フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE41 空と海の激闘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、何なんだこいつはっ!」

 

 アークエンジェルへと接近してくるアンノウン機─────ハイペリオンに向けて、ムウは機体を奔らせる。

 機体下部に装着されたランチャーストライカーの砲口から、アグニの熱線を放つと、ハイペリオンはグゥルを傾け旋回しながら放たれた砲撃を躱す。

 

「ふんっ…」

 

 カナードは横目で未だ甲板上から動かないストライクを見遣ってから、視線を自身の周りを飛び回るスカイグラスパーへと向ける。

 

「俺の邪魔をする気か?…いいだろう」

 

 バルカンを放ちながら尚、向かってくるスカイグラスパーに対し、コックピットの中でカナードは獰猛な笑みと共に牙を剥く。

 

「肩慣らしには少々物足りんが、相手をしてやる!」

 

 互いに旋回をしながら交錯する二機。

 ハイペリオンが振り返りながら銃器を構えて引き金を引くと、ビームが細かな弾丸となり、スカイグラスパーへと襲い掛かる。

 

 ビームサブマシンガンによるビーム弾の連射、通常ならばモビルスーツのバッテリーへかなりの負荷を強いる兵装だが、このハイペリオンは本体に内蔵されたバッテリー以外にも武装それぞれにバッテリーが搭載されている。

 

 通常、モビルスーツに搭載されたビーム兵装は本体に内蔵されたバッテリーからパワーを持ち出す仕組みをとっているが、ハイペリオンはその例から漏れている。

 つまり、どれだけビームを放とうと、武装を解放しようと、ハイペリオン本体がバッテリー切れに追い込まれる事は基本はない。

 

「ムウさんっ!」

 

「おっと、お仲間がそんなに大事か?だが貴様はメインディッシュだ!」

 

 ハイペリオンに追い込まれていくスカイグラスパーの危機に、キラが動き出そうとする。

 

 大気圏内での運用を想定されていないストライクだが、現在装備しているエールストライカーを全開に噴かせれば、短時間ではあるが空中を飛行できる。

 

 キラがビームライフルを構え、ストライクを飛ばす─────しかしその前に、ハイペリオンのウィングバインダーが変形する。

 前傾に折れ曲がると、両肩部より強烈な二門のビームキャノンが放たれた。

 

「っ、くっ!」

 

 ウィングバインダー先端に砲門を搭載したビームキャノン、フォルファントリー。

 こちらもビームサブマシンガンと同じく、武装そのものにバッテリーが搭載されており、機体本体のバッテリーに負荷をかける事なくビームを撃ち放つ事が出来る。

 

 キラはシールドを掲げて何とか二門の内の一門のビームを防ぎ、もう一方のビームはストライクから逸れ海面へ衝突、巻き上がる水飛沫を蒸発させた。

 

「そこで大人しく見ていろ、キラ・ヤマト。貴様の仲間が無様に殺される様をなぁっ!」

 

 カナードはビームサブマシンガンとフォルファントリーの砲口をスカイグラスパーへと向ける。

 同時に放たれる熱線と弾丸が、続けざまにスカイグラスパーへ降り注がれる。

 

「…ほぉ?」

 

 しかし、当たらない。

 ムウの巧みな操縦を受け、飛び回るスカイグラスパーにカナードが撃ち掛けた砲撃は命中する事なく、空を貫くのみに終わる。

 

 その光景を見て、カナードは微かに目を丸くした。

 

「どうやら貴様はただのうるさいハエではないらしい─────ちっ」

 

 改めて、ムウとスカイグラスパーを敵として認識したカナードの目に、アークエンジェルの主砲が動き出す様子が見えた。

 

 スカイグラスパー、ストライク、カナードが対している敵はこの二機だけではない。

 彼らが母艦とする白亜の巨艦もまた、二機の援護をとハイペリオンに牙を剥く。

 

 ゴットフリートが撃ち放たれる。

 かするだけでもハイペリオンの装甲を焼き、屠るだけの威力がある砲撃を冷静に見極め、カナードはグゥルを操作しながら紙一重で躱していく。

 

