フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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以前から匂わせていた、ユウと関りがある大西洋連邦の重役の正体は、こいつだぁ…☞☞☞


PHASE48 ウズミ・ナラ・アスハ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、俺にも分からないんだって!ウズミ様は()()()()()()()と話したい事があるなんて言ってたが…。くそっ、家の話なら俺にだって関係はあるだろうに…」

 

 ユウがウズミに呼ばれているとの事でナタルに連れられ、キラは追い掛けようとした。

 しかしそこに偶然にも通りかかったムウがキラを止めに入る事となる。

 

 ムウはマリュー、ナタルと一緒に先程までウズミと会談していた。ならば、ユウがウズミに呼び出された理由も知っているのではと、キラはムウに尋ねるが、返って来た答えは上の通りである。

 何も分からず、苛立たし気に吐き捨てるムウにキラは質問の矛先を収めるしかなかった。

 

「まあ、悪いようにはならないだろ。…そう信じるしかねぇだろ」

 

「…」

 

 その言葉は、キラへ向けて言っているのではなく、自分自身に言い聞かせている様に聞こえた。

 ムウはその台詞を最後に、何も言わないまま去って行った。

 

 悪いようにはならない─────本当にそうなのだろうか?

 ユウとフレイ曰く、フラガ家は相当に大きな影響力を持つ家で、一国の元首─────実質的ではあるが、そんな人物が話をしたいと思うのは、ない話ではないのかもしれない。

 

 ただ、これもユウが言っていた事だが、今のフラガという家は前当主が亡くなって以降弱体化している。

 後を継ぐべき兄弟はそんなつもりは毛頭なく、影響力こそ辛うじて残っているものの、同業者からは見向きもされない、その程度の家だという、この話はフレイ談である。

 

 それなのに、実質的な国家元首が貴重な時間を割いてまで、一個人を呼び出して話なんてするだろうか?

 

「(ユウ…)」

 

 ついさっきまで隣にいたユウが、すぐにまたここに戻ってくる筈のユウが、もう手が届かないどこか遠くに行ってしまった様な─────そんな予感がキラの胸の中を過る。

 

「(大丈夫、だよね…?)」

 

「なんでこんな鬱陶しい恰好しなきゃなんないんだよぉっ!?」

 

「鬱陶しいとは何ですか!姫様の社会的地位に見合った服装でございますっ!」

 

「!?」

 

 この場に居ないユウを心配するキラの耳に、籠もった怒鳴り声が届いた。

 

 驚いたキラはその場で立ち止まり、声がした方へと振り返って視線を向ける。

 周りには、キラと同じように通りかかったクルー達が立ち止まり、声がした方─────とある一室の扉へと視線を向けていた。

 その一室は、カガリが使っていた船室だった。

 

 その後も一頻り騒動が聞こえた後、カガリが観念したのか大人しくなり、ややあって扉が開いた。

 

「─────」

 

 扉が開き、現れたカガリの姿にその場に居た誰もが息を呑んだ。

 

 先日までの粗雑な振る舞い、汚れたジャケットにカーゴパンツという恰好を見慣れた者には、今の上品なドレスを身に纏い、髪を整えられたカガリの姿に面を喰らうのも無理はないだろう。

 

 そんな綺麗な服装とは相反し、ムスッとした表情をしたカガリは、直後に部屋から出て来た侍女が差し出した手を振り払う。

 

「一人で歩ける!」

 

「ダメでございますっ!」

 

 カガリの怒声に対して、侍女も負けていなかった。

 

 無理やりにカガリの腕を掴むと、そのまま自身の手とカガリの手を繋ぎ合わせ、改めて歩き出す。

 

 カガリもこの母親の様な侍女には頭が上がらないらしい。

 諦めた様にこれ以上の反抗はせず、しずしずと歩き始めた。

 

「…あ」

 

「っ…」

 

 かと思えば、ふと視線を振ったカガリの目がキラの顔を捉える。

 

 驚き目を丸くしたカガリが足を止め、それに釣られて侍女も歩みを止める。

 

 侍女がいきなり立ち止まったカガリを咎めるように鋭い視線を向けるが、それに気付いていないのか、はたまた意図的に無視しているのか─────カガリは微かに赤面しながらキラへと喰ってかかる。

 

「な、なんだよ」

 

