フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE19 死闘

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェサリウスから先立って出撃したシグーはスピリットと交戦に入り、続いて出撃してきたジン・ハイマニューバとジン三機がストライク、メビウスへと襲い掛かる。

 

「今回は前みたいにはいかねぇぞ、ストライクっ!」

 

 ミゲルがハイマニューバの突撃銃を取り出し、ストライクへ向けて連射をしながら最大出力でスラスターを吹かせる。

 

 一方のキラは機体の体勢をしっかり整えつつ、シールドで銃弾を防いでからビームライフルの狙いをハイマニューバへと定め、引き金を引く。

 

 二機は互いに位置を入れ替えながら、それぞれの遠距離武器を撃ち合った。

 

「この機体、速い…!」

 

 ジンを凌ぐハイマニューバ自体の推力もそうだが、ミゲルの操縦技術が齎す小回りを利かせながらの速度はキラにとっても脅威であった。

 

 相手からの銃撃を躱しながらライフルを撃つも、全く当たる気配がない。

 ハイマニューバの速度、そして予測の出来ない複雑な軌道がキラの銃撃を全て外させている。

 

「っ、フラガ大尉!」

 

「はっ!よそ見とはずいぶん余裕じゃねぇの!?」

 

 キラの視界の端で、一機のジンがすでに他のジンとの交戦に入っているメビウスへと向かっていくのが見えた。

 

 そちらに意識が向かった瞬間、ミゲルは突撃銃を片手に持ったままもう一方の手に重斬刀を握って突撃を掛ける。

 

 ハイマニューバからの銃撃をシールドで防ぎつつ、キラはライフルを撃ち相手を接近させまいと試みる。

 しかし、ハイマニューバは最小限の動きでビームを躱しながら、なおもストライクへと接近。

 

「くっ…!」

 

 キラは接近戦に切り替えるべきだと判断し、ライフルをマウントして背中のビームサーベルを抜き放つ。

 

「おっと!」

 

「!?」

 

 ストライクのサーベルを、ハイマニューバはスラスターを逆噴射、急停止させる事で空振らせる。

 更にそこから再びスラスターを噴射、急停止と急加速を組み合わせ、ストライクへ重斬刀による斬撃を喰らわせる。

 

「ぐぅぅうっ!」

 

 全身に掛かる強いGが奪わんとする意識を、歯を食い縛って繋ぎ止める。

 

 機体の体勢を整え、前を向いた時にはハイマニューバは再びストライクへ斬撃を喰らわせようと、眼前で重斬刀を振り被っていた。

 

「っ!」

 

 重斬刀が振り下ろされる前に、キラは機体の足を突き出しハイマニューバへ蹴りを喰らわせる。

 

 相手がよろけた隙に、機体を後退してハイマニューバとの距離を離す。

 

「ちっ…!PS装甲、やっぱ厄介だぜ。アスランが来る前に終わらせようと思ってたんだが…」

 

 シグーとは違い、ハイマニューバにはビーム兵器の装備はない。

 急遽シグーには試作型のビームライフルが搭載される事となったが、ミゲルのハイマニューバはその恩恵を得る事が出来なかった。

 

 PS装甲は実体の武器を無効化させる。

 しかし、決してそれは無限ではない。

 機体にはバッテリーが存在し、機体を動かせば動かす程それは減少する。

 更に、機体に搭載されたビーム兵器を使用したり、相手からの攻撃が装甲へ命中する程、減少は加速する。

 

 ビーム兵器が搭載されていないハイマニューバがストライクに勝利する為には、何度も攻撃を仕掛け、命中させ、バッテリー切れに追い込む他はない。

 

「おい嬢ちゃん!大丈夫か!?」

 

「は、はいっ!フラガ大尉は!?」

 

「こっちにはアークエンジェルもいる、心配するな!嬢ちゃんは目の前の敵に集中しとけ!」

 

 一方のキラも、ストライクのバッテリーが切れた瞬間全てが終わる事は分かっていた。

 そして、それを相手が─────ミゲルが狙っているという事も。

 

 アークエンジェルの援護を受けながら、ジン三機を相手に立ち回るムウのメビウスを見遣ってから、キラは改めて目の前のハイマニューバを見据える。

 

 …もう少しでラクスを送り届けたイージスが、アスランもここへ来る筈。

 増援が来る前に、せめてこの敵だけでも─────そう考えた時だった。

 

