とはいえかなり酷い内容だとは思います。特にハスミには悪いことをした気がしてならない。
この先生は恐らく過労で判断力が著しく低下しているのでしょう。
普通にクビになるレベル。
それは、何気ない会話のひとつだった。
「ハスミのって、やっぱり凄く大きいよね」
そうその人は宣ったのだ。
昼下がりのトリニティ。デザートを求めてカフェの集まる通りを徘徊していたところ、その人はいた。
その人物は、全く頭が下がることに、いつでも大勢の生徒から頼りにされる、先生と呼ばれる人物であった。先生に出会った。
そして気が付けば、私の目の前には空のパフェ容器が三つ。断っておくが、決して三つともを私が食べた訳では無い。一つは先生のものだということをご理解頂きたい。
先生が私の分の会計も済ませてくれ、私たちはカフェを後にした。
そして。
そして丁度人気の少ない通りに出たあたりで、ふと先生は言ったのだ。
「ハスミのって、やっぱり凄く大きいよね。歩く度にゆさゆさ揺れてるし。あと大きい。……触ってみたいな」
この発言には既視感──この場合聞いているのだから既聴感と言うべきか──があった。
私と先生が出会って間もなかったあのときも、先生は似たようなことを言っていたのだ。確かあの時は、先生が触りたいなどと言うものだから驚いてしまった。まあ、それはあくまで勘違いだったのだけれど。
だからきっと、今回も私の勘違いに違いない。そう思いながら訊く。
「触りたい、というのは翼のこと、ですよね……?」
「いや、おっぱい」
「おッ!?」
即答。勘違い、ではなかった。
こんなもの、あっても邪魔なだけだと思うのだが、思っていたのだが、先生にとっては違うらしい。
「制服の下で窮屈そうにしてる所とか、すごくすごい。麓で雨宿りとかしたい」
「えぇ……?」
混乱、困惑。なにやら先生が熱弁を奮っていて、気圧されてしまう。
「……触りたい、のですか?」
「勿論」
再確認。これまた即答だった。そこには一片の迷いもない。
先述した通り、この場所は人気がなく、人目に付きにくい。そのせいか、そのおかげか、私は少し気が大きくなっているらしかった。
というより、先生との関係性において他生徒を上回ることが出来るかもしれない、他生徒を凌駕出来るかもしれない。そういう可能性に胸が膨らんでいた。いや、胸はこれ以上大きくなってもらっても困るのだが。
「……えっと、服の上からなら……」
「駄目だ。服の上からではおっぱいを触っているとは言えない。それは、ただ服を触っているに過ぎない!」
知らない理論だった。
別に私は押しに弱い訳というでは無いのだが。
これはあくまで他ならぬ先生の頼みで、それが私に出来ることならば、できるだけ応えたいだけなのだ。敬愛する先生だから。たとい今その尊敬が多少なりとも揺らいでいても。
「ほんの少しだけ、ですよ」
私は制服の裾に手をかけ、そして──
「あれ? 先輩じゃないっすか。どうかしたんすか、こんなところで」
背後から声がかかる。気さくで少しばかりフランクな砕けた話し方。私の後輩。
「や、やあ、イチカ」
「おっと、先生と一緒だったんすねー」
「えぇ、まあ」
「てか、どういう状況っすか……?」
……はて、イチカが疑問に思うようなことをしていただろうか。状況を俯瞰してみる。
そこには、先生を前にして、制服を捲り上げて乳房の下半分、所謂下乳と呼称される部位を露出させた痴女がいた。
というか私だった。
「イチカ、おっぱいというのは、やはり大きさだと思わない?」
「んー、甘いっすね先生。ハスミ先輩が普段食べてるパフェくらい甘々っす。おっぱいに必要なのは大きさでも質量でもありません」
「……じゃあ、イチカは何が必要だと思うの?」
私が自分の行いを恥じている間になにやら議論が進行していた。二人とも熱心だ。
「私が思うおっぱいに必要なもの。それは、“形”っす。
「な、なるほど!」
