フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE56 最後の戦い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと考えていた─────ユウ・ラ・フラガ()という存在が、この世界に生れ落ちてしまったその意味を。

 

 何も出来ず、救えず、変えられない、ユウ・ラ・フラガ()という異分子が入り込んだ事で状況は悪くなるばかりだ。

 散々事態を掻き乱して運命の軸から逸らし続けたその果てで、救えた筈の命をこの手で奪ってしまうという失態。

 

 兄さんが休めと言ってくれた。キラとフレイが心配してくれた。

 それに甘えて休もうとはしたが、初めは色々と限界だったのか眠りに落ちる事が出来たものの、すぐに目が覚めてしまった。

 

 もう一度身体を休めようと試みるも、一度目覚めてしまえばそこまでだった。

 

 頭の中がぐちゃぐちゃで、色々な感情が巡り回る。

 いっそもっと疲れてしまった方が休めるのではないか、と足が向いたのがシミュレーターがある格納庫であり、そこで何故かフレイの訓練を見る事になってしまった。

 一度だけという話だったのが二度目、三度目と続いてしまい、流石にもう止めろと口を挟んだ所でようやくフレイは訓練を終わらせた。

 

 当初の予定からはかなりずれはしたが、フレイとのやり取りでほんの少し気を休める事が出来たのは僥倖だった。

 俺が訓練してた事も言わないと約束してくれたし─────夜明けまでもう少し。部屋に戻ってもうひと眠りしようと考え、部屋のベッドに倒れ込んで……………

 

『総員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!』

 

「っ─────!」

 

 再度眠ってどれくらい経っただろうか。鳴り響いたアラートに飛び起きる。

 

 眠っている間に乱れ、皴が入った軍服を直しもしないまま部屋を飛び出しパイロットロッカーへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵影五!七時方向、距離三千!」

 

 アラートを受け、ユウと同じように飛び起きた非番だった者達が慌ただしくシートに着く。

 その直後、トノムラが叫びを上げた。

 

 艦橋のモニターパネルには、明けてゆく空の中に不吉な影を落とす敵の姿を映し出す。

 

「同方向より熱源接近!」

 

「回避!取り舵!」

 

 グゥルに乗ったモビルスーツ群の中から、バスターがビームを放つ。

 

 サイが素早く感知機器が捉えた熱を告げ、マリューが回避を命じる。

 ノイマンが舵を回し、遠距離から放たれた砲撃を辛うじて回避した─────これが、戦いの始まりとなった。

 

「アンチビーム爆雷用意!ウォンバット装填!イーゲルシュテルン起動!」

 

 ナタルの号令と共に、アークエンジェルの兵器システムが起動していく。

 

「出撃準備はどうなっている!?」

 

 こうしている間にも、敵は更にアークエンジェルとの距離を縮めていく。

 ナタルがミリアリアを振り返りながら、今頃出撃準備を進めているであろうパイロット三人の状況を確認する。

 

「一号機、二号機出ます!スピリットとストライクは後部甲板へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くそっ!このまま済むとも思わなかったがな!』

 

 スピーカーから兄さんの毒づく声が聞こえる。

 

 兄さんが─────いや、艦に居る皆が分かっていた事だろう。

 彼らが自分達を逃がす筈がない─────このまま逃げ切れる筈がない。

 

 だが地球連合軍の制空圏まではあと少しだ。すなわち、これが最後の戦いとなる。

 

『ユウ!』

 

 とはいえ、これからの事を考えれば─────と不意に、兄さんに呼び掛けられた。

 

 モニターに映るパイロットスーツ姿の兄さん。ヘルメットと通信越しに視線を向けられながら、硬い口調で尋ねられる。

 

『大丈夫なんだな…?』

 

 昨日の事を心配されているのは分かっている。

 正直─────大丈夫ではないのかもしれない。だけど、大丈夫ではないのだとしても。

 

「大丈夫だよ」

 

 そう答えるしかない。戦って、皆を守るしかない。今の俺にはそれしか出来ない。

 

『…その言葉、今は信じさせてもらうからな。ムウ・ラ・フラガ、出るぞ!』

 

