SEEDフリーダムの熱に浮かされてアニメを見直しちゃったりしてます。
ちなみに今、フレイがキラに「ホンキデタタカッテナインデショ!」って言ってる所見ながらこの前書きを書いてます。
コックピットから出た俺は地面へと降り立つ。
その間、俺の視線はキラ─────原作とは違う、美少女と化していた彼女から離す事が出来なかった。
どうして、一体何がどうしてこうなってしまったのだろう?
だって普通、思わんやん?キラ君がキラちゃんになってるだなんて、これっぽっちも考えない。分かる訳ないじゃん。こんなの絶対おかしいよ…。
しかも待ってくれ。これ、マジでヤバいだろ。キラが女の子って…それだと、ラクスとのカップリングはどうなるんだ!?
キラとラクスが結ばれて、ハッピーエンドを迎える─────俺の中での一つの目的がこれなんだぞ!?それなのにキラが女の子って…いや、待てよ?
─────キラが女の子になってるのなら、ラクスが男の子になっている可能性だってあるんじゃないか?
いや、この際ラクスが女の子のままでもいい!百合?一向に構わん!
「あの…っ」
様々な混乱を経て、ようやく思考が落ち着きを見せ始めたその時、じっとこちらを見つめていたキラちゃんが一歩踏み出しながら俺に話し掛けようとした。
しかし、そんなキラちゃんを腕を伸ばして制止し、彼女よりも更に一歩前へと出て来たその女性は、俺を鋭い目で睨みつけながら口を開いた。
「私は、地球連合軍大尉マリュー・ラミアスです。単刀直入にお聞きします。何故、貴方はあの機体に搭乗していたのです?」
彼女の目と同じように鋭さと緊張に満ちた声で尋ねてくるラミアス大尉。
「…避難をする為に最も近い工廠区のシェルターへ逃げ込むつもりだったのですが、貴女方とザフトとの戦闘に巻き込まれてしまいました。逃げようとしたシェルターも扉しかなくて…、他のシェルターに行こうにも銃弾が飛び交う中で生きていられる自信がなかったんです。…俺がしでかした事の自覚はあります。ですが、生きる為にも、モビルスーツに乗り込むという選択しか、俺にはありませんでした」
「…なるほど」
一から十まで全部嘘、とはいかないが、まあ八割方嘘である。
偶然工廠区に逃げるしかなく、モビルスーツに乗り込んだのはこちらも偶然の産物だったという説明だが─────まあ、あのスピリットとかいう機体に乗り込む事になったのは偶然ではあるが、あそこに居たのも、モビルスーツに乗り込んだという行動そのものも、偶然ではなく俺の意志だ。
だがそんな事を口にすれば待っているのは死刑囚としての裁きだけだ。
マリュー・ラミアスという女性、今でこそ得体のしれない俺への警戒で満ちてはいるが、元来は人の好い…お人好しとすら言える程の優しさを持った人物だ。
そんな彼女を騙す行為に罪悪感がない訳ではないが、俺もここで道を閉ざす訳にはいかない。
「貴方がした事の自覚はある、と言いましたね」
「はい。…貴女の言う事に大人しく従います」
「安心しました。…あなた達も、申し訳ないけれど、このまま解散させる事はできません」
俺と会話を続けていたラミアス大尉が不意に振り返り、キラ達へと視線を向けながら言った。
何故自分達を見ているのか、この人は一体何を言っているのか─────そう聞きたげの目を浮かべるキラ達に向けてラミアス大尉は続ける。
「事情はどうあれ、軍の機密であるこの機体に触れてしまった以上、あなた達を拘束せざるを得ません。然るべき所と連絡が取れ、処遇が決定するまで、私と行動を共にしてもらいます」
続いた言葉にようやく意味が理解したのか、キラ達の顔色が変わる。
