フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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PHASE75 三人の結論

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 随分と、艦の中が賑わっている気がする─────怪我が治り、医務室から独房へと居場所を移したミゲルは、薄暗い室内の中でふと思う。

 

 いつまで自分はこの艦に乗せられたままなのか、その上捕虜を乗せたまま戦闘を行うなんてどうなっているのか等、ここ最近のアークエンジェルの行動に疑問は尽きないが、現在最もミゲルが気になっているのが、独房内に居ても気付けるほどの艦内の空気の変化だった。

 

 ミゲルが捕虜としてこの艦に来た時は、まるで葬式でもしてるのかと思わされる程に艦内の空気は暗かった。

 その理由が、自身とアスランが共に戦い、その果てにアスランが討ったというスピリットのパイロットのMIAだと知った時は、胸の内を強く殴られた様な衝撃を感じたが─────今の艦内は、それが嘘の様に明るくなっている。

 

「…ワケ分かんねぇ」

 

 ポツリと呟くミゲル。

 

 いつまでも捕虜である自分を乗せておく意味も、捕虜を乗せたまま戦闘を行ったその神経も、どん底に暗かった空気が突如として変貌したのも。

 独房という隔離された場所に居続けるミゲルには、その理由が到底分からない。

 

「あー、腹減った…」

 

 それよりも問題なのは、もうとっくに来て良い筈の食事が未だに来ない事である。

 独房内では正確な時刻こそ分からないものの、何日も同じ生活をしていればある程度時間の感覚が掴めてくる。

 

 無駄に高性能な感覚を披露しながら、いい加減に早く飯を食わせろと捕虜の立場にあるまじき高慢な念を抱きかけた、その時だった。

 入口の方から小さな足音が聞こえてくる。ようやく食事を届けに来たらしい。

 

「ったく、遅刻だぞー。こんな所で餓死なんてしたら、化けて出るからな」

 

「当番が忘れてたみたいでね。すまない」

 

「…っ─────」

 

 差し入れ口から滑り込んできたトレイと共に、すぐ傍から聞こえてくる若い男の声。

 

 今まで食事を届けに来た兵士達の中で、全く聞き覚えがない声に違和感を覚えつつミゲルは顔を上げて、そして格子越しに見えたその顔を見て息を呑んだ。

 

 年齢はミゲルより同年代か…いや、少し若く見える。アスランと同じくらいか─────地球軍の男性用軍服を身に纏った金髪の少年は、サファイア色の瞳を覗かせる。

 顔立ちは中性的で、服装や声からしても間違いなく男なのだろうが、それでいても同性であるミゲルに綺麗だ、と思わせる程度には整っていた。

 

「…へぇ、今日は随分と幼い男の子が来たんだな。見た事ないけど、アンタも兵士か?」

 

「まあね。ちょっと事情があって、今までここには来られなかったけど…貴方とは話をしたかったんだ。ミゲル・アイマン」

 

 トレイに載った簡素なパンを手に取り、齧り付こうとしてミゲルは動きを止める。

 

 自分の名前を知っている─────驚きつつも、少し考えれば当然といえるだろう。捕虜である自分の名前くらい、艦内に居る全クルーに知れ渡っているに決まっている。

 気を取り直して、ミゲルは一口パンを齧って咀嚼し、飲み込んでから口を開く。

 

「俺と話をしたかったなんて、変な奴だなアンタ。敵である俺が怖くないのか?」

 

 聞いてから、何だって自分は敵の立場である人物と雑談なんてしているんだろう、と疑問に思う。

 それに、幼く見える少年の目にも、自分を怖れる色が全く見えない─────だからだろうか。ミゲルが衝動的にそんな事を問い掛けたのは。

 

 少年はミゲルの目を真っ直ぐに見ながら答える。

 

「別に怖くないさ。貴方は地球軍の兵士をたくさん殺したんだろうけど、俺だって貴方の味方をたくさん傷つけた」

 

「…何だよ、意外だな。裏方じゃねぇんだな、アンタ」

 

 幼く、人畜無害そうにすら見える少年の口から出て来た言葉に、ミゲルは目を見開いた。

 

 一見は、血生臭い戦場とはかけ離れた雰囲気を持っているというのに─────地球連合は人材不足なのだろうか?とも思いつつ、一方のザフトでもニコルの様な優しい少年が戦争に駆り出されているのを思い出し、どちらも同じ狢かと思い直す。

 

「パイロットだよ。多分、貴方達が最も憎んでる機体の」

 

「─────」

 

