フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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感想欄でも度々見られたシャトルの命運や如何に…?


PHASE24 燃え散る命

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「重力に引かれてる…?くっ…!」

 

 キラは機体を方向転換しようとフットペダルを押したが、いつもと比べて足の裏に伝わってくる感覚が重い。

 

 その理由を即座に重力によるものだと判断、操縦系統を微調整してから改めてフットペダルを踏みこむ。

 

 眼前には三つの機影が確認できた。

 デュエル、バスター、そしてイージス。

 

 イージスに引かれそうになるキラの視線は、しかしデュエルの外観を見た途端そちらに引き寄せられる事となる。

 

「デュエル?装備が違う…!」

 

 記憶とは大きく異なった外観に戸惑うキラだが、すぐに気を引き締め直しライフルで狙撃を試みる。

 

「っ、速い!」

 

 見た目は重そうな装備だが、デュエルの運動性能に大きな恩恵を与えていた。

 ビームをあっさりとかわされると、あっという間にデュエルはストライクへと迫る。

 

 振り下ろされるビームサーベルを咄嗟にシールドで受け止めてから、キラはビームライフルをマウントしてビームサーベルへと持ち替える。

 

 デュエルもまた、ストライクの斬撃をシールドで受け止める。

 

 二機の斬撃のぶつかり合いがスパークを起こし、火花が散る。

 

「っ─────!」

 

 激しい一度目のぶつかり合いは、先にストライクが後退する事で終わりを迎える。

 

「アスランっ!余計な真似を!」

 

「言っている場合か!こいつらを地球に下ろす訳にはいかない!時間がないんだぞっ!?」

 

「…ちぃっ!」

 

 デュエルの眼前を、つまり先程までストライクがいた位置を、一条のビームが横切っていった。

 すぐに下手人を断じたイザークがアスランへ通信を通して一喝するも、返って来た正論に口を噤まざるを得なかった。

 

 アスランの言う通り、時間がない事は確かだ。

 屈辱を晴らすべく怒りに身を任せていたかに思えたイザークだったが、まだ状況を判断できる冷静さは残っていた。

 

「この前の様な足を引っ張る真似をしたら、承知せんぞ!」

 

「…あぁ、分かっている」

 

 言い合いながら、ストライクから放たれるビームをそれぞれの方向へと躱す。

 

 躱しながら、アスランは機体の動きが普段より鈍い事を自覚していた。

 キラと同じように機体が重力に引かれていると悟り、デュエルとストライクがビームを撃ち合っている間に操縦系統を微調整してから、アスランもまた仕切り直す。

 

『あの艦には、守りたい人が…友達が乗ってる!アスランがあの艦を落とすつもりなら、私は─────!』

 

 いつか、キラがアスランへ言った言葉だ。

 

 キラがアスランと別れたあの日から、彼女は良い交友関係に恵まれたのだろう。

 優しい筈の彼女が銃を手に取ると決めるに至る程の、友達が。

 一方のアスランは─────いや、そこを比べる必要はないのだ。

 キラにはキラの、そしてアスランにはアスランの戦う理由がある。

 

 それに─────キラ程ではないにしても、アスランにも大切に思える関係はある。

 普段はいがみ合うばかりの関係であるイザークとて、目の前で死んでほしくないとは思っている。

 

 デュエルによるビームライフルとシヴァの連射を掻い潜りながら、ライフルによる反撃。

 そして放たれたビームをシールドで防ぎ、動きが止まったデュエルへと接近していくストライク。

 

「やらせないぞ、キラ!」

 

 それに対し、アスランはストライクの動きを止めるべくビームライフルの引き金を引く。

 

 ストライクは動きを変えてイージスのビームを躱す。

 その間にビームライフルをマウントし、ビームサーベルを出力したイージスがストライクへと迫る。

 

「アスランッ!」

 

「そこをどけ─────と言っても、聞かないんだろう?なら、ここでお前を撃つっ!」

 

「…前も言ったよ。私の大切な人達を殺すつもりなら、私も君をっ!」

 

 ストライクもまたライフルをマウント、背中の鞘からサーベルを抜き、イージスへと斬りかかる。

 

 二機は互いの斬撃をぶつけ合いながら交錯。

 

 間合いを見計らい、再度交錯。

 直後、イージスが左足のサーベルを出力し、すれ違いざまにストライク目掛けて振り上げる。

 

「っ─────!」

 

 その前にキラが機体を動かす。

 辛うじてイージスの斬撃を回避したストライクは、足を振り上げた状態のイージスに向かってスラスターを吹かせる。

 