ラミアス大尉が言う事は当然だ。たとえ偶発的な事故だったとはいえ、彼らは軍事機密に触れてしまった以上、一人の軍人としてただで帰す訳にはいかない。
ただその一方で、堪らないのは彼らの方だ。
「そんな!横暴です!そんな事、許される筈がない!」
「僕達はヘリオポリスの民間人です!ここは中立の筈でしょう!?」
「そうだよ!大体、何でこんな所に地球軍がいて、こんなモビルスーツまであるんだよ!まずそこから可笑しいだろ!」
見ようとして見た訳じゃない。触れようとして触れた訳じゃない。全て意図した事ではなく、ただの事故で、それもその事故に巻き込んだ元凶に偉そうに拘束すると言われる。
戦争に巻き込まれるのが、こういった事態に巻き込まれるのが嫌で彼らは中立に居るというのに─────それでも。
「それでも、外の世界では戦争をしている」
「え─────」
小さく声を漏らしたのは誰だろう。
腰のホルスターに置かれたラミアス大尉の手が拳銃を抜く前に、俺が言葉を漏らす。
「…不満だろうけど、悪い事は言わない。今は大人しくこの人の言う事に従った方が良いよ。大丈夫さ、君達がこれについて知ったのはただの偶然なんだから。そう不都合な事にはならない」
呆然とこちらを見るキラ達。その中で、一番近くで俺の顔を眺めていたラミアス大尉に視線を向け、微笑みかけながら俺は。
「ね。そうでしょう?」
「え…えぇ。私は何も、あなた達を罪人として裁こうとしている訳ではありません。ただ、一人の軍人としてあなた達を知らぬ存ぜぬで見逃す訳にもいかない。…可能な限り早く、あなた達が元の生活に戻れるよう努力はします。ですが今は、私と一緒に行動してほしい」
さっきまでの尊大な態度とは打って変わり、誠心誠意が籠もったその態度に、これまたさっきまで不満を漏らしていたトール達も勢いが削がれる。
「…経緯はどうあれ、機密に触れたのは事実だもんな。すぐに解放してくれるんなら、あんたと一緒に居るよ」
「それしかないか。それに、この状況じゃむしろ、軍の人と一緒に居た方が安全かもしれない」
トールとサイが思い直し、言う。その言葉に賛同して、カズイとミリアリアが同時に頷いた。
そんな彼らを見ていたラミアス大尉が、ほんの少し笑みを溢す。
「ありがとう」
原作とはやや違った流れにはなったが、キラ達がマリューと一緒に行動する軌道には乗った。
後はここからの展開─────数は二。恐らく兄さんと…奴だ。
近付いてくる二つの気配を感じながら空を見上げる。
「…」
そんな俺をじっと見つめるアメジストの目線に、俺は気付かなかった。
ラミアス大尉と行動を共にする事となった俺達は、彼女の指示に従って動いていた。
一応その前に、俺とキラ達の自己紹介も行った。俺の名をラミアス大尉が聞いた時、何か引っ掛かった表情になったが、多分フラガという姓が理由だろう。特に気にする事もない。
「こちらX106スピリット。地球軍、応答願います」
ラミアス大尉が俺へ与えた指示は、地球軍僚機への通信を何とか繋げて欲しいというものだった。しかし、何度かこうして通信を試みているのだが、電波妨害によってスピーカーから聞こえてくるのは砂嵐の音のみだった。
…近くに地球軍の新型戦艦、
それよりも、気になるのはさっきから近付いてくる二つの気配だ。この感じ、そう遠くはない。
ふと見れば、サイがトレーラーから降りて来た。確かあの中には、ストライクの換装装備ランチャーストライカーがある筈。
キラが操縦したストライクがゆっくりとそのトレーラーの傍に腰を下ろし、恐らく今、ランチャーストライカーの装備作業が始まったと思われる。
「っ─────!」
その時だった。
背筋に奔る悪寒。言いたくはないが最早馴染み深いとすらいえるこの感覚。