 ハッチが開き、カタパルトから兄さんが乗る一号機が勢いよく飛び出していく。

 

『フレイ・アルスター、出るわよ!』

 

 続けてフレイの二号機が出撃。

 

 残るはスピリットとストライクのみとなる。

 

『ユウ』

 

「キラ」

 

『…無理はしちゃ駄目だからね』

 

「お互いにな」

 

 先にカタパルトへと運ばれていくストライクの中から、キラの声が届く。

 お互いに声を掛け合い、微笑み合ってから、ストライクもまた出撃する。

 

「…ユウ・ラ・フラガ!スピリット、出る!」

 

 ストライクが甲板へ降りてから、スピリットが出撃、同じく一度甲板へ降りてから、スラスターを吹かせて機体を飛び上がらせる。

 

 すでに兄さんとフレイのスカイグラスパーがデュエル、バスターとの交戦を始めていた。

 一号機が激しくバスターと砲撃を撃ち合い、二号機もまたデュエルに砲撃を撃ちかけている。

 

「っ!」

 

 周囲の状況を見回す中、イージスが接近し、こちら目掛けてライフルを放つ。

 ビームをシールドで受け止め、こちらもライフルをイージスへ向けたとそこへ、脇からゲイツが突っ込んでくる。

 

 ゲイツからフォルティスが放たれ、ビームを再びシールドで受け止めた直後、防御体勢に入った隙にハイペリオンが脇をすり抜けアークエンジェルへと接近していく。

 

「キラっ!」

 

 呼びかける前から、キラはすでに動き出していた。甲板を蹴って飛び上がったストライクが、ハイペリオンと激しくぶつかり合う。

 

 衝突し、一度離れた後、互いの近距離武器を抜き放ち斬りかかる。

 

 二機の再度の衝突─────ぶつかり合った箇所から激しく火花がスパークする。

 

 こちらも他の心配をしている余裕はない。ゲイツがラケルタビームサーベルを抜いて斬りかかって来る。

 ライフルをマウントし、ビームサーベルに持ち替え、斬りかかって来るゲイツを迎え撃つ。

 

 ゲイツと激しく斬り結ぶ─────その間、何故かイージスからの妨害がない事に引っ掛かりを覚える。

 前回の戦闘も同じ組み合わせで交戦し、同じ状況になれば今頃イージスからゲイツへの援護が入って来た筈なのに。

 

「っ、しまった!」

 

 ゲイツと交錯しながら辺りを見回し、やがて赤の機体の姿を発見し、驚きと共に思わず悔恨の叫びを上げる。

 

 すでにイージスはアークエンジェル上空に位置を構え、艦への攻撃態勢を整えていた─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルは牽制するようにウォンバットを発射するが、バスターの砲撃によってミサイルの殆どを撃ち落とされる。

 

「そらっ!これでも喰らいやがれ!」

 

 お返しとばかりに、ガンランチャーとライフルを両脇に構え、二門の砲門が同時に火を噴く。

 連続で撃ちかけられるビームによるダメージはほぼ入らない、が、アークエンジェルの装甲に急激に熱が溜まっていく。

 その熱は尚も上がり続け、やがて艦の排熱機構が間に合わなくなれば、バスターがビームを撃ちかける箇所は一気に剥がれ落ちるだろう。

 

「やらせるか、これ以上っ!」

 

 そうはさせじと、バスターの上空からムウの一号機が襲い掛かる。

 

「舐めるなっ!この程度…っ!」

 

 バスターは一号機から放たれた砲撃を躱しながら、肩部のポッドを開いてミサイルを放つ。

 

「ちぃっ!?」

 

 危うくそれに捉えかける所を、ムウは急激に機体を降下させ、海面ギリギリまで達した所で引き起こす。

 ミサイル群はその機動を追い切れず、海面へ激突して爆発─────一号機は窮地を脱するが、そうする内にもバスターの砲はアークエンジェルを追い詰めていた。

 

「くっそ!お前っ!」

 

「しつこいんだよ!」

 

 再びバスターへと襲い掛かる一号機に対し、ディアッカが苛立ち混じりに毒づく。

 

