フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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前回の後書き…。3R(Romantics)って、「3Pの間違いやろがい!」的なツッコミ待ちのボケだったのに、自分の思惑を通り越して賛同の感想が来るという…(笑)


PHASE27 虎の急襲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「推力は前のものよりも落ちる上に、ウエイトの差も激しい…。これ、もう前のスピリットとは全く別の機体って考えた方が良さそうですね」

 

「だなぁ。少なくとも、スピリット本来のコンセプトは完全に失われたって考えるのが正解だなぁ」

 

 ハルバートン提督が用意した代替案─────スピリットへ搭載される事となった新装備、I.W.S.P.の換装作業の様子を見上げながら、マードック曹長と話し合う。

 曹長が渡してくれたI.W.S.P.のスペックデータを片手に読み進め、頭に叩き込みつつ今後のスピリットでの戦闘方針について固めていく。

 

 I.W.S.P.─────機動力、火力、格闘能力と、三種のストライカーパックの良い所全てを一つのパックに盛り込んだパワーパックだ。

 なお、これだけ聞けばまさに最強の装備と聞こえてくるだろうが、実際はパック本体のデッドウエイトと消費電力の増加により、活かすも殺すも全てはパイロットの腕次第という超絶地雷装備と相成っている。

 ある意味、スピリットと似ているかもしれない。タイプはまるで違うが…。

 

 まさか、ハルバートン提督が言っていた代替案がI.W.S.P.とは…。

 確かこれって本編では出てこなかったよな?カガリのストライクルージュに搭載する予定が、扱いきれなかったって没になったとかで。

 統合兵装というコンセプトだけは、Destinyに出て来たオオトリストライカーに活かされているけど。

 

 んー…。こうして見ると本当に、身軽だった前のスピリットとは別物になるな。

 ビーム兵器の少なさが対G兵器においてネックになるが、そこはスピリットそのものに搭載されたビームサーベルとビームライフルを活かしていけば問題はない。

 

 しかしこれは…、うん、前のスピリットに乗るような心積もりでいたら死ぬな。

 バッテリー消費も、前のスピリットも激しかったがこれはそれ以上だ。

 

「マードック曹長。I.W.S.P.仕様のスピリットのデータをシミュレーターに組み込めますか?流石にこれをぶっつけ本番で出撃は怖いので」

 

「あぁ、それについては安心しとけ。もう作業を始めさせてるよ」

 

 いずれ─────マードック曹長曰く数日の内に完成するという話だが、その間にI.W.S.P.の操縦に慣れておきたかった。

 そう思い、マードック曹長へシミュレーターの準備をお願いしようとしたのだが、すでに準備を始めているという。

 …流石すぎる。

 

「おいユウ。もう休んでなくて大丈夫なのか?」

 

 作業を進めるべく、俺との話を切り上げて去っていくマードック曹長とすれ違う形で、今度は兄さんが俺へ軽く手を上げながら話し掛けてきた。

 

「どうしたのさ、急に」

 

 俺も兄さんへ手を上げながら聞き返す。

 

「いや。夜通し嬢ちゃんの看病をしてたって聞いたからさ。ちゃんと寝たか?」

 

「寝たよ。心配しすぎ」

 

 心配そうに再度尋ねてくる兄さんに、苦笑いを添えながら返事をする。

 兄さんは「そうか」と一言、その後一息吐いてから口を開いた。

 

「嬢ちゃんの様子はどうだった?熱は下がったって聞いたが…」

 

「うん。本当に大丈夫そうだよ。でも、疲れてるんだろうな。さっきまた寝ちゃったよ」

 

「…そうか─────ん?」

 

 あのやり取りの後、これまでの戦いによる疲労が残っていたのか、それに加えて俺へ色んな思い、葛藤を吐き出して安心したのもあったのか、キラは再び眠りに落ちた。

 キラの懺悔に関しては省き、彼女が今寝ている事だけを伝えた…のだが、何故か兄さんは驚き目を丸くする。

 

「さっき?さっきまで、嬢ちゃんと一緒に居たのか?」

 

「?そうだけど、何?」

 

「…いや。別にそれはいいんだが…」

 

 さっきまでキラと一緒に居たのかという質問に頷きながら答えると、何やら逡巡し始める兄さん。

 

 …?

