魔法少女懲罰部隊   作:さしずめろん

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第3話

「ねぇ、教官、僕と一夜を共にしてくれないかな?」

「悪いが、今日は家に帰る日だ、そもそも君に興味がない」

「ねぇ!待ってよ、さっきのことは謝るからさぁ、もうちょっとだけ話さないかな!?」

この慌て方は普通ではない、萬羽咲希(まんばさき)は性的な問題を起こしていた、証言によると咲希の方から近付いてきて性行為を強要したと。

 

「さて、なにが話したいんだ?」

「恋愛だよ、れ•ん•あ•い」

「少し気になるんだが、いつから積極的になったんだ?」

少し悩んでいる?言いたくないのか?不味ったか、もし傷付いたら謝ろう、そう覚悟して。

「アレはね、12歳のときなんだ、先輩に惚れたの」

「その先輩が優しくてねぇ、毎日••が••楽しかった!本当に•••敵にさぁ殺されるまでは!!楽しかっんだ!!うわぁぁ!」

 

突如暴れだす萬羽は正気ではなく、これ以上暴れられた場合

彼女自身にも危害が及ぶとして武力行使をする。

 

「止まれ!萬羽咲希《まんばさき》さもなくばスタンガンを使用するぞ!」

相手への警告に反応はない、仕方ないので武力制圧をする、表沙汰になってくれるなの一心で、萬羽のデタラメに振り回される腕を躱し脇腹にスタンガンを当て起動する。

 

「あああああぁぁあああぁぁぁ!」

床に倒れ痙攣している、すぐさま処置を行う。

 

数十分後に回復し、体の調子を確認し終えた魔法少女の機能を奪っていても周囲の甚大が桁外れだ、机や椅子の脚の部分が飴細工のようにまがっている、木の部分はおが屑になっている。

萬羽は正気を取り戻したが、自分がやったことを覚えているのか、青褪めている、まぁ一通り暴れたから当分は大人しくなるだろう。

「ねぇ、先生、私を一人にしないで」

「先生じゃない、それに俺じゃなくてもいいだろ?」

「駄目なんだ•••代用じゃ駄目なんだ」

「代用か」

「そう、男なら良いんだ、男ならさ」

「中々難儀だ、しかし駄目だ同棲している妻がいる」

「僕は構わない」

「俺は駄目だ、偶の仕事を考えない休日だ、お前がいたら休まらない」

「だったら又問題起こす、それは嫌でしょ?」

 

俺は何も言い返せないしする気もない、最近は嫌いではなくなってきているものの、その程度だ、解体されるならそれに異議を唱えない。

 

「ああ、嫌だな、確認を取るから少し待て」

了承を得ずに退席し誰もいないのを確認してから電話をする。

 

『はいもしもし〜』

「俺だ」

『あら〜どうしたんですか?寂しくなりましたか?』

「違う、今日部下を連れて帰るがいいか?」

『いいですよ、でも貴方がそういう付き合いをするのは珍しいですね~』

「暴れると脅されて仕方なくだ」

『貴方も冗談を言うのですねぇ』

「冗談ではない、問題を起こすと脅された」

『あらあら、それはそれは、随分と気に入られましたね〜』

「もう切るぞ」

了承を得ずに切るそうしなければ延々と終わらない、咲希の居る部屋に戻り許可が出た事を話す。

 

「話の分かる御仁だ、好きになりそうだよ」

「俺の妻だ、当然だな」

「すごい自信だね」

話を切り上げ車に乗り込む、基地から家まで20km弱。

 

「こうしているとさ、恋人にみえないかな?」

「バカなことを言うなよ」

「馬鹿なことじゃないよ、ん?痛っ!」

「大袈裟に騒ぐな、軽くデコピンしただけだろ」

「もう、照れなくていいのに」

「シバクぞ」

「キャ〜!襲われる〜!」

「ハァ•••」

無駄なやり取りに時間を取られつつ家の前まで到着した、小ぢんまりとした一軒家。

 

「へぇ〜小さくて可愛い家だね」

「妻の趣味も反映されている」

「ふ〜ん、良い旦那さんだね」

「外見に興味がないだけだ」

「そっか」

車を駐車場に止め、しっかりと鍵をかけ家に入る。

 

「今帰ったぞ」

「は〜いお疲れ様です」

「初めまして奥さん!萬羽咲希といいます!」

「はい初めまして〜とっても元気ですね」

咲希がこちらを見てニヤっとする、嫌な感じだ。

 

「旦那さんには良くしてもらってます!」

「お、おい!離れろっ!」

そういって俺の腕ごと体にしがみついた、必死に引き剥がそうとするが離れない。

 

「あらあらとっ〜ても仲良しですね」

「そうなんですよ!」

「なら私もギュ〜」

妻が逆の側に来て抱きつくが腕が短く届かない、なので俺の腹あたりを撫でている、呆れた俺は2人を無視して家の中に入る。

 

「では先にお風呂に入って下さいな」

「ああ、そうさせてもらう、咲希から入れ」

「えぇ〜後から入りたいんだけどなぁ」

「フフッなら一緒に入ってはいかがですか?」

「お前なぁ!」

とんでもない事を言う妻に咎める様に目線を送る、分かったのか分からないのか、気にした様子を見せず最後の仕上げをしてきますと言い残し去っていく。

 

あれから咲希は折れずに俺が折れた、時間の無駄でしか無いからだ。

 

