久々の戦闘描写、書くのは凄く楽しかった。
だけど書き終わってから思う。主人公強くしすぎたかな?
…まあ、フラガだし!のノリなPHASE05をどうぞ。
時は遡り、ユウ達がアークエンジェルに搭乗する少し前──────
一時撤退を余儀なくされたクルーゼは、その旨を母艦であるザフト戦艦
ムウが駆るメビウスゼロとの戦闘の余波により、破片が宙に浮かぶ港を通り抜け宇宙空間へと飛び出るシグー。
クルーゼを迎えに来たのだろう、すでにヴェサリウスはヘリオポリスの近くにまでやって来ていた。艦の収容口が開き、クルーゼはそこへ機体を飛び込ませる。
緊急の着艦ネットがシグーを保護し、飛び込んだ勢いを殺す。
機体の動きが完全に止まったのを確かめたクルーゼは、すぐにハッチを開けてコックピットを飛び出した。
「クルーゼ隊長!」
そんなクルーゼを出迎えたのは、緑の軍服を着たミゲル・アイマンと、赤の軍服を着た少年アスラン・ザラ。
「隊長。一体、何が…?」
「あの二機は!?」
機体には目立った損傷はない、にもかかわらず撤退してきたクルーゼに戸惑いながら、その理由を尋ねたのはアスラン。
そして、続けてまだヘリオポリスに残っている新型モビルスーツ二機の状態についてミゲルが問い掛けた。
クルーゼは
「あの二機はまだ生きている。それに、情報にない新型の戦艦の乱入に遭った」
「戦艦ですって!?」
「あれらをこのまま放置する訳にはいかない。急ぎD装備を準備し、沈めに行け!」
再出撃の準備をしていたミゲル、そして共に出撃予定の二人のパイロットがクルーゼに向けて敬礼を返した後、それぞれ搭乗する機体へと向かっていく。
「隊長!私も行かせてください!」
直後、アスランが声を張り上げた。
いつもは冷静沈着なアスランが珍しく感情を荒げるその様子に、クルーゼは僅かな驚愕を覚えつつ、隊長として冷静な判断を下す。
「君には機体がないだろう、アスラン」
今回の任務は、地球連合軍の新型機動兵器の奪取。その為、アスランの愛機は本国へ置いてきていた。
「しかし─────」
「今回は譲れ。ミゲル達の悔しさも、君と変わらんよ」
アスランの肩に優しく手を置きながらそう声を掛け、クルーゼはその場を去る。
アスランが自身の背中をじっと見つめている事に気付きながら、構わず格納庫を出たクルーゼはそのままブリッジへ─────は行かず、一度艦長室へと寄った。
開いた扉から室内へと飛び込み、背後で扉が閉まる音を聞いてからクルーゼは、今までずっと
「─────っハハハ。ハハッ、ハハハッ!ア───ハッハッハッハッハッ!!!」
笑いが止まらない。余りに嬉しく、余りに憎らしく、そんな矛盾した感情から湧き上がってくる悦の感情を、どうしても止める事が出来なかった。
「…いかんな。これでは、今まで被ってきた仮面が台無しだ」
嗤い続けた果てに乱れた息を整えながら、クルーゼは自身の感情を調節する。
生きる目的を定めたその日、その瞬間から被り続けた仮面を、クルーゼは再度被り直す。
そしてクルーゼは今の自分がいるべき場所へと、ザフトのトップエース、ラウ・ル・クルーゼとしての自分を定めてから、艦長室を出る。
「さて…。まずは小手調べだ、ユウ・ラ・フラガ。君の力を見せて貰おう」
呟きは微かに、ブリッジへと上がったクルーゼの耳に飛び込んで来たのは、奪った機体─────X303イージスに乗って、アスランがミゲル達と共に出撃したという報だった。
『俺は構いませんよ』
その言葉を聞いた時、何故だろう。この人を一人で行かせちゃいけない、と思った。
自分でもおかしいと思う。だって、この人と会ったのは今日が初めてで、会ってからも碌に喋ってもいない。
なのに─────どうして私はこんなにも、この人が気になるの?