どの辺りに成程と思う要素があったのかは良く分からないが、取り敢えず失礼なことを言われていることは分かった。
それに、
「大きなおっぱいを嫌いな人なんていません」
自身のおっぱいの価値を主張して、下乳を露出させたまま、胸を張ってそれを強調する哀れな痴女の姿があった。
ていうか、それも私だった。
…………。
いや、イチカが余計な主張をしなければ、私がこのように対抗する必要もなかったのだ。先生は私の胸に興味があるのです。
「うむぅ、大きさも形もおっぱいに必要な要素だ……」
先生は腕を組んで考え込んでしまった。さながら、その問答が世界の命運でも握っているかのようだ。
「ふふふ、皆さんおっぱいの美学が分かっていない様ですね」
突然声がかかる。この余裕あるゆったりとした話し方はハナコのものだろう。慌てて彼女の方へ目を向ける。
安心した。全裸ではない。ちゃんと水着を着ていた。学校指定のやつだ。
「ハナコ、大きさでも形でもないって言うんなら、君が考えるおっぱいに必要なものは一体何なの?」
訊いたのは先生だ。
待っていましたとばかりに不敵な笑みを浮かべて、不適切と不純の権化である彼女は自身の考えを話し出す。自信たっぷりに。
「おっぱいに必要なもの。それはですね。
……“味”です」
「味!?」
誰かが驚きの声を上げた。それは私だったのかもしれないし、先生やイチカなのかもしれなかった。兎に角、そのくらいには驚きの内容であったのだ。
「因みに、私的おっぱいの味ランキングの暫定一位はコハルちゃんですよ♡」
「なんで知ってるの!?」
「そりゃあ舐めましたから」
「当然だ、みたいに言うんじゃない!」
先生の言う通りだった。
馬鹿な。エッチなのはダメ! でお馴染みなコハルを相手にそのような事、出来る筈もないのだが。
「てか、ランキングがあるんですか」
先生は何故か敬語になりながら訊いていた。ランキングが作られているということは、ハナコは較べる対象を知っている、つまるところコハル以外の人物の味も知っているということになる。
「あります。それに随時更新中ですから、一位がずっとコハルちゃんだとも限りませんよ」
「まだ増えるんだ……ランキング」
増やしちゃいます、なんてハナコは返答していた。
「ああそういえば。この三人の中なら、私、一番美味しい自信がありますよ。さあ、口を、開けてください♡」
「自信があるのは結構だけど、舐めるのは流石にマズイよ!」
直に触るのは良くて、舐めるのは駄目なのか。一体どういう判断基準なのだろう。
「私のだって美味しいっすよ!」
イチカがハナコに負けじと主張していた。
「わ、私のも美味しい筈です」
自分の胸を差し出し、その味を確かめさせようとしている痴女の姿があったが、それだけは私ではないと信じたい。
まあ、私なのだが……。
「マズイってば!」
「まあまあ、そう言わずに♡」
「その台詞は相手が遠慮している時に使うものであって、断じて今この瞬間ではない! うわあ! やめて! 押し付けないでっ! 助けてっ!!」
先生から悲鳴が上がる。
それを聞きつけたのか、
「閃光弾、投擲!」
閃光、それに伴う轟音。
脳が揺れる。私達はともかく、先生までもが閃光弾をもろに食らってしまった。
駆けつけたトリニティの自警団、スズミお得意の
先生は
ハナコは……正義実現委員会がしょっぴこう。出来るだけ非道い方法で。
良いおっぱいに必要なもの、それは大きさでも形でも、ましてや味でもない。
そこに愛と夢が詰まっているか。それに尽きると私は思った。
了
私はイチカを引けていないので、イチカ周りで解釈不一致があるかもしれませんが、その時はどうか、優しくコメントでお教え下さい。
他キャラに関する解釈不一致はレスバしましょう。
まあ私自身は貧乳派というか、女の子の胸と腰はいくらでも薄くして良い派ですので、どちらかというとハスミの胸より翼を触りたいところですね。