フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE37 濁る友情

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アークエンジェルっ!?くそぉっ!」

 

 レセップスの頭上を飛び回りながら、廃工場に突っ込んだまま身動きが取れなくなったアークエンジェルに気付いたムウが歯噛みする。

 

 獲物を見つけたりとアークエンジェルへ一斉に飛び掛かる戦闘ヘリを、スカイグラスパーの火器を駆使して落としていく。

 しかし、次から次へと戦闘ヘリは姿を現しキリがない。

 

 更にアークエンジェルを狙うのは何も戦闘ヘリだけではない。

 レセップス─────敵の旗艦、更にその甲板上に座するモビルスーツザウートに、ここまで自分達を追って来たバスターも一緒になってアークエンジェルへ砲火を浴びせる。

 

 このままではまずい─────が、アークエンジェルの装甲を考えればまだ持つ筈だ。

 ならば、アークエンジェルの防衛に回るよりもむしろ、ここは攻勢に出た方が良いかもしれないとムウは考える。

 

 ─────攻勢に出る?アークエンジェルの援護が期待できないこの状況で、自分一機で?

 

 飛び上がれないアークエンジェルは主砲の射線がとれない。

 イーゲルシュテルンで必死で対空防御を続けているが、それだけだ。

 

 だがやるしかない。でなければ、死ぬのはこちらだ。

 

「…やるしかないってか。いいさ、俺は不可能を可能にする男だ!」

 

 躊躇いは一瞬。

 ムウは操縦桿を傾け、機体を加速させる。

 

 スカイグラスパーの接近はすぐに気付かれた。

 アークエンジェルへと群がろうとする戦闘ヘリが、スカイグラスパーの接近を悟りすぐさま方向を変える。

 

 それだけではない。レセップス甲板上でアークエンジェルを狙う、バスター含めたモビルスーツが、一斉にスカイグラスパーへと狙いを定める。

 

「来るなら来いっ!」

 

 覚悟を固めたムウは揺るがない。

 アグニの砲口をレセップスへと向けたまま、更に機体を加速させる─────。

 

 甲板上のモビルスーツによる一斉放火、それをムウは機体を傾け、砲火同士の合間を潜り抜けながらなおも敵艦へと接近。

 

 アグニが火を噴く。

 

 放たれた熱線はレセップスの甲板へ─────命中する前にバスターは離脱、しかしそれ以外のモビルスーツは誘爆に巻き込まれて爆散していく。

 

「よっしゃぁっ!…なに!?」

 

 死の砲撃を掻い潜り、敵旗艦へ一撃を入れた喜びも束の間、直後現れたスカイグラスパー二号機がムウの視界を横切る。

 

「おい!二号機に乗ってるのは誰だ!?」

 

『私だ!カガリ・ユラだ!』

 

 ─────あの嬢ちゃんが…!?

 

 驚愕する暇はなく、レセップスはまだ生きている。

 先程のアグニによる砲撃で主砲こそやられたが、対空ミサイルによる攻撃が二機のスカイグラスパーを襲う。

 

「ったく!墜ちるなよ嬢ちゃん!曹長にどやされるぞ!?」

 

『嬢ちゃんと呼ぶなっ!』

 

 二機の戦闘機は翼を光らせて旋回し、もう一隻の駆逐艦へと向かっていく。

 

 一号機のランチャーアグニが再度火を噴き、二号機が艦体にアンカー()()()()()()()()()を打ち込み、それを支点として急旋回─────駆逐艦の主砲塔をソードで切り裂いた。

 

『どうだ!?』

 

「油断をするな!まだ艦は生きてるんだぞ!」

 

 歓声を上げるカガリへムウは一喝する。

 

 その声にハッ、と我に返るカガリだったが、ほんの少し遅かった。

 

 敵艦へダメージを与え、自分でも戦える─────そう気分が沸いたのが反応の遅れを招いた。

 

 駆逐艦から対空ミサイルが発射され、離脱する二号機を掠める。

 

「嬢ちゃん!」

 

 ミサイルの爆発を受け、黒煙を上げる二号機の姿に肝を冷やすムウだったが、直撃ではなかったのが幸いだった。

 二号機は黒煙を上げたまま砂漠へ軟着陸する。これ以上の戦闘継続は無理だが、あれなら中のパイロットは無事だろう。

 

 着陸した二号機へは、一台のバギーが走り寄っている。

 カガリがバギーに乗っていたキサカに回収されたのを見届けてから、ムウは改めて敵艦を睨む。

 

 敵へ大きなダメージを与えたのは確かだ。

 しかし、未だにアークエンジェルが動けないでいる以上、戦況はまだどちらに有利とも言えない。

 

 ─────その時だった。

 

 バスターが放った砲撃がアークエンジェルの船体を掠めて飛び、建物の残骸を吹き飛ばす。

 途端、アークエンジェルは建物の破片を振り落としながら、その巨体をゆっくりと持ち上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずいわよ、アンディ…!」

 