 その言葉に、ミゲルの思考は停止した。

 

 この艦に所属しているパイロット─────それはつまり、今までの戦闘で出て来たモビルスーツ、戦闘機、合わせて四機のどれかに搭乗していたという事。

 そして、自分達が最も憎んでいる機体─────ニコルを切り裂き殺した、黒の機体がミゲルの脳裏を過った。

 

「まさか、お前─────」

 

「自己紹介が遅れたね。俺はユウ・ラ・フラガ。貴方とも何度も戦った…スピリットのパイロットだよ」

 

 ミゲル・アイマンが唯一、本気の殺意を以て刃を向けた機体─────スピリット。

 

 宇宙ではザフトの絶対的トップガン、ラウ・ル・クルーゼとの死闘を繰り広げ、アフリカでは砂漠の虎アンドリュー・バルトフェルドを退け、紅海ではエースの一人であるマルコ・モラシムを討ち取った。

 ザフトが誇るトップエース達に打ち勝ち、果てにミゲル達の仲間であるニコルを殺した憎き仇─────その人が今、目の前に立っている少年なのだと、数拍を置いてからようやくミゲルは受け止めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満身創痍のアークエンジェルは、太平洋を南下していた。

 あの後、今後どうするべきかの話し合いが行われた結果、オーブへ身を寄せるという選択が成された。

 今更軍へと戻っても、待っているのは軍法裁判と、敵前逃亡によって下されるであろう射殺刑だ。自身が素知らぬ所で勝手に命を弄び、餌にされたという憤りは当然、ラミアス艦長達に軍へと戻るという選択を選ばせなかった。

 

 オーブへのコンタクトはまだ取れないが、恐らく傷ついた人達を拒みはしないだろう。

 

 あと一週間もすればオーブへ着く。その前に、俺はどうしてもこの人と─────ミゲルと話がしたかった。

 

「おまえ、が…スピリットのパイロット、だと?」

 

 震える声で復唱するミゲルへ頷く。

 

 意外にも、ミゲルの反応はただただ純粋な驚きといった感じだった。

 もっとこう、仲間の仇に対して憎しみと殺意をぶつけて来るというか、格子で妨げられるとはいえ殺しに掛かって来られるのも覚悟していた。

 

 だけどミゲルは、驚きこそすれどそれ以上の反応は示さなかった。

 それに対して俺は少なからず驚き、そしてその感情は無意識に面に出ていたのだろう。

 

「んだよ」

 

「いや…。もっと俺に何かあるんじゃないか、って思ってたから…」

 

 ぶっきらぼうに聞いてくるミゲルに、正直に答える。

 ミゲルは心外そうに鼻を鳴らしながら返す。

 

「確かに、ニコルが…ブリッツがアンタにやられた時はそりゃあ怒り狂ったさ。─────だけど、ここには俺達と同じ思いをした奴らが居たからな」

 

「…」

 

 咄嗟に三人の顔を思い浮かべる。

 キラと、兄さんと、フレイ─────フレイに至ってはミゲルを撃ち殺そうとしたという。

 

 ミゲルが言う、()()()()()()()()()─────その存在を知ったのはきっと、フレイとのやり取りを経てなのだろう。

 

「だけど結局俺は生きていた。そこについては何も思わないのか?」

 

「思うさ。でも、それでアンタをどうにかしようって気にもならん」

 

 本当に俺に対して憎しみという感情を持っていないのか。ミゲルはトレイに載ったお椀を取って、中のスープを一気に飲み干す。

 

「で、なんだ?アンタが俺と話したい理由ってのは、ニコルを殺した贖罪でも受けに来たってか?」

 

「…」

 

「…マジか?」

 

 贖罪なんてそんな大それた言い方をするつもりはないが、ミゲルの前に姿を現して、俺が何者なのか─────せめてそれだけは話しておかないといけないと思った次第だった。

 その上で、ミゲルの気が済むまで罵声を受けるくらいはしなきゃ駄目かなとも思ったけど…。

 

「…アンタみたいな奴が居たなら、戦争なんて起きなかったのかもな」

 

「え?何か言った?」

 

「何でもねぇよ」

 

 何かミゲルが呟いた気がして聞き返せば、頭を振られてしまう。

 この件についてはこれ以上言及する気はないらしい。ミゲルはこちらを向いて、別の話を切り出した。

 

「…大体、今更アンタに手出しでもすれば、今度こそ俺が殺されちまうわ」

 

「…あー」

 

「否定してくれよっ」

 

