「ブルーデルタよりジン三!」
「及びアルファにもジン五!」
「面舵二十!このまま振り切る─────ゼノスは!?」
「敵モビルスーツと交戦中!」
支援に来たゼノスのお陰で、戦闘可能なザフト機の数が減った事により、エターナルの戦況は当初と比べて良い意味で傾き始めていた。
先程ゼノスが包囲網に一部穴を開け、そこを目掛けてエターナルは最大船速で突破を試みる。
そうはさせじと追い縋るのが、未だ三十機は残るヤキンのモビルスーツ部隊。
「ミサイル来ます!」
「対空っ!」
バルトフェルドが指示を飛ばす。
迫るミサイルをエターナルの迎撃システムが落としていくが、その中で撃ち漏らしてしまった数発が迎撃を潜り抜けて船体へ迫る。
しかし、ミサイルが船体へ命中する直前に、艦後方より迸る光の奔流がそれらを全て吞み込んでいく。
「くそっ…!」
「あの子─────」
どこからか齎された救いの手が何なのかを即座に悟ったのはバルトフェルド。
続けて、ミサイルを一掃した砲撃が放たれた方向を映し出すモニターの映像を見て、何が起こったのかを次に察したのはアイシャだった。
モニターに映し出されているのは、嵐の如き砲撃の奔流を推進力で振り切り躱していくゼノスの姿─────。
先程エターナルに迫ったミサイルを撃ち落とした砲撃はゼノスのもの、ではない。ゼノス目掛けて放たれる、敵モビルスーツのものだ。
ゼノスを駆るユウは、敵モビルスーツと砲火を交わしながらも周囲の状況に目を向け続けていた。
自身とエターナルを完全に包囲しようとするヤキンの部隊と、エターナルの位置─────それらを頻りに確認しながら、敵モビルスーツの強大な火力を利用して、ミサイルの迎撃を成功させてみせたのだ。
「ここまでして貰って、墜ちましたじゃあ情けない処じゃないぞ!」
自身が危機的状況に陥っているにも関わらず、エターナルへの援護を熟すユウの献身ぶりに心を奮起させたのは何もバルトフェルドだけではない。
この場に居るクルー達が更に灯る炎に胸を焦がしながら、この場を生き残るべく一層集中力を高めていく。
「生き残るぞ、お前らッ!」
「「「はいっ!」」」
迎撃システムを全開、追い縋るジンを振り切り、迫るミサイルを撃ち落とし、エターナルは徐々にではあるが敵部隊の包囲を喰い破りつつあった。
そんな中、厳しい戦いを強いられていたのは、謎のモビルスーツと対するユウとゼノスである。
敵から次々に放たれる砲火を時に推力で振り切り、時に繊細に機体の位置を操って、回避を続ける。
「こいつ─────」
その姿を見て、その声に微かな苛立ちを込めながら呟いたのは、ゼノスと対峙する機体─────<<ZGMF-X08Aイーラ>>を駆る男、ロイ。
イーラは単独で戦場を制圧出来る程の、超越的な火力を保持した機体だ。フリーダムと同様にバラエーナとクスィフィアスを二門ずつ搭載、それに加えて右掌にはスキュラの砲門を備えている。
左腕は複合兵装防盾システムとなっており、二門のライフル状の銃口を備えたのと同時に巨大なビームサーベルが出力出来る様になっている。
ビームサーベルが搭載されており、接近戦にも対応できる機体には仕上がっているが、この機体の本領は同時期に開発されたフリーダム以上の火力である。
モビルスーツ一機で戦場を支配できる圧倒的制圧力─────それがたった一つの敵機に向けられれば、瞬く間に蜂の巣にされるのが普通ならば関の山なのだ。
イーラの火力に対応、躱されるのはいい。むしろそれくらいやってのけて貰わねば、ロイとしても拍子抜けもいいとこだ。
だが─────あれは頂けない。
「随分と余裕じゃねぇの!エェッ!」
ユウはイーラと対峙しながらも周囲の味方と敵の位置を把握し続けていた。その上で、イーラの火力を利用してエターナルに群がるモビルスーツ隊の露払いをやってのけたのだ。
合理的な判断だ。ゼノスとのこれまでの対峙で、あの機体に戦場を圧倒できるような火力はないのは察せられた。
故に、全てが自身に掛けられるイーラの火力を利用する─────あぁ、なるほど。ロイが獲物として認める程の実力を備えている事は認めよう。
だが─────!
