お、可笑しい…どういう事だ…。この話でユウの機体乗り換えが描かれる筈だったのに…。
はい、申し訳ありません。ユウの後継機はお預けです。次回…次回こそは…!
それと今回の話、皆さんからの感想が滅茶苦茶怖いです。
読む際は少しだけお覚悟を…。
「ふむ…」
オノゴロ島近海に展開中のザフト艦隊旗艦、クストーの艦橋。
大モニターに映る光点を見つめながら、クルーゼが口元を親指で擦りながら小さく声を漏らした。
「連合の抵抗は想定内としても、オーブが思っていたよりもやりますな」
クストーの艦長がクルーゼの顔を見上げながら言う。
先程始まったザフト艦隊のオーブ侵攻だが、想定以上の苦戦を強いられていた。
迫るザフトモビルスーツ群に対してオーブは素早く防衛線を広げて対応、更に先行するジャスティスに対してスピリットをぶつける事で、その動きを封じる事にも成功している。
─────それもいつまで保つか、だが…。
激しく交錯、衝突を繰り返す二機が画面に映される。一見、互角の戦闘を繰り広げているように見えるが、恐らく当事者達は全く違う印象を受けている事だろう。
特にスピリットのパイロット─────ユウ・ラ・フラガは。
何しろ機体ポテンシャルが桁違いなのだ。ジャスティスには核動力が搭載され、火力も馬力も圧倒的にスピリットを上回っている。
むしろその条件下でジャスティスと一対一での戦闘を成立させている、ユウ・ラ・フラガが異常とすら言える。
「…私も出よう」
「は?しかし、ザラ隊長は─────」
「イザナミ海岸はこのままザラ隊長に任せて問題ないだろう。スピリットも恐らく時間の問題だ。…だが、イザナギ海岸の方は連合、オーブ共に戦力が集中している。それらがこちらへ向いた時、抑える為にも出し惜しみは出来ん」
フリーダムにストライク、それに地球連合製と思われる謎の最新鋭機三機─────それらがぶつかり合っている現状はまだ大丈夫としても、それらの戦力がこちらへ向けられた場合、ジャスティスがスピリットに押さえられている今、対抗するには心許ない。
「ゲイツで出た所で果たして止められるか甚だ疑問だが…、頑張ってみるさ」
「…了解致しました。指揮はお任せを」
敬礼しながら言ってくる艦長へ一言、「頼む」と言い残してからクルーゼは艦橋を出る。
そのままパイロットスーツに着替える事もなく真っ直ぐ格納庫へと向かい、すでに量産化され、つい先日に受領したゲイツへと乗り込む。
「ラウ・ル・クルーゼ、出るぞ!」
開かれたハッチから機体が飛び出していく。続けて射出されたグゥルと操作系統を接続し、ゲイツの足下へと呼び出す。
機体をグゥルへ載せ、クルーゼは一直線にイザナギ海岸─────地球連合軍のモビルスーツ二機と戦闘を繰り広げるフリーダムの元へと急ぐ。
キラ・ヤマト─────。
慣れ親しんだ感覚が、スピリットに乗っているのは
なら、フリーダムに乗っているのは一体誰なのか─────クルーゼの中で考えられる可能性としてはたった一つ。
ムウ・ラ・フラガではあの機体を操り切れまい。だが、キラ・ヤマト─────彼女ならば。
「ユウ─────。感じているだろう、私がこの場にいる事は?」
ゲイツの背後、遠く離れた場所でジャスティスと交戦を続けているであろう仇敵へと、届かないと分かっていながらクルーゼは言葉を向ける。
クルーゼを狙う空中の戦闘機、海上の戦艦をビームクローで切り裂き、ビームライフルで撃ち抜きながら、ゲイツは次第にフリーダムとの距離を詰めていく。
「
ビームライフルを構え、フリーダムに対して照準を合わせる。
黒いモビルスーツが繰り出した鉄球によって体勢を崩されて尚、カーキ色のモビルスーツから放たれる砲撃をシールドで防ぐフリーダムの背後─────クルーゼの底知れない悪意が迫っていた。
キラは苦戦していた。フォビドゥンに向けてビームライフルを発射するも、素早く展開されたゲシュマイディッヒ・パンツァーによって軌道を逸らされる。
フリーダムが誇る遠距離ビーム兵器は全て、その機能によって効果を発揮できずにいた。本来ならば、フリーダムの機動力を生かして懐へと飛び込み、接近戦を挑む所ではあるのだが─────。
「いい加減に墜ちやがれッ!」
このレイダーの存在がそうはさせてくれなかった。
横合いから撃ち放たれるレイダーのミョルニルを、機体を翻す事で躱す。
レイダーとフォビドゥン、ここまでの戦闘でこの二機が互いに連携を取り合うつもりが更々ないというのは、キラ自身察していた。
しかし二機の性能も然る事ながら、パイロットもコーディネイターなのではないかと疑ってしまう程に技量が高い。どれだけOSで補ったとしても、ナチュラルにこれらの機体を、ここまで動かす事が果たして出来るのだろうか?