どうしてこの人を見ていると…、この人の近くに居ると温かく感じるんだろう?
初めてこの人と目を合わせたあの時、形容し難い感覚が私の全身を過った。
生まれて初めての感覚で戸惑ったけど、不快には感じなくて、むしろその感覚に温かさを覚えて─────。
『君が行くなら、私も行く』
ユウ・ラ・フラガ。そう名乗った彼と一緒なら、さっきまであんなにも怖いと感じていた戦場も大丈夫。
気付いた時には、私は自分も戦場に出ると口にしてしまっていた。
「…えっと、ヤマトはどうして戦場に出るって言ったんだ?」
今、私はストライクのコックピットに居る。コックピット内のスピーカーから聞こえてくるのは、通信が繋がっているもう一機のモビルスーツ、スピリットのコックピットに居るユウ・ラ・フラガの声。
モニター画面が浮かび、そこに映される彼の顔。彼は不思議そうに私の顔を見ながらそう尋ねて来た。
「…私が戦わないと、君が一人になるでしょう?」
「…俺の為?」
「うぅん。それもあるけど…、もう一つ、確かめたい事があるの」
この人を一人で行かせたくない。その気持ちは本当だけどもう一つ、戦場に出ようと私を決意させた理由があった。
─────アスラン。
それは、マリュー・ラミアスと名乗ったあの人とストライクに乗り込む前。彼女に襲い掛かるザフト兵、ヘルメットが邪魔でハッキリと見えた訳じゃないけれど…、名前を呼んだ時、私の名前を呼ぶ声が微かに聞こえて来た。
月の幼年学校で一緒になり、同じコーディネーターという事もあって仲良くなり、親友ともいうべき存在。
─────本当に君なの?アスラン…。
知りたい。本当にあのザフト兵が彼なのか。もしそうだとしたら、どうしてあんなにも戦争を嫌っていた彼が、ザフト兵になんてなったのか。
「…よく分からないけど、無理はするなよ。ヤマトは無理せず、艦の周りに居てくれたらいい」
「そんなの、私が一緒に居る意味がなくなっちゃうよ。…怖いけど、大丈夫。私も戦うから」
胸の内の感情が顔に出てしまっていたのか、画面に映る顔が心配げな表情を浮かべていた。
私を気遣うその言葉を嬉しく感じながら、それでもその提案は断らせて貰う。だって、その言葉通りにしたら、私がこの機体に乗る意味がない。
今言った通り、戦場に出るのは怖い。こうして兵器に乗り込んでいるという、この現状ですら今の私には怖い。
だけど、戦うと決めたんだ。この人と一緒に、この艦を─────この艦に乗っている友達の為に。
「それと、キラで良いよ。皆そう呼んでるから」
「そうか。…なら、俺もユウで良い」
「うん。ユウ、頑張ろうね」
私がそう呼び掛けると、彼─────ユウは無言で頷いてから通信を切った。
浮かんでいたモニターは消え、目の前に見えるのはストライクが映すメインカメラの映像のみとなる。
「すぅ─────はぁ」
大きく深呼吸をする。それでも大きく高鳴る心臓の鼓動は落ち着かず、操縦桿を握る手には汗が滲む。
それでもそこから手は離さず、むしろその手に更に力を込めたその時だった。
「ユウ君!キラさん!」
聞こえて来たのはさっきまで話していたユウとは違う女性の声。
それが、戦闘開始の合図なのだと、言われる前に私は悟るのだった。
…何かキラちゃん、決意固まってない?