「キラ!フラガ大尉!ユウ!アークエンジェルの背後からローラシア級が接近してる!」

 

「「!!?」」

 

 ストライクとアークエンジェルの通信が繋がり、モニターにミリアリアの顔が映し出される。

 彼女は表情を濃い焦りの色で染めながら、キラとムウを戦慄させる言葉を口走った。

 だが、キラ達を追い詰める報告はここで終わりではなかった。

 

「ローアシア級からモビルスーツ三機発進!デュエル、バスター、ブリッツです!」

 

「…マジかよ!」

 

 続く報告に、通信の向こうでムウが悪態を吐いた。

 

 キラはハイマニューバの相手で手一杯。

 ムウもジンの相手で後方に気を向けられない。

 ユウもシグーと交戦中で戻れない。

 そんな状況で、最悪ともいえる増援が来てしまった。

 

「アークエンジェルが、沈む…?」

 

 キラの脳裏に過る一つの可能性。

 自分もムウもユウも目の前の敵に押さえられ、アークエンジェルは現状無防備だ。

 そんな状態であの三機に襲われれば─────待っている未来は一つである。

 

「…嫌だ」

 

「何をボーっとしている!」

 

「嫌だ!絶対にアークエンジェルはやらせないっ!」

 

 動きが止まったストライクに襲い掛かるハイマニューバ。

 

 対してキラは胸中で燻った恐れを振り払い、顔を上げる。

 

 直後、キラの中で何かが弾けた。

 

「もらったぁっ!」

 

「ハァァアアアアアアアアアッ!」

 

 雄叫びを上げながらストライクへ重斬刀を叩きつけようとするミゲル。

 ハイマニューバの斬撃を、凄まじい反応速度で、かつ最小限の動きで回避したキラはストライクの右手に握ったサーベルを大きく振るう。

 

 それと同時に、左手に握ったシールドを投げ捨てると、腰部にマウントされたアーマーシュナイダーを取り出す。

 

 ミゲルはサーベルの斬撃を回避するも、そちらに意識を取られ、ストライクが取り出したアーマーシュナイダーの存在に気付いた時には手遅れだった。

 

「なにぃっ!?」

 

 無我夢中でアーマーシュナイダーを、ハイマニューバの首付近へ突き立てる。

 

 続けてキラは突き立てたアーマーシュナイダーを更に奥へと押し込み、ハイマニューバを殴りつける。

 

 そして損傷したハイマニューバには見向きもせず、機体をアークエンジェルの方へと向けた。

 

「嬢ちゃん!」

 

「あの三機は私が相手をします!フラガ大尉はジンを!」

 

「…分かった!頼むぞ!」

 

 ムウと言葉を交わしてから、キラはアークエンジェルの援護へと急ぐ。

 

 先程から感じる、この研ぎ澄まされた感覚への疑問は今は置いておく。

 

 それよりも、自分が守りたいものを守る為に、キラはアークエンジェルを通り過ぎ、その向こうからやって来る三機と向かい合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「増援…!?こんな時にっ!」

 

「どうやら、天は私に味方しているようだ。ここで諦めてくれると楽なんだがねっ!?」

 

「誰がっ!」

 

 斬撃をシールドでパリィし、堪らず後退したシグーへ向けてライフルを向け、ビームを放つ。

 

 ミリアリアからの通信は、ユウの耳にも当然届いていた。

 そして、予定よりも早めにガモフが合流したという報告を、クルーゼもまたヴェサリウスから受け取っていた。

 

 状況は圧倒的にクルーゼ側が有利。

 しかし直後、クルーゼの耳に驚くべき報告が入る。

 

「なに?ミゲルが撤退?」

 

 ここでストライクとの戦闘で機体に損傷を受けたミゲルが離脱。

 ストライクはアークエンジェルの背後から来るデュエル、バスター、ブリッツとの交戦に入ったという。

 

「ちぃっ…!流石というべきか…!」

 

 素人と思って甘く見ていたとクルーゼは悔やむ。

 キラ・ヤマト、目の前のユウ・ラ・フラガと同等の才能を持って産まれた選ばれし存在─────素人であるのは確かだが、彼女もまた、ユウと同じように成長している事を考慮するべきだった。

 