「お待たせ」

「おい!妻の言う事を真に受けたのか!?」

「そんなわけ無いよ、も•と•か•ら」

「だったら尚更たちが悪い!」

「良いじゃん、減るもんじゃないし」

「良いから出ろ!不問にするから!」

「ねぇ、もしかしてさぁ、ど•う•て•い?」

「いい加減にしろよ!そんなんだから守れなかったんじゃないのか!」

しまった、口が滑ったとは言え流石に酷過ぎたと反省する前に身構える、又暴れ出すと。

 

だが彼女の体は動かない、全身が麻痺したように小刻みに震えているだけだ、俺は呆気にとられ動けずにいる。

「何をしているのですか!?騒ぎを聞き付けてみれば何故彼女が倒れているですか!?」

「わ、分からない突然こんな•••」

「意識はあります!呼吸は乱れていますができています!聴こえていますか!」

辛そうに首肯する。

「体を仰向けにしますよ!貴方も手伝って下さい!」

「あ、あぁ」

うつ伏せから仰向けにして安静にする、少しずつ少しずつ呼吸が落ち着くのが分かる。

 

「救急車を!」

「待って」

「どうしましたか!?」

「過呼吸だから•••大丈夫だよ」

「一体いつから•••」

「彼氏が死んだ時、死体を敵が連れ去ったのが切っ掛けで」

「っ!そう•••ですか、それは辛かったですね、苦しかったですね」

「戦場に立つと思い出すんだ、何度も何度も死んだ彼氏のことを思い出してさっ!その度に追い出すように暴れるんだ!」

「なら何故あの時話そうとした」

「直接男から危害を加えられれば変わる気がしたからだ!でも駄目だった!」

 

「頭では判ってるんだぁ•••判ってるんだよぉ•••だけど心が安らぐんだから!!本当は嫌だよ!」

「だったら尚の事」

「嫌で嫌で仕方がないんだよ!だけど心が求めるんだ!心の隙間を埋めるように!男を求めるんだ•••だから•••だからさぁぁぁ•••偽りでいいからぁ•••彼氏になってよぉぉ•••」

俺は握り拳を更に握り、絞り出すように言う、妻を裏切らないように自身を戒める。

「仕事以上の関係は、築かない以上だ」

平手打ちの音が鳴り響く

 

「反省なさい、傷付いて泣いている子供に対してかけていい言葉では有りません、仕事として受け持っている以上、尚更です」

「他人の子供だろうが大人として守り育てて行くのは当然の義務です、この子に謝りなさい」

「•••だが、俺は•••偽りだったとしても•••お前を裏切りたくないんだ•••」

「部下なのでしょう?仕事なのでしょう?ましてやこんなに傷付いた子供が相手、目を掛けてあげるのが目上の役目でしょう?違いますか?」

言外に、自分より優先しろと、自分より愛せと、そう言っている、諭すように、願うように、祈るように、だが融通の利かない俺はそれでも迷う。

 

「怖かった•••こうなることは解ってたから•••嫌だったんだっ!でも僕が消えるぐらいの•••酷いことを•••言われたくて•••こんな事したんだっ!」

「そうですねぇ怖かったですねぇ良いんですよぉ私がちゃーんと分かっていますからねぇ」

妻にしがみついた萬羽はそのまま泣き出す。

「ごめん•••ごめんねぇぇ•••僕淋しくて君の真似をしてたんだぁ•••だけど•••まだ心にぃ•••穴があるようにって•••それでそれで•••誰かと繋がっていたかったんだぁ!!」

 

「君を裏切る気は一切無かった!でも、でも•••誰かといないと身体が震えるんだ!ここに居るって•••確信が欲しかったんだ•••僕が何処か•••誰も居ない場所に来たんじゃないかって•••だから誰かと居たい、誰でも良いから、何でもするから•••一緒に居ようよ、怖いよ•••」

「今まで、よく頑張りましたね、大丈夫です、私がいますから」

 

俺はハッとした、二律背反、死にたい思考と生きたい気持ち、裏切りたく無い思考と裏切ってでも誰かと居たい心、天秤に乗せても決まらない、だから俺に嫌われ拒絶の言葉を貰い、決めたかったのだ、嫌いな自分と決別するために。

 

俺はもし、妻を失ったら平常で居られるか?無理だ、狂って何を仕出かすか分からない、だが彼女は完全には狂えなかった、狂った心と正常な思考がどれだけ苦しめたのか、平凡で幸せな俺には想像が付かない。

 

その背中を優しく撫で、大事そうに頭に手を置き自分の体の方へと咲希を抱きしめる、壊れそうな彼女をこれ以上壊れないように、今にも消えそうな彼女の心を留めるように。

「良いんですよ人間ですもの、貴方がしてきた行いを私は咎めません、また此処にいらっしゃい、そしたらまた抱きしめてあげましょうね」

 

どれ程の時間が経ったのだろう、いつの間にか咲希は泣き止み、安心しきったような表情をしている。

「もう、大丈夫だよ」

「本当ですか?本当に大丈夫ですか?私心配で」

「うん、奥さんも教官もごめんなさい」

「いや、改めてこちらこそごめんなさい」

「フフッ!似合わない!アハハッ!」

 

偽愛、親愛、純愛、博愛、愛の形は数あれど同じ数だけ悲恋もある、愛した人が目の前で死んだこの子の傷は、永遠に消えることはないが少しだけ埋めることは出来る。

それに比べて愛する人と一緒になれた俺は一体どれ程の幸運なのか、それを教えてくれたこの子に出会えた事の奇跡に対し、消えることのない感謝を。

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