 ゴットフリートだけではなく、上空からはスカイグラスパーのアグニが、そしてアークエンジェルの甲板上からはストライクのビームライフルがハイペリオンへと向けられる。

 

「キラ、アークエンジェル、弾幕を緩めるなよ!」

 

 フォルファントリーによる反撃を挟みつつ、ストライクとアークエンジェルから撃ち掛けられる弾幕を掻い潜るハイペリオンの背後に、ムウのスカイグラスパーが回り込む。

 

「ちぃっ!」

 

 カナードはその動きに反応する─────が、前方一機と一隻による弾幕の対処で手一杯な今、背後からの攻撃には手が回らない。

 次に放たれるアグニの熱線に、ハイペリオンは貫かれる─────筈だった。

 

「なっ!?」

 

「あ、あれは…」

 

 次の瞬間、ハイペリオンの周囲を光の幕が包む。

 展開された光の幕は、スカイグラスパーが放ったアグニを受けてなお健在で、そしてその中にいるハイペリオンもまた無傷でそこに立ち続けていた。

 

「おいおい、あれは…」

 

「アルテミスの…!?」

 

 ムウにもキラにも、その光景に見覚えがあった。

 ユーラシア連邦の要塞アルテミス─────ブリッツの襲撃を受けるまで、無敵と称された要塞を守っていた光波防御滞、それが今、ハイペリオンを守っていた。

 

 モノフェーズ光波防御シールドアルミューレ・リュミエール─────ハイペリオンの両腕に一基ずつ、そしてウィングバインダーに五基、合わせて七基内蔵された発生装置を同時に作動させる事で、どの周囲からの攻撃に対して無敵の防御力を得る事が出来る。

 

「見事な連携だった。ハイペリオンの輝きを引き出されるとは…、光栄に思いながら死ね!」

 

 無敵の防御力、しかしその一方で、アルミューレ・リュミエール展開中はエネルギーの消費が激しい。

 計七基による同時展開の最大稼働時間は五分と、決して連続で多用出来るものではない。

 

 カナードは光波を収め、攻撃を防がれた事で慌てて距離を取るスカイグラスパーへと向かっていく。

 

「このっ!」

 

 ムウの反応と判断は素早く、向かってくるハイペリオンにアグニを向けて砲撃を放つ。

 

 しかしそれに対して、ハイペリオンは回避行動をとろうとはしなかった。

 

「無駄無駄ぁっ!」

 

 代わりにハイペリオンは迫る熱線へ向けて左腕を掲げる。

 アグニがハイペリオンを貫く、その寸前にカナードが一つのスイッチを押すと、先程はハイペリオン周囲を包むようにして展開したアルミューレ・リュミエールが、今度は左腕のみに発生した。

 

「こいつ!部分展開が出来るのか!?」

 

「そらぁっ!これで一匹目だ!」

 

 反撃の一撃は呆気なく防がれ、距離を詰められた状態でハイペリオンのフォルファントリーが展開される。

 

 ムウは堪らず機体を旋回させ、何とか逃れようとするが─────間に合わない。

 

「ムウさんっ!」

 

 この戦場に居るのがムウ一人だったなら、次のハイペリオンの攻撃で彼は命を落としていただろう。

 

「ストライク!?」

 

 エールストライカーのスラスターを吹かせ、いつの間にか背後にまで来ていたストライクに辛うじて反応するカナード。

 

 ストライクが掲げるビームライフルの銃口の向きから射線を予測し、グゥルを操作して、直後放たれたビームをギリギリの所で回避する。

 なおもハイペリオンへ迫るストライクは、背部の鞘からビームサーベルを抜き放つ。

 

「貴様の方から来てくれるとは、嬉しい限りだ!キラ・ヤマト!」

 

 再び左腕の光波発生装置を作動させ、展開されたアルミューレ・リュミエールでストライクの斬撃を押さえる。

 

「くっ!」

 