 ミゲルであろうと、性能が劣る機体での一対一は無理があった。

 

 だが、ミゲルが撤退しようとクルーゼ側の優位は変わらない。

 ラクスをヴェサリウスに乗艦させたアスランが、イージスで出撃したからだ。

 数的優位は変わらず、そしてここでクルーゼがスピリットを墜とす事が出来れば、一気に勝負は決まる。

 

 一方のユウにも、それは分かっていた。

 ここでどれだけ早く決着をつけられるか、それによって全てが決まる。

 

 クルーゼを墜とす事が出来れば、そのままスピリットはキラ達の援護に迎える。

 しかしそう時間は掛けられない。例えキラでも、Xナンバーの機体を同時に三機─────更にそこにイージスが加わるとなれば、相当辛いだろう。

 ムウも同じく、現状アークエンジェルの援護を受けてジン三機を相手に互角以上に渡り合ってはいるが、もしキラがどれか一機の突破を許せば、その均衡は崩れる。

 

 故に─────ユウは覚悟を決め、クルーゼに短期決戦を挑む他なかった。

 

「うぉぉぉおおおおっ!」

 

「来るかっ!」

 

 ライフルとシールドを投げ捨てたユウは、スピリットの両手にビームサーベルを握らせる。

 二刀流で構え、スラスターを吹かせて一気にシグーへと接近。

 

 それに対し身構えたクルーゼは、シールドを巧みに操りながらスピリットの斬撃を防ぎつつ、時にスピリットとの距離を保ちながら反撃の一撃を加えようとする。

 

 スピリットのスピードに対し、上手く立ち回るクルーゼ。

 確かにこのスピードは脅威であり、パイロットであるユウの急成長にも、忌々しいが舌を巻く。

 

 しかしそれでも─────まだ、届かない。

 

「ぐぅっ!?」

 

 実戦経験の少なさ、それによって露呈する連撃の甘さ。

 そこを突き、クルーゼはスピリットの斬撃を掻い潜り、重斬刀による一撃をお見舞いする。

 

 ユウの苦痛の悲鳴を聞き、小さく笑みを溢しながら、体勢が崩れたスピリットへ止めを刺すべくビームライフルを構え─────た所で、クルーゼはスピリットが後退していく先にあった物に目を見開いた。

 

「なっ…!まさか貴様、わざと!?」

 

 珍しく露になるクルーゼの動揺に、同じく笑みを溢すユウ。

 

 ユウは後退する勢いに逆らわないまま、二本のサーベルを鞘へ納め、代わりにスピリットの両手に先程投げ捨てた()()()()()()()()()()()()を握らせる。

 

 シグーから放たれるビームをシールドで弾くと、間髪おかずユウはシグーのコックピットへ狙いを定め、ライフルの引き金を引く。

 

「ちぃっ!?」

 

 即座にクルーゼは機体を翻す。

 クルーゼの人並外れた反応速度が、その持ち主の命を救う。

 辛うじてコックピットの直撃を避けたクルーゼ、しかし放たれたビームはシグーの左腕を奪った。

 

 クルーゼは、左腕を失った事により宇宙空間を漂う()()()()を目にして、すぐに判断を下す。

 

 凄まじい加速で迫るスピリットに対し、距離を保つべく機体を後退させる。

 

 自機とスピリットとの距離。

 目標、スピリット、自身から繋がる直線の屈折角度。

 

 それらが全て当て嵌まったタイミングを見計らい、クルーゼは()()()()に向けてライフルの引き金を引いた。

 

「っ─────!」

 

 光条はまずシールドに命中し、直後角度を変えて屈折。

 寸分違わずにスピリットのコックピットへと吸い込まれていく。

 

 ─────ユウがもし、クルーゼがライフルの引き金を引いた直後に機体の進路を変えていなければ、コックピットを撃ち抜かれ死を迎えていただろう。

 

 こちらも辛うじてコックピットへの直撃は避けた。

 しかし、スピリットの左肩部をビームが掠り、その箇所を融解させる。

 

 ユウはすぐにスピリットの左肩の状態を確認する。

 動きはするが、操縦に対してやや反応が遅れる。これでは咄嗟の行動には使えない。

 

「なに…!」

 

 機体状況を把握している間にシグーがスピリットへ接近、かと思えば、シグーは突撃銃をパージすると浮遊する突撃銃を蹴り飛ばしスピリットへと弾く。

 

