やっぱり月末はどうしても投稿ペース落ちちゃいます。
それでも土日の休みは投稿したいですね。
という事で、ちょっと短いですけど最新話です。
アスランとカガリ(ついでにカナードもいるよ)の対話シーンです。
ふと耳に入って来た物音に、急激に意識を引き上げられた。
無意識に開けた視線の先には、染み一つない白色が広がっており、それが天井である事に気付いたのは数秒程経ってからだった。
ぼんやりとハッキリしない思考と身体に鞭を打ちながら
そこは小さな部屋だった。室内に点いている灯りは最小限で、薄暗さを感じさせる。
─────ここは…?
見覚えのない室内。ようやくアスランの頭は現状の把握に努め始めた。
自分はどうやらここに寝かせられていたらしい。それと、ここへ自分を連れて来た輩は味方か、或いはお人好しの類か─────ご丁寧に左腕が三角巾に吊るされている。
これを見るに、左腕は骨折している様だ。
─────俺は…、
「ようやく起きたか」
「っ!!?」
その時、何者かの声を耳に捉えたアスランは弾かれるようにそちらを向く。
無感動にアスランの反応を眺めていたその男は、小さく鼻を鳴らしながら続けた。
「お互い、無事にくたばり損なったらしいな」
「カナード…。無事だったのか」
男─────カナードの顔を見たアスランがほっ、と息を吐く。
カナード、イザーク、ディアッカの安否はアスランからの視点では定かではなかった。
その内の一人の生存が確かめられた事に、アスランは心の底から安堵をする。それと同時にカナードの現在の姿を見て、どうやらここが味方陣営の懐ではない事だけは理解した。
アスランは片腕を骨折し、三角巾で拘束されている為にフリーとなっているが、カナードは両手を背後に回して手錠を掛けられていた。
「貴様も、スピリットからよく生還出来たな。代償もあったようだが」
「…いや。これをやったのは、スピリットじゃない。スピリットは…俺が撃ったよ」
「なに?」
カナードの眉が怪訝気に歪む。
彼もまた、スピリットの強さを良く知る人物の一人だ。そんな反応になるのも仕方ないと納得も出来る。
アスラン自身、あの結果は出来過ぎとすら思っていた。また同じ事をやれと言われてもきっとやれないだろうし、やりたいとも思わない。
そう─────二度と御免だ、あんな真似をするのは。本当に、二度と…。
「…カナード、ここは一体どこだ?」
「さぁな。俺もついさっき目が覚めたばかりだ。味方の艦ではないのは確かだが」
カナードもアスランと同じく、自分達が居るこの場所がどこなのか見当がついていないらしい。
どこか他人事に、吐き捨てるように答えたカナードは壁に寄り掛かりながら大きく息を吐く。
「気が付いたか」
その時だった。部屋の機械扉が開く音がして、アスランとカナードは同時に目を向ける。
そこには鋭い目つきで二人を睨みつける、金髪の少女が立っていた。
顔立ちは整っており、きつい印象を感じさせる両目は更に吊り上がっており、そして彼女の手にはどうも似つかわしさを覚えない、黒光りした拳銃が握られていた。
少女は銃口をアスラン達に向けながら、ゆっくりと室内に入って来る。
「さっき、ここがどこかと話していたな。…ここはオーブの飛行艇の中だ。我々は倒れていたお前達を発見し、収容した」
自分達の会話が知られている─────ふと見上げた視線の先には、天井に取り付けられた監視カメラがあった。
どうも拘束が甘いと感じてはいたが、可笑しな真似をすればすぐにでも突入出来る態勢は整えていたらしい。
いや、それよりも─────
「オーブだと?」
アスランよりも先にカナードが訝し気に口を開いた。
何故オーブの船に自分達が乗せられているのか─────思考を深めようとしたアスランの脳内に、一つの予測が立てられる。
「中立のオーブが俺達に何の用だ?それとも…今は地球軍か?」
国境付近で派手に戦闘したのだ、オーブ側は当然それに気付くだろう。そして足つき─────アスラン達はアークエンジェルを仕留めた訳ではない。
今頃、アークエンジェルはアラスカに着いた頃だろうか─────先程の戦闘について上層部に報告すれば、調査の手は戦闘空域に伸びるだろう。
その調査者に選ばれたのがオーブ軍─────なのだろうか。
可能性としては低いだろうと、アスランも考えてはいるが、決してあり得ないという訳ではない。
尋ねられた少女はアスランを見ながら、何故か僅かに表情に戸惑いを浮かべた。
いやそれよりも─────何故、自分は心底
オーブが地球軍に加われば、プラント側にとって大問題だというのに…どうして─────。
「聞きたい事がある」
少女は微かに声を震わせながら口を開いた。
「スピリットをやったのは─────どっちだ?」
「…俺だ」
震えそうになる声を励ましながら答えたアスランに、少女は銃口を向ける。
「パイロットはどうした!?お前の様に脱出したのか?見つからないんだ!スピリットのパイロットが…ユウがっ!」