「ずっと待ち侘びていた…。貴様と戦える、この瞬間をっ!」

 

 抑えられない喜悦と憎悪をその手に乗せて、斬撃を防がれ一旦後退するストライクを追い、カナードは前進していく。

 

 一度アークエンジェルの甲板に着地したストライクが再び飛び上がる。

 飛び上がった先には、アークエンジェルの対空バルカンを掻い潜って迫るハイペリオンの姿が。

 

 下方からストライク、上空からハイペリオン。

 

 二機は真っ直ぐ互いに突っ込んでいきながら、再び衝突した─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばか、な…」

 

 空中での戦闘が更に激化する中、海中での戦闘は佳境に入っていた。

 

「ありえない…」

 

 そんな中で、モラシムは呆然と、力ない声を漏らしていた。

 

「こんな、ことが…」

 

 スピリットのレール砲を辛うじて回避するグーンだが、行動が誘導されている事に中のパイロットは気付かない。

 

 左右へ機体を傾けながらレール砲を避けていく内に、スピリットに追いつかれたグーンは対艦刀によって真っ二つに切り裂かれる。

 

 当然、その間にモラシムは何もしないでいた訳ではなかった。

 

 スピリットへフォノンメーザーやミサイルを撃って妨害を試みる、スピリットに向けて突っ込んで格闘戦を仕掛ける。

 しかしその行動全てを、まるでそう来る事が分かっていたかのように躱され、そしてモラシムは何も出来ないまま部下が沈んでいく様を()()見せられた。

 

 そう─────出撃した際には三機居たグーンは、今この瞬間、スピリットの手によって全滅した事となる。

 

「あってたまるかぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

 受け入れられない現実を振り払い、モラシムは我武者羅にフォノンメーザーを連射する。

 

「アアアアアアアァァァァァァァ───────!!!」

 

 声よ枯れよとばかりに叫びながら、しかしモラシムの攻撃は全くもって当たらない。

 優雅さすら感じさせる動きでスピリットはフォノンメーザーを躱し、ツインアイを光らせる。

 

「くっ─────!」

 

 来る─────そう予感したモラシムは、機体両腕の発射管を開いて魚雷を放つ。

 

 それに対してスピリットは─────ゾノへと迫りながら放たれる魚雷を躱す。

 

「なっ!?落ちろ、落ちろ、落ちろ!」

 

 迫るスピリットを前に、最早半狂乱に陥りながら魚雷を連発するモラシム。

 その全てが躱され、スピリットはなおもゾノへと迫り、対艦刀の切っ先が向けられる。

 

「落ちろ落ちろ落ちろ─────う、うわぁぁぁあああああああ!!!」

 

 機体を反転させ、スピリットから逃げようとするモラシム。

 そこからは、先程まで部下を殺した様相が、今度はモラシムを相手にして繰り広げられる事となる。

 スピリットから離れようとするゾノに対し、レール砲が撃ち放たれる。

 

 遮二無二に撃っている様に思える弾丸は、確かにゾノの動きを誘導、制限し、少しずつではあるが二機の距離が縮まっていく。

 

「来るな!来るなぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

 この時、モラシムには近付いてくるスピリットが悪魔や死神の様にすら見えていた。

 

 分からない、分からない、分からない、分からない。

 何故、我々が追い詰められている?海は我らの庭─────海は我らに力を貸してくれる筈だ。

 

 何故─────我らが殺されなければならんのだ、この海で!

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 機体を反転させ、肉眼にかなり大きく映るスピリットへ向けてフォノンメーザーを放つ。

 

 照準レーザーが斉射された事で、モラシムの行動はスピリットに筒抜けの筈。

 しかし、何故かスピリットは回避行動をとろうとしなかった。

 

「し、死ね!死ねぇぇぇぇええええええええええ!!!」

 

 殺った!