 ミゲルが言った事に妙に納得できてしまい、どう反応すべきか困っていると、俺が明確な返答をする前に大声でツッコまれてしまう。

 

「あのキラってのとフレイって奴、綺麗な子二人に好かれてるみたいじゃねぇの。羨ましいねぇ」

 

「…」

 

 キラ、フレイ─────だけじゃないんだよな。

 今ここでラクスにも告白されてます、しかもキスもしました。因みにキラともキスをしてる、なんて言ったらミゲルは卒倒するんじゃなかろうか。

 

 それに─────ミゲルが羨むような、良い事だけの話じゃない。

 

「あの二人もアンタが生きててさぞ喜んだだろ」

 

「…そうだね。キラ()喜んでたよ」

 

「…?」

 

 俺の言い方に違和感を抱いたのだろう、ミゲルはパンに齧り付きながら怪訝な顔をした。

 

 齧ったパンを咀嚼して飲み込んでから、俺へ何かを言おうと口を開きかけて─────

 

「ここに居たのですね、ユウ」

 

 その前に割り込んで来た声にミゲルは口を閉じた。そして、ゆっくりと見開かれていく彼の目は次の瞬間、声がした入口の方へと勢いよく向けられる。

 

「ラクス?キラも、何でここに?」

 

「ユウを探してたんだ。そしたら、食堂の人がここに食事を届けに行ったって言ってたから」

 

 そこに立っていたのはラクス、と、その後ろからはキラが顔を覗かせていた。

 何で二人が独房に?しかもラクスは一度ここで拘束されているのだから、いい思い出はない筈だ。

 そう思って二人がここに居る理由を尋ねてみれば、その問い掛けに答えたのはキラだった。

 

「探してたって…なんで?」

 

 独房まで来た理由は分かったが、同時にもう一つ疑問が湧く。

 キラが言った、俺を探していたというその理由だ。しかもキラとラクスの二人で。

 

 キラとラクスは何やら二人で話がしたいと言って、キラの部屋に閉じ籠っていた。こうして二人で部屋の外に出たという事は、その話とやらが終わったのだろうが─────うん、嫌な予感がするぞ。

 フラガの感覚がこれでもかと警鐘を鳴らしてる。今すぐこの場から逃げるべきだ、と。

 

「え…は?ラクス様?はぁ!?」

 

「あら…、貴方は確か、アスランと一緒に会った事がありましたね。えーと…」

 

「み、ミゲル・アイマンです。いやそれより!何故ラクス様がこの艦に!?」

 

 ラクスの姿を見て混乱するミゲル。無理もない、プラントに居る筈の歌姫が地球に、それも敵陣営の艦の中に居るとなればそんな反応になるだろう。

 

「初めから話すと長くなるのですが…、一言で言うなら、ユウに連れ去られてしまいましたの」

 

「…っ!!!?っ!!!!!!!!!?」

 

「違─────くはないけど、説明の仕方のチョイスが最悪過ぎる」

 

 事実、シーゲル様を気にしてプラントを脱出する踏ん切りがつかずにいたラクスを、俺が連れ去った形になったのは否めないのだが、事情を何も知らないミゲルにそんな言い方をしたらどうなるか。

 

 答えは見ての通りである。目を白黒させながら、ラクスと俺をただただ交互に見遣るだけの機械になってしまったミゲルはもう駄目だった。

 短くとも十分くらいは、彼の脳みそは使い物にならないだろう。

 

「それでラクス。キラと二人して俺を探してた理由は何なんだ?何か話したい事でもあるんだろう?」

 

 何を思い出しているのやら、微かに頬を火照らせていたラクスにそう問い掛けてみれば、ハッと思考を取り戻した彼女がこちらを見る。

 

「そうでしたわ。ユウとお話したい事があったのです。わたくし達と一緒に来て頂けますか?」

 

「…いいけど」

 

 良くないって答えたい所だったけど、本当は怖くて仕方ないけれど、これ以上二人に背を向けて、自分の想いから逃げたくはなかった。

 

 だから、意を決して俺は二人と腰を据えて向き合う事にする。

 

 最後にミゲルにまた話そう、と一言掛けていこうと思ったけど、ミゲルはまだ再起不能の状態で固まっていた。

 これでは声を掛けても届かないだろうと断じて、先に行ってしまったラクスとキラの後を追い掛ける。

 

 後にミゲルからどういう事かと問い詰められる事になるのだが、今は置いておく事にする─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラクスとキラに連れられて入ったのは、キラの自室だった。