「この俺が目の前にいるってのによォッ!他人の心配なんて、嫉妬しちまうじゃねぇかァッ!?」
このロイ・セルヴェリオスを前にしながら、その振る舞いはロイの怒りの琴線に触れた。
イーラの全七門の砲門を全てゼノスに向け、一斉に火を噴かす。
徹底的にイーラとの距離を安全圏に保ち続けていたゼノスは、それらの砲撃を容易く躱していく。
「アンタに構ってる暇はないんだっ!」
「ハッ!連れねぇなァッ!」
回避行動に移った事で機動力が削がれたゼノスとの距離を詰めるイーラに対し、ユウは機体を反転。
背後から迫るイーラに向かってスキュラのトリガーを引いた。
イーラが身を翻しながら回避したのを見て、ユウは再びゼノスのスラスターを吹かす。
ユウ自身とイーラの火力を利用した援護によって、行動可能な敵モビルスーツの数は減っていく。エターナルも次第に、モビルスーツ隊の包囲から剥がれ始めて来た。
「クソがッ…!」
イーラの火力をユウが利用した巧みさには舌を巻くが、それ以前にエターナルに粘られ、いつまで経っても墜とせないモビルスーツ隊の愚鈍さにロイは苛立つ。
ユウとゼノスが現れたというイレギュラーは起こったが、それよりも先にあの艦を墜とす事は決して出来ない訳ではなかった─────。
こんな千載一遇のチャンスはそうない。これから更に激化するであろう戦況の中、ユウとゼノスと再び相見える事が出来るかも分からない。
この際、エターナルに逃げられようがどうなろうが、今のロイにはどうでもよくなっていた。
むしろエターナルを逃がした方が都合が良いまである。あの艦はラクスの元へと急ぐだろう。奴らの目の前で宇宙のチリとなるユウの姿を見せる事が出来れば─────その詳細な情報は当然、ラクスへと渡る。
「テメェだけは逃がすかよォッ!」
頭の中でエターナルという存在を完全に打ち消し、本当の意味でロイの意識はゼノスのみに集中を向ける。
空間を塗り潰すかの如き、砲撃の奔流。それは、これまで以上の苛烈さで、一斉にゼノスへと迫っていく。
「っ─────!」
背後からの殺意が強烈に膨れ上がったのを感じたユウはその瞬間、意識からエターナルを切り離さざるを得なかった。
イーラと向き合い、砲撃の軌道を見極めながら操縦桿を操り、超人的な機動で砲撃を躱しつつビームサーベルを抜き放つ。
一拍の拮抗の後、イーラが放ったスキュラを斬り払ったゼノスは、続けざまに迫る砲撃を次々に斬り払っていく。
逡巡は一瞬、砲撃を放ちながら迫って来るイーラに対し、ユウはいよいよ本当の意味での対峙を決断させられる。
砲撃を躱し、斬り払いながらもう一方の左手にもサーベルを握らせ、ユウ自身もまた距離を詰めてくるイーラへ向かって機体を進ませる。
「やっと─────俺を見たな、ユウ・ラ・フラガ!」
その光景を歓喜の笑みを以て出迎えたロイは、砲撃を撃ち止め防盾を翳す。
ゼノスの打ち込みを払い、間髪置かずに迫る二刀流の連撃を再度防盾を翳して受け止める。
「しつこい!」
「お前だけは逃がさねぇ!生きるか死ぬか、決着を着けようじゃねぇかッ!」
イーラが掌を翳し、ゼノスが後退─────直後、すぐ傍らを通り抜けていくスキュラの光条には目もくれずゼノスが再度突撃を掛ける。
ガントレットと防盾が激突、直後に互いは弾かれる様にして距離を取る。
ユウとしてはイーラからの砲撃の嵐を潜り抜け、接近戦に持ち込みたい。だが懐に潜り込めたとしても、ほぼノータイムで撃ち込めるスキュラがその思惑を許さなかった。
一方のロイも、イーラが誇る圧倒的火力を翳してゼノスを追い込んでいきたい所ではあるが、相手の機動力をなかなか捉えられずにいた。
「オォイ!その腹の砲門は飾りかぁ!?武装を出し惜しみして、俺を殺せるとでも思ってんのかよッ!」
「俺は、誰かを殺す為に戦ってるんじゃない!」
「ハァ?甘っちょろいこと言ってんじゃねぇよ!こうして敵と出会ったら何をするか、答えは一つだろうがッ!」
「その繰り返しの果てが今なんだ!それを止める為に、俺達は戦ってるんだ!それを、お前は─────」