 絶望に覆い尽くされたモラシムの心を、微かに光が灯った。

 

 その光は幻想だったのだと、次の瞬間にモラシムは思い知る事となるのだが。

 

「は─────?」

 

 撃ち放たれたフォノンメーザーが、ほんの僅かな拮抗の後にスピリットの対艦刀によって斬り払われた。

 

「そ、んな…」

 

 ばかな─────

 

 その一言がモラシムの口から漏れる頃には、すでにスピリットは彼の眼前に迫っていた。

 

 たかだか数十メートルという至近距離─────その距離で、スピリットは音速の攻撃に反応した。

 

「ば、ばけもの…」

 

 この時、ようやくモラシムは理解する。

 

 餌は、獲物は、自分達だったのだと。

 我々は、触れてはいけない逆鱗に触れてしまったのだと。

 

 切り裂かれた機体が炎に呑み込まれ、モラシムもまた、眼前に広がる赤い世界の中で意識を閉ざしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────」

 

 水中の敵、その最後の一機が爆散したのを見届けてから大きく息を吐く。

 

 被弾はゼロ、時間もそう掛ける事もなく、バッテリーにもまだ余裕はある。

 だが、戦い自体はギリギリの綱渡りも同然だった。

 

 こちらにとっては慣れない海中、しかし相手にとっては庭も同然。

 油断と驕り、相手が完全にこちらを舐めて掛かっていたからこの結果に終わったが、もし相手が油断なく臨んで来られていたら─────。

 

「…キラ、兄さん」

 

 いや、その仮定に意味はない。それよりも、まだあの悪寒は俺の中で渦巻いている。まだ、強い敵意が俺の頭上に存在を発し続けている。

 

 キラと兄さんがまだ戦いを続けている。

 ここでのんびりしている訳にはいかない。

 

 スラスターを吹かせて機体を上昇。太陽の光に照らされる水面を目指す。

 

 上昇を続ける毎に、戦闘中は薄暗い闇に包まれていた視界が次第に光に開かれていく。

 

「─────っ!」

 

 やがて、機体が水中から飛び出す。

 突如、明瞭に開かれた視界に映る青空と陽の光に眩む視界を抑えながら、周囲の状況把握に努める。

 メインカメラを回し、アークエンジェルとスカイグラスパー、()()()()()()ストライクとストライクに止めを刺そうと背中の武装を構える謎の機体。

 

 それらを見た瞬間、考えるよりも前に体が動く。

 

 パック上部のレール砲と両肩部の単装砲、そしてビームライフルと合わせて計五門の砲門を一気に撃ち開く。

 

 グゥルに乗った機体は放たれた砲火を辛うじて躱し、そしてこちらの存在を視認する。

 

 姿を見られたにも構わず、俺はスピリットのスラスターを吹かせ相手に接近。

 先程までストライクに狙いを定めていた背部の武装がこちらを向き、二門のビーム砲が同時に開かれる。

 

 スピードを緩めないままバレルロール、腰部の鞘からビームサーベルを抜き、謎の敵対機へ斬りかかる。

 

「っ、これは!?」

 

 敵の懐へ潜り込み、振り下ろした斬撃に対して敵機は左腕を掲げたかと思うと、その周囲に展開された光とビームサーベルが衝突する。

 

 アルミューレ・リュミエール─────ユーラシアの要塞、アルテミスにも搭載された無敵の防御システム。

 それが搭載されているモビルスーツ─────いや、キラの危機に無我夢中になっていたが、改めて見ても間違いない。

 

 このモビルスーツは──────

 

「ハイペリオン…、カナード・パルスか!」

 

 砂漠に続いてのイレギュラー。

 本来、SEED本編には登場しない筈のキャラクター。

 

 スーパーコーディネイター、キラ・ヤマトと大きな因縁を持ち、フラガの継子である俺とも因縁深い相手─────スーパーコーディネイターの失敗作、カナード・パルス。

 

 この場に居る筈のない人物が、俺達の前に立ちはだかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




僚機を狙う光速のビームに対してビームで相殺する化け物が他ガンダム作品が居るんですし、それと比べたら不可視の音のビームを切り裂くくらい人間ですよ人間(白目)
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