 

「なあ…ユウ。お前、一体どっちを─────」

 

『第二戦闘配備発令!繰り返す、第二戦闘配備発令!』

 

 また何やら俺へ尋ねようとした兄さんの言葉は、艦内に鳴り響いた警報によって遮られる。

 

 反射的に駆け出す兄さんは、一瞬俺へ視線を残してから、格納庫から去っていく。

 

 …兄さんが俺に何を聞こうとしたのかは分からないけど、今はそれについては置いておく。

 

 さて、俺はどうしようか。

 スピリットはまだ出られないし…、最悪、スカイグラスパーの片方を借りて出るか?

 

「すみません!それ、借ります!」

 

「え?ちょっ、ちょっと!?」

 

 思い立ったが吉日、並ぶスカイグラスパーの周りに集まる整備士達へ駆け寄り、その内の一人が握っていた紙をひったくる。

 

 思った通り、スカイグラスパーのデータが紙面に載っており、今の整備士の人には悪いが、今の内に機体のデータを頭に入れさせてもらう。

 スカイグラスパーのコックピットへ飛び乗りながら、実際の機器と紙面を見比べながら、操縦法を頭に叩き込んでいく。

 

「おい坊主!どういうつもりだ一体!」

 

「念のために待機しておきます!スピリットはまだ出られないから、こいつで!」

 

「はぁっ!?」

 

 無論、俺が出撃する必要なく事が終わるのならそれに越した事はない。

 

 しかし、何かあってからでは遅いから。

 

「おい、何の騒ぎだ!」

 

「少佐!いや、その…、坊主が出撃待機するってんですよ!あれで!」

 

「なっ…」

 

 そうこうしている内に、パイロットスーツに着替えて戻って来た兄さんが格納庫へ現れる。

 ふと視線を向ければ、同じくパイロットスーツに着替えたキラが、兄さんの傍らに立っていた。

 

 二人はマードック曹長の指が向けられた先に居る俺を見て、大きく目を見開く。

 

「ユウ!お前、パイロットスーツも着ないで無茶を言うんじゃない!」

 

「戦力は多いに越した事はない!念のために俺も─────」

 

「戦闘機の操縦経験がないお前じゃ、戦力には数えられないって言ってるんだ!」

 

「操縦法はこれで頭に叩き込む!あと数分もあれば戦える!」

 

「馬鹿な事を言うな!弾薬の補充も終わってないんだぞ!?それを─────」

 

 弟と兄による怒鳴り声の応酬が行われる中、艦内に鈍い爆発音が響く。

 それが、敵からの攻撃を迎撃したものによる音だと、この場に居る誰もが即座に悟った。

 

「ユウ!私が何とかするから、ここで待ってて!」

 

「キラ!?だから、俺も─────」

 

「ダメ!戦える機体がないのに出撃しても、意味はないでしょ!?」

 

 また一人で戦おうとするキラへ続こうとするが、正論を叩きつけられて封殺される。

 

 情けなかった。

 キラの隣で戦うって、誓ったばかりなのに─────俺はまた、一人で戦いへ向かうキラを見送る事しか出来ない。

 

 エンジンが始動する震動が微かに艦内を震わせた直後、キラは駆け出してストライクへ乗り込んでいく。

 

 ストライクのハッチが閉まり、彼女の姿が見えなくなってなお、呆然と見上げる俺の肩を背後から兄さんが叩いた。

 

「時には引き下がるって選択も、男には必要だぞ」

 

「…」

 

 兄さんはそう言い残してから、俺と同じように、もう一機のスカイグラスパーへと乗り込んだ。

 

 あれにだって、弾薬は殆ど積み込まれていない筈なのに─────それでも何か役に立とうとマードック曹長と何やら話し合う兄さんの姿を眺めながら、ただただ情けなさに身を震わせる。

 

 俺が何も出来ず、無力に苛まれている間にも状況は刻々と進んでいく。

 

 ストライクが起動後、そう時間を待たずにランチャーストライカーを装備して出撃する。

 