 思えば、キラの部屋に入ったのはこれで二度目なんだな、なんて。初めて入った時は、避難民を乗せたシャトルが目の前で撃墜されて、キラが塞ぎ込んでしまった時だった。

 

 その前から言葉に出して言われた訳ではないけれど、キラから想いを向けられているのだと知る機会があって、俺もあの時にキラへ並々ならぬ想いを抱いているのだと自覚した。

 

 今はキラ以外にもう一人、ラクスという女の子に同じような気持ちを抱いているのだけれど─────この機会に、二人へ俺の正直な気持ちを打ち明けようと思っている。

 それを受けて二人がどんな反応を返すかは少し怖いけれど、今の俺には、どちらか片方を選ぶなんて事は出来ないし、そんな資格もないと思っている。

 

 ラクスとキラ、どちらかを選ぶなんて烏滸がましいと思うし、それに、俺は俺に想いを寄せてくれているもう一人の女の子との決着を着けなくちゃいけない。

 

「ユウ」

 

 キラの部屋に入り、二人に促されて部屋にあるただ一つの椅子に腰を下ろした俺を真っ直ぐに見て、最初に口を開いたのはラクスだった。

 

「わたくしは、貴方を愛しています」

 

 ラクスから想いを言葉で告げられたのは、これで二度目だ。そして─────

 

「私も、ユウを愛してる」

 

 キラから想いを言葉で告げられたのは、これが初めてだった。

 

 二人から熱を帯びた目で見られながら、俺は次の言葉に耳を傾ける。

 

「わたくしもキラも、ユウの本当の気持ちを知りません。だから─────」

 

「だから、ユウの口から教えて欲しいの。貴方が私達を、どう思っているのか─────」

 

 熱を帯びた瞳の中に微かな不安を過らせながら、二人の女の子が勇気を振り絞っている所を目の前にして、俺は情けなくて仕方なかった。

 

 好きな女の子達に手を引かれてばかりで、自分から行動を起こす事が出来なくて、なのに、そんな情けない男を二人は好きでいてくれるという。

 

「俺も好きだよ、()()()()が。親愛じゃなく、恋愛的な意味で」

 

 そう返せば、微かな不安に固かった二人の表情がふっと和らぐ。

 その和らぎは安堵から来るものか、嬉しさから来るものか─────。

 

「だけど、ごめん。俺は二人の気持ちに応える訳にはいかない」

 

「…ユウ、それは────」

 

「二人の事が好きなのに…、俺は二人以外の女の子の事を考えている。俺は─────俺の所為で壊れてしまった人を、助けたいんだ」

 

 何かを言おうとしたラクスを遮るようにして続ける。

 

「…それって、フレイの事?」

 

 数秒沈黙が流れた後、尋ねて来たキラに頷いて返す。

 

「あのバカな弟子を連れ戻すまでは、俺は二人の気持ちに応えられない。それに─────」

 

「それに?」

 

「─────いや、何でもない」

 

 不意に脳裏を過ったのは、仮面を被ったあの男の顔─────。その映像を脳内から振り払う。

 

 当然、あの男とも決着を着けなくてはならない。だがそれに、二人を巻き込むつもりはない。

 あの事だって、出来る事ならキラから遠ざけるつもりでいる。例えそれがどれだけ愚かで、無駄な願いだったとしても、好きな女の子が傷つく所なんて見たくない。

 

「…そうですか」

 

「…ごめん」

 

 ラクスの口から零れる小さな声。その声が俺に対する失望に聞こえ、発した謝罪の言葉が微かに震える。

 

 すると、ラクスはきょとんと首を傾げながら口を開く。

 

「どうして謝るのですか?」

 

 そして、俺に逆にそう問い返してくるのだった。

 

「え?いやだって、二人が告白してくれたのに、俺は碌な返事を返せなかったから─────」

 

「あら。わたくしもキラも、ユウがわたくし達の両方を好きだという事も、今この場で明確な返事は貰えない事も知っていましたよ?」

 

「…」

 

 今、とんでもなくディスられた気がする。

 俺がラクスとキラの両方を好いているのを知られている事については、まあそうだろうなとは思うけど、後者に関しては納得いかない。

 

「ですが、てっきりわたくしとキラのどちらかを選ぶ事なんて出来ない、という理由で逃げようとされるのではないかと思いましたわ」

 

「逃げないよ。事実、二人共好きだからどっちかを選ぶなんて出来ないっていうのは本音だけど…」

 

 でも、そうだな…。フレイを助けるまでに答えを出したいとは思ってるけど、その時までにまだ二人が俺の事が好きで、俺も二人のどちらの選択も出来ないでいたその時には─────