「ハンッ!シーゲル様みてぇな事を言うじゃねぇか。感動のあまり、涙が出てきちまいそうだァッ!」
「この─────!」
二人の言葉は、考えは決して相容れない。ユウがどれだけロイに言葉をぶつけようともそれが届く事はないし、逆にロイがどれだけ自身の考えを発してもそれをユウが受け入れる事はないだろう。
決着はこのぶつかり合いで─────ユウか、ロイか、どちらかの命が失われたその時のみ訪れるものなのか。
「っ、なに!?」
向けられる砲撃の嵐の中、ユウもいよいよ覚悟を決めるべきなのかと考え始めたその時だった。
イーラへ向かって虚空を切り裂き砲撃が迫る。
ゼノスのものではない。当然、周囲のモビルスーツ隊が僚機であるイーラに対して砲口を向ける筈もない。
いよいよモビルスーツ群の包囲から抜け出したエターナルが、ミーティアでゼノスを援護したのだ。
それによって機体の動きを留めざるを得なくなったロイ。
「エターナル─────よくもやりやがったな、クソがァァァアアアアアッ!!!」
ゼノスが現れてからユウしか見えていなかったロイが、邪魔をしたエターナルへ怒りを向ける。
しかし、エターナルへ向かってスラスターを吹かしたイーラの眼前を、光条が横切っていく。
自身からエターナルへとロイが狙いを移したのを察したユウが、ライフルを向けて引き金を引いたのだ。
『ユウ、こちらはもう大丈夫だ!戻って来られるか!?』
「はい、すぐに向かいます!」
湧き上がった怒りに従って反射的にエターナルへ向かおうとしたロイだったが、ゼノスが彼に背を向けたのを見た瞬間に我に返る。
「っ、待ちやがれ!」
すぐに追い掛けようとするも、同時に機体を動かし始めれば、当然機動力に優るゼノスに追いつける筈もない。
イーラの全砲門を開き撃ち掛けるも、ゼノスは背を向けたまま軽やかに砲撃の奔流を躱していく。
機体を駆るロイの目の前で、やがてゼノスはエターナルと合流─────エターナルと共に全砲門を開き、後方より尚も追い縋るモビルスーツ群へ向けて砲撃を斉射する。
離れていく─────狙った獲物をむざむざ逃がすなど、ロイにとっては初めての経験だった。
グツグツと、胸の奥で熱い何かが煮えたぎる─────ここまでの怒りを、ロイは経験した事がなかった。
「…殺す」
無意識に出て来た一言は、紛れもないロイの心の底から出た本心だった。
「殺してやるぞ」
ユウを獲物と定めたのは、その方が面白いものが見れそうだという愉悦めいた欲望からだった。
しかし、今は違う。
「糞ガキが…。この俺から逃げられると思うなよ」
明確にユウへと向けられる殺意。全身全霊を以て、ユウ・ラ・フラガを殺すと定めたロイは、今にでも周囲の部隊に向けてしまいそうになる怒りを必死に抑えながら機体を反転、要塞へと退いていく。
次は─────次こそは。
必ず、また奴と相見えよう。そして、その時こそ─────
援護をしに来たつもりが、最後には援護をされるという本末転倒─────何はともあれ、無事にヤキン・ドゥーエを抜ける事が出来た。
そして航跡を一旦カムフラージュしてから、航路をL4へと向けて貰う。
エターナルが出航するという報を受けてから、まず先んじて俺がゼノスに乗って発進。
その後は翌日に出発の予定だったのを前倒し、アークエンジェル、ドミニオン、クサナギも続けてアメノミハシラを発った筈だ。
L4のコロニー群へ辿り着けば、すでに先に着いていた三隻が迎え入れてくれた。
港に三隻と並んで入港したエターナルから、施設にクルー達が降りて来るのを、すでに先に降り立っていた他の三隻のクルー達が、マリューさんとナタルさんを先頭に出迎える。
「初めまして─────というのも変かな?アンドリュー・バルトフェルドだ」
「─────砂漠の、虎」
前へ進み出た笑みを浮かべる男を見つめながら、呆けた様子でナタルさんが呟く。
ナタルさんの隣に並ぶマリューさんは、しみじみと相手の顔を見つめてから、その視線に気付き軽く肩を竦めたバルトフェルドさんの所作を見て、一瞬体を震わす。
