フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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パドレスとドジャースの試合凄かった…。
あんな花火大会は初めて見ましたよ、生で見たかったなー無理だけど。

関係ない前書きから始まるPHASE34をどうぞ。


PHASE34 迫る刻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルトフェルドに見逃され、ホテルから出た俺達は、そう時間が経たない内にバジルール中尉達と合流する事が出来た。

 集合時間になっても現れない俺達を探し回っていたらしい彼らに、アークエンジェルへの帰還中に、集合時間に遅れた経緯を説明した。

 

 当然、俺とキラはバジルール中尉からの怒号を受けた。なお、カガリもキサカとサイーブからの怒号を受けていた。

 因みに言えば、俺とキラに関してはアークエンジェルへ戻ってから今度はラミアス艦長と兄さんからも怒号を受けましたとさ。

 めでたしめでたし─────いやめでたくないけどね?とりあえず無事に生きて艦へ戻って来れたという事だけは、ここに記しておく。

 

 俺達が一時行方不明になった以外は特にトラブルは起きなかったという。

 どこかの誰かさんが婚約者を寝取られた腹いせに、勝手にモビルスーツに乗り込んで勝手に動かそうとして格納庫をメチャクチャにする─────なんて事も、勿論起きなかった。

 そのどこかの誰かさんと婚約者は、今のところ良好な関係を築けているし、そんな心配は一切していなかったが。

 とにかく、艦内では何事も起こらなかった事にとりあえず一息つく。

 

「おおっとぉ!」

 

「うわぁ、すげぇ!これで十五機だぜ!?」

 

 そんなこんなで、日用品の買い出しという任務を終えた俺は、一日明けてアークエンジェルの格納庫へと来ていた。

 スピリットの状態を確認する為に来たのだがその途中、格納庫の一角で上がった興奮した声に振り向いた。

 

 声がしたのはシミュレーターがある箇所だった。

 というより、シミュレーターの周りにヘリオポリス組が集まっている。

 フレイ、サイ、トールにミリアリア、カズイ。シミュレーターに座ってるのは…カガリか?

 

「何やってんの?」

 

 答えはまあ分かりきってはいるが、彼らに近付いて声を掛ける。

 

「ユウ!おい見てみろよ、この子!すげぇんだぜ!」

 

「わぁっ!?また一機!」

 

 トールが振り向いて、シミュレーターの画面を指差しながら言う。

 そうしている内に、画面ではまた一機、敵機が落ちていく映像が流れた。

 

 スカイグラスパーのモードに設定したシミュレーターに座り、操縦桿を握るカガリはトリガーを引き、最後の敵機を撃墜すると画面がシミュレーション終了を示す画像へと切り替わる。

 

 次に画面には被験者の成績が並び、カガリの名前がダントツのトップに表示された。

 

 ─────こうして見ると、カガリの才能もだいぶヤバいんだよな。流石はスーパーコーディネイターの姉と言うべきなのか…ん?二位はフレイなのか。

 

 カガリの下にあるフレイの名前に意外を覚えてしまう。

 フレイの下にはトールやサイ、カズイにミリアリアの名前もあり、カガリの成績と比べれば差はあれど、それでもカガリ以外の人達に追随を及ばせない程度には優れた成績が残っていた。

 

 パイロットの才能があるんだな、なんて思ってしまうのは失礼だろうか。

 いやしかし、原作でのフレイのあれこれを見る限り、パイロットの才能があるなんて誰も思わないだろ。

 少なくとも、俺や同じくガンダムSEEDを見た事がある友人の誰も、フレイというキャラクターに対してそういう風に思う人は皆無だった。

 

「おいユウ。お前もやってみろよ」

 

「…え?俺?」

 

 ついつい考え込んでいると、シミュレーターから降りたカガリが得意げな笑みを浮かべながら俺に言ってきた。

 

 …ははーん、此奴調子に乗っているな?

