フラガとか聞いてない   作:もう何も辛くない

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あけましでおめでとうございます。今年も今作をよろしくお願いします…。
とりあえず今年の目標は、運命まで完結させて自由に突入する事です。

…頑張ります。






PHASE91 アメノミハシラにて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙ステーション『アメノミハシラ』─────当初はファクトリーを備えた軌道エレベーターとして建造されていたが、地球連合とザフトの戦争が本格的に勃発した為に計画を凍結された。

 現在はオーブ首長の一角であるサハク家が管理を任されており、残ったファクトリー部分をベースに使用されている。月基地より逃亡し、地球へと向かったドミニオンの中継地点としても使われた。

 

 オーブより出立してから宇宙空間へ到達するまで約三分、そこからアメノミハシラに至るまで更に数十分。

 宇宙への旅は誰もが考えていたよりも早く、一旦の終息を迎える。

 

 ドミニオン、アークエンジェル、クサナギの三隻はアメノミハシラのドックに受け入れられて停泊。

 艦内にて仕事がある者以外は、一度艦から降りる事となった。

 

 三隻から降りて来たのは主に、俺を含めたパイロットの人達。そして三隻の艦長とカガリ、何故かついてきたムルタさん─────そんな俺達を出迎えたのは、どこからか聞こえてくる高い靴の音だった。

 

「ようこそ、アメノミハシラへ」

 

 その声は決して大声でなくとも力強く、気高く、そして俺達がいるこの空間にしっかりと響き渡った。

 

 艶やかに伸びた長い黒髪が歩く度に揺れる。この場に居る誰よりも高い背と、肩に羽織るマントによって一見肩幅は広く見えるが─────俺の考えが正しければ、この人は女性の筈だ。

 

「ウズミ・ナラ・アスハよりここ、アメノミハシラの管理を任されている。ロンド・サハクだ」

 

 ()()()()()()()─────オーブの五大氏族であるサハク家の後継者として、遺伝子調整を受けた第一世代コーディネイター。

 オーブの五大氏族は血縁者を次期当主に出来ないしきたりがある為、サハク家現当主とは血縁関係にはない。

 

「─────」

 

 ふとカガリの方を見遣る。彼女、ロンド・サハクの姿を睨むようにして視線を向けながら、カガリは何やら短く口を動かした。

 

 ()()、と恐らく誰にも聞かれないよう呟いたのだと思われる。

 

 そう、彼女の本当の名は、()()()()()()()()()()

 何故全ての本名を名乗らなかったのか、その理由は深い事情があるのだが─────それよりも、俺達よりも前に歩み出て、ミナと握手を交わすムルタさんの言葉に耳を傾ける。

 

「わざわざ管理者自ら出迎えて頂けるとは。ムルタ・アズラエルです」

 

「オーブを守った英雄達を粗雑に出迎える訳にはいきますまい。貴方にも感謝を申し上げる、アズラエル殿」

 

 人の良い笑顔を浮かべ、聞き当たりの良い言葉を掛け合う二人。その実、悟られないよう密かに互いを観察、腹の底を探り合っている─────といった所か。

 

 ムルタさんは当然、彼女ら姉弟がしてきた所業を知っているだろうし、ミナとしては俺達の存在は自身の障害になり得るとして恐らく警戒している。

 

 ─────てっきり、直接L4へと向かうものだと思ってた。ウズミ様は何を考えている?

 

 アスハとサハク─────正確にはアスハとサハク姉弟だが、かなり複雑な関係にある。

 何しろ、ヘリオポリスでの機動兵器開発に協力したのは、今俺達の目の前にいるロンド・ミナ・サハク、そしてその弟であるロンド・ギナ・サハクなのだから。

 実際にモビルスーツを目にしたカガリは、ウズミ様の所業だと勘違いした上、ウズミ様も自身の責任だと一度代表を辞した。

 

 だが、ウズミ様が彼ら姉弟が仕出かした所業を知らない筈がない。それを知った上で、俺達をアメノミハシラへと寄越したのだ。

 

 俺達に全面的に協力してくれるという保証はない─────一体何の為に?