この頃のキラは友達を守る為に嫌々ストライクに乗ってる筈なんだけど─────いや、キラちゃんも乗りたくて乗ってる訳じゃないとは思うんだけど、なーんか原作キラ君ほどストライクに乗る事への抵抗が感じられない。
俺に話してくれたストライクに乗る理由だって、確かめたい事ってのは十中八九アスランの事だろうけど、それに加えて
…ま、まあ大丈夫かどうかは今は置いといて、キラちゃん…本人から許可を貰った事だしこれからはキラと呼び捨てさせて貰おう。キラが一緒に出撃してくれるのは大いに助かる。
特に、恐らく来るであろうアスランが乗るイージスの足止めを間違いなく行ってくれるのは大きい。この段階ではアスランはキラを撃てないだろうし、キラがここで死ぬ可能性はゼロに近い。
となれば、俺は残るジンの相手に集中できる。
「ユウ君!キラさん!敵が来たわ!」
「っ…、出ます!ハッチを開けてください!」
突如通信から聞こえてくるラミアス大尉の声。それが何を意味するのか、言われるまでもなく悟った俺は意識を切り替える。
これが二度目の戦闘─────初めての戦闘でジンと対峙した時よりは、それこそクルーゼのシグーと対峙した時よりも今の俺は聊か落ち着いていた。
…原作でもバルトフェルドさんが言っていたな。「人は慣れる」って。
構うものか。そのお陰で落ち着いて戦えるのなら、いくらでも慣れてやる。
目の前のハッチが開いたのを見てから、フットペダルを力一杯に踏み込む。
スラスターが吹き、機体が高速で空へと飛びあがる。
「!こいつ…っ!」
最初のジンとの戦闘はスラスターを全開で吹かせる事はなく終了した。
つまり初めて、俺はこのスピリットという機体の全開をその身に経験している。
凄まじい加速と速度。パイロットスーツを着ていない体に掛かるGに、思わず歯を食い縛る。
「この速度…、なるほど!武装が少ないシンプルな機体な訳だ!」
要するに、速さに物を言わせて近付いて斬れ、という事なのだろう。
近接武器が二本ある癖に、遠距離武器がビームライフル一丁だけというのが良い証拠だ。
だが、それもいいかもしれない。
ブリッツの様な豊富な武装と優れた隠密性とは真逆の脳筋機体。色々と考えず、近付いて斬るがコンセプトの機体。
「やってやるさ!」
センサーには四つの光点。ジンが三機とイージス一機、原作通りの布陣だった。
スラスターを吹かせたまま俺は先行し、ザフト機の集団へと突っ込んでいく。
「な、なんだ!こいつ、速い!」
スピリットの先行はユウも思いもしなかった効果を生んでいた。
ザフト側からすれば、センサーに映るスピリットの速度は異常でしかなかった。
あっという間に、先程まで点ほどにしか見えなかったその機影が見る見るうちに近付き、大きくなっていく。
「落ち着け!全機散開!絶対に固まるなよ、一気に刈り取られるぞ!」
ミゲルの指示が飛び、三機のジンとイージスが進路を変えてバラバラになる。
「っ─────」
その様子を見たユウは視界を回し、内一機のジンに狙いを定める。
ビームライフルは、一度目のジンとの戦闘時と同じく使えない。ユウに取れる作戦は、相手の懐に飛び込みビームサーベルで敵を斬り飛ばすのみ。
出来る事が一つだけというのが、今のユウには功を奏する。ただその事のみに集中、それが余計な雑念を拒んで居た。
「お、俺を狙って…」
「オロール!くそっ、この野郎っ!」
スピリットに狙われたジンは機体を反転してその場から離れる。
僚機を追い掛けていくスピリットに気付いたミゲルが慌てて追い掛けていく、が、双方の速度の差は歴然だった。
「これでも喰らえっ!…駄目だ、速すぎる!?」
ジンは再度機体をスピリットへと向け、ポッドよりミサイルを発射する。
だが、ミサイルはスピリットを捉える事なく空を抜け、コロニーの地面へ降り注ぐのみだった。
現在、ミゲル達が乗るジンが装備しているD装備は、敵拠点を破壊する事を目的とした重装備だった。
「当たれ!当たれ!当たれぇぇぇええええええ!!」
半狂乱の状態でミサイルを連射するオロール機。だがその全てがスピリットに当たる事なく、ただヘリオポリスを破壊していくのみ。