 それに対し、すぐさま機体の体勢を整えたアスランは、シールドを構えてストライクを迎え撃つ。

 

 再度衝突。

 したかに思えば、弾かれるように互いが距離を取る。

 

「アスランッ!えぇいっ、鬱陶しいんだよ!」

 

「お前の相手は俺だ!行かせるかよっ!」

 

 激しい攻防を繰り広げる二機を見て、ディアッカが援護へ向かおうとするも、ムウが巧みにガンバレルを操りバスターの進路を妨害。

 

「っガモフ!?ゼルマン艦長、何を─────!?」

 

 その一方、ストライクとイージスの攻防を少し離れた箇所で見つめ、介入の隙を窺っていたイザークが、艦隊の戦列の内側へ入り込み、なおもメネラオスに向けて突っ込んでいくガモフの存在に一番に気付く。

 

 そして、デュエルとの通信を通し、アスランとディアッカもまた、合間を置かずにガモフに気付いた。

 

「メネラオスがっ!?」

 

「くそぉっ!」

 

 

 メネラオスに迫るガモフに気付いたのは、キラ達もまた同じだった。

 

 二人共、それぞれの交戦の相手を振り切り援護へ向かおうとする。

 

 しかし─────

 

「デュエル!?」

 

「くそっ!あいつ!」

 

 その前に、現時点で戦闘行動を起こしていなかったデュエルが真っ先にガモフの援護へと向かう。

 慌てて二人もメネラオスを救うべく機体を進ませようとする。

 

 が、

 

「行かせないぞ、キラっ!」

 

「つれないじゃないの。途中で逃げ出そうなんてさぁっ!」

 

 その前にイージスとバスターが立ちはだかる。

 

「アスラン…っ!」

 

「邪魔なんだよっ!道を開けろぉっ!」

 

 ストライクとイージスが再度衝突。

 そして、メビウス・ゼロのガンバレルがバスターに向けて展開される。

 

 ガモフの思わぬ突貫によって一瞬空いた空白は、再び激しい戦闘の火花に埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何をしている、イザーク!とっとと戻らんかっ!』

 

「ゼルマン艦長、何を!?」

 

『我らは何としてもここで、足つきを落とさねばならんのだ!分かっているのか!?』

 

「分かっています!しかし!」

 

『ならば!貴様のすべき事は何か、ハッキリしている筈だ!』

 

 四機による戦闘宙域から離れ、ガモフの援護へと機体を向かわせていたイザークの耳に、ガモフの艦長であるゼルマンの喝が入る。

 

 彼の言う通り、足つきをここで落とさねば、ここまでの絶好の機会が次に訪れるとも限らない。

 

 イザークとてそれは分かっていた。

 だが…それでも、イザークの若い心は未だ非情になり切れずにいた。

 

『ゆけっ、イザーク!足つきとストライクを落とせっ!これは命令だ!』

 

「っ…!くっそぉぉぉおおおおおおおっ!」

 

 涙を堪え、機体を反転させる。

 

 割り切っていた筈だった。

 これは戦争で、いつか、身近な誰かが死ぬかもしれない。

 それでも戦い続けると、ザフトの軍人として決意を固めていた筈だった。

 

 初めての出撃から、近くで見守っていてくれた存在が今、背後で炎を噴き上げながら沈んでいく。

 

 敵の旗艦と刺し違え、自分達の道を開いてから、大気の中へと引き摺り込まれていく。

 

 イザークの胸にもう迷いはなかった。

 

 イージスと交錯を繰り返すストライクへ狙いを定め、ライフルとシヴァを同時に連射。

 

 デュエルの接近に気付いたストライクがメインカメラを向けたと同時にその場から離れ、砲撃を避ける。

 

「落ちろぉっ!お前は、ここで、俺がっ!」

 

 砲撃を避け、後退していくストライクへ向けて、イージスと入れ替わる形で突っ込んでいくデュエル。

 

 ライフルをマウントし、サーベルを抜いてストライクへと斬りかかっていく。

 

 機体の動きが重い。

 だが、関係はない。

 スペック上、単独でも大気圏を突破できるのだから、このまま戦闘を続けても問題はない。

 

 眼下に迫る青い星を気にも留めず、イザークはただ、目の前の仇敵を討つべく刃を振るうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!フェイズスリー、突入限界点まで二分を切ります!融除剤ジェル、展開用意!」

 

「ゼロとストライクを呼び戻せ!」

 