 

 ムルタさんとミナが互いに握手を交わす。

 すると、ミナはムルタの横を通り抜けてこちらへと向かってくる。

 

 艦から降りた俺達全員を一瞥できる位置で立ち止まった彼女は口を開き、思いも寄らぬ一言を吐いた。

 

「ユウ・ラ・フラガ─────」

 

「はい?」

 

 彼女との面識はない。故に、まさかその口から俺の名前が出てくるとは思わず、つい声を上げてしまった。

 

 反応してしまってはもう遅い。振りむいたミナの視線は真っ直ぐにこちらへ向けられ、そしてその目には濃い興味の色に染まっていた。

 

「そうか、其方が…」

 

「…」

 

 何故─────とは思わない。何しろ、ウズミ様にだって名前は勿論、俺がしてきたあれこれも知られていた。

 この人に知られていたって可笑しくはない。

 

 が、サハク姉弟の野望を実現させるにあたって、俺がしてきた事は目の上のたん瘤に過ぎない筈だ。

 それにしては、向けられるその目から敵意といった感情は感じられない。ただ純粋な興味を抱いて、俺を見ている。

 

「君については知っているよ。暇が出来れば是非、話をしたいものだな」

 

「お戯れを。時間の無駄にしかなりませんよ」

 

「フッ─────。アズラエル殿、準備が整った時に一報を送ります。改めて、三隻の今後について話し合いを致しましょう」

 

 俺からの返答を受けて何を思ったか、小さく笑みを浮かべただけでミナは去っていく。

 

 堂々としたその後ろ姿がやがて見えなくなった時、前に居たムルタさんが振り返り、こちらを向く。

 

「ユウ君。君、()といつ知り合ったんですか?」

 

 ()、とムルタさんは口にしたが、ミナとギナの見分けがつかなかった訳ではない。

 ロンド・ミナ・サハクとロンド・ギナ・サハク─────彼らが双子の姉弟である事は伏せられている。彼らはロンド・サハクという一人の人物であり、サハク家の後継者である()()

 簡潔に言えば、ロンド・ミナ・サハクはロンド・ギナ・サハクのスペア。ギナに問題が起きた時に代替となれる存在として、表舞台からは伏せられているのだ。

 

 とまあミナについては良いとして─────あの人といつ知り合ったかだって?

 

「サハク家の人間と顔を合わせた記憶はないです」

 

 そんなもの、そう答えるしかないだろう。俺を知る経緯は大体予想がつくし、多分ムルタさんもその予想に至ってるんだろうが。

 

「…まあいいです。それよりも、気に入られたみたいですねぇ」

 

「面白がらないでくださいよ。他人事だと思って…」

 

「事実、他人事ですから」

 

 この人は俺の現状を本当に、心の底から面白がっている。

 くつくつと笑うムルタさんに恨みを込めて目を向けるが、こちらに見向きもせず艦の方へと戻っていく。

 

「さあ、我々も一度艦へ戻りましょう。作業の方はここの人員に任せて、身体を休めてください」

 

 ミナとの顔合わせを終えた今、この場に残る必要もなくなった。

 ムルタの言う通り、艦の外に出ていた人達が踵を返してそれぞれの所属艦へと戻っていく。

 

「「─────」」

 

「…二人共、どうした?」

 

 俺も当然、ミゲル、ナタルさんと一緒にムルタさんを追い掛けてドミニオンへ戻ろうとしたのだが─────その前に、ミナと言葉を交わした辺りからじっと見てくる二人、キラとラクスの方へ振り返る。

 

「…うぅん、別に」

 

「何でもありませんわ」

 

「…ならいいけど」

 

 どうもハッキリしない態度の二人だが、それ以上何かを言及してくる事もなく、改めて俺も艦へと戻る事にする。

 

 しかし、本当にどうしたのだろうか?怒ってる訳でもなく、悲しんでる訳でもなく、だけどあの態度はどうも引っ掛かるが、本人達も俺に対して何を気にしているのか分かっていない様子だった。

 

 …まさかとは思うが、()()()()()()()()()()()()()、か?