 アークエンジェルの砲台がビームに貫かれ、艦橋後部のミサイル発射管ヘルダートが潰される。

 

 火を噴き上げるアークエンジェルの姿に焦燥を覚えながら、バスターと砲撃を撃ち合うムウ。

 機体を旋回させ、周囲を飛び回る一号機へ、バスターがライフルとガンランチャーの砲口を向ける。

 

「っ!?」

 

 ディアッカが引き金を引こうとした瞬間、一号機への攻撃の手を止めて機体をその場から離す。

 

 どこからか放たれた熱線がバスターのすれすれを掠めていく。

 ディアッカとムウが何事かと視線を向ければ、二人が砲火を交わす地点へ向けて二号機が向かってきていた。

 その後方からは、二号機を追い掛けるデュエルの姿もある。

 

「嬢ちゃん!」

 

「イザーク!?」

 

 ムウはデュエルを相手にしながら未だ無傷のフレイ機への安堵、そしてディアッカはイザークが未だスカイグラスパーを墜とせていなかったへの驚愕。

 それぞれ違った感情が混じった声で相手へ呼び掛ける。

 

「くそっ、こいつ!ちょこまかとっ!」

 

 自身を相手にしながら他の味方へ気を向ける─────それがどれだけイザークのプライドに触ったか。

 デュエルのビームライフルとアサルトシュラウドを展開し、フレイの二号機へと一気に砲門を解放する。

 

 フレイにとっては死角からの攻撃、決して躱す事の出来ない必殺の攻撃の筈だった。

 しかしフレイが操るスカイグラスパー二号機は、体を傾けながらデュエルから撃ち注がれる砲火を全て避けていく。

 

「馬鹿なっ!?」

 

「甘いのよ、そのくらいっ!」

 

「ちぃっ!?」

 

 フレイは機体を旋回、大口径のビーム砲をデュエルへと向けて撃ち放つ。

 

 全ての砲撃を躱された事へ動揺したイザークだったが、辛うじてフレイからの攻撃に反応─────シールドを掲げて砲撃を受け止める。

 しかし、高威力のビーム砲を防いだ事による衝撃を受け止めきれず、機体の体勢が後方へ向けて崩れていく。

 

「今っ!」

 

 それを逃すフレイではない。

 即座に機体を転回、デュエルとの距離を縮めながら再度大口径のビーム砲を討ち放ち、デュエルに止めを刺そうとする。

 

「イザーク!」

 

 そこに待ったを掛けたのはディアッカだった。

 高エネルギービームライフルとガンランチャーを連結させ、超高インパルス長射程狙撃ライフルを形成すると、フレイの二号機へ砲口を向けて引き金を引く。

 

「くっ…!」

 

 絶好のチャンスを前に、フレイは歯噛みしながら機体を旋回。

 バスターからの砲撃を回避した直後、更に続けて二射、二号機へ向けて再度砲撃が撃ちかけられる。

 

「女子相手に二人で襲い掛かりやがって、この野郎がぁっ!」

 

 一度体勢を立て直すべく離脱していたムウの一号機が戻って来る。

 フレイの二号機へ砲撃を連射していたバスター目掛けて砲撃を放つが、ディアッカはひらりとグゥルを操って砲撃を回避。

 スカイグラスパー一号機とバスターが再び、それぞれの砲火を相手へ撃ちかけ合う交戦へと入る。

 

「少佐─────っ!」

 

「このっ!貴様の相手はこの俺だろうがぁっ!」

 

 フレイがムウの支援へ入ろうとするも、そこへイザークのデュエルが割り込む。

 デュエルが抜き放ち、振り下ろされるビームサーベルを、フレイは機体を旋回させて回避─────スカイグラスパーとデュエルもまた、再度交戦へと入る。

 

 その時だった─────。

 

「あぁ!?」

 

「アークエンジェル!」

 

 直後、悲鳴を上げたのはフレイとムウの二人だった。

 

 二人が激しく敵機二機と交戦をしている間に、アークエンジェルの頭上へと接近していたイージスによってスキュラが放たれた。

 強烈なビームはアークエンジェルの左舷、バリアントを貫いてその周辺を抉る。激しい爆発が起こり、アークエンジェルは更に強く火を噴いた。

 