「え?別に、何もないけど…」

 

「言っとくけど、好きでこんな格好してるんじゃないからな!?これは、その…こいつが無理やり─────」

 

「こいつとは何ですかっ!」

 

 キラとカガリの会話を黙って聞いていた侍女だったが、カガリの口から出た粗雑な言葉遣いに反応、カガリを怒鳴りつけた。

 

 ビクッ、と侍女の怒声に体を震わせるカガリ。

 本来、首長家の娘と侍女という間柄だというのに、力関係が逆転している様にしか見えないその光景に、キラは遂に耐え切れなくなってしまう。

 

「ぷっ、ふふっ…!」

 

「っ、おい!何を笑う!」

 

「い、いや…だって…」

 

 カガリに咎められるキラだったが、一度漏れた笑みはなかなか止まってくれなかった。

 

 実のところ、キラは不安でもあったのだ。

 砂漠で再会した時こそ険悪で、カガリに対して良いイメージも持っていなかったが、今のキラは違う。このカガリという少女に親しみも持っていた。

 

 そんな彼女は本来、自分とは会う事すら難しい立場にいる人物だと判明し、これからは今までの様に気軽に話す事も、会う事も出来ないかもしれない、と。

 

「カガリ様、参りますよ!」

 

「なっ、ちょっと待っ─────!くそっ、キラ!後で覚えてろよー!」

 

 侍女がキラに対して一礼してから、カガリの手を引いてずんずん歩いていく。カガリが踏ん張り、何とか反抗しようとするも力で敵わず引っ張られていく。

 そして物語のやられ役のようなセリフを残して、やがていなくなるのだった。

 

 どうやらキラが抱いていた不安は杞憂に終わりそうだ。

 立場がどうであれ、カガリはカガリだ。…あの侍女がずっと傍にいるとなると大変そうだが、オーブを発つまでの間にせめて一度くらいは、また顔を合わせて話す機会はあるだろう。

 

「あ…。ユウの事、聞けばよかったかな」

 

 そこでようやくキラは、カガリにユウの事を聞くべきだったと思い立った。

 もしかしたら、ユウが呼ばれた理由を─────ユウとウズミの繋がりについて、カガリなら知っているかもしれない、と。

 

「…ないか」

 

 そんな期待も、侍女に引っ張られながら廊下の角を曲がるカガリの姿を見せられると、淡く消え去ってしまったが。

 

 結局、カガリと話す前よりはややマシになったとはいえ、ユウが戻って来るまでの間をキラは悶々と過ごす事となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 髪を長く肩に流し、髭を蓄えた壮年の男─────ウズミ・ナラ・アスハが部屋に入った俺を出迎える。

 鋭く細まったその目は、明らかに俺を歓迎しているとは思えない。なら、一体何のために俺をこの場に呼び出したのか。

 

 大体、予想はつくが─────。

 

「ご苦労」

 

 俺の半歩前に立つ将校は、ウズミに一言そう掛けられると、敬礼をとり何も言わないまま俺とウズミの二人を残して部屋を退室していった。

 

 扉が閉まる音、後に空気を包む沈黙。

 

 俺の視線とウズミの視線がぶつかり、交わる。

 

「よく来てくれた。掛けたまえ」

 

 ウズミは口元に笑みを浮かべながら、その手でソファを指しながら言う。

 

「失礼致します」

 

 ウズミに向けて一礼してから、俺は言う通りに部屋の奥へ、そして彼が指したソファへと腰掛ける。

 

「急な呼び出しに驚いたと思う。謝罪させてほしい」

 

「いえ。こちらとしても、オーブ滞在中に貴方と話しておきたいとは思っていたので、気にしないでください」

 

 俺がそう返すと、ウズミの表情が驚きの色に固まる。

 ただそれは一瞬で、すぐに顔を引き締めたウズミは、重々しく口を開く。

 

「…どうやら、君はここへ呼ばれた理由を理解しているらしい」

 

「そんなの分かるに決まってる。()()()()()の事でしょう?」

 

 その言葉が決定的となった。

 

 俺がこの場に来てからここまで、隠し続けていた敵意を解放し、ウズミは鋭くこちらを睨みつけて来た。

 

 分かってはいたが、誤魔化すつもりはないらしい。

 それとも、誤魔化しても無駄だと悟ったか─────包み隠す事を止めたウズミ・ナラ・アスハの─────獅子と呼ばれる男の威圧感が一身に注がれる。

 