 いやしかし、今のミナは表舞台でロンド・サハクとして立つギナのフリをしていた。胸には恐らくさらしを巻いたのだろう、あの巨乳は隠せていたし、女性と見られかねない肩幅も、あの分厚いマントを身に着ける事で誤魔化していた。

 ミナとギナの事を知っているであろう、ムルタさんとカガリはともかくとして、あの二人が見抜ける筈が─────筈が…ありそうなのが怖いな。

 

「おい、何をしている!」

 

 内心恐々としていると、前方から鋭く声が掛かる。艦入り口の前で、ナタルさんとミゲルが振り返って俺が来るのを待っていた。

 ムルタさんの姿がないのは、多分とっとと戻っていったのだろう…あの人は。

 

 ペースを速めて二人に追いつき、俺も艦の中へと戻る。

 そして、心に決める。()()()()()()()()()()()()()

 

 サハク姉弟の思惑は気になるが、その辺はロウ・ギュールが何とかしてくれるだろ。というか、しろ。お前の役目だろ、責任から逃げるな。

 

 ─────なんて勝手な事を考えていたのが、三日前の事である。

 

 この時の俺は、忘れていた。

 

「これが其方の機体か。…見事なものだな」

 

「はぁ、どうも…」

 

 ユウ・ラ・フラガ()という存在によって、最早この世界は俺が知るコズミック・イラではなくなっている事を。

 

「…あの、何でここに居るんです?」

 

()()()()()()()()()()()、と言った筈だが」

 

「ただの社交辞令だと思うでしょう、そんなの」

 

 戦艦ドミニオン艦内、格納庫─────俺の前に今、ロンド・ミナ・サハクが居る。

 

 いやね、普通に機体の整備をしてたらね、何かいたのよこの人。吃驚したね、もう。

 

 何なの、オーブの人ってフットワーク軽すぎない?あ、いや、ウズミ様の時は一応こっちから出向いたのか…。

 あぁ、ダメだ、頭がこんがらがってきた。

 

「突然の訪問に驚かせてしまった事には謝罪しよう。だが、其方らは明日には出立するのだろう?その前に、其方と話をしたくてな」

 

 そう─────アメノミハシラへ来てから三日が経ち、復興作業中で慌ただしかったオノゴロ島では最後まで受けられなかった物資の補給、そして今後の動向について話を終えた俺達は明日、ここを発つ。

 

 結論から言えば、原作通りにL4へと向かう事になった。理由としては、アメノミハシラからでは地球連合、ザフト間の戦闘に介入しづらい所にある。

 地球連合軍は月基地から真っ直ぐプラントへの攻撃を仕掛ける事が予想される。その為にはプラントの防衛ラインを構成する宇宙要塞、ボアズとヤキン・ドゥーエを攻略しなければならない。

 

 だが、ここアメノミハシラからではボアズ、ヤキン・ドゥーエとの距離が遠すぎる。そこで、L4だ。

 L4を拠点とすれば、とりあえずアメノミハシラよりもそれらの要塞との距離は短く、戦闘が起こった場合に介入しやすい。

 

 以上の理由で一先ずL4へ向かう事となったのだ。

 方針が決まった際、ムルタさんが微かに、誰にも気付かれないようこちらに視線を向けて来たが─────止むを得ないだろう。この自然な流れに、私情を挟めるつもりはない。

 

 それに最悪、キラが原作通りに自身の真実を知る事になったとしても─────彼女が拒まない限りは、俺が支えてみせる。

 いや、例え拒まれたとしても、俺は─────

 

「考え事か?」

 

「─────」

 

 しまった。この人を前に俺は、何を余所事を考えているのか。

 いやしかし、これで気分を害して俺に興味を失くして帰ってくれればそれはそれで─────

 

「ユウ・ラ・フラガ─────其方は何の為に剣をとった?」

 

「は?」

 

「聞けば其方は、ヘリオポリスで戦火に巻き込まれるまでは一般人だったそうではないか。だが、第八艦隊に合流後も除隊せず、一度MIAとなってからもアークエンジェルに戻り、再びモビルスーツに乗って戦う─────何が其方をそうまで戦いに駆り立てる?」

 

「…」

 