「グレイト!」

 

「ふんっ!」

 

 そして、アスランとイージスが齎した戦果に喜びの声を上げるのはディアッカとイザークだ。

 

 隊長に負けられないと、更に戦意を強く、未だ抗戦を続けるスカイグラスパー二機へと向き直る。

 

「くっ…!」

 

「いい加減にしやがれ、お前らっ!」

 

 フレイとムウもまた、デュエルとバスターへ意識を向け直す。

 四機は更に激しく交錯を繰り返し、戦いはなお熾烈を極めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アークエンジェル…!」

 

 一方、アークエンジェル周辺でハイペリオンと交戦していたキラ。

 

 ハイペリオンに意識を向け過ぎた、と悔恨を抱くもすでに遅い。

 モビルスーツ形態へと戻り、グゥルへ収まり離脱しようとするイージスを睨みつける。

 

「アスランっ!」

 

 スラスターを吹かし、機体を飛び上がらせる。イーゲルシュテルンを撃ちながら、離れていくイージスを追い掛ける。

 

「キラっ!」

 

 その時、弾丸が装甲に命中した事で自身を追い掛けるストライクの存在にアスランが気付く。

 機体を振り向かせ、ビームライフルを向かって来るストライクへ向ける。

 

 キラもまたビームライフルの銃口をイージスへと向け、やがて二機は互いの位置を入れ替えながらビームを撃ち合う。

 引き金を引き、相手から放たれたビームを躱してから再度照準を合わせて引き金を引く─────されど互いの射撃は当たる気配は見せず、やがて痺れを切らしたキラがライフルをマウント、ビームサーベルへと持ち替えてイージスへと斬りかかる。

 

「これ以上はやらせないっ!アークエンジェルは、絶対に…っ!」

 

「キラ…!」

 

 ストライクからの斬撃をシールドで受け止めながら、アスランは歯を食い縛る。

 

 眼前のストライクから伝わって来る気迫と決意が、キラが明確に自分を敵として捉えているのだと報せてくる。

 

 ─────何故、何故なんだ!?何故こんな事になる!?

 

「何でお前が、そんな所に…!ニコルを殺した奴とっ!」

 

 同じく自分達の仲間であるニコルを殺した、スピリットと共に戦っているのか。

 

 ─────どうしてお前がそんなものに乗っている!?どうしてナチュラルの為に戦う!?どうして俺と一緒に来なかった!?

 

「どうして…!?」

 

 斬撃を受け止めるシールドを握る左腕を押し込み、ストライクを弾く。

 後退するストライクへ向けて攻撃を仕掛けようとするが、その前にストライクを狙って明後日の方向からビームが降り注ぐ。

 

「っ!?」

 

 ストライクはそのビームに反応し回避。

 その動きを追っていくハイペリオンが、アスランの眼前を横切っていった。

 

「カナード!」

 

「こいつは俺がやる!貴様はとっととスピリットを殺りに行けっ!」

 

「…あぁ、分かった!」

 

 一瞬、キラがカナードに殺されるのではないか、と後ろ髪を引かれる思いに駆られるも思い直す。

 

 キラなら─────殺される事はないだろう。むしろカナードの方が心配になるくらいだ。

 だがカナードもかなりの強者─────自分が早くスピリットを落とし、そしてカナードと合流してキラを連れ戻せばいい。

 

 そう─────とっくに決めていた。

 スピリットを、ニコルの仇を討つのは、この手であると。

 

「アスランっ、待ってっ─────!」

 

「キラ・ヤマト!貴様の相手はこの俺だっ!」

 

 ハイペリオンの背後、イージスが離れていく。

 行先は言うまでもない、スピリットの所であると分かるからこそ、キラは焦燥する。

 

 今のユウは正常な状態ではない。前回の戦いからどれだけ休めたか分からないが、出撃前に見た顔から、まだ回復しきれていない事は見てとれた。

 

 すでにスピリットはゲイツとの交戦に入っている。そこにイージスも割り込むとなれば─────前回の戦いではそれでも二機を蹴散らしていたが、今回はどうなるか分からない。