 

「おいおい、流石にユウに挑むのはどうなんだ?」

 

「確かにモビルスーツのパイロットとしちゃこいつには勝てないだろうさ。でも、これなら分からないだろ」

 

 あー、そういえばカガリは砂漠での最初の戦闘で、俺がスカイグラスパーに乗ってた事知らないんだっけか。

 

 うーん…まあ、言う必要はないか。でも急いでやらなきゃいけない事も特にないし、折角だし分からせたろ。

 

「おっけー。えっと…」

 

 I.W.S.P.装備のスピリットのシミュレーションを熟した際に、一応こいつの操作方法は覚えていた。

 一旦画面を元に戻し、スカイグラスパーモードのままでシミュレーションを起動してっと…あれ、難易度?知らんけど、とりあえず一番難しそうなベリーハードでいいだろ。

 

「げっ…。おい、それは…」

 

 いつの間に来ていたのか、シミュレーターを覗いていたノイマン少尉が苦い表情を浮かべる。

 

 あれ、これそんなまずかった?

 …まあ何とかなるっしょ。

 

 なんて軽いノリでシミュレーションを始めたが、割と手応えがあったとだけは言っておく。

 ただまあ、積まれた弾薬数発分だけというバカみたいな縛りがあった上でのあの出撃に比べれば軽いものだった。

 

「え、なに?今何したの?」

 

「すっげぇ!ビーム一発で三機落ちたぞ!?」

 

「ていうか敵の攻撃使って敵を落としてる…」

 

「は?今、背後からの攻撃避けたのか?背中に目でもついてんのかこいつ…?」

 

 興奮気味なのはトール達ヘリオポリス組。

 やや引いてるのはノイマン少尉達、地球軍組。

 後背中に目はついてない。俺はそんなアムロみたいなニュータイプじゃないし、ただフラガ特有の空間認識能力の高さと、それと勘で攻撃のタイミングを予測してるだけだ。

 

 現れた敵機二十機を十分ほどで落とし終え、当然スコアはカガリを抜いてダントツ─────というか、雲の上ともいえるくらいのトップを叩き出す。

 

「そうだった…。こいつ、殆ど弾薬積まれてない状態のスカイグラスパーでバクゥ五機を相手にして生きて戻って来た奴だった…」

 

「はぁっ!?」

 

 背後からノイマン少尉が呆れた様子で呟いているのが聞こえた。

 そしてその呟きは俺以外にも耳にしたらしく、その中でも特にカガリの反応が大きかった。

 

 レジスタンスに参加し、バクゥと戦った経験もあるカガリだからこそ、俺の()()()()がどれだけヤバいものなのかを知っているのだ。

 

「お前馬鹿なのか!?…あっ、あのバクゥと戦ってた戦闘機のパイロットはお前か!スピリットはどうしたんだよ!」

 

「あの時は壊れて出られなかった」

 

「壊れ…あー、頭痛くなってきた」

 

 表情を歪ませながら頭を抱えるカガリ。

 

 そんな彼女を他所に、フレイがシミュレーターに座る俺へと歩み寄って来た。

 

「ねぇ。次私良い?」

 

「え?いいけど…」

 

 フレイはすでに一回、或いは何回かシミューレーションを熟している筈だ。

 というより、これは飽くまでパイロットの訓練の為に使うものであり、こんなゲームで遊ぶようなノリで扱う物ではない。

 

 つい、周りに居る中で俺以外で最も階級が高いノイマン少尉に視線を向ける。

 

「ゲームじゃないんだぞ」

 

「分かってます。訓練と思い、真剣にやらせて頂きます」

 

「…?」

 

 フレイの背後にいるトール達は、もしかしたらまだシミュレーターを使えるかもしれないという期待が大きすぎるのか気付いていない。

 

 そんな中で、フレイだけは他の彼らとは何かが違う気がした。

 

「それならよし!ただし撃墜されたら飯抜き!」

 

 トールを筆頭に、「ええ~っ!?」と抗議の声を上げながらも、結局は彼らもまたシミュレーターに乗るんだろう。

 

 俺が椅子から降りると、間髪置かずにフレイが座り込んだ。

 

「ねぇ、ユウ。もしアドバイスとかあったら、遠慮なく教えて欲しい」

 

「…分かった」

 