 クルーゼの威圧感が冷たく突き刺す氷の切っ先とすれば、この男の威圧感は全身を包み燃やす業火というべきか。

 

 背筋に汗が垂れる。

 全身に鳥肌が立つ。

 それを悟られぬよう、必死に平静を装いながら、ウズミの視線を真っ直ぐに受けて立つ。

 

「知っているのなら話は早いな。…君は一体、何を企んでいる?」

 

「何を言っているのか分かりませんね」

 

「惚けても無駄だ。ケンブリッジの大学に通っていた君が、ある日偶然退学して、偶然ヘリオポリスに行き、偶然戦渦に巻き込まれ、キラ・ヤマトと出会う─────。どこからが君の思惑なのか、話すんだ」

 

「…」

 

 こうして事実を並べられると、まあ酷いというか…あれだな。

 言われてみると確かに、ウズミのような事情を知る人からすれば、明らかに画策が混じっている様にしか感じられないな。

 

 事実画策は混じっている、というか今の話の殆ど全てが俺の画策な訳だけど─────さて、どうするか。

 

 ウズミの目は完全に疑念に染まっている。ここで俺が偶然ですと答えても、或いは全ての真実を話したとしても、間違いなく信じては貰えないだろう。

 

 ならば、真実を隠しつつ事実を語るしかない。

 

「…確かに俺は、キラがヘリオポリスに居る事を知っていた。カトー教授とは一度会った事があるので。名前を聞いた時は驚きましたよ」

 

 本当の話である。

 あの時は驚いたね、まさかこっちの大学の教授に連れられて行った学会発表にカトー教授が来るなんて…。

 発表が終わった後、帰ろうと思ったら知らないおっさんに話し掛けられて、しかもヘリオポリスカレッジのカトーとか名乗るんだもん。

 キラの名前を聞いたのは、こっちの教授を交えて三人で話したその時である。

 

「…なるほど。ならば君は、キラ・ヤマトが居ると知って、ヘリオポリスに向かったという事か」

 

「えぇ。破棄されずに残っていた資料を見て、キラの事は知っていました。…親父の業を、この目で見ておくべきだと思ったので」

 

 今の返答には嘘が混じっていたが、ウズミの様子を見るに悟られてはいないらしい。そう思いたい。

 

「…最後に一つ聞きたい。君は彼女を─────最高のコーディネイターを、悪用するつもりはないのだな?」

 

「ありませんよ。微塵も」

 

 キラを自国の軍事増強に利用しようとしている男が何を─────という台詞は呑み込む。

 

 この男とそんな政治的話をするつもりはないし、こんな所に長居もしたくない。

 

 ─────あ、でも戻ったらキラと一緒にモルゲンレーテ行きか?いやでも、この男がフラガを自国の軍事に介入させるだろうか?

 いやいやでもでも、OS開発をキラ一人に任せるのは…面倒臭さと罪悪感に苛まれるー…!

 

「そうか。…そうか」

 

 一度俺の目をじっと見てから、そして目を瞑り噛み締める様にもう一度言ってから、ウズミは目を開いて微笑んだ。

 

「疑ってしまい、申し訳ない事をした」

 

「いえ、気にしていません。当然の疑念だとも思いますし」

 

 そう、ウズミが俺を疑うのも当たり前なのだ。

 何しろ俺はアル・ダ・フラガの息子であり、家督の後継者。

 ヒビキ姉妹の出生について詳しく知っている可能性がある者を、親であるウズミが警戒するのはごく自然の流れである。

 

 だからこそ、割とすぐに俺を信じたウズミに少し拍子抜けをした。

 或いは決裂する可能性すらあるとも思っていたから。

 

「…ユウ・ラ・フラガ。君の持つ名前と能力は、今やその家名に関係なく、世界に大きな影響力を持っている」

 

「え─────?」

 

「かのブルーコスモスの盟主すら変える君の力を警戒していたが、どうやら杞憂だったらしい」

 

「いや、別にあの人は俺が変えたというか、勝手に脳が焼かれたというか─────待って、何で知ってるの?」

 

 な、なんか語り始めたんだが…。というかこの人、勘違いしてないか?

 ()()()()()と話したのは事実だけど、別にあの人は変わってないぞ?

