性転換タグを見て何となく予想が出来ている人はいると思います。
そしてその予想は恐らく当たっています。
という事で、あの子が登場します。どうぞ。
モビルスーツのパイロットになる。その為に必要になるのは操縦技術は勿論の事、機体の中身の知識も必要になるのは必然だった。
学校はプログラミングを専攻とした所を選択し、正直苦手ではあるが猛勉強をした。毎日毎日、明確な目的があったから何とかなった。前世のやりたい事も見つからない、ただ惰性で生きていた当時の俺が同じ事をすれば気が狂っていただろうと言い切れるくらいには、勉強した。
正直、そこいらのコーディネーターには負けないくらいの知識は持っていると思う。現に、同じ学校に通っていた、成績上位を独占していたコーディネーター達を押し退けて、成績は俺がトップだった。
…かといって、油断をする気もない。完全に油断のせいで当初の目的だったブリッツを逃した俺が言う事ではないかもしれないけど。
「疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結。ニューラルリンケージ・ネットワーク、再構築。メタ運動野パラメータ更新。フィードフォワード制御再起動。コリオリ偏差修正。運動ルーチン接続。システム、オンライン。ブートストラップ起動」
キラのタイピングと比べたらどちらが速いのだろう、なんて頭の片隅で思いながらスピリットのOSの設定を進めていく。
原作で、キラに散々言われていたガンダムの当初のOSだが、本当に酷かった。ナチュラルの自分ならすぐにでも使えるかもしれないとも思ったが、無理だった。というかマリューさんはよくこのOSで、ミゲルのジン相手にそこそこ粘れたよな。PS装甲があったとはいえ。
「…よし、いける」
OSの設定を終え、再起動をかける。設定したプログラムは正常に稼働し、機体に光が灯る。
PS装甲をONにして、スラスターを吹かせた機体が宙へと飛び上がる。
全身に覚える奇妙な浮遊感。パイロットスーツを着ていないからだろうか。経験がないから違いというのは分からないが、全身を包むこの感覚が異様に強く、なのに不快を感じない。
「ストライクは…?」
スピリットのOS設定に集中していたせいで気付かなかったが、すでにその場にストライクの姿はなかった。だとすれば、すでにジンとの交戦に入っていると思われる。
「…居た!」
レーダーに反応、同時にメインカメラにもその姿が映し出される。
すでにPS装甲を展開し、見覚えのあるトリコロール色に染まった機体、ストライク。そして、濃いグレー色に染まったジン。
2機はすでに戦闘を開始していた。
突撃銃を放ち、ストライクを牽制するジンと、実体弾をPS装甲の特性によって防ぎながら距離を取るストライク。
あの動き、恐らく操縦しているのはキラ・ヤマトだ。失礼かもしれないが、マリューさんじゃあの動きは出来ない。
ジンの銃撃を防ぎ、回避しながらもストライクは反撃に出ない。…もしや、今現在、キラはストライクのOSを書き換えている途中なのか?
俺の方がOSの書き換えが早かった?…いや、思えば初めにストライクを操縦したのはマリューさんだ。その時間差がここで影響したか。
「っ…!」
ジンが突撃銃を撃ちながらストライクへ接近、そのまま懐へ入り込んだかと思えば、重斬刀を抜き放った。
PS装甲がある以上、その斬撃をストライクは受け付けない。しかし、衝撃までは撃ち消せず、もろに斬撃を喰らったストライクは大きく体勢を崩した。
考えるよりも先に体が動いていた。ペダルを踏み、スラスターを吹かせる。向かう先は当然、ストライクに更なる斬撃を喰らわせようとしているジン。
急加速によるGに歯を食い縛りながらも、速度を緩めないまま機体を走らせる。
ジンがこちらを向く─────こちらに気付いたか、いや、関係ない。このまま!