 降下シークエンスはいよいよ佳境を迎えていた。

 オペレーターからの報告に反応し、バジルール少尉が声を上げる。

 

 そんな中で、俺はモニターから目線を離せずにいた。

 

 モニターには満身創痍の二隻の艦が、装甲を大気との摩擦で焼かれながらもなお、互いを撃ち合うのを止めずにいる様子が映し出されていた。

 

 不意にガモフの内部が爆発し、連鎖的に誘爆が起こり始める。

 その一方で、メネラオスはまだ辛うじて持ちこたえていた。

 だがそれもそうは持たないだろう。

 

 激しい戦闘による被弾の連続で装甲は殆ど意味をなさないまでに傷がつき、大気の熱によってなおも傷つき続ける。

 離脱をしようにもエンジンは機能せず、重力から抜け出す事は叶わない。

 

「─────」

 

 ふと、メネラオスの近くで小さな光を見た。

 

 それがヘリオポリスの避難民を乗せたシャトルだと、すぐに分かった。

 

「キラ!キラ、戻って!」

 

「ストライクとの通信は!?」

 

「駄目、繋がらない!」

 

 背後で必死にキラへ呼び掛けるミリアリアへ状況を確認するも、返答は予想通りのものだった。

 ストライクとの通信は途絶状態で、行き交う報告の声で搔き消されながらも、微かにノイズの音が耳に届く。

 

「メビウス・ゼロ着艦!」

 

「フェイズスリー!融除剤ジェル展開!」

 

「艦、大気圏突入!」

 

 緊張で上擦った声による報告が続けざまに飛ぶ。

 

「キラ…!」

 

 せめて…せめて、通信で呼び掛ける事が出来れば。

 何か少しでも、キラに力を貸す事が出来たかもしれないのに。

 

 胸に込み上げる無力感を抱えながら、イージスとデュエルを相手に必死に立ち回るストライクを、モニターを通して見守る事しか、今の俺には出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち込まれるデュエルの斬撃をシールドで受け、力一杯押し返す。

 跳ね飛ばされながらもデュエルはライフルを撃ち、キラは機体を退かせながらもライフルを撃ち返す。

 

 本当ならば、相手に狙いを捕捉されないように動き回りたい所なのだが、重力の影響は先程よりも重く、機体はもう思う様に動いてくれない。

 

 今すぐにでも離脱すべきだ。

 キラも、敵も。

 それでもなお、デュエルは執拗にストライクに追い縋り続ける。

 

「しつ、こいっ!」

 

 ライフルを撃ちながら突っ込んでくるデュエルに、キラもまた機体を相手に向けて進ませる。

 

 ビームを機体を傾ける事で回避しながら、シールドでデュエルのライフルを払いのけ、相手が体勢を崩した隙に回し蹴りを喰らわせ地表へ向けて蹴り飛ばす。

 

 大きく後退を余儀なくされたデュエルを見て、この隙にとキラは離脱しようとする。

 

 しかし離脱しようとしたストライクの目の前に、今度はイージスが現れる。

 

「キラっ!」

 

「アスラン…!」

 

 イージスの右腕部から出力されたビームサーベルが振り下ろされ、それに対してキラはシールドを掲げる。

 一方のキラも、ストライク背部の鞘からビームサーベルを抜き放ち、振り下ろす。

 

 振り下ろされる斬撃を舞う様にひらりと躱したイージスは、スラスターを吹かせ再びストライクへと迫る。

 

 対するストライクもまた、迫るイージスへとサーベルとシールドを構え接近。

 

 斬撃とシールドをぶつけ合いながら、一度、二度、三度と交錯。

 

「はぁっ…、はぁっ…!」

 

 大気圏という灼熱の世界は、機体の中にまで影響を及ぼし始めていた。

 

 パイロットであるキラの額からは汗が滲み、激しい戦闘による疲労も相まって、いよいよキラの呼吸が乱れ始める。

 

 それでも、キラはイージスを─────敵を見据える。

 

「まだ…私はっ!」

 

 戦える─────。

 

 体はきついが、それは相手も、アスランも同じ筈だ。

 昔から身体能力お化けで、体力も人外染みていたアスランも、本当は人間─────の、筈。

 この温度はアスランだって、相当に辛い筈なのだ。

 

 途切れそうになる集中の糸を必死に繋ぎ止めながら、キラは再度機体のスラスターを吹かせようとして────視界の端を横切ったものに動きを止めた。

 

「あれは…!」

 

