イオリの口調に一生悩んでいます。
ぶっきらぼうなようで女の子っぽい面もある。その絶妙な塩梅が難しい。
とはいえ、なかなか可愛らしく書けたのではないだろうか。
嗚呼イオリ。可愛いよイオリ。脚も良いけど、あのつんと尖った耳を舐めたい。
私の身体からはほこほこと湯気が上がっていた。冬らしい気温が風呂上がりの火照った身体に心地良い──。
「……いや、普通に寒いな」
化粧水とか乳液とかとかを付けて、いそいそとパジャマに身を包む。もこもこで暖かいやつだ。そして長い銀髪をドライヤーで乾かすことにする。
手櫛を通しながらじっくりと風を当てていく。ちなみに毛並みに沿って上から風を当てるのがポイントだったりする。
そういえば先生は私の髪を綺麗だって言っていたっけ、軽率に髪を触ろうとしてくるものだから払い除けてしまったけれど。どうせならもっと雰囲気のある場所で触りたいと言ってくれたら良いのに。
いつもより少しだけ丁寧に髪を梳かす。細い髪の一本一本がきらきらと光って見えた。
なんで私、こんなに念入りに髪の手入れをしているんだろう。
一通り梳かし終えると何故だか急に馬鹿々々しくなってきた。もういいや、早く寝よう。
部屋の照明を落とすと窓から差す月の光が斜線になっている。ひとりきりの部屋の静けさにちょっぴり心細くなった。
しゃっとカーテンを閉めてからベッドの蒲団を捲る──、いや、捲りかけて途中で蒲団を戻した。
待て、今蒲団の中に何かいなかったか。
冬の所為なのか、背筋が嫌に冷える。思わず化粧台に置いていたハンドガンを手に取る。スライドを軽く引いて薬室に弾が送り込まれているのを確認すると、手を離してしまった蒲団をもう一度恐る恐る捲り上げる。
「やあ、イオリ。蒲団あっためといたよ」
「うわぁ! ヘンタイだッ!?」
蒲団の中には
私の疑問を感じてか、先生が話し出す。
「最近かなり寒いじゃん? イオリはちゃんと暖かくしているのかなあって思って」
「ひとのベッドへ勝手に入るなバカ」
何を言っているのかこの大人は。蒲団を捲った瞬間に発砲しなかった自分を褒めたいくらいだった。
「いつからそこに居たんだよ先生」
「一時間くらい前から?」
慌てて玄関の鍵を確かめに行くが、きちんとチェーンまで掛かっていた。私がお風呂に入っている間にどこから侵入したんだこの変態。もう一度蒲団を捲り上げて変態を睨みつける。
「ずっと蒲団を開けてたら寒いじゃん。早く中に入ってよ」
「え? ああ、うん……」
先生に咎められてつい従って蒲団に入る。確かに暖かい。直ぐにでも眠ってしまいそうだ。
「じゃないっ! なんで添い寝してるんだ私たち!」
「まあまあ、そう暴れないで。蒲団に風が通って寒いじゃん。ほら、もっとこっちに寄って」
そう言って先生は片腕を枕のようにして私の頭を胸元へ抱き寄せる。
パジャマ越しに先生の体温を感じる。息をする度に先生の匂いがした。
「ほんっとヘンタイ!」
先生の身体を引き離そうと先生の胸元を手で押し返す。
「素直じゃないなあ」
なんでもお見通しだと言わんばかりに知ったような口を聞いてくるので、なんのことかととぼけて訊いてみる。
「本当はこうして抱きしめられるのが嬉しいのに、拒否しちゃうところ」
「何を根拠にそう思ったんだ」
訊くと先生はふっと微笑みながら答える。
「イオリの尻尾が私の腰に巻きついてるよ」
ああもうほんとばか。なんでひとりでに動くんだこの尻尾!
私は観念して、先生を押しのけようとしていた手を先生の大きな背中に回してきゅっと抱きついた。
「あれ、素直に抱きついてくれるの?」
「寒いからだよ」
「そっか、じゃあ冬万歳」
言い訳がましく言ってみるけれど、先生は意に介さず私の頭を撫で始めた。手櫛のようにして髪を梳くみたいに優しい手つきだ。なんだか手馴れているような気がする。
「耳が赤くなってるよ。可愛いね」
「ほんとへんたい。……でも暖かい」
先生の胸に頭を擦り付けていると、こんな冬は寒くない気がした。
田山花袋の蒲団にほんの少しだけ影響を受けていたり。