 

「二人共娶るのもいいかもな」

 

「「っ─────!!!」」

 

「え、なに」

 

 俺としてはほんの冗談のつもりで口にしたのに反して、二人の反応は劇的だった。

 驚きを隠せず目を丸くする俺に、キラが言う。

 

「さっきまでラクスと話し合ってたの。ユウとの事、これからどうしていこうかって」

 

 そういえば、キラの奴いつの間にラクスの事を呼び捨てにしたんだろう。思い返せばラクスも、この会話を通して何度かキラの事を呼び捨てにしていた。

 

 二人で一体何の話をしていたのか、どういう経緯があって互いを呼び捨てにしあう関係にまで親しくなれたのか─────気にする俺に対してキラとラクスは、二人で何を話していたのかを教えてくれた。

 

 まあ端的に言えば、さっきキラが言った通り俺との事をどうしていくかという話をしていたらしい。

 キラもラクスも俺という同じ男の事を好きになり、どうしても俺の隣に居続けたいという想いは譲れなかったという。

 

 ならば、二人で俺の両隣に立てば良いのではとラクスが提案した。

 二人で俺の隣に立って、俺を支えていく事が出来れば、それが一番幸せなのではないか、と。

 

 理解が及ぶまで少し時間を要した。普通、こういうのはどっちが意中の男の心を射止めるのか競うとか、そういう流れになるのが普通なんじゃないのか?

 それが、一体全体どうしてそういう話になる?と疑問に思ったのは一瞬、プラントでのラクスを思い出して、何となく彼女がそういう話をしだす事に納得出来てしまった自分が居た。

 

 なお、そこで話は終わらない。何故なら、その話にキラが同意してしまったからだ。

 

 キラもラクスも、同じ人を好きになってしまった事を知った後も、互いを嫌いにはなれなかった。

 だからこそ、どちらかが諦めて傷つくよりも、両方が幸せになれる可能性がある道を選んだのだろうか。

 

「良かったですわ。ユウもわたくし達と同じ気持ちでいてくれて」

 

「…」

 

 待って、と口を突いて出そうになった一言を、俺は咄嗟に抑えた。

 

 ふと思う。二人がそうありたいと望んでいる事を、俺が否定するのはどうなのかと。

 それに、繰り返すが俺はキラもラクスも好きだ。その気持ちに優劣はなく、どちらにも同じ度合いで愛してると胸を張って言える自信がある程度には、二人の事を愛している。

 

 なら、それでいいんじゃないのか?

 

「だから、ユウ。私達の事を愛してね」

 

「わたくし達も、一生を掛けて貴方の事を愛し続けます」

 

 我ながら、一体どうしてこうなったのか。

 

 初めはただ、キラ・ヤマトとラクス・クラインというキャラクターに訪れる原作通りの幸せな結末を守りたい、ただそれだけだったのに。

 

 ここまで色んな事があった。流れの中に介入するべきじゃなかったと、後悔する事もあった。

 戦いに身を投じたまま、いっその事、死にたいと思う事もあった。

 

 俺は─────この世界に来て良かった。死を選ばず、生にしがみつく事が出来て良かった。

 二人に出会えたから、二人を愛する事が出来たから─────二人にお陰でそう思う事が出来たから、今度は俺が二人にそう思ってもらえるように頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でもフレイも居るんだよね。どうしよう…」

 

「フレイ様にはユウの背中をお任せ致しましょう。そうすればユウの隣からだけでなく後ろからも支える事が出来ますわ」

 

「そっか!」

 

「いや、そっかじゃねぇよ」

 

 二人の中でフレイが仲間入りするのは殆ど決定事項らしい。

 

 俺は別にフレイに対してはそういう感情を抱いていないし、そういうつもりで見た事もなかったんだが─────でも、フレイが復讐に走ってしまったのは俺の責任だし…。

 

 うん、こっちの方も俺は覚悟を決めた方が良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という事でミゲルとの初邂逅と、ユウキララク三人の一端の決着でした。

さて、これで3R(omantics)の下準備は出来たぞ。
どこでぶっこもうか、ウキウキしながら考えてます。

ウキウキしながらといえば、前話の感想の方も楽しく読ませて頂いています。
沢山の方があの方について予想されていて、読みながらちょっとニヤニヤしてしまいました。

とてもモチベーションに繋がっています。ネタバレに繋がりそうな返しはしたくないという思いで、本当に簡単な返信しか出来ていませんが、これからも感想を送って頂けたら嬉しいです。
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