 それはメネラオスのシャトルだった。

 本来ならキラ自身もその中にいた筈の、ヘリオポリスからの避難民が乗っているシャトル。

 それが偶然、ストライクとイージスの戦闘宙域へと彷徨い込んだのだ。

 

「っ─────!」

 

 シャトルの向こう側、ライフルを構えるデュエルを見つけたのはほんの偶然であり、奇跡に等しい事だった。

 そして銃口が向けられている先が自分ではなく、シャトルである事に気づいた事も、また─────。

 

「ダメ─────っ!それには…っ!」

 

 ビームが撃たれる。

 

 キラは必死に手を伸ばす。

 

 その先で、無情にも、シャトルはビームに貫かれた。

 

「あ─────」

 

 キラの目の前で爆散するシャトル。

 

 爆発によって煽られる機体。

 

 その中で、キラは叫び続けた。

 

 守りたかった、大切な人達。

 たった数度話しただけの、それでも、戦い続けたキラへ真っすぐにお礼を言ってくれた唯一の人。

 

 守る事が出来たのだという確信は、ただの幻影で。

 

 気付けば、すでにそこには何もなく。

 

 やがて叫び声が途切れたコックピット内部で、擦れた声が微かに響いた。

 

「ユウ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラ…!」

 

 イージス、デュエルとの激しい死闘の果てで、キラの目の前で爆散したシャトル。

 

 その光景を目の当たりにした今のキラの心境は、想像に難くない。

 

 が、今はそれ処ではない。キラの心境も心配だが、それ以上に彼女の身体そのものが現在進行形で危険に晒されている。

 

「本艦とストライク、突入角に差異!このままでは降下地点が大きくずれます!」

 

「キラ!キラ、戻れないの!?艦に戻って!お願い!」

 

 フレイが必死で呼び掛けを始める。

 

「無理だ…。ストライクの推力では、もう…」

 

 バジルール少尉が沈痛な面持ちで呟く。

 その呟きは艦橋中に響き、やがて沈黙が漂った。

 

 モニターには重力に引かれて落ちていくストライクが映し出されている。

 今更、ストライクを収容する事は出来ない。

 今ハッチを開けば高温の大気で内部を焼かれるか、降下姿勢を保つ事が出来なくなるかのどちらかだ。

 

 それ以前に、アークエンジェルとストライクの位置が離れ、ストライクもこちらに戻れないとなれば収容も何もない。

 

 それでも─────

 

「アークエンジェルのスラスターなら、まだ使える筈だ!」

 

 キラを見捨てるつもりなど、更々ない。

 

「艦をストライクに寄せれば、キラは戻って来れる!」

 

「そんな事をすれば艦の降下地点もずれるんだぞ!それを分かって…」

 

「分かった上で言っている!アラスカへこの艦と壊れたスピリットだけで戻る気か!?」

 

 バジルール少尉がこちらへ顔を覗かせながら怒鳴るのに対し、こちらも視線に力を込め、真っ直ぐ見返しながら返答する。

 

 再度流れ始めた沈黙。

 それを破ったのは、ラミアス艦長だった。

 

「ユウ君の言う通りよ。ストライクを失えばそれは大きな損失となるわ。すぐに艦を寄せて!」

 

 ラミアス艦長の命令に従い、ノイマンが艦を動かす。

 

 スラスターが吹かれ、ゆっくりとだが艦がストライクへと近付いていくのを確かめてから、俺は大きく息を吐いた。

 

 とりあえず、これで一段落はついた。

 キラは無事…とは言い難いかもしれないが、とにかく生きて戻って来る事は確かだ。

 

 しかし、安心するのは少し早いかもしれない。

 

「ただちに降下予定地点を算出して!」

 

「少し待ってください、本艦の降下予定地点は─────アフリカ北部ですっ!北緯二十九度、東経十八度!完全に、ザフトの勢力圏内です!」

 

 原作から外れた事が多く起こりながらも、結局辿り着く先は原作通りとなってしまった。

 

 次の敵は─────砂漠の虎、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いや、迷ったんですけどね?でもやっぱ、ガンダムSEEDを原作としてる以上、キャラを曇らせてなんぼというか…ね?
という事でさようなら、シャトル…。キラちゃん曇らせの糧となってくれ…。
大丈夫。曇らせた分だけ後々キラちゃんは強くなる(多分)から、君の犠牲は無駄じゃないよ…。

そしてようやく地球降下まで来れました。
いや…話数掛かり過ぎな?どんだけ掛けてんだワレェ…。

という事で、次回から砂漠編です。
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