スピリットによる体当たり。思わぬ攻撃を受けたジンは大きく吹き飛び、後方の建物を壊しながら地面へ尻もちを突く。
「っ、そうだ、武器は!」
そこで、自分が今、武器を手にしていない事に気付いた俺は画面を呼び出し、この機体に搭載されている武装を確認。
「ビームライフルと、ビームサーベル2本…。くそっ、これだけかよ!」
外観を見る限り豊富な武装を持ち合わせている様には見えなかったが、バリエーションがあまりにシンプル過ぎる。
思わず毒を吐きながらも、背中にマウントされたビームライフルを構え、銃口をジンへと向けるのだった。
急にヘリオポリスが襲われて、逃げようとしたら教授のお客さんだという女の子がどこかへ走り出して、追い掛けて行ったら見た事のない3機のモビルスーツを見つけて。
シェルターに避難しようとしたけど、入れるのは一人が限界だと言われたから、その女の子を押し込んで別のシェルターに逃げようとした。だけど、ザフトと戦闘していた地球軍の人にもう逃げられる場所は近くにないと言われてしまって─────。
助かる為には、その人と一緒に行動するしかなかった。
だけど途中、月で別れた親友を見た気がして─────その事について考える間もなく、地球軍の人と一緒にモビルスーツへ乗り込む事となってしまった。
状況を呑み込む前に繰り広げられる、ジンとの戦闘。だけど、機体の動きはどう見ても覚束なく、もしやと思い地球軍の人を座席からどかしてOSを覗いてみれば、それはまあ滅茶苦茶だった。
そこからは無我夢中。助かるには目の前のジンを撃退しないといけない。その為には、この機体を
滅茶苦茶だったOSを書き換える。その最中をただ見ている訳もなく、ジンからの攻撃を途中で避けながらもOSの書き換えを進めていた。
「えっ、消え…」
「下よ!」
背後からの警告に反応する前に、直前消えた風に見えたジンが目前に現れる。かと思えば、横合いから強い衝撃を受けた。
「きゃあああああああああっ!!?」
「ぐぅっ…!」
機体が大きく揺れる。操縦桿を強く握り締め、何とか機体が倒れる事だけは阻止したけど、思わず瞑ってしまった目を開いたその時には、ジンはまたも目の前に居て、更なる追撃を加えようとしていた。
反撃─────何かをしなければと焦る心情とは裏腹に、体が動いてくれない。
死ぬ…?
そんな予感が心を過った時だった。突然、ジンが吹き飛んだかと思えば、目の前に現れる黒い影。
「─────え、なに…?」
「こ、これは…」
何が起こったか分からない
「スピリット…!」
「…スピリット?」
目の前の黒い機体はこちらに背を向けて、銃型の兵器を取り出して吹き飛んだジンの方へと向ける。
…この機体は、味方なの?私達を助けようとしているの?
分からない。分からないのに、どうしてだろう。
(もう、大丈夫)
頭の中から全身へ伝わる温かい感覚が、私に安心を与えてくれていた。
「…まだ、来るか?」
巻き上がった礫の中で、ジンが立ち上がるのが見える。こちらに向けられるジンのモノアイ。構えられる重斬刀。
まだ相手の戦意は衰えていないらしい。当然だ。不意打ちを喰らったとはいえ、相手からすればこちらは性能が上の機体とはいえ、乗っているのは格下のひよっこでしかないのだから。
「アーマーシュナイダーみたいな小型の刃物があれば…」
カメラに映る、周囲で逃げ惑う一般人。スピリットに搭載されているビームサーベルがどれほどの規模かは分からないが、この場で振り回すのは正直戸惑われる。
今この場で使えるのはビームライフル─────いや、コロニーの壁に当たればダメージになる。使うにしても、弾数は絞らなければ。
「…この場から離れるようにジンを誘導。一般人がいない所まで行けば、ビームサーベルを振るえる」
だとすればこれしかない。この状況、ただ逃げれば即座に相手─────ミゲル・アイマンは誘導だと勘付くだろう。
ミゲルは原作でキラにあっさりやられてしまったが、実際には二つ名が付けられるほどの腕を誇るパイロットなのだから。
「上手くやれよ、ユウ・ラ・フラガ…!」
誘導だと悟られれば、すぐにミゲルはストライクへと狙いを移す筈だ。いや、最悪それでもいい。
せめて、キラがストライクのOSの書き換えを終わらせるまで、時間を稼いでみせる─────!
ジンが重斬刀から突撃銃へと持ち替える。それを見た俺はスピリットを動かし、その場から離れる。
ジンは突撃銃を数発撃ってから、離れる俺を追い掛けてくる。それを見た俺は、カメラを見つつ、ジンが追い掛けてくる軌道上に人がいない事を確認してからビームライフルを構える。
引き金を引き、放たれる一条の光線はあっさりと躱されてしまう。
スピリットのビームライフルと、ジンの突撃銃による銃撃戦。スピリットが放つビームをジンは軽やかに躱していき、一方スピリットはジンの銃撃を時に躱し、時にPS装甲で防ぎつつ、互いの位置を入れ替えながら牽制を続けていく。
「─────ここなら!」
銃撃戦を繰り広げながら、俺は当初の目的通りジンの誘導を成し遂げた。市街地から離れた場所、ここならば人はいない。障害物もなく、ビームサーベルを振るえる!
