最近、自分の仕事じゃなく他人の仕事に頭を悩ませるようになりました…。
所謂先輩、上司っていう立場になって、相手に仕事を教えるようになって、分かってはいたつもりなんですが、人って本当に一人一人皆違うんだなと気付かされています。
分かるまで何度も質問してくる人もいれば、一度教えたらあっという間に仕事が出来るようになる人もいて。
学生時代、人付き合いが少ない上に下手だった私にとっては毎日が勉強です。
ペースがめっきり落ちてますが、少しずつ執筆続けています。モチベが落ちてる訳じゃないし、楽しく執筆できています。
…楽しくできている内に投稿ペース上げたいんですけどね。月末は忙しいんじゃ!
ていうか忙しすぎて来月になっても初めの方はペース下がったままになりそうです。
愚痴はここまでにしておきます。本編をどうぞ。ノシ
スピリットのコックピットに乗り込み、I.W.S.P.の恩恵を受けた現在の機体状況を技術士から説明を受けつつデータを確認する。
設定として知ってはいたが、こうして改めて見ると、この装備の強さと使い勝手の悪さがよく伝わってくる。
まず利点としては武装の多さだ。
パック上部に二門搭載されたレール砲と、それに並行するようにマウントされた単装砲。パック下部には対艦刀が取り付けられ、これはエネルギー事情を鑑みて実体剣となっている。
そしてシールドは攻防一体の武装となっており、内部にはガトリング砲とビームブーメランがマウントされている。
こうして見れば、以前までのスピリットの弱点であった火力の低さが一気に解決された様に思える。
が、当然この武装には欠点もある。
以前も言った、武装自体の重量と燃費の悪さもそうだが、スピリットの元のスラスターを代用してI.W.S.P.が採用された以上、以前までのスピリットの機動力は永久に失われた。
スピリットは他のXナンバーの機体と比べて重量が軽く、機動力が出しやすい設計となっているが、それでも以前までのスピリットの異常なまでの機動力はまず出せない。
となれば、戦闘スタイルの変更を求められる。
その為にマードック曹長にお願いしてシミュレーターを準備して貰ったが、ここまでにそれを熟す時間はなかった。
「ガトリング砲はあっても使わない気がするな。ビームブーメランはあっても損はないか…?」
「コンバインドシールドは外して、スピリット本来のシールドを使うって手もあるが」
「…んー」
ガトリング砲は正直戦闘中で使うビジョンがまるで見えてこない。
ビームブーメランはあれば便利な気はしてくるが、なくて困るかと聞かれれば正直微妙な気がする。
…いっそ、この人の言う通りスピリットのシールドを採用してしまおうか。
「そうします。お願いできますか」
「了解。マードック曹長!シールドの事なんですが─────」
技術士の男がキャットウォークから身を乗り出しながら、スピリットの足元にいるマードック曹長へ声を掛けようとした、その時だった。
「はい、どいたどいた!スカイグラスパーで出撃するぞ!」
ハッチが開いたコックピットの中にも兄さんの声は聞こえて来た。
何事かと顔を覗かせれば、パイロットスーツへ着替えた兄さんがスカイグラスパーへ乗り込もうとしているのが見えた。
「兄さん!何があったの!」
身を乗り出しながらそう呼び掛ければ、兄さんはこちらを見上げて口を開く。
「虎さんが動き出したみたいでな!レジスタンスの町が燃えてるってんで、偵察に行ってくる!」
兄さんからの返答を聞いてから、そういえばそんな事もあったかと思い出す。
確か、町は燃えたが住人は皆無事で、だけどその所業に激昂した明けの砂漠の一部のメンバー達が無謀にもバルトフェルドを追って─────
「…すみません、少し作業をお任せしても良いですか。武装に関してはシールド以外はそのままで」
「は?あ、あぁ。分かったけど…お、おいっ!」
男にそう言い残してからコックピットを飛び出し、リフトで下階へ降り駆け出す。
─────もうデータは入力してあるって言ってたよな。
向かう先はシミュレーター。座席に腰を下ろし、電源を呼び起こす。
何事もなければそれでいい。
だが、原作ではこの後、明けの砂漠とバクゥ隊による戦闘が起き、ストライクがその戦闘に介入する事となる。