「オロール!オロール!!これ以上撃っても無駄だ!まずは装備を外して─────」
ミゲルが何かを言い切る前に、スピリットがオロール機の懐へと飛び込む。
ビームサーベルを振り上げて一閃、オロール機のD装備の片側を斬り落とす。
続け様に振り下ろして二閃、D装備の残ったもう一方を斬り落とす。
流れるようにして左薙ぎの三閃、ジンのメインカメラを斬り落としてからスピリットはコックピット付近に蹴りを入れてオロール機を地面へと叩きつけた。
「くっ…!マシュー、装備を外せ!あの機動力を相手にするのにこいつは邪魔にしかならん!アスラン、お前もこっちに─────」
僚機がやられた動揺を抑え付け、ミゲルはリーダーとして気を飛ばす。
自身と同じくジンに搭乗したマシューに今度こそD装備を外すよう指示を出してから、続けてミゲルはアスランが乗るイージスへ指示を飛ばそうとするが、すでにミゲルの視線の先で、イージスはアークエンジェルから出撃していたもう一機の機体、ストライクとの交戦に入っていた。
「くそっ!マシュー、回り込め!正面は俺が抑える!」
「来るか!」
ミゲルのジンが重斬刀を構えてスピリットへ突貫する。
それに対したユウのスピリットもまた、サーベルを片手に、もう一方の手には対ビームシールドを構えてジンを迎え撃つ。
振り下ろされるジンの重斬刀を、シールドで弾く。対ビームを想定したシールドだが、耐衝撃性にも優れていた。
剣を弾かれたジンのメインカメラ目掛けて、ユウはサーベルを突き立てる。
「っ!?」
しかし、その斬撃は空を切る。
視界からジンが消え、その直後にコックピット内に強い衝撃が加わる。
「ぐぁぁぁああああ!」
「機体は確かに上等だろうよ!だが、パイロットの腕は俺が上だ、ナチュラルが!」
口から飛び出る悲鳴。それでも目だけは開け、手も操縦桿から離さない。
フットペダルを踏み、落ちていく機体を立て直す。直後、スピリットを蹴り飛ばしたジンを狙った光条が視界を横切る。
スピリットのピンチに反応したアークエンジェルが、ミゲルのジンへと反撃を始めたのだ。しかし、ジンはひらりとビームを躱すと、その背後、コロニーのメインシャフトに反撃のビームが命中してしまう。
「っ、ダメだ兄さん!これ以上はヘリオポリスが落ちる─────っ!」
アークエンジェルへと、自らの兄へとユウが呼び掛けた直後、機体のセンサーが敵機の接近をユウへと報せる。
「落ちろぉぉおおおおおお!!」
それは、ミゲルの指示通りにスピリットの背後へと回り込んだマシュー機。
「いくらフェイズシフトだろうと!」
「それは見えている!」
重斬刀をスピリットのコックピットへと突き立てようとするマシュー機の動きを、ユウは機体を翻す事で回避。
その勢いのまま機体を回し、サーベルを振り抜きマシュー機のメインカメラを斬り落とす。更に今度は左手のシールドを振り抜いてマシュー機を弾き飛ばした。
「マシュー!?くそっ、貴様ぁぁぁああああああ!!!」
コックピットは二機とも生きている。しかし、遭えなくあしらわれる仲間達の姿に激昂したミゲルが突撃銃をスピリットへと向けた─────直後だった。
鳴り響く爆音に二機の動きが止まる。
それは、必然の出来事だった。
戦闘の余波により、コロニーの地表は罅割れ、内壁もボロボロ。その上、先程のアークエンジェルの砲撃によりメインシャフトの一部が吹き飛んでいる。
ここまで保ったのが、奇跡だったのだ。
瓦礫が舞い上がり、コロニーの崩壊が始まる。
崩壊の隙間から覗く漆黒の宇宙空間。
同時に、スピリットとジンの二機は急激な減圧により、別の方向へと吸い出されていく。
「キラ─────!」
離れていくミゲルのジンなど、最早意識の外だった。
回るコックピットの中で、それでもユウはストライクを、キラの姿を探す。
しかし、最悪と言えるこの状況では視界を確保する事すら難しい。
スラスターを全開にするも、機体は飛ばされていく。
ユウを乗せたスピリットは、外界へと投げ出されてしまうのだった。