スピリットを転進させる。突如、スピリットが進路を変えた事に驚いたか、ジンの動きが一瞬緩む。それでもすぐに武装を取り替えた所は、名パイロットと言えるだろう。
しかし、ジンの重斬刀では、この斬撃は防げない。
腰の鞘からビームサーベルを抜き放つ。スピリットの斬撃が、ジンの武装を斬り払い、続け様に振り下ろしの斬撃が今度はジンの左腕を斬り落とす。
「これで、終われっ!」
斬撃を放った勢いのまま機体を回転させ、今度は右足でジンのコックピット付近に蹴りを与える。
大きくよろけたジンは先程の様に転びはしない。が、後ろにたじろぎ、そのままスラスターを吹かせて後退していく。
片腕を失ったからか、こちらに背を向けてそのまま撤退していった。
「…一先ず終わった、か」
とりあえず、この戦闘が一段落した事に安堵し、大きく息を吐く。
それと同時に、今、自身が成し遂げた事に対して信じられないという思いが湧き上がって来た。
「…勝ったのか。俺が。相手が─────ミゲルが油断していたからとはいえ、俺が」
初めてのモビルスーツの操縦。だというのに、ガンダムSEEDの世界で名うてのパイロットであるミゲルを相手に、勝利を遂げた。機体性能のごり押しではあったが、とにもかくにも勝てたのだ。
とはいえ、よくもまあこんなものを操縦できたものだ。我ながら驚きだ。
フラガ家の伝手を使い、とあるフラガ家に大恩がある将校に働きかけ、大西洋連邦が鹵獲したジンのマニュアルを手に入れ、徹底的に頭に入れ込んだ。
同じモビルスーツである以上、操縦方法自体はそこまで変わらないだろうと思っていたし、現に殆ど一緒だった訳だが─────それでも初の実戦があそこまで上手くいくとは思わなかった。
次はこうはいかないだろうが…。
『………ット。X106スピリット!応答しろ!』
「っ…」
自身に備わった能力に愕然としていると、通信機器から聞こえてくる緊張に満ちた女性の声。
…マリュー・ラミアスだ。
「…こちらX106スピリット。ジンの撃退に成功。…すぐにそちらへ向かいます」
『っ、お前は…!…いえ、分かりました。話はこちらへ合流し次第、聞かせて貰います』
マリューさんの鋭い声を最後に、通信が切られる。
…さて、と。状況が状況とはいえ、勝手に軍の機密を見て、触って、挙句に操縦した。言うつもりはないが、俺が意図してこの機体に乗り込んだ以上、あちらからすれば俺は完全にテロリストだ。
「どうやって交渉しようか。…交渉か。出来るかな…?」
機体をストライクがある方へと戻しながら不安を溢す。
え?ジンのマニュアルを手に入れた時はどうやったのかだって?
親父の執務室を調べに調べて出て来たその将校さんの黒いあれやこれやをこれでもかと強請っただけですけど?あんなのはね、交渉じゃないよ。脅迫って言っていいね。
でも今回はそんな事出来やしない。強いて言うなら、このスピリットを操縦できる俺は戦力になると推すくらいだけど…というか、それしかないよな、もう。
んで、地球軍に志願する。これで何とか罪を逃れるしかない。逃れさせてくれ、お願い…。
「…ん?」
ジンを誘導するために離れたとはいえ、モビルスーツを以てすればそう時間を掛ける事なく戻る事が出来た。
機体をストライクの隣へと降ろしてから、ふとカメラを下の方へと向ける。
そこにはこちらを警戒する様に睨みつけるマリューさん。そして、その周りにいるヘリオポリスのカレッジに通う学生達─────トール・ケーニッヒに、ミリアリア・ハウ。サイ・アーガイルに、カズイ・バスカーク。
そしてキラ・ヤマト…なんだが。
「見間違いかな…。あれ?」
俺はそのキラの姿を見間違えたと思い、目を擦って再度目を開ける。
なお、当初に見たキラの姿と今見たキラの姿は勿論、変わらない。
「…」
と、とにかくここから降りなければ。ただでさえ警戒に染まっているマリューさんの目が、更に鋭くなっていく。
ハッチを開け、その場からロープを握り、足場に足を掛けてゆっくりと降りていく。
下に居る全員の視線が俺に向けられる。
その中で一人─────キラの目と俺の視線が交わる。
…う、嘘だろこいつ。
ダークブラウンの髪は長く、肩の下辺りまで伸びている。アスランから貰ったロボット鳥、トリィが乗った肩は男性と比べたらやや丸く、そして胸の辺りには男性にはない丸みが帯びていて─────いや、もう現実逃避は止めよう。
こいつキラ君じゃねぇ。キラちゃんだ!?
ユウがモビルスーツのOSの書き換えと操縦が出来る理由→フラガのコネ
多分出来ると思うんですよね。…まあ、出来るって事で(笑)
とりあえず今日の投稿はここまで。これからこのペースで投稿できるかと聞かれるとまあ無理だし、毎日投稿だって出来るか怪しいです。けど、頑張ります。