もし原作通り、その戦闘が起きたなら─────今の内に少しでも、慣熟訓練を行っておくべきだろう。それがどれほどの効果を生むかは分からないが。
戦闘なんて起こらなければいい。何事も起こらないのが一番だ。それが俺の中で最も重要な大前提である。
しかし、この世界はそんな淡い希望を叶えてくれるような優しいものではなかった。
訓練を始めてから一時間ほど経った時だった。
ラミアス艦長よりキラへ、ストライクの出撃が命じられたのだった。
タッシルの町は燃やされた。家も、食料も、燃料も、弾薬も、全て炎の海の中へ消えていった。
しかし、命だけは確かにそこに残されていた。
町に住んでいた人達は生きていて、それに彼らが安堵を覚えた事は確かだった。
次に心に湧いてきたのは怒りだった。
死んだ人はいないが、全て焼き払われた。明日を生きる力と術を奪われ、憤る彼らへ淡々と声を掛ける者が居た。
「だが、手立てはあるだろ?生きてさえいりゃさ」
「こんな事で済ませてくれて、砂漠の虎ってのは随分優しいお人じゃないの」
ふざけるな─────。
未だに火勢の衰えない町を前に、よくもそんな事が言える。
カガリは燃え上がる激情に逆らいもせず、軽い声の主であるムウへと詰め寄った。
「こんな事?町を焼かれたのがこんな事か!?これのどこが優しいというんだ!」
「気に障ったんなら謝るけどね。けどあっちは正規軍だぜ?本気だったらこんなもんじゃすまないって事くらい、わかるだろ?」
「あいつは卑怯な臆病者だ!我々が留守の町を焼いて、それで勝ったつもりか!?我々はいつだって勇敢に戦ってきた!昨日だって、バクゥを倒したんだ!」
カガリの声に賛同し、レジスタンス達がムウへと冷たい視線を送る。
「卑怯で臆病なあいつは、こんなやり方で仕返しするしかなかったんだ!何が砂漠の虎だ!」
この時、カガリだけではなく多くのレジスタンス達の間で、先日バクゥを倒せたという事実が彼らの心を舞い上がらせていた。
だが、彼らの力だけでそれを成したのではない。彼らが介入するまでの間、虎の戦力を減らした地球軍と、何よりそれらの相手をするのに集中しきった虎の隙を運よく突く事が出来たからこその、昨日の結果だったというのに。
その事を忘れ、或いは分からず、
「お前ら、どこへ行く!?」
「奴らが街を出て、まだそう経ってない!今なら追いつける!」
タッシルの町を燃やされた怒りと、ムウから淡々と告げられた現実への憤り。
それらの感情へカガリが更に油を注いだ事により、いよいよ彼らの暴走はリーダーであるサイーブですら止められない程にまで至るのだった。
「ちょっとちょっと、これマジで?」
途中から事の成り行きを見つめるだけになっていたムウは、この事態にようやく慌てだす。
レジスタンス達は次々にバギーへと乗り込み、サイーブの制止も効かず、彼らは走り出す。
暴走する彼らを放っては置けないサイーブも、やがてバギーに乗り込んで彼らを追い掛けて行った。
更にはカガリまでも、若いレジスタンスメンバーと褐色で大柄な体格の男と共にバギーへと乗り込み出発する。
「…風も人も熱いお人柄なのね」
そんなムウの呟きを置き去りに、走り出した彼らを止める者は居なかった。
そして、自身の勝利を疑う者もまた、存在しなかった。
─────どうして、こんな事に。
その果てに待つ分かりきった結末は、ほんの少しでも冷静になって考えれば予知できたというのに。
─────私達は…ただ。
ただ一度の勝利に有頂天になった彼らは、自らの命を喜んで投げ出す選択をとってしまった。
─────あの臆病者に、鉄槌を…。
戦闘とすら言えない、カガリの目の前に広がる光景は、虐殺─────優しい言い方をすれば、弱い者苛めであった。
「あ─────」
待つものは死ただ一つ─────その筈だったのだが、神は彼女を見捨てはしなかった。
一条のビームがバクゥの脇の砂を焼く。
カガリが我に返り、空を見上げる。
太陽の光に照らされながら、飛び来る黒の機体が、彼らの目に飛び込んで来た。
「スピリット…!」
明けの砂漠が独断で砂漠の虎を追ったという報せは、すぐにアークエンジェルへと飛び込んで来た。