 ─────この時、俺はフレイを止めるべきだったのかもしれない。ただ好意としてフレイの頼みを受け入れたこの選択を、後に俺は悔いる事となる。

 

「数が多い…!ちょっ…、後ろからも!?」

 

「敵は前にだけ居る訳じゃないからな。えーっと…うん、背中にも目を付けるんだ」

 

「無理に決まってるでしょ!?」

 

 視界に映る敵だけじゃなく、死角となる位置に居るであろう敵にも警戒をするべきという言葉を、こう…上手い言い回しで表現したかったんだよ。

 そしたら、アムロのあの無茶苦茶な発言が出て来てしまった。

 

 操縦桿を握りながら必死に映像の中の機体を動かしながら、フレイの悲痛な叫びが響き渡る。

 

 なお、意気込んで俺と同じ難易度でチャレンジしたフレイは、数分と経たず落とされてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舷窓から見える、たった今レセップスに到着した輸送機から甲板へ運ばれる赤いボディの()()()()を見て、バルトフェルドはこれ見よがしに大きな溜め息を吐いた。

 

「なんでザウートなんてよこすかね?ジブラルタルの連中は!バクゥは品切れか!?」

 

「はぁ…。これ以上は回せないという事で」

 

 書類をデスクに投げ捨てながら吐き捨てるバルトフェルドに、ダコスタも苦い表情を浮かべながら返した。

 

 ダコスタとしてもバルトフェルドと同じ感想を持ったが、その一方で無理もないと納得する自分も少なからず居た。

 

 あの()()()()が僅か三日間でバクゥ五機を失う等、一体どこの誰が想像できるだろう。

 少なくとも副官であるダコスタには想像できなかったし、この三日間で目の当たりにしたスピリットとストライクの戦いぶりは、ある種悪夢の様にすら見えた。

 

 ザウート─────砲撃支援向けの地上用重火器型モビルスーツだが、砂漠などの悪い足場でも移動が出来るよう、キャタピラを駆動するタンクモードへの変形機構を持ち合わせている。

 しかし、その動きは鈍重で、敏捷さを身上とするバクゥとは雲泥の差だ。

 

 スピリットとストライク─────人型のモビルスーツでありながら、砂漠という地理的不利を背負ったままバクゥにも迫る機動力で動き回るあれらを相手にする以上、ザウートでは固定砲台にしかならない。

 或いは、それにすらならないか─────。

 

「その埋め合わせのつもりですかね。クルーゼ隊のあの()()は…」

 

 ダコスタが舷窓に目をやり、続いてバルトフェルドもまた、再び舷窓から見える甲板へと目を遣った。

 

 輸送機からザウートと共に見慣れない形のモビルスーツが現れる。

 タラップから降りてくる少年三人は、エースパイロットの証である赤いパイロットスーツを身に着けていた。

 

「かえって邪魔になりそうな気がするがな。地上戦の経験はないんでしょ、彼ら?」

 

「一度スピリットを落とす一歩手前まで追い込んでいる、という評価をジブラルタルはしているようですよ」

 

「いやぁ、それも結局クルーゼの手柄でしょ?あいつと同じ期待を彼らにするのは酷だと思うけどねぇ」

 

 言いながら、バルトフェルドは宇宙からの到来者を出迎えるべく立ち上がる。

 ダコスタも続き、二人は甲板へと出ると、輸送機の離陸と共に巻き起こった風に髪が揺れると共に、吹き付ける細かな砂が全身を打つ。

 

「うわ、なんだよこりゃ!酷ぇとこだな」

 

 新来者の内、金髪の少年が声を上げ、手をかざして砂混じりの風を避ける。

 残るの二人も、驚いて顔を顰めていた。

 

「砂漠はその身で知ってこそ─────ってね」

 

 少年達は振り返り、人の悪い笑みを浮かべながら近付いてくる人物をすかし見た。

 

「ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」

 

 途端に背筋を伸ばして、敬礼する少年達にバルトフェルドは順番に視線を向けていく。

 

「クルーゼ隊、イザーク・ジュールです!」

 

 顔を横切る大きな傷痕は、その気になれば消す事が出来る筈だ。それを残すのは、一体彼にとってどんな理由があるのか─────。

 