 色々とやらかしたらしい俺を見て勝手に脳を焼かれてたけど、コーディネイターへ敵意持ってること自体は変わってないし、腹黒い所だって変わってない。

 

「今やブルーコスモスは、コーディネイター撲滅一辺倒の組織ではなくなった。…君が居れば、これから世界は変わっていくのかもしれん」

 

「元々ブルーコスモスはそういう組織じゃないですし…。ていうか俺の質問に答えろ」

 

 ダメだ、質問に答えてくれない。ていうか待って、何この人。気持ち悪い。

 何で俺とムルタさんに交流関係ある事を知ってるの?

 何でブルーコスモスが水面下で穏健派が力を持ち始めてる事を知ってるの?

 そして勝手に俺を世界の英雄みたいに思わないでください。そんな期待をしないでください。

 

 俺は政治とかこれっぽっちも分かんないし、そこまで関わるつもりはないからね。

 ただ原作の流れから逸れてバッドエンドにいかないようにする、ただそれだけのつもりなんだからね。

 

 本当にそれだけしかしないからな!?

 

「…出来る事なら、その様を、この目で見届けたいものだ」

 

「…」

 

 あぁ、ダメだ。こっちを見るウズミの目がキラキラしてる。

 期待しちゃってるよ。期待されちゃってるよ。何でか知らないけど、()()()()脳を焼かれちゃってるよ…。

 

 ムルタさんの時もそうだけど、どうしてこうなるんだよ…。

 ていうか、ムルタさんの時は確かに、俺が、した事に対して脳を焼かれてたけど、この人は本当に勝手に勘違いして勝手に脳を焼かれてるからな。

 本当に訳分かんねぇ…。

 

「時間をとらせてすまなかったね。今、迎えの者を呼ぶ。アークエンジェルへ戻りたまえ」

 

「…はぁ」

 

 もう疲れたよ、本当に。

 何だよこれ、まるで俺が主人公みたくなっちゃってる…。こんなつもりじゃなかったのに…。

 

 あー、気が重い。早く帰りたい。

 ていうか何でこんな事になったんだ?俺はただ、原作通りの流れを守りたいだけだった。

 

 …いや、それが間違いだったんじゃないか?

 大体、俺という異物が一つあるだけで世界の流れがそんな大きく変わる訳がないだろ。

 なのに俺は変に張り切って、出しゃばって、引っ搔き回してしまった。

 

 流れる水の中で、ただじっとしているだけであれば、流れに大きな影響はない。

 だが俺は、その中で大暴れしてしまった。

 そうなれば当然流れは乱れ、変わっていく。

 

「あぁ─────」

 

 ウズミが呼んだ迎えの者が運転する車の中で、小さく声を漏らす。

 

 ダメなやつだ、これ。

 前世でもあったこの感覚。

 こんな時は、友人に全部話してぶちまけてスッキリしていたが、この世界でそれは許されない─────

 

「会いたい、な」

 

 ─────訳でもないから、一人で何とかしようと切り替える事が出来ない。

 

 大気圏すら越えて、遠く距離の離れた所に居る、記憶を共有した事すらある友達に思いを馳せてしまう。

 

 ラクス─────もし、彼女が傍に居たのなら、俺は今のこの気持ちを話していただろうか。

 …話しただろうな。何でこんな事になったんだと、こんなつもりじゃなかったと、ぶちまけていただろう。

 そしてラクスは、あの優しい微笑みを浮かべながら俺の話に耳を傾けてくれるのだ。その後に、何か優しい言葉を掛けてくれて─────そこまで考えて、俺は弱い思考を打ち切る。

 

 許されていながらも、出来る筈もない事を考える余裕はない。

 とっとと切り替えろ。そんなつもりじゃなくとも、そうなってしまったのだから今更仕方ない。

 過去には戻れない。時は遡れない。なら、前に進むしかない。

 

 そう、進むしかないのだ。どれだけ辛くとも、俺に引き返す権利なんてもう残っていない。

 それだけの業を、俺はこの世界に刻み続けてしまったのだから─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




勝手に勘違いして勝手に期待するウズミ様と、勝手に曇っていくユウ君のお話でした。

やっぱ、ガンダムSEEDといえばくもり←なんでね。ユウ君にもちょっとは曇って貰わないと。
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