「マリュー・ラミアスです。…しかし、驚きましたわ」
「お互い様さ」
我に返ったマリューさんが、まだ信じ難いといった顔で片手を差し出すと、バルトフェルドさんもその手を掴み、固く握手を交わす。
生きるか死ぬかの死闘を繰り広げたかつての敵同士─────それがまさか、こんな形で出会う事になるとはと、両者は感慨深げだった。
俺がゼノスから降りたのは、丁度二人が握手を交わしたタイミングであった。
この場に合流した俺を、バルトフェルドさんはすぐに見つけた。
「さっきは助かったよ。君のお陰でここに辿り着く事が出来た」
「いえ。むしろ最後は俺の方が助けられました」
向けられたお礼の言葉に対してそう返せば、バルトフェルドさんは笑みを零しながらまた肩を竦めた。
「…君に言われた事を、ずっと考えていたよ」
「え?」
バルトフェルドさんとの間に流れる沈黙、彼に何と言えば良いか迷っていると、ふとそんな事を言われる。
俺に言われた事─────それが何の事なのか一瞬分からず、硬直してしまう。
「僕が何をしたいか…、その答えは今ここに僕が居る事だ」
「あ─────」
続けて掛けられた言葉に、前にバルトフェルドさんへ向けた言葉が脳裏に蘇る。
『流されるままに思考を止めて、諦めようとするな!今俺が話してるのは、他の人間がどうなのかじゃなくて、貴方がどうしたいかだ!』
バルトフェルドさんは笑みを浮かべたまま俺を見つめている。
その視線を受けながら、俺は次の言葉を待つ。バルトフェルドさんから、その答えが発せられるのを─────
「君達と戦わせてくれ。役に立てるかは分からんがね」
「─────いいえ。とても心強いです」
今度は俺が、バルトフェルドさんと握手を交わす番だった。
バルトフェルドさんだけじゃない。彼と手を離した後は、続けてアイシャさんも前に出て来た。
「あれから、アンディが迷わなくなったの。…貴方のお陰よ。ありがとう」
「…俺は何もしてません。バルトフェルドさんの選択は、きっと─────これからずっと、死ぬまで貴女と生きたいと願っているからですよ」
「フフッ、それなら嬉しいわね」
アイシャさんとも握手を交わした後、二人と笑みを向け合う。
このまま和やかな空気を味わっていたい所だが、そうもいかない。
早速大人達が集まり、互いの情報を交換したり、今後の情勢について話し合い始める。
因むと、そこにムルタさんの姿はない。
アメノミハシラまで共に来たのを見て、やはり戦いに参道するつもりなのかと思っていたら、意外な事にL4までは来ず、アメノミハシラに留まったのだ。
宇宙まで来たのは、地上に居るよりも早く戦況の情報が得られる事。それによって何をすべきか素早く判断、そして行動に移す事が出来るという理由からだった。
正直、ムルタさんには悪いがその方が安心だ。
心強い味方なのは間違いないが、やはり彼は軍人ではなく商人、戦場に帯同して来ても出来る事はそう多くないのだ。
大人達に混じって話を聞いていると、後ろからキラとラクスがやって来た。
二人から「お疲れ様」と労いの言葉を掛けられて、生きて帰って来られたのだと実感が湧いてくるのを自覚する。
我ながら、もう取り返しがつかない所まで来たな─────なんて思っているこの間も、大人達の話は続いていた。
当然、その話の中にはバルトフェルドさんを筆頭としたクライン派がプラント内でどうしていたか─────そして、シーゲル様の死の真相も語られる事となる。
「─────そう、ですか」
そう語られた直後、ラクスは言葉を詰まらせながら、ただ短くそう発しただけだった。
俯く彼女の顔は前髪に隠れて見えず、微かに体が震えている様に思える。
だけど、次にラクスが顔を上げた時には、固い決意と共に力強い輝きが瞳に灯る。
震えを収めた身体は真っ直ぐに、率いる者としてのラクス・クラインがそこには居た。
「ラクス。シーゲル様の事は…」
「わたくしの事は心配なさらずとも大丈夫です」
きっと、バルトフェルドさんも自責の念を抱えていたのだろう。傍に居ながら、守る事が出来なかった。