そのまま追いつき、戦闘ともなれば間違いなく彼らは全滅する─────そう判断したラミアス艦長は、即座にキラへ出撃を命じた。
が─────俺はその命令に割って入って、スピリットで出撃する事を進言した。
大きな理由としては、戦場が砂漠という特性上、熱対流の関係でビームが曲射してしまう。
主要兵器がビーム兵器であるストライクでは、それはかなりのディスアドバンテージになる。原作のキラは戦闘中にプログラムを書き換えて対応したが、この世界で同じように上手くいくとも限らない。
一方のスピリットだが─────ビーム兵器も勿論搭載されているが、実弾兵器も豊富にある為、ストライク程の悪影響は受けない。
ならば、どちらが出撃すべきかは明らかだった。
勿論、キラにもラミアス艦長にも初めは否定された。
装備を変更したばかりのスピリットで、まだ慣熟訓練を満足に行えていない俺に出撃は命じられない。
前回の出撃ではツッコまれなかったし、影響も受けなかったが両手の火傷についての事も言われたが、先程上げた熱対流による戦闘への影響を盾に、正論(?)を捻じ込み出撃許可を得る事が出来た。
最後までキラに心配されたが、プログラムの書き換えを終わらせたら助けに来てくれと声を掛け、何とか納得させた。
そして現在─────俺は新しいスピリットで、バクゥ隊との交戦に入った。
まず、逃げ惑うバギーを潰そうとするバクゥの脇を狙い、周囲のレジスタンスを巻き込まないよう出力を絞ってビームライフルを撃つ。
ここへ来るまでの間に
それにより、バクゥ隊が振り向きこちらの存在を捉える。
バクゥ隊はバギーの事など無視し、一斉にこちらへと向かってくる。
それに対して、俺はパック下部にマウントされた対艦刀を取り出し、更にスラスターを吹かせる。
やはり以前までのスピリット程ではないが、それでも機動力に優れたスラスターの恩恵を受けながらバクゥ隊の内の一機へと斬りかかる。
四肢を巧みに使って駆け抜けるバクゥはすれ違いざまに跳躍し、こちらの斬撃を回避する。
避けられた─────が、慌てはしない。対艦刀による大振りを避けられる事くらい織り込み済みである。
振り返りながらパック上部のレール砲を二門展開、左右時間差で砲撃を放ち、肩越しに空中で身動きが取れない状態であるバクゥを射撃する。
一発目は上肢に命中、バランスを崩したバクゥへ間髪おかず今度は胴体に二発目が命中。
空中で爆散するバクゥへ見向きもせず、再び対艦刀を構えてバクゥ隊へと向き直る。
目の前に居るのは三機、俺が来るまでのレジスタンスとの戦闘で行動不能となったバクゥが一機、少し離れた所で横たわっている。
─────あれの警戒も怠るなよ。
自身に言い聞かせながら、機体を跳躍させる。
直後、先程まで立っていた場所に数発のミサイルが着弾。
地面に燃え上がった炎を切り裂きながら、一機、バクゥが跳躍しこちらを追い掛けてくる。
二足歩行のスピリットよりも、四足歩行であるバクゥの方が空中での姿勢制御は難しい。
その上、空中で移動できるほどの推力を持ったスラスターを持ち合わせていないバクゥでは、ほんの少しでも体勢を崩されれば終わりだ。
機体制御をしつつ、右足を振るってバクゥを蹴り飛ばす。
続けて再びレール砲を展開しながら、蹴り飛ばされたバクゥを救おうとこちらへ迫るバクゥ隊へ向けてライフルの銃口を向ける。
レール砲とビームライフルを同時に放つ。
蹴り飛ばされたバクゥはレール砲によって撃ち落とされ、ライフルから放たれたビームはバクゥ隊の動きを止める。
スピリットの両足が地面へと着くが、砂で滑る事はなくピタリと着地に成功する。
ストライクのプログラムを参考にしながら、スピリットの設置圧のプログラムを書き換えたが、設定は完璧だったらしい。
「残り三機─────っ!」
動けずにいたバクゥも合わせて残りは三機。
こちらと相手、一旦流れた硬直の間に息を整えようとしたその時だった。
背筋に奔る冷たい感覚、脳裏に過る正体不明の警鐘に従って機体を後退させる。
眼前にミサイルが着弾した事による爆発には目もくれず、機体を左に向けつつシールドを掲げる。
直後、バクゥより発射された弾頭の一発がスピリットの足下に、もう一発がシールドに直撃する。