 何のつもりか分からず、しかし嫌な予感に駆られたユウは左腕を持ち上げシールドを掲げる。

 

 直後、シグーのビームライフルが火を噴く。

 放たれたビームはシグーがパージした突撃銃を撃ち抜き、撃ち抜かれた事により突撃銃は小さな爆発を起こす。

 

「っ!?」

 

 掲げたシールドにより、爆発による衝撃は最小限に抑えられた。

 だが、眼前に掲げたシールドと小さくはあるが巻き起こる爆炎に、ユウの視界が僅かではあるが塞がる。

 

「ユウっ!」

 

「こ、いつ…っ!」

 

 直後、爆炎を払いながらシグーが迫る。

 掲げたシールドをシグーに向けて押し付けようとするユウだが、クルーゼは機体を傾けながらそれを掻い潜ると、右手に握った重斬刀を、スピリットの()()目掛けて振り下ろした。

 

 実体武器による攻撃を全て無効化させるPS装甲。

 しかしそれは正にその名の通り、装甲なのだ。

 その中身にまで、PSが施されている訳ではない─────。

 

 振り下ろされた重斬刀が、先程の銃撃によって融解し、PSが剥がれた箇所からスピリットの左腕を斬り落とす。

 

 爆散するスピリットの左腕。

 それに目も向けず、ユウは右手でビームサーベルを抜き放つ。

 

 確かに片腕は失ったが、それは相手も同じである。

 先程シールドを投げ捨てたシグーに、スピリットの斬撃を防ぐ手段はない。

 

 咄嗟に機体を動かし、コックピットを斬り裂かれる事だけは避けたクルーゼ。

 しかし、シグーのメインカメラが斬り落とされる。

 

 メインカメラから送られる映像が途切れ、画面に一瞬ノイズが奔った後、サブカメラによる映像へ切り替わる。

 当然、メインカメラから送られるものよりも視界が狭まるが、クルーゼにはこれで充分だった。

 何しろ彼には、斬り裂かれたスピリットの左腕しか見えていない。

 

「後退しない…!?」

 

 更なる損傷を受け、なおも向かってくるシグーにたじろぐユウ。

 そんなユウの鈍い反応が功を奏し、シグーはスピリットの左側へ回り込む事に成功する。

 

「逃がさんっ!」

 

 逆にユウがスピリットを後退させようとするも、その前にクルーゼが重斬刀を欠損し、中身が剝き出しとなったスピリットの左腕へと突き立てる。

 

 シグーの重斬刀がスピリットの左腕を斬り落とした時と原理は同じだ。

 装甲に施されたPSは、内部にまで効果は及ぼさない。

 

 突き出された重斬刀の切っ先がスピリットを貫く。

 幸いは、その斬撃がユウのいるコックピットにまでは届かなかった事。

 それでも、スピリットを貫いている重斬刀をクルーゼが振り下ろせば、斬撃は容易くコックピットを斬り裂くだろう。

 

「終わりだっ、ユウ!」

 

「させる、かぁっ!」

 

 クルーゼが重斬刀を振り下ろそうとしたその時、ユウの中で何かが弾けた。

 

 ユウは辛うじて繋がった状態のスピリットの顔面部に搭載された、イーゲルシュテルンをシグーへ向ける。

 

 バルカン砲がシグーの装甲を捉え、堪らずクルーゼは重斬刀から手を離し機体を後退させる。

 

 その直後、シグーの猛攻を受け続けたスピリットのPSが落ちる。

 色が落ち、グレー一色となった機体は以降、PSの恩恵は受けられなくなる。

 

 しかし、追い詰められているのはクルーゼも同じだった。

 重斬刀はスピリットを貫いたまま手から離れ、その他の武装も失われている。

 

 一方のスピリット。

 バッテリーが切れ、ビーム兵器はすべて使用不能。

 残された武装はイーゲルシュテルンのみ。

 

「「─────っ」」

 

 互いの機体が満身創痍であろうと、この二人の頭に撤退の二文字は存在しなかった。

 機体の拳を握り、最後まで、相手を殺し尽くすまで戦い抜かんと、互いのスラスターを吹かせ接近し合う─────。

 

『隊長っ!デュエルがストライクとの戦闘で損傷!それによりイザークが負傷、デュエル、ブリッツがガモフへ撤退しました!』

 