感じるのは強い敵意。俺自身に向けられたものでないにもかかわらず、それでもなお悪寒を感じさせるほどの強い敵意。
直後、頭上で爆発が起こる。
仰いだ視界の先で巻き起こる爆炎の中から、飛び出て来たのは白亜のモビルスーツとオレンジのモビルアーマー。
間違いない。ラウ・ル・クルーゼが搭乗するシグーと、兄さんが乗っているメビウスゼロだ。
ラミアス大尉に何かを言われる前に、俺はすぐに行動を開始する。
コックピットハッチを閉め、スピリットのPS装甲を展開。メインカメラを上空へ向け、シグーの位置を確認してから、スラスターを吹かせた。
「兄さん!」
その直後、シグーの重斬刀によってメビウスのリニアガンが斬り裂かれる。
ここまでの戦闘の中で、メビウスゼロの特徴でもあるガンバレルは失われていた。その上リニアガンまで失えば、もうあの機体に武装は残されていない。
クルーゼは、容赦はしない。
武装を失ったメビウスゼロへ─────兄さんへ止めを刺すべく機体を旋回、剣を構えて逃げるオレンジの機体を追う。
機体をシグーとメビウスゼロの間に割り込ませようとして、しかしその前に突然、シグーがその場で動きを止める。
かと思うと、モノアイのカメラがこちらを向き、そしてシグーの体もまたこちらに向けられる。
「─────」
冷たい。寒い。
そんな筈はなかった。コロニー内では一応四季が分かれるよう温度調整が行われてはいるが、それにしても冷たさに震えるなんて事はあり得ない。
「これが、ラウ・ル・クルーゼ…!」
原作ガンダムSEEDのラスボスであり、フラガに産まれた俺達兄弟の宿敵でもある男との、最初の対峙だった。
「この、感覚は…」
スピリットと対峙するシグーのコックピットの中で、この男もまた自身の中で渦巻く感覚に吞み込まれていた。
「ムウ、ではない。奴はまだ、そこに居る。なら一体─────いや、まさか…っ」
今、感じるこの感覚は奴─────ムウ・ラ・フラガが近くに居る時の感覚と酷似している。だが、似てはいるが、目の前に居る存在があの男とは違うと、鮮明に伝わってくる。
ならば、一体誰が自分にこの感覚を覚えさせる?
「…なるほど、ミゲルを退がらせたのは貴様だったのか」
ミゲルからの情報では、白い装甲の機体ストライクとの交戦中に割り込んで来た黒い装甲の機体に損傷を負わされたという。
目の前にあるのは、その情報通りの黒い機体。そして、この感覚はその黒い機体の中から感じられる─────!
「私が顔を合わせた時、君はほんの赤ん坊だったな…。奴を殺した時もまだ君は三つの頃。そこからもう、十二年が過ぎたのか。…そうか。こんな所で君と出会えるとは、また奇妙な宿縁だなぁっ!ユウ・ラ・フラガァっ!!」
込み上げる歓喜。それと同時に燃え上がる憎悪。
待ち望んだ瞬間が訪れた事への歓喜と、自分が欲しかったものをかすめ取っていた存在への憎悪。
それらの感情をぶつけるべく、機体を進ませようとした、その時だった。
コックピット内に鳴り響く警告音。センサーに映る、こちらへと近づいてくる何か。
視線を転じれば、そこには白亜の装甲を持つ、奇妙な形をした巨大な戦艦が向かってきていた。
「戦艦だと!?コロニーの中に!」
地球連合の新型モビルスーツ六機の情報こそ掴めてはいたが、知り得なかった新型の戦艦にクルーゼも驚愕を隠せなかった。
「…やむを得ん、か」
惜しくはある。が、二度と会う事はないだろうとすら考えていた仇敵とこうして相まみえる事が出来たのだ。この奇妙な宿縁は、そう簡単に切れはしない。
「また会おう。…
決して相手には聞こえないその言葉を残してから、クルーゼは機体を反転。
これ以上の戦闘行動は避け、撤退を選ぶのだった。