反射速度も速く、ナチュラルには難しい複雑な操作も楽々と熟している。
ユウは例外としても、あのムウでさえここまで動けるかどうか─────。
「っ、これもダメ…!」
レイダーの追撃を振り切って、キラは機体の両腰にマウントされたクスィフィアスを展開。
フォビドゥンに向けて放つが、カーキ色の機体は両側面の巨大なシールドを展開。実体弾の為にゲシュマイディッヒ・パンツァーの効力は当然及ばないがしかし、展開されたシールドがフリーダムが放った電磁弾を受け止める。
ビーム兵器もダメ、実体弾もあの機体が誇る防御力によって阻まれる。
であればやはり、接近戦を仕掛けるしか手は残されていない─────が、そこにレイダーが立ちはだかる。
キラがフォビドゥンへ意識を向けてしまったその隙に、MA形態へと移行したレイダーが両クロー部にビーム刃を形成させて突撃を仕掛ける。
咄嗟にシールドを掲げるフリーダムは直後、レイダーの突撃を受ける。
レイダーのビーム刃はシールドによって阻まれるも、突撃の衝撃によってフリーダムは後方へと傾き、シールドにも刃によって二つの穴が空く。
「くぅっ!」
すぐさま機体の体勢を整えるキラ─────そこに、フォビドゥンが撃ち掛けるフレスベルグが襲う。
機体を動かし、翻し、誘導によって追い掛けてくるプラズマ砲をフリーダムの機動力で振り切る。
その回避行動中を狙って、MS形態へと戻ったレイダーが躍り出る。
「あぁっ─────!」
背後に回り込んだレイダーが繰り出したミョルニルを、キラは回避し切れない。
背部からの衝撃に、キラの口から悲鳴が漏れる。
バーニアを噴射して落下を食い止めようと努めるも、体勢を立て直す前にフォビドゥンがビームを放つ。
「なっ!?」
「へぇ…?」
それをなお、シールドで受け止めるフリーダムの姿に、レイダーとフォビドゥンのコックピットの中でクロトとシャニが目を瞠った。
しかしそこで彼らは動きを止めない。フォビドゥンはビームの出力を続け、レイダーは動きを止めたフリーダムを仕留めるべく右手のビーム砲を掲げる。
「─────」
彼らよりも先に、背後からフリーダムを狙う機影にいち早く気付いたのは、他でもないキラだった。
コックピットに鳴り響くアラーム音─────自動でサブカメラが起動し、画面の端に映る白い機体。
ミゲルが乗っていたゲイツだが、僅かに細部が異なっている。カラーリングもそうだが、武装もミゲルの搭乗機と違っていた。
ゲイツはフリーダムに向けてビームライフルの銃口を向けている。
この状況で撃たれてしまえば─────身動き取れない今、キラに対応の手は残されていない。
─────直撃する…!
キラがそう覚悟した、直後だった。
上空からフォビドゥンとレイダーに向けて二条のビームが降り注ぐ。
フリーダムへの攻撃の手を止め回避行動へと移行した二機。前方からの砲撃が止み、フリーダムは自由を取り戻す。
それでも尚、回避するには間に合わない。ゲイツのビームライフルが火を噴く─────急いで振り返り、シールドを掲げようとしたキラの目の前に、何かが舞い降りた。
「…っ!?」
その機体はゲイツから放たれたビームを、光に包まれた左腕で弾くと、両肩の巨大な砲門をゲイツへと向けて撃ち放った。
グゥルに乗ったゲイツはすぐさまその場から離れ、放たれた砲撃を回避する─────その光景を、キラは呆然と眺めていた。
「この、機体は─────!?」
まるでフリーダムを守るようにして、彼女の前に現れたその機体は、幾度となくアークエンジェルに襲い掛かり、キラとも交戦を繰り返した。
あの雷鳴の曇天の下で決着を着けた機体─────
「あぁっ!?なんだ、テメェはっ!」
「へぇ…、まだ居たんだ。変なモビルスーツ」
ハイペリオンの乱入に硬直していた戦況が、レイダーとフォビドゥンの立ち直りによって再び動き出す。
フリーダムのメインカメラを向け、二機の動きを見ながら背後から狙撃してきたゲイツの動きもサブカメラで注視する。
幸いゲイツは狙撃の失敗を受けたからか、この場から離れていく。一先ず、レイダーとフォビドゥンに対して注意を向けて良いと判断したキラは機体を飛び上がらせ、二機から放たれるビームを回避する。
ハイペリオンもまた、フリーダムとは反対方向へと動きビームを回避。するとレイダーはフリーダムへ、フォビドゥンはハイペリオンへと向かっていく。
レイダーは右腕のビーム砲を掲げ、フリーダムへ向けて連射。キラは縦横無尽に機体を駆りつつ、レイダーからの砲火を躱し続ける。
すると、ハイペリオンがレイダーへと迫り、ビームナイフで斬り掛かっていく。その斬撃をレイダーが回避し、距離を取っていくのを逃がすまいとフォルファントリーを撃ち掛ける。
まただ─────また、
キラの戸惑いは深まるばかりだった。
ハイペリオン─────あの機体から感じた、自身への憎悪は記憶に新しい。だというのに、今はこうして自分を助け、守るようにして立ち回るその姿に動揺しながらも、キラはハイペリオンを狙って来たフォビドゥンに向けてビームサーベルで斬り掛かる。
どういうつもりなのか、さっぱり分からない。敵であった筈の機体の、理由不明の介入に驚くキラの耳に、声が飛び込んで来た。
『こちらザフト軍の─────カナード・パルスだ』
─────カナード・パルス…?