 そこに待ったを掛ける形で、クルーゼの耳にアデスからの報告が入る。

 

『バスターもバッテリーが残り僅かです!出撃したジンも二機落とされ、数的優位が失われています!』

 

「…」

 

 隊長として、冷静な決断を求められる時が訪れてしまった。

 

 言外に撤退の指示を求めるアデスからの言葉に、クルーゼは苛立ち混じりの溜め息を漏らした。

 

「…全部隊撤退。バスターもガモフへ帰投しろ」

 

 このまま戦いが続けば、こちらが全滅する可能性すらあった。

 まさかあの数的優位を覆され、撤退に追い込まれるとは─────それに、自身をここまで追い込んだ眼前の仇敵。

 

「…本当は、決着がつくまで戦いたかったのだがね」

 

「俺は…それでも構わないけどな」

 

「強がるのは止めたまえ。君の体は限界の筈だ」

 

 PS装甲に防がれたとはいえ、被弾数は間違いなくスピリットの方が多い。

 そして被弾の度に、中のパイロット─────ユウへのダメージは蓄積されている筈だ。

 本当ならば、このチャンスを何としても物にしておきたい所だが…ユウへ止めを刺すよりもストライクとメビウスの方が早くこちらへ辿り着くだろうと判断し、クルーゼは口惜しい気持ちを必死に抑え、機体を翻す。

 

「…しばらく君と会う事はないだろう。だが、忘れるな。必ず貴様は、私が殺す」

 

 我ながら情けないとは思いつつ、捨て台詞を残すしかなかったクルーゼはヴェサリウスへと帰投する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、はぁ。やばい、かも…。頭…てか、全部痛ぇ…」

 

 遠ざかっていくシグーの背中を眺めながら、気が抜ける。

 かと思えば、極限にまで研ぎ澄まされた集中によって忘れかけていた体の痛みが一斉に襲い掛かる。

 

「あいつ、ヤバすぎだろ…。マジで死にかけた…」

 

 座席に背中を凭れかけながら、力ない声で呟く。

 

 本当にヤバかった。あのまま戦い続けていたら、死んでいたのは俺の方だった。

 機体状況は互角でも、先に体力が尽きていた俺の方が間違いなく撃たれていただろう。

 

『ユウ!ユウっ!!』

 

『おいユウ!無事か!?』

 

「…キラ、兄さん」

 

 戦闘が終わっても戻ってこない俺を心配したのか、ストライクとメビウスが来てくれた。

 

 スピリットの悲惨な状態を見た二人が、悲痛な声で俺に呼び掛けてくる。

 

「生きてるよ…。何とかね」

 

『ユウ…、よかった…』

 

『ったく、心配かけやがって…。機体は動かせるか?アークエンジェルに戻るぞ』

 

 二機との通信を繋げて返事を返すと、二人から安堵の返事が戻される。

 

 ─────あぁ、そうだ。アークエンジェルに戻らなきゃ。いやでもこれ、動かせんのかな?だいぶ機体ボロボロだけど…あれ?

 

『ユウ?』

 

「─────」

 

 体が、動かない。ていうか、声も出ない。

 

 ゆっくりと、視界が狭まっていく。

 黒く、深く、意識が闇に呑み込まれていくようで─────。

『ユウ?ユウ!返事をして!』

 

『ユウ!しっかりしろっ!…くそっ、艦長!医療班の準備をさせてくれ!負傷者一名、すぐに戻る!』

 

 負傷者って、別にそんなんじゃないって大袈裟な。

 

 あー、でも本格的に駄目だ。もう意識が保てない。

 

 二人の声も聞き取れなくなってきた。

 多分、死にはしないだろうけど…、申し訳ないな、二人には。

 

 きっと、おれのこ、と…しんぱい、するだろ、う…な…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで、ユウの意識は途切れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




SEED解放後のキラの戦闘は原作通りです。ユウの知らないところで、痛い!痛い!がありました。

そしてユウVSクルーゼ…いや、我ながら飛ばしてるなーと書きながら思いました。
なお、開き直ってスピリットもシグーもぼっこぼこにした模様…。
はい、二人ともしばらく出撃できませんね。ユウが出られない間はキラちゃんとお兄ちゃんに頑張ってもらいましょう。
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