「同じく、ディアッカ・エルスマンです」

 

 他二人と比べて長身の金髪の少年も名乗る。そして─────

 

「同じく、アスラン・ザラです」

 

 ダコスタには口にこそしなかったが、もしかしたら戦力になるかもしれないと、薄くはあれどバルトフェルドが唯一期待を掛ける人物が名乗った。

 

 アスラン・ザラ─────国防委員長、パトリック・ザラの息子。

 短い歴史であれど、他を圧倒する史上最高の成績で士官学校を卒業した鬼才。

 

「宇宙から大変だったな、歓迎するよ」

 

 バルトフェルドは心にもない事を口にしながら、イザークの顔を─────正確には彼の顔に刻まれた傷痕をじっと見つめる。

 

「戦士が消せる傷を治さないのは、それに誓ったものがあるからだ。…違うかね?」

 

 イザークは一瞬戸惑った後、気分を害した様子でそっぽを向く。

 

「そう言われて顔を背けるのは、()()()()…といった所かな?」

 

「っ─────!」

 

 追い打ちをかけるように続いたバルトフェルドの問い掛けに、イザークの目がカッと見開いた。

 

「イザーク!」

 

 バルトフェルドへ詰め寄ろうと、体勢が前のめりになったイザークの腕を掴みながら、アスランが呼び掛ける。

 

 アスランの声に我に返った様子で、イザークは表情を緩めると、しかしすぐにまたしかめっ面に戻ったかと思えば、乱暴にアスランの手を振り払う。

 

 ─────何とも仲が()()()()な事だな。…だがなるほど、仲間の声に耳を傾ける程度には冷静さを持ち合わせていたか。

 

「隊長…」

 

 一連のやり取りを眺めながら、イザークの批評をするバルトフェルドの背後から、冷ややかな声がした。

 

 つい苦笑いを浮かべながら、バルトフェルドは口を開く。

 

「いや、すまないね。気になる事があると追及したくなる性質でね、気分を害したようだ。すまなかった」

 

「いえ…。それより、足つきの位置は?」

 

「あの艦なら、ここから西方へ百八十キロの地点─────レジスタンスの基地にいるよ。無人探査機を飛ばしてある。映像、見るかね?」

 

「…映像は後で見ます。バルトフェルド隊長には、一つお願いしたい事があるのですが、よろしいですか?」

 

「内容にもよるが…、何かね?」

 

 てっきり喰いつく様な反応をすると思っていたバルトフェルドは、三人の鈍い反応を意外に思いながら、一歩前に出ながらアスランの問い掛けを受ける。

 

「我々の機体はまだ、OSが宇宙仕様のままです。なので、バルトフェルド隊長からOSに関して助言を貰いたいのです」

 

「─────」

 

 今度こそ、バルトフェルドは驚愕を隠せなかった。

 

 クルーゼ隊という宇宙のエリート部隊に所属している彼らは、てっきりプライドの塊だと思い込んでいた。

 いや、現にプライドは高いのだろう─────特にイザークとディアッカの二人は。

 

「…なるほど、良いだろう。僕が直接という訳にはいかないが、部下に言っておくとしよう」

 

「っ、ありがとうございます!」

 

 ─────なるほど、アスラン・ザラか…。

 

 今まで見て来た軍人達とは違う柔らかい物腰に、自身の能力の高さを鼻に掛けない姿勢。

 

「…これは、予想外に良い貰い物をしたかもしれんな」

 

 ぶらぶら歩きながら、艦内へと戻っていくバルトフェルドは不意に小さく呟いた。

 

「?何か?」

 

「いいや、何でもないさ」

 

 背後をついて歩く副官がそれに気づき、何と言ったのかを尋ねてくるが、バルトフェルドはそれに頭を振りながら拒否を返す。

 

 もし、あの三機が砂上でスピリットとストライク程とはいかなくとも、ある程度動けるようになったなら─────。

 

 バルトフェルドは空を見上げながら、やがて来る戦いへ思いを馳せる。

 

 決戦の時は、もうすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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