「来たか…っ!」
歯を食い縛りながら、掲げたシールドの隙間から見える
そのバクゥはこちらと一定の距離を保ちながらスピリットの周囲を旋回しながら、再度二連装レール砲を放つ。
向けられた銃口から弾道を予測し、機体を動かし砲撃を躱す。一連の回避行動の途中でこちらもまたレール砲を展開し、動き回るバクゥへ向けて発砲。
バクゥはその場から低く跳躍しながらレール砲を回避、続けてポッドを展開してミサイルをこちらへ向けて発射する。
ミサイルを発射したのはあのバクゥだけではない。
まるで
これまで相手にしてきたバクゥ隊とは全く違う動きを見せる一機に、ほんの少しではあるが注意が逸れた内に挟み撃ちに遭ってしまった。
前後より放たれたミサイルが、こちらへ迫る─────。
スピリットの戦闘に突如、もう一機のバクゥが乱入してくるよりも時間は少し遡る─────。
「あれは…確か、スピリットといったか?修理が終わっていたのか…。だが、データで見たものと随分恰好が違うな」
スコープを降ろしながらバルトフェルドが呟いた。
先程まで、レジスタンスを相手に虐殺にも等しい戦闘を繰り広げていたバルトフェルド隊だったが、とある一機の乱入者によって旗色が変わり始めた。
X-106スピリット─────ストライクと同じく地球軍が開発した新型機動兵器であり、前回の戦闘では出撃して来ず目にする事が叶わなかった機体だ。
ザフトのトップエースであるラウ・ル・クルーゼと幾度となく交戦し、命を長らえるのみならず、彼の機体を大破させたという実績は、バルトフェルドをも驚かせた。
しかし、地球に居を構えるバルトフェルドの元にも届いていたスピリットのデータとは違った姿が、彼の目の前に現れた。
「データを見た時はかなり身軽なモビルスーツだと思っていたが…思い切ったシフトチェンジをしたものだな」
初め、データを見た時には今呟いた様に、身軽であり、機動力に優れたモビルスーツであるという印象をバルトフェルドは持っていた。
事実、バルトフェルドの耳にも、スピリットに対する
だが今のスピリットは、その異名に相応しい様相をしていない。
スラスターはかなりの推力を持ってはいそうだが、それ以上に目を引くのは機体に搭載された多彩な武装。
かなりの火力を搭載してはいるが、あれでは機体の重量で
しかしそのデメリットを埋めて余りある火力は、確かにバルトフェルドを唸らせる。
そして、その火力を十全に使いこなすパイロットの腕にもまた─────。
バルトフェルドは、視線の中でのそりと立ち上がる、スピリットが現れる前にレジスタンスのミサイルで一時行動不能になっていたバクゥを見つけると、無線を手に取った。
「…カークウッド、代われ」
「『はっ!?」』
虚を突かれて聞き返すパイロットと、運転席に座する副官の声が合わせて聞こえて来た。
「バクゥの操縦を代われと言っている。聞こえてるか?」
『はっ、聞こえます!ですが…』
「な、何を言っているんですか隊長!?」
何やら躊躇っている様子のカークウッドと、非難の調子を漂わせながら呼び掛けてくるダコスタの声。
バルトフェルドも、二人の気持ちが分からないでもなかった。
特にダコスタ。彼が指揮官たる者、どっしりと腰を落ち着けて、他人の働きを見ていろと言いたいのはよく分かった。
だが─────
「今度一杯奢ってやるから!」
バルトフェルドはパイロットとして現在の評価を得るまでになり、そして隊長となった今でもパイロットなのだ。
興味が湧いた相手と一戦交えてみたいと思ってしまうのは、一人の戦士としての本能でもあった。
『…コーヒーではなく、アルコールの入ってるものでお願いしますよ』
「ふむ…。よかろう。君には新作ブレンドを味わってほしかったのだが、それで代わってくれるのなら手を打とうではないか!」
「隊長…」
自分の言葉など聞きもせず話を進める上官へ、困った顔を向ける副官。
そんな副官へ向けて、バルトフェルドはわくわくが抑えられずに浮かんだ笑みを向けながら口を開いた。
「撃ち合ってみないと分からない事もあるんでね」
スピリットがバクゥ三機による挟み撃ちに遭う、ほんの数十秒前のやり取りであった。