その名前も、声も、キラには到底聞き覚えの無いものだった。
『聞こえるか、フリーダム。キラ・ヤマトだな…』
「…!?」
しかし、その覚えのない人物から名前を言い当てられ、キラの心臓が一瞬動きを止める。
─────誰…!?
「貴方は、何者ですか!?」
フリーダムの斬撃から逃れたフォビドゥンに追い縋りながら、キラからも通信を接続し、ハイペリオンへと呼び掛ける。
「私を助けた理由は?私を知っている理由は!?」
頭の中で渦巻く疑問を次々にぶつけていく。
『俺が何者なのか、何故お前の事を知っているのか、そんなもの今はどうでもいいだろう!だが一つだけ─────お前を助けたのは、俺の意志だ』
キラは息を呑む。
幾度となく交戦を繰り返してきたのだ、動きを見ればハイペリオンを動かしているパイロットが、以前と同じ人物である事は読み取れる。
だからこそ信じられないという気持ちが湧き上がる─────されどそれと同時に、その言葉の中に確かな真意を感じたのも事実だった。
レイダーの頭部砲口より放たれたビームを躱すと、ハイペリオンがフォビドゥンへ向けてフォルファントリーを放つ。
フォビドゥンがゲシュマイディッヒ・パンツァーを展開して二条のビームを逸らす─────その間にフリーダムが巨大なシールドを展開し、視野が狭まったフォビドゥンの懐へと潜り込む。
両腰のクスィフィアスを展開し、至近距離から実体弾を撃ち込む─────機体そのものにダメージはないが、衝撃を受け止めきれずフォビドゥンが大きく後方へ弾き飛ばされる。
『後ろだっ!』
「っ─────!」
ハイペリオン─────カナードからの警告の声に、何かを考える前に体が動く。
体勢を傾け逸らした直後、キラの視界の端を黒い塊が過っていく─────破砕球ミョルニルだ。
機体を翻し、一気にレイダーへと迫る。ミョルニルを引き戻しながらも、迫るフリーダムに対して防御の体勢をとるレイダー。
しかしフリーダムはビームサーベルを抜き放ちながら、レイダーの傍らを通り過ぎていく─────直後、フリーダムの予想だにしない行動に硬直したレイダーへ、下から回り込んたハイペリオンが強烈な蹴りを喰らわせた。
『キラ・ヤマト!』
「分かってます!」
再びカナードからの呼び掛け。それより前に、キラは追い縋るストライクとアストレイを振り切って、跳び上がりながら肩部の砲口をフリーダムとハイペリオンへ向けるカラミティの姿に気が付いていた。
二機は散開し、カラミティから放たれるビームを避ける。
─────私、どうして…。
ハイペリオンと連携を取りながら、今度は三機を相手に交戦を繰り広げるキラ。
彼女の中では、不思議な感情が芽生えていた。
敵同士だったのに、知らない相手の筈なのに、どうしてこうまで呼吸が合うのだろう。
何故自分は、あの人の考えが手に取るように分かって、その動きにこうも容易く合わせる事が出来るのだろう。
ユウと一緒に戦っている時ですら感じなかった感覚─────まるで、長い時を共に過ごした
『来るぞっ!』
「っ!」
幸福感にも似た不思議な感情に包まれながらも、敵は待ってはくれない。
カナードからの三度の呼び掛けに意識を取り直し、キラは身構える。
フリーダムとハイペリオン─────キラとカナードは、競うようにして迫る三機と再び激しい交錯を始めるのだった。
「どういう、事だ…?」
さしものクルーゼでさえ、目の前で繰り広げられる光景に動揺、驚愕を隠す事が出来なかった。
彼の目に映っている光景、それは息の合った連携でレイダー、フォビドゥン、カラミティと対しているフリーダムとハイペリオンの姿。
キラ・ヤマトと、カナード・パルス─────交わるの筈のない二人が背中を預け、互いを助けながら戦う姿であった。
「馬鹿な─────こんな、事が…!?」
二人の事情を知っている、カナードがキラに対して抱いていた憎悪の大きさを知っているからこそ、クルーゼは目の前の光景を疑ってしまう。
一体何が起こっているのか─────カナードの中で、どんな変化が起こればこのような事になる…!?