 嘘、偽り、誤魔化しは許さないと言わんばかりに、ミナは鋭くこちらを見遣りながら問い掛けてくる。

 

 何の為に、か。ミゲルにもそうだけど、最近はよく同じ質問をされるもんだ。

 

「未来が欲しい」

 

「─────未来、だと?」

 

「あぁ。俺は、俺が愛する人達と…大切な人達と一緒に生きていける未来が欲しい。願わくば、世界中の人達が同じように過ごす事が出来る、そんな世界が欲しい」

 

 ミナの視線は、俺の目から一ミリも動かない。何かを推し量るように、覗き込もうとするように、ただただ真っ直ぐに。

 

「…不可能だ」

 

 数秒か、或いはそれ以上か。視線をぶつけ合った後に、一言ミナはそう口にした。

 

「何故?」

 

「逆に私が問いたい。そのような都合の良い世界が実現すると、何故思える?」

 

 向けられる鋭い瞳の端に冷たい光が灯る。

 

「今の世界を見てみろ。相手を知ろうとせず、言葉を聞こうとしないまま、互いを憎み、その果てに人は世界を汚し続ける─────。それは何故か?」

 

「…」

 

「誰しも平等を求めるからだ。金を持っている人間が羨ましい─────優秀な人間が羨ましい─────強い人間が羨ましい─────。人が持つ劣等感によって、この戦争は引き起こされたのは、其方も分かっているだろう?」

 

 ミナの言う事は正しい。

 遺伝子調整を施されたコーディネイターが怖い、そう思っているナチュラルは多い。

 だがそれ以上にこう思っているナチュラルも居る筈だ。()()()()()()()()()()()()()

 

「必要なのだ。愚かな愚民どもを管理、統べる者が」

 

「それが、貴女だと?」

 

「適任が他に居るか?─────ユウ・ラ・フラガ。平等を求める愚かな思想を失くせば、其方も我らと共に世界を統べる者になれたものを」

 

「支配になんて興味はないし、例え貴女の望む世界が実現出来たとしても、長続きしない事は目に見えている」

 

「なんだと?」

 

「貴女はとっくに気付いている筈だ。世界というものは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだという事に」

 

 ミナの目が一瞬見開かれ、しかしすぐにまた鋭く吊り上がる。

 

「今そこに生きる人達を無視して築いた世界なんて、すぐに崩壊する」

 

「戯言を。其方が言う世界に生きている人達が、今の世界にしたのだぞ。それを─────」

 

「だからこそ示さなきゃいけないんだ。憎み合うだけでは何も生まないと。俺達は皆、心の底から分かり合える事が出来るんだって」

 

「─────それこそ戯言だ!人が皆、心の底から分かり合う事が出来るなど…」

 

「出来ます」

 

 俺との話中、常に冷静を保ち続けたミナが声を荒げながらこちらに詰め寄ろうとする。

 

 その時だった。俺とミナ以外の第三者の声が響き、耳に届く。

 

「ラクス・クライン…。それに、キラ・ヤマト、か」

 

 声がした方へミナが振り向き、そしてこちらへ歩いて来る二人を目にして言う。

 

 ラクスとキラ、いつからこの場に居て、俺とミナの話を聞いていたかは分からないが、少なくともミナが自身が持つ世界観を語り始めた頃には聞き耳を立てていたんだろう。

 

「現にコーディネイターであるわたくしもキラも、ユウと心を通わせる事が出来ています」

 

「私達に出来た事を、他の誰も出来ないなんて思いません」

 

「─────本気か?今のこの世界を見て、其方達は本気でそう思えるのか」

 

 二人揃って言い切るラクスとキラを、少しの間呆けた様に見つめてから、ミナは尋ねた。

 

 その声には今までずっと彼女の声に籠もっていた力強い圧はなく、ただ純粋な疑問として二人へ向けられる。

 

 ラクスとキラは言葉を返さない。頷きもしない。ミナから向けられる視線から目を逸らさず、只管に彼女を見上げるだけだった。

 

「そう、か…」

 

 ポツリと、ミナの口から声が漏れる。

 

「其方達の様な人間がもっと早く現れれば─────其方達ともっと早く出会えていれば、()()()…」

 