それをどうラクスに詫びようかとも考えていたのかもしれない─────それを、ラクス自身は遮った。
「ラクス─────」
「父が死んだと知った時…、悲しかった。世界にわたくし一人が取り残された様な気がしていました。だけど、そうじゃなかった」
ラクスは不意に、俺を見て、柔らかく微笑んだ。
「わたくしは一人じゃなかった。わたくしと同じ道を選んでくれた貴方方が、わたくしと友達になってくれた方々が、そして─────わたくしを残して死なないと約束してくれた方が居ますから」
悲しくない筈がない。ショックでない筈がない。
ラクスもまた、シーゲルと同様にロイ・セルヴェリオスの事を信頼していた筈だ。プラントで過ごした日の中で、それは俺にも感じられた。
その信頼を裏切られた心の傷は、決して小さくない筈がない。
それでも折れないのは、ラクスの周りに彼女を大切に思う人達が居るから。
バルトフェルドさん達クライン派、マリューさん達もそうだ。キラも当然同じだし、俺だって。
「ですから、大丈夫です」
「…そうか。なら遠慮なく、頼らせてもらうぞ」
「はい」
バルトフェルドさんからの言葉に、ラクスは力強く頷く。
「ねぇ、ユウ」
「ん?」
「…強いね、ラクス」
「…あぁ」
それを見つめていたキラが、不意に俺に話し掛けて来た。
ラクスを見つめるその瞳には、どこか憧れめいた感情が浮かんでいる様に見える。
「だけどそれが、支えがいらないという事にはならない」
キラの言う通り、ラクスは強い。…いや、強くなったと言った方が正しいかもしれない。
だが、強くなったから俺もキラも、周りの人も何もかもを振り切る選択を彼女は絶対にしない。
何故ならたった今、ラクス自身が言ったからだ。
自分は一人ではない─────と。
「…そうだね」
そう呟くキラの瞳には、もうラクスに向けられた憧れは消えていた。
散々憧れられてきただろう。散々崇められてきただろう。
だからせめて、俺とキラは、対等な相手としてラクスの前に立つべきなのだ。
「私も、ラクスを支えられるかな?」
「むしろそうでないと困る。俺達三人で居るんだろ?」
「─────うんっ、勿論!」
静かで綺麗な水面の様なラクスの微笑みとは違う、華やかに咲き乱れる花々の様な微笑みを浮かべるキラ。
─────本当に、我ながら取り返しのつかない所まで来てしまった。
ラクスとキラ─────二人の存在なしに、この先生きていく自分の姿なんて想像出来ない。
バルトフェルドと言葉を交わした後、ラクスがこちらへ戻って来る。
その姿を見ながら、俺もまた固く決意する。
ラクスへ言った言葉─────絶対に、死んでなんてやるものか。
ましてや、俺を殺そうと固執していたロイ・セルヴェリオスにも─────クルーゼにだって、俺の命は絶対にくれてやらない。
これから激化していくであろう戦いを前に、二人の愛する女の子を置いてはいかないと、改めて胸に刻み込むのだった。
ZGMF-X08Aイーラ
武装
・複合兵装防盾システム
・大型ビームサーベル×1
・高エネルギービーム砲×2
・クスィフィアスレール砲×2
・バラエーナプラズマ収束ビーム砲×2
・複列位相エネルギー砲スキュラ
野蛮な核を放ったナチュラルへの“憤怒”を忘れないという意味を込め、パトリック・ザラによって名付けられたザフトの核機動モビルスーツ。本来は他のモビルスーツとの連携を前提とした機体であり、左腕に備わった複合兵装防盾システムも、元は右腕同様にスキュラが搭載されていた。イーラとの連携をとるべく想定されていた二機の内の片割れ、フリーダムがクライン派によって奪取され、急遽左腕の武装を変更。単独で遠近両方の距離での戦闘に対応できるよう改修された。スキュラはイージスの物を解析して搭載したが、砲口のサイズは小型化している。しかし、核エンジンによる無限の電力により威力は強化され、更にビームそのものの小型化によって貫通力が増強されている。手に搭載された事で取り回しも良くなった。