「足つきめ…!あれだけの攻撃でまだ!」

 

 ラゴゥのコックピットの中で、バルトフェルドとアイシャは黒煙を上げるレセップスに気付く。

 

 廃工場に突っ込み、身動きが取れないアークエンジェルへ集中砲火を浴びせていたのはつい先程まで。

 それまでは落ちるのは時間の問題と思われたアークエンジェルは再び空へと浮かび上がり、対して自分達の艦は勢いよく煙を噴き出している。

 

 手持ちのバクゥはもうない。

 イージスとデュエルはストライクに抑えられ、バスターは甲板から逃れて地上へと降り、空を飛び回るスカイグラスパーと交戦中。

 

 そして、こちらはというと─────

 

「ちぃっ!」

 

 ラゴゥを駆り、スピリットを捉えようとするもその前にビームライフルが火を噴き、前足が被弾する。

 

 咄嗟に被弾箇所を切り離して体勢を立て直し、再度スピリットと対峙する。

 

「少年…、これ程かっ!」

 

「熱くならないで!負けるわ!」

 

「分かっている!」

 

 スピリットがパック上部のレール砲を展開し、ラゴゥへ向けて発砲。

 

 それらの砲撃を潜り抜け、二連装ビームでスピリットを狙う。

 放たれたビームをスピリットはシールドを掲げて防ぎ、その隙を狙ってラゴゥが走り込む。

 

 対してスピリットはビームサーベルを抜き放ち、両者の影が交錯する─────直後、ラゴゥのビーム砲が切り裂かれ、爆発する。

 バルトフェルドは間一髪でそれをパージし、着地した。

 

「まだ、向かってくるのか…!」

 

 ビーム砲を切り裂かれ、片足も奪われ、なおも向かってくるラゴゥへユウは二門のレール砲と単装砲を展開し、四つの砲門を同時に斉射する。

 

 分かっていた─────彼らが、ここで投降するよりもここで死ぬ方を選ぶ人種である事を、ユウはよく知っていた。

 

 それでも─────何も変わらないかもしれない、だがそれでも。

 ユウはラゴゥへと通信を繋げて、声を張り上げる。

 

「アンドリュー・バルトフェルド!軍を引け!」

 

 ─────下らない…!助かる方法はあるのに、それを選ばず死へと突き進む等、心底下らない!意地か何かか知らないが、そんなものは知った事じゃない!

 

「貴方なら分かる筈だ!勝敗はもう決した!これ以上の戦闘は無意味だ!それとも…、()()()()()()()か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピリットとラゴゥ、二機の戦闘の優位性が大きく傾きつつある中、ストライクとイージス、デュエルによる戦闘は一進一退のまま続いていた。

 

 ─────キラ、お前…。

 

 イージスの胸部装甲を殴りつけ、二機の距離を引き離してその隙に離脱─────デュエルのビームとシヴァの砲撃を回避したストライクを見ながら、アスランは驚嘆の気持ちを抱いていた。

 

 ─────お前、そこまで強くなって…!

 

 砲撃を回避したストライクへデュエルが襲い掛かる。

 ライフルからサーベルへ持ち替え、デュエルは刃を一文字に振るう。

 

 コックピットを狙う斬撃を姿勢を低くする事で回避したストライクは、背中の鞘からビームサーベルを抜き放つ。

 

 デュエルはシールドを掲げて刃を防ぐと、肩部のシヴァの砲口をストライクの顔面へと向ける。

 

 至近距離でのレール砲撃、普通ならば必中に等しい攻撃は、ストライクが顔面を傾ける事により回避される。

 

「こいつっ!?」

 

「キラ…!」

 

 砲口の向きで攻撃を読んだのだろうが、それにしてもその反応速度は人外染みている。

 

 イザークは驚愕に目を剥き、アスランは忌み気に歯を食い縛る。

 

「くそぉっ!」

 

 ならばとイザークは背中の柄を掴み、ビームサーベルを抜こうとする。

 しかしその前に、ストライクの回し蹴りがデュエルに命中、衝撃によって機体が大きく左側へと傾く。

 

「ぐぁあっ!?」

 

「くっ!」

 

 衝撃によって漏れたイザークの悲鳴と、デュエルを援護しようとライフルをストライクへ向けていたアスランの声が重なる。

 

 アスランの側からではストライクとデュエルの位置が重なってしまい、ライフルの引き金を引く事が出来ない。

 よって、アスランはスラスターを吹かせて飛び上がらせる。

 

「っ!?」

 

 射線にデュエルが割り込んでしまった事で、アスランからの援護がワンテンポ遅れる─────そこまではキラの狙いだったのだと察する事は出来た。

 だがしかし、その次の行動まで読まれているとは、思いも寄らず─────

 

「アスランッ!」

 

 飛び上がったイージスのメインカメラから届く映像に映るは、すでに至近距離にまで迫っていたストライク。

 

「キラ…ッ!?」

 

 咄嗟にライフルを構えるも、ストライクの拳によってイージスの手から振り払われてしまう。

 更にストライクはシールドを構え、表面をイージスへと叩きつける。

 

「ぐぅぁっ…!」

 

 呻き声を漏らしながらも、大きく崩れた機体の体勢を整えようとフットペダルを踏むも間に合わず、機体の背中が砂地に激突する。

 

 すぐさま立ち上がろうとするアスランだったが、そこへサーベルを構えたストライクが迫る。

 

「ここまでだよ、アスラン!」

 

「キラ…!」

 

 低い姿勢からスラスターを吹かせ、何とか離脱を試みるアスランだが、ストライクが離れずイージスを追い回す。

 

「君の負けだ!ここから退いて!」

 

「っ、何を…!」

 

 負け─────自分が負けた?キラに?