グリップを握る手にぐっと力を込めながら、矢継ぎ早にアスランに質問を投げ掛けてくる。
少女の問い掛けはアスランの耳を通り抜けながら、頭の中にこれっぽっちも入ってこなかった。
ただ一つだけ─────彼女が発した二つの文字だけが、アスランの意識にハッキリと刻まれた。
「
今まではただ憎かっただけのスピリットのパイロット─────キラが恋に落ちた相手の名前は、ユウというらしい。
少女の問い掛けも、どうしてここに自分が居るのかも、これから自分がどうなるのかも、アスランの興味に触れてくれなかった。
しかし、幼馴染の少女が心を傾けた相手─────ユウが一体どんな人物なのか。この少女は、ユウの事を知っているのだろうか。
「質問に答えろっ!」
詰め寄って来る少女。向けられる銃口を眺めながら、この距離ならどうとでもなるな─────なんて他人事のように考えながら、アスランは口を開いた。
「殺したよ、俺が」
「─────」
少女の呼吸が一瞬止まったように見えた。
「ビームサーベルでスピリットの胸部装甲を突き刺した。…コックピットは外したが、あの爆発だ。脱出した様にも見えなかったし、生きてるとは思えない」
少女の目が見開かれていく。
その瞳にはありありと動揺が浮かび、銃を握る手と唇がわなわなと震える。
彼女から伝わって来る感情─────覚えがある。つい最近に、身に染みて感じたばかりのものだ。
あぁ─────そうだ…キラだ。
「貴様─────っ!」
少女が叫びながら、銃口を突き付ける。
カナードが咄嗟に身構える。
それを他所に、アスランは突き付けられる銃口を無感情に見つめる。
「俺を殺すのか?」
「っ…!」
「…あの時、キラに殺され損ねた代わりに、ここでお前に殺されるのもいいかもしれないな」
自嘲気味に呟くアスラン。その呟きを耳に捉えた目の前の少女が驚きに目を瞠った。
「キラ…?キラを知ってるのか?」
「なに…?」
無意識に口から突いて出たかつての友の名前に、何故か目の前の少女が反応する。
いや─────待て。この声、どこかで聞き覚えがある。それもつい最近だ。
一体どこで─────
「お前…、アスハを名乗った女…!そうか…。足つきに乗っていたのなら、キラを知ってるのも無理はないか」
「答えろ!貴様は何故、キラの名前を知っている!?」
確か、カガリ・ユラ・アスハと名乗っていた。何故オーブ首長の娘があの艦に乗っていたのかは知らないが、キラを知っている理由については納得出来た。
「友達だったからな。月の幼年学校に通っていた頃、よく一緒につるんでたよ」
「なっ…!」
少女、カガリからの問い掛けに答えると、信じられないと言わんばかりに銃を持つ彼女の手が一瞬大きく震える。
「友達って…、なら何でお前がアークエンジェルを…!キラが乗ってる艦を襲うんだよ!」
それは至極真っ当な疑問だ。友人同士が戦争で銃を向け合って─────まともな神経を持っている者であれば、信じられないのも無理はない。
アスランも、キラだって、最初はその現実を信じられなくて目を背けたくて、その場から逃げ出したくなった。
しかし互いにそれは許されなかった。
「俺がプラントに戻って…それで、次に会った時には敵だった」
「てき…?」
「一緒に来いと何度も言ったさ。あいつはコーディネイターで、俺達と一緒に来るべきだと!地球軍にいる事の方が可笑しいのに!でも…もう、あいつには、俺以外にも─────俺以上に大切な人が居た…」
「そうだ!それがユウだった!」
これまでの闘いの日々を思い返しながら、最後は力なく言葉を止めたアスランへカガリが掴みかかった。
「キラは…キラの周りには、お前みたいにナチュラルだとかコーディネイターだとか、そういうのを気にしない良い奴らがたくさんいた!ユウだってその一人だ!ユウは…あいつ、時々意味分かんないけど…優しくて、いつも他人の事ばっかり気にしてて、キラの事なんて特に…!良い奴、だったのに…」
くしゃりと顔を歪ませ、その目から涙を溢れさせながらカガリがアスランへ言葉を叩きつける。
「何で…よりにもよって友達のお前がっ!キラからユウを奪っちまうんだよっ!」
「っ─────」
改めて現実を突き付けられるアスラン。
分かっている。取り返しのつかない事をしたというのは、どうしようもない程に理解している。
「スピリットは…ニコルを殺した。俺達の仲間で、十五歳で、ピアノが大好きで…それでもプラントを守る為に戦う事を選んだあいつを!」
「ユウだって、守りたいものの為に戦っただけだ!キラを!家族を!仲間を守る為に戦っただけなのに!」
同じだ。皆、同じだ。
誰にでも守りたいものがあって、戦いたい理由があって─────そんな人達が銃を向け合い、殺し合う。
それが戦争なのだと、今になってようやく、アスランとカガリは思い知る事となる。
「殺されたから殺して…殺したから殺されて…!それでホントに、最後は平和になるのかよ!?」
だがその殺し合いの果てに待つのは、それは果たして平和なのだろうか?