 外の映像は見られないが、スカイグラスパーと艦橋の通信を繋げる事で、辛うじて戦闘の状況を知れる。

 ストライクは苦戦しているようだが、何とか相手のモビルスーツ─────陸戦用モビルスーツ、バクゥを一機撃破。

 

 戦闘開始当初、不安定な砂地の足場に苦しんでいたストライクだったが、原作と同じように、戦闘中にOSを調整してからは戦況が変わる。

 巧みに機体を動かし、更にもう一機バクゥを撃破。続けざまにアグニで戦闘ヘリを撃ち落とす。

 

 極めつけは、敵母艦から発射されたミサイル群をアグニの一射と次々に伝わる誘爆によって落とし、アークエンジェルを守る。

 

 しかし─────キラの奮闘はそこまでだった。

 アグニの酷使により、バッテリーが残り少なくなったのだろう。突如、ストライクはビーム兵器を一向に使おうとしなくなった。

 

 反撃をしなくなったストライクへバクゥが、戦闘ヘリが猛攻を開始する。

 ストライクも懸命に攻撃を避けるが、何発かが着弾。更にストライクのバッテリーを消耗させる。

 

「っ─────!おい、この機体にはどれくらい弾薬が積まれている!?」

 

「は!?え、えっと─────大型キャノン三発分と、中口径キャノンも三発分…。だ、だがそれだけだぞ!?」

 

「充分…!艦長、スカイグラスパーで出る!ハッチを開けて!」

 

 全く弾薬が積まれていない状況すら想定していたのだから、たったそれだけでも積まれているのなら僥倖。

 すぐに艦橋へと呼び掛け、出撃を要請する。

 

『ユウ君!?貴方、パイロットスーツも着ないで何を─────』

 

「そんな事言っている場合ですか!?このままじゃストライクが危ないんだ!」

 

 モニターに映るラミアス艦長が、現在の俺の格好を見て驚愕し目を見開く。

 

 だが、その問答の時間すら惜しい。

 こうしている間にも、ストライクは…キラは、危機に身を晒しているというのに。

 

『艦長!俺も行って敵艦を索敵する!見つけたらレーザーデジネーターを照射するから、それを照準にミサイルを撃ち込め!』

 

『フラガ少佐!?貴方まで何を…、今から索敵しても間に合う筈が!」

 

『やるしかねぇだろうが!ユウ、お前は俺が敵艦を見つけるまで時間を稼げ!そこまで啖呵切ったんだ、落ちるなよ!』

 

 出撃を躊躇うラミアス艦長だったが、兄さんからの援護射撃もあり押さえ込む事に成功する。

 

 俺と兄さんが乗り込んだ機体が順番にカタパルトへと運び込まれ、やがて目の前のハッチが開く。

 

「スカイグラスパー一号機、出る!」

 

『同じく二号機も出るぞ!』

 

 まずは俺が、続けて合間を置かずに兄さんも出撃。

 

 言葉を交わさないまま兄さんは索敵へ、そして俺はストライクの援護へと別々の方向へと機体を向ける。

 

 視界一杯に広がる砂の海。時折視界を妨げる砂の粒の向こう側に、ストライクへと群がるブルーグレーの獣達が見えて来た。

 

「やらせるかよ…!」

 

 一気に機体を加速させる。

 

 まず最初に近付いてくる俺に気付いたのは、空中を飛び回る戦闘ヘリの集団だった。

 

 ストライクへ狙いを定めていた奴らは急旋回し、今度はこちらへと狙いを定める。

 

 向かってくるヘリは三機。その全てが、こちらへミサイルを発射した。

 

 操縦桿を倒して急旋回、発射されたミサイルは空を横切り、やがて何もいない地面で着弾する。

 

 背後で灯る炎に目もくれないまま、戦闘ヘリの集団とすれ違う─────直前に、機体の背面より砲塔式の大型キャノン砲を展開する。

 このキャノン砲は回転砲塔となっており、機体の左右より数えて百八十度に及ぶ範囲において狙いを定める事が可能だ。

 

 戦闘ヘリが俺を追い掛けようとフォーメーションを立て直し、横一列に並んだ瞬間を狙う。

 集団とすれ違いざまに、キャノン砲の引き金を引き、熱線を放つ。

 