 

 キラが持つ絶対的な信頼が揺らぐほど、今のユウはキラにとって不安定に見えていた。

 

「貴様を殺す!それが、俺にとっての─────!」

 

「そこをどいて!」

 

 ストライクとハイペリオンが激しくぶつかり合う。

 

 キラとカナード─────一介のコーディネイター(同種)とは一線を画す能力を持つ者同士の戦いは、今この瞬間、本当に意味で始まりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イージスが仕掛けた攻撃により、アークエンジェルが大ダメージを受ける。

 何とか支援に向かいたいが、眼前のゲイツがそうはさせてくれない。

 

 撃ち放たれるルプスビームライフルの射撃を、機体を翻して回避しながらゲイツへと接近。

 向かってくるこちらを警戒し、ゲイツは更にフォルティスとクスィフィアスを展開─────砲門五門を一斉に火を噴かせてこちらを近付けまいとしてくる。

 

 実体弾であるクスィフィアスは回避、ルプスとフォルティスによるビームはシールドで受け止めながらスピリットのスピードを緩めない。

 

 砲撃と砲撃の合間を縫いながら機体をゲイツへ近付け、ビームサーベルを抜き放つ─────。

 

「っ!?」

 

「同じ、手を─────喰らうかよ…っ!」

 

 放った斬撃は空を切る。

 その事に驚きを覚えながらも、止まりかけた思考を再び動かす。

 

 今、ゲイツはこちらの斬撃を躱した直後─────それも斬撃を躱すためにかなり無理な体勢をとっている。

 

 ならば、間を置かない追撃は防げまい。

 機体をひらりと回転させ、ゲイツへ向かって左足を振り抜く。

 

「なっ─────ぐおっ!?」

 

 グゥルから蹴り落とされるゲイツ。その背後には、ここら一帯に点在する群島の一つがあった。

 海に落下するのであれば追撃をするつもりはなかったが、仕方ない。主を失ったグゥルを足場代わりに蹴り、機体を加速させる。

 直後、ライフルを手に取りグゥルを背面撃ち─────背後からの爆発音を聞きながら、木々を薙ぎ倒しながら着地したゲイツへ向けて、ビームサーベルを抜き放つ。

 

「ちぃっ!?」

 

 ゲイツにはシールドがなく、ビーム兵器に対する防御手段がない。PSが実装されている為に実体弾はその身に受けても防げるが、ビーム兵器に対してとれる手段は回避のみというのが、ミゲルが乗っているゲイツの弱点だ。

 

 右手に握るサーベルでゲイツを追い詰め、左でに握るライフルで止めを刺す─────前に、ゲイツのクスィフィアスが火を噴いた。

 機体を翻し、ゲイツの周囲をぐるりと回りながら砲弾を回避して、その勢いのままゲイツの背後へと回り込む。

 

「しまっ…!」

 

 このままビームサーベルを振り抜いて、ゲイツのメインカメラを斬り落とす。

 ゲイツが離脱しようとするが遅い、間違いなく間に合わない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()─────。

 

「─────」

 

 ここまで乱入してくる気配が見えなかったから、キラかフレイ辺りに動きを止められているのかと思っていたが、そうではなかったらしい。

 イージス─────ビームライフルの銃口をこちらに構えるその姿を視界の端に捉え、俺は攻撃行動を一時中断。

 

 踏み出していたスピリットの()()を踏ん張らせ、後方へ跳躍。その場から離脱した─────それと同時だった。

 

 ガキンッ

 

「っ!!?」

 

 スピリットのコックピットに微かな衝撃が伝わるのと同時に、嫌な異音が耳朶を打った。

 

 まずい─────直感的にそう思うも、敵は待ってくれない。

 味方のフォローで体勢を立て直したゲイツと、グゥルからこちらへ飛び降りてくるイージスが同時に襲い来る。

 

 ヘリオポリスから、一時戦線に戻れないのではと思われる傷を負いながらもここまで、ずっと共にしてきた愛機。

 その異常を感じ取りつつも、俺自身が招いた憎しみの渦は、俺とスピリットを逃がしてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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