「ロンド様…?」

 

「…」

 

 俯くミナの表情は、長く下した髪に隠れて窺えない。

 ラクスが小さく呼び掛けるが、届いていないのか反応を示さない。

 言葉を交わしている最中、ただでさえ身長という数字以上に大きく見えた彼女の存在感が、今は物凄く小さく思えた。

 

 しかしすぐに彼女は顔を上げ、気付いた時にはまたあの存在感が膨れ上がっていく。

 

「それが其方達の信じる道だというなら、何も言うまい」

 

 その存在感は、さっきまでの身を刺す様な冷たいものではなかった。

 

 ミナの顔には穏やかな微笑みが浮かんでいる。表情の変化に呼応するかの様に、彼女から発せられる存在感もまた、刺す様な冷たさから身を包んでいく温かいものへと変わっていく。

 

「実現出来るのだな。其方の望む世界は」

 

「分かりません。ですが、諦めるつもりはありません。俺が死ぬまで─────死んでからも、俺の意志を引き継いだ誰かが、そしてまた次の誰かが…そうして受け継がれていく限り、可能性はある。可能性がある限り、()()()()()()()()()()()()()()

 

「…なら私も、その可能性とやらに賭けてみるとしよう」

 

 その微笑みは温かく、美しかった。ラクスとキラ、二人の存在がなければ見惚れていたんだろうなと思う程には。

 

「其方との話は楽しかったぞ、ユウ・ラ・フラガ。だが…やはり惜しいな。叶うなら、是非私の傍に置いておきたい所なのだが─────」

 

 突然何を言い出すかと思えば、ミナは柔らかい微笑みを浮かべたままとんでもない事を口走り始めた。

 

 いや、冗談じゃない。すぐに断りの返答をしようとして、だけどその前にラクスとキラが動く。

 

「─────どうやら私の入り込む余地はないらしい」

 

「…そういう事ですので、貴女と一緒には行けません」

 

「良い。何も本気で言った訳ではない。それに…、面白いものも見れた」

 

 ラクスとキラが、俺の腕を片方ずつ抱えていた。その姿を見たミナは、小さく笑みを零しながらこちらに背を向けた。

 

「其方らに、ハウメアの加護があらん事を─────」

 

 彼女は最後にそう言い残して、今度こそ去って行った。

 

 威風堂々と、その後ろ姿は獅子の如く。彼女の姿が見えなくなるまで、息が詰まるプレッシャーは続いた。

 

「…はぁ─────」

 

「ユウ!?」

 

 思わず床に座り込む。心配するラクスとキラには悪いが、気にしている余裕はない。

 

 いや、普通に疲れた…。何であの人が来るんだよ。ていうかこれはロウ・ギュールの役目だろ?何で俺が代わりに買って出る事になってんだ…。

 

「…お疲れ様です、ユウ」

 

「お部屋で休もう?」

 

 座り込んだ俺を少しの間見守ってから、ラクスとキラが優しく声を掛けてくる。

 

 疲れた身体と精神に染み渡る─────顔を上げ、二人を見上げながら言葉を返そうとした…その時だった。

 

「っ─────」

 

 不意に大きく電子音が鳴り響く。

 艦のアラートではない。そうではなく、何らかの通信機のコール音─────それもどこからかではなく、俺達のすぐ傍からその音は聞こえて来た。

 

 その音に真っ先に反応し、動き出したのはラクスだった。

 懐に手を入れ、そこから取り出したのは掌サイズの機器─────シーゲル様からラクスへ手渡された、あの通信機だった。

 

「これ、は…」

 

 傍受を避ける為か、この通信機は受信は出来ても発信は出来ない代物だった。

 ただ誰かがこの通信機へと発信し、それを受け取ったこの機械がコール音を発する、それだけのもの。

 

 だがそれが音を発したという事は─────意味するものは一つ。

 

『永遠へ向かう艦が旅立つ時、お前の元に報せを届けるよう命じてある』

 

 事態は余りにも突然に、そして急速に、動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれですね。ここまで来るといよいよ佳境って感じがしてきますね。

まあ、まだ運命と自由があるんですけどね!先は長い(笑)
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