 放たれたビームは戦闘ヘリ三機を纏めて撃ち落とし、夜空に三つ、炎の花が咲き誇る。

 

「次っ…」

 

 周囲を見回し、戦闘ヘリはこれ以上いない事を確認してから、今度は地上に集中する。

 

 さっきの一連の戦闘もあり、とっくに俺の存在に気付いたバクゥ隊の内、三機がこちらへ向かってくる。

 

 残りの二機は未だにストライクを執拗に狙い続けていた。

 

「お前らに用はないんだよ…!」

 

 機体の胴体部両側面に装備された、中口径キャノン砲を展開。

 ストライクに当たらない様狙いを定め、二門の砲口を同時に火を吹かせる。

 

 ストライクの周囲を動き回っていたバクゥ二機は一瞬動きを止めた後、放たれた砲撃を回避すべくその場から跳び退く。

 

 命中こそしなかったが、ストライクからバクゥを離す事には成功した。

 これで、ストライクを撤退させる事が出来る…!

 

「キラ、そこから退くんだ!」

 

『ユウ!?どうして!』

 

「言ってる場合か!バッテリーが危ないんだろ!?一度アークエンジェルに撤退して、装備の換装を…っ!」

 

 キラの方へと注意が逸れかけたその瞬間、背筋を奔る悪寒に従い、機体を旋回。

 直後、俺の視界の端を黄色の弾頭が一発、二発と通り過ぎていく。

 

 危ない…、この機体にはPS装甲はない。

 つまり、実体弾でも一発貰えばアウトなんだ。

 

 続けざまに地上から放たれるレール砲を回避し、再度二門の砲口を地上へ向けてビームを撃ち放つ。

 

 これで中口径キャノンは弾切れ─────しかも、撃ったビームも当たりはしなかった。

 

 知ってはいたが、こうして実際に対峙して初めて分かる。

 バクゥというモビルスーツの、地上での有用性が─────。

 

「早く退け!換装に成功すれば、俺達の勝ちだ!」

 

『っ…、すぐ戻るから。それまで、絶対に落ちないで!』

 

 ストライクがバーニアを吹かせ、アークエンジェルへと向かう。

 

 それを追おうと、バクゥが三機、ストライクの方を向くが─────。

 

「お前らの相手は、俺だ!」

 

 そいつらへ向けて、注意を引き付けるべく機体を突っ込ませる。

 

 その目論見は成功し、ストライクへ向こうとした機体達は、突っ込んでくるスカイグラスパーの方へとカメラを向ける。

 機体を旋回させつつ上昇、バクゥの頭上を通り過ぎながら、スカイグラスパーは夜空へと飛び上がる。

 

 弾薬が限られ、残り少ない現状でそう易々と牽制目的でビーム砲は使えない。

 何しろ、残り二発なのだ。ここぞという場面…確実に相手を仕留められるシチュエーションに持ち込んでからでないと、もう使えない。

 

 だが、俺の役割は時間稼ぎだ。

 兄さんが敵艦を見つけるまでの、そしてキラが装備を換装して戻って来るまでの時間稼ぎ。

 

 何も俺自身が、敵を全滅させる必要はない。

 

 頼れる味方が戻って来るまでの間、お前らをここから先へは行かせない。

 なに、そう時間は掛からないだろうさ。

 

 だから─────

 

「それまでは、俺に付き合ってもらうぞ」

 

 不安はない。恐怖もない。

 何故なら、俺は一人ではないのだから。

 

 機体を旋回させ、放たれる砲撃とミサイルを躱しながら、地上でこちらを睨むバクゥ達を見下ろした。

 

 爆発するミサイルを背後に、地上のバクゥへと機体を向ける。

 

 ちょこまかと飛び回る戦闘機にしびれを切らしたか、二機のバクゥが跳躍し、こちらを踏み潰そうと襲い掛かって来る。

 

 それに対し、笑みを以て俺は迎え撃つのだった─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




弾薬限られた状態のスカイグラスパーで暴れ回るユウ君、すげぇ主人公してる…(呆然)
アグニ一発でミサイル群撃ち落とす原作主人公もそうだけど、ビーム砲一発で複数機体撃ち落とす君はNTなんですか?

あ、パーフェクトフラガでしたね…(すっとぼけ)
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