 

 いや、負けるのは良い。軍人として戦う以上、死ぬ覚悟は出来ていたし、キラに殺されるかもしれないという覚悟も固めた上で、アスランはキラの前に立ちはだかる事を選んだのだ。

 そして、キラを自分の手で殺す事になったとしても─────その覚悟も一緒に、胸の内に刻んで戦う事を選んだというのに。

 

「今更何を…!撃てばいいだろう!立ちはだかるのならば俺を撃つと、お前はそう言った筈だ!」

 

「っ…!」

 

「俺はお前に何度も手を差し伸べた!その手を振り払ったのはお前だ!それを今更…、友達面をするな!お前は俺の敵で、俺はお前の敵なんだ!」

 

「アスラン…!」

 

 どうして─────どうしてこんな事になってしまったのだろう。

 

 ただ、友としてキラをナチュラルの手から救いたかっただけなのに─────。

 

「チャンスはあった!お前が俺と一緒に来てさえいれば、俺はお前と戦わずに済んだのに…!俺は、お前と戦いたくなんてないのにっ!」

 

「…その問答はもう終わったよ、アスラン」

 

「キラ!」

 

「そうだね。君は私の敵で、私は君の敵。小さい頃は友達だったとしても…、もう、この事実は変えられないんだ」

 

 ─────違う…違う、違う!俺が言いたいのは、そんな事じゃなくて!

 

「ぼさっとするな、アスラン!」

 

「っ、イザーク!?」

 

 胸中がぐちゃぐちゃに入り混じり、視界すら定まらなくなりつつあったアスランの耳朶を鋭い声が揺らす。

 その声に我と力を取り戻し、思わず声の主の名を上げる。

 

 デュエルを駆り、イザークがストライクへ砲火を浴びせかける。

 が、ストライクはイージスを追う足を止めその場から後退─────デュエルと互いの位置を入れ替えながらライフルを撃ち合う。

 

「…」

 

 アスランの中で、固めた筈の決意と覚悟が揺らぎ始めていた。

 

 どうしてこんな事に─────先程と同じ感情がアスランの中で湧き出したその直後、視界の端でとある光景を捉えた。

 

「あれは…」

 

 それは、バルトフェルドが駆るラゴゥと交戦を繰り広げるスピリットだった。

 

 状況はバルトフェルドにとって良くなく、スピリットの動きと砲撃によってかなりの苦戦を強いられていた。

 

 ラゴゥの前足を捥がれ、それでもなおスピリットへ向かっていくラゴゥだったが、スピリットの斬撃によって二装あるビーム砲の内の片割れが切り裂かれてしまった。

 

「スピリット…!」

 

 アスランの脳裏に過る、ストライク(キラ)と背中合わせに構えるスピリット(ナチュラル)の姿。

 

 本来なら、そこに居るべきは自分だった。

 それを奴が─────スピリットが割り込んだ!

 

「っ─────イザーク、俺はバルトフェルド隊長のフォローに入る!ストライクは一旦任せた!」

 

「なに!?アスラン、何を勝手に…!」

 

 イザークにとって、単身ストライクと戦う事は望む所ではあった。

 だが、余りに突然のアスランの行動に対して、戸惑いはどうしても止められなかった。

 

「隙っ!」

 

「くっ…!くそっ、後でただじゃ置かんぞ!アスランっ!」

 

 その隙を突こうと動くストライクを何とかやり過ごし、一旦距離を取る事に成功したデュエル。

 

 イザークは一瞬、横目でラゴゥを追い詰めるスピリットへ一直線に向かっていくイージスを見遣りながら怒声を張り上げる。

 

 感情が流れたのはその一瞬のみで、イザークは再びストライクへと意識を集中する。

 

「っ、待ってアスラン─────この、デュエル!」

 

「行かせんぞ、ストライク!」

 

 イージスを追い掛けようと機体を向けるキラだったが、その前に立ちはだかるデュエル。

 

「邪魔しないで!」

 

「この傷の礼、ここで晴らしてやる!」

 

 想いと屈辱、相反する気持ちをぶつけ合いながら、二機は激しく交錯を繰り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アスラン「お前は俺の敵」
キラ「そうだね君は私の敵」
アスラン「違うそうじゃない」

??????
アスランハスデニスコシサクランシテイル!
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