「─────フフッ、アハハハハハッ!」
全くもって、運命というものは面白い。果たして、二人がこんな結末を迎えるなど誰が予想出来ただろう。
幾度となくぶつかり合い、その果てにどちらか一方しか生き残らない─────そんな予想図を描いていたクルーゼは、仮面の中で笑う。
─────ユウ・ラ・フラガと共に、君達兄妹もまた私の前に立ちはだかるか。
それもまた一興だ、と口元に浮かべた笑みを深めながら思う。
果たして彼らは止められるのか─────すでに賽は投げられている。
憎悪に蝕まれ、その身を喰い合い、それこそクルーゼが思い描いていた兄妹の結末の如く、どちらか一方が─────或いはその両方が滅ぶ未来を。
それとも、クルーゼが思い描いていた未来が外れたように、これもまた当てが外れてくれるのか。
あぁ、楽しみで仕方がない─────。
運命はどちらを選ぶのか。希望か、破滅か。
「─────」
襲い来る連合軍機をあしらいながら、気付けばオノゴロ島へと近付いていたクルーゼが、その
地球連合軍からの通告を受け、オーブ側も必死に国民の避難に努めてはいたが如何せん時間が足りな過ぎた。
彼は、その被害者─────逃げ遅れた国民の一人だろう。
普段のクルーゼであれば、見て見ぬフリをしていた筈だ。子供一人が死ぬ…常人であれば非情に感じるであろうが、すでにクルーゼの手はこれ以上なく血に汚れている。
今更その程度で心が揺らぐ事もなく、そのまま少年が野垂れ死のうが、生き延びようが素知らぬ事。
一つ─────背中を預け合う兄妹という、本来ある筈のない光景を見られた事。
二つ─────サブカメラに映った少年の瞳に、既視感を覚えた事。
大きな理由としてはその二つだ。ふと我に返った時には、クルーゼは機体を少年の傍へと降ろしていた。
片膝を突く体勢で機体を停止させ、クルーゼもコックピットから降りる。
「っ…」
そしてクルーゼは、ゆっくりと振り返った少年と視線を交わせ、微かに息を呑んだ。
それはまるで、かつての自分の様で──────
「─────!」
何があったのかは分からないが、少年の着ている服は所々焦げており、そこから見える素肌も傷ついていた。
顔面にも何かに擦ったような傷痕が点在して、彼の身体は見るからにボロボロだ。避難の途中で、戦闘に巻き込まれたか─────頭の中でそこまで整理したその時、憎悪に染まった瞳から光が落ち、同時に少年の身体からふらりと力が抜ける。
咄嗟に倒れ掛かる少年に自身の身体を割り込ませる。
呼吸はしっかりとしている、どうやら眠ってしまっただけらしい。
「…」
少しの間、眠る少年の顔を見つめた後、クルーゼは何も言わずに軽い体を抱きかかえて機体のコックピットへと乗り込んだ。
再び機体を立ち上がらせ、グゥルを飛び上がらせながらクルーゼは自問自答する。
─────私は…何をしている?
自分でも何故、こんな行動を取ったのかが分からない。こんな子供など、捨て置けば良かったものを。
このままこの少年を母艦へ連れ帰れば、面倒事が待っているに違いない。
自問自答するクルーゼの脳裏に、少年の紅い瞳が過る。
絶望、憎悪、それらの感情を抱きながら、矛先をどこに向ければいいのか分からない。
─────あぁ。ならば、教えてやろう。そして聞かせて貰おう、君の決断を…。
クルーゼが搭乗するゲイツは、真っ直ぐにクストーへと向けられるのだった。
カナードお兄ちゃん来たああああああああああああ!!!!→クルーゼ何しとるんじゃあああああああああああ!!!!!!?
というお話でしたね、はい。え?クルーゼが拾った少年が誰かって?
(;^ω^)・・・・・・・・・・・・・・・・