戦いがなくなって、皆が幸せに過ごせる未来─────今、カガリが言ったように
身を縮め、死者を悼んで泣きじゃくるカガリを前にしながら、アスランは考える。
分からない─────分からない。今まで考えようとすらしなかった、戦争の終わらせ方。
ただ戦っていれば、どちらかが勝てば、戦争は終わるとしか考えていなかった。
なら、どうやって勝ち負けを決める?どこで戦争は終わる?
それを定めるルールはどこにもない。思考の先に見え隠れする底知れない闇に、アスランは凍える感覚を覚えた。
カガリはこれ以上何も言わない。
アスランは未だに体を震わせ、泣き続ける少女を眺めながら思う。
どれだけ考えても分からない、けれども、分からないと決めつけて考えるのを止めてはいけない。
でなければ、取り返しのつかない事になる─────そんな予感がした。
「…」
そんな二人のやり取りを眺めていたカナードは、微かに息を吐きながら、揺れる瞳に小さな迷いを携えて、そっと視線を逸らした。
友達─────奴らは、友同士で殺し合っていた。
本人達にとってどれだけその現実が過酷だったか、カナードには計り知れない。
しかし彼らはその果てに迷いを振り切り、互いの掛け替えのない存在を失った事を切っ掛けに、遂に本気の憎しみをぶつけ合う事となる。
「キラ・ヤマト…」
小さく、小さくその名を呟くカナード。
何故…奴はそんな状況下にありながら、あんなにも穢れのない瞳をしていた?
そして今…愛する人とやらを失ったあいつは今、何を思っている?
自分と同じように、憎悪に呑み込まれたか─────或いは?
キラ・ヤマト─────憎悪の対象であり、自身の存在を証明させるための試金石でしかなかった筈の相手。
しかし今、カナードの中でキラに対して初めて、憎悪以外の感情は生まれつつあるのだった。
「守備隊ブルーリーダーより入電。『我これより離脱する』」
「援護を感謝すると伝えて」
パルからの報告に、疲れの滲む声で指示を返す。
アークエンジェル上空では、アラスカ守備隊の航空機動隊が翼端灯を点滅させながら離れていく。
あれからディンの追撃を受けながら、戦闘空域を離脱した所で、ようやくアークエンジェルはアラスカとのコンタクトを果たした。
「だ、第十八レーダーサイト…より、船籍照合」
「アラスカへは初入港ですものね。データを送って。問題はないと思うわ」
もの慣れない様子で口を開いたカズイとマリューとのやり取りの間に、一気に艦橋の空気が緩んだ。
第八艦隊と合流した際、アークエンジェルは識別コードを得てはいたが、結局今の今まで使用する機会はなかった。
つまり、第八艦隊との接触以来初めて友軍と接触する事になる。
孤立を続けたアークエンジェル─────クルー達は常に精神を尖らせ、決して弱みを出さない様努めてはいたが、隠しきれない疲労は限界を迎えつつあった。
ギリギリまで敵に追われ続け、制空圏まで辿り着けても安全な所へ居るという実感は湧いてこなかった。
しかし今、クルー達はようやくにして長い孤立が終わりを迎えたのだと─────本当の意味で、息を抜いても良い時が来たのだと実感を得る。
こうして長い時を経て、アークエンジェルはアラスカへと辿り着く。
そこで待つものが一体何なのか、今この時点では誰も知らない。
だが確かに一つだけ言えるのは、大きな犠牲を伴いながらも、彼らはやっと安息の時を手に入れる事が出来るのだった。
それがどれだけ短く、どれだけ儚いものだったとしても。
彼らの長い戦いは、ほんの少しだけでも報われるのだと。今この瞬間、誰もがそれを疑う事はなかった。
アスラン君、戦争の根本について考え始める。その果てに彼は一体どういう結論を出すのでしょうか。
という事で、ちょっと今からお出掛けしてきます。SEED FREEDOMの特別版見てくるでー。
そんでモチベを更に高めて、明日も一日じっくり執筆して、連続投稿出来たらいいなと思ってます。
そいじゃノシ