────。
ユウ君、Dについて一部カガリに知られる痛恨のミス。カガリ側からすれば得体の知れない奴が潜んでる事に対しての警戒MAX。故に地球連合と下手な対立が出来ない構図に…じゃあ条約を結ぶしかないの?となっています。
そしてミナ様、ユウをとっ捕まえようと提案。アークエンジェル出して捜索じゃ。…確かにハァッ!?となったユウが釣られそうですが、カガリとしてはキラに戦ってほしい訳でもなく…。
という、カガリ曇らせ話でした。因みにまだ序の口です。