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令子と冥子ちゃんと一緒に受付を通る。
私……427番。
令子……211番。
冥子ちゃん……361番。
……見事、ばらばらに離れちゃったみたいだ。それにしても『427』(しにな)って縁起悪くないか。別に気にしちゃいないが……気にしてないぞ。うん。
会場内に備え付けられた机と椅子に座り、途中自販機で買った缶を開ける。令子がブラックコーヒー、冥子ちゃんがミルクティ、私がコーラだ。……並べると私だけ嗜好がガキのままみたいで、少し恥ずかしいな。
話は自然とこの後の試験のことになる。
令子は持ち前の自信から、冥子はマイペースなのかで緊張している様子はないみたいだ。かくいう私も周りの受験者のレベルを見る限りじゃとりあえず予選ぐらいは通れそうではある。雪乃丞とかピート、タイガーみたいなのが来るとまずいかもしれないけど、何故かそんくらいのやつが全然いないからな。
ちなみに受験方法だけど私のときと同じようで、予選が霊波量測定、本選が受験者同士のトーナメント方式になるようだ。
この三人の中では私の番号が一番大きいので、予選をやる令子と冥子ちゃんを眺める事になる。
「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まずは令子。その格好と、容姿から集団の中にいても目立つ事目立つ事。令子の発している霊波もそれを手伝っているんだと思う。一般人でも彼女からは攻撃的な威圧感を感じる筈だ。
「んんん~~~~!!!」
続くように冥子ちゃん。体を縮ませて、一生懸命に霊波を放出している。どう少なく見積もっても一般の受験生の15~20人分くらいの霊力がある。この状態でさえ霊波が干渉して、空気が渦のようになっているって言うのに、暴走するとこれの二倍近く出るんだから冥子ちゃんのポテンシャルは計り知れない。
この二人が霊波を発してから、周りの受験者や審査員がどよめく。両隣の受験生なんか、二人の霊波にのまれて霊波を発しているのかどうかもわからない。
はっきり言っちまうと、桁が違う。単純に霊力量だけで二人を上回るんじゃ、プロのGSをつれてこないとこの二人には勝てないだろう。いや、つれてきても勝てるかどうか。少なくともヘタなGSには負けていない。
何が言いたいかってーと、ここにいる受験生じゃ太刀打ち出来ないのも仕方ないってことだ。――――それほどのレベルなんだけど。
「…………ん~?」
令子、本気か? 霊力量も少ないし、その密度も薄い。確かに周りの受験生を上回ってはいるし、密度も濃密っちゃあそうなんだけど、弱すぎる。
パッと見、雪乃丞、ピートより明らかに弱く、タイガーにも普通に負けるだろう。冥子ちゃんも確かに物足りない感じを受けるけど、それでも霊波的にはその変化は微々たるもんだ。
……あー、まだ小竜姫様んとこで修行もしてないからか。この前、つってもこっちにくるちょっと前だけど、冥子ちゃんも修行にいったらしい。けど、結局駄々こねて小竜姫様と茶飲んで帰ったっつってたし。冥子ちゃんの変化が少ないのはその所為か。
とりあえず、二人は問題なく予選を突破した。……この二人が落ちるなら、今回は合格者無しなんつー事態になるが。
「……400から500番まで、測定場に入ってください」
「ん」
お、私の番か。スピーカーから流れる試験官の声に従って、順番通りに並ぶ。
あんまり目立つのも好きじゃないし、令子くらいでいいか? まぁ気合入れれば冥子ちゃんくらいまでなら引き上げられるけど、疲れるから止めとこう。……冥子ちゃんくらいっつっても暴走時じゃなくて、ちゃんとコントロールしてる状態だけど。暴走時に冥子ちゃんと力押ししても手も足も出ないからな。
そう考えると冥子ちゃんてすげーな。ほぼ何にもしてない状態で、修行した後の令子の霊波量を上回っちまうし。普段があれだからこんな風には滅多に思わんけど。
「ほっ」
抑えていた霊波を少しずつ開放していく。幾つもの弁を開放するように、少しずつ、少しずつ。
それに伴って体に力が漲ってくる。あと数個ある弁を残して、安定させる。
これは唐巣神父に教わった、放出の仕方のイメージだ。蛇口を捻る、とか、人によってはアクセルペダルを踏むとか。それぞれ自分にあったイメージのほうがコントロールしやすいらしい。合う合わないは一朝一夕じゃわからんからな。とりあえず、神父に教わった方法でやっている。
男だったときだと、長い時間霊波を放出しつづけられなかったからなぁ。もしかしたら、男としてここに来てたらこの段階で落とされるかも知れん。やり方がわからずに。もともと霊波砲とか、そういう方向の操り方が苦手、っていうより出来なかったし。
神父に教わってわかったことだけど、霊能力の使い方にもタイプが存在するらしい。
一つは霊気収縮系。これは雪乃丞の魔装術、霊波刀とか。あとは……除霊札や陰陽符の作成とかがそうか。体の中の霊気、または放出した霊波を固めて、霊的物質を作る、また物質に能力を宿らせる方法だ。
二つ目に霊波放出系。霊波砲や、タイガーの精神感応。あとは霊視関係もか。体の一点に霊気を集中させて、能力を向上させたり、放出し続けたり。霊視や精神感応は、使い方的にはソナーみたいなもんらしい。
んで三つ目が特殊能力系。これは霊波云々じゃなくて、素質に拠る。ピートのバンパイアミストとか、サイコキネシスとかその辺りだ。これは上の二つじゃない場合だな。
んで、それとは別に霊波が起動スイッチになってる道具を使うタイプ。神通棍、あとは結界を張る、なんていうのもこれに含まれるか。あとは式神紙とか、除霊札や陰陽符の使用とかもそれに当たるかな。
んで男だった俺は基本的に霊気収縮に向いていたようだった。サイキックソーサー、ハンズオブグローリー、文珠とどれも霊気収縮系だし(文珠はそん中でも特殊らしいが、大別すると収縮系でいいらしい)
攻撃を避けるとか、緊急事態時には瞬間的に放出して身体能力を上げていたみたいだけど、無意識だったしな。
女になってから霊気収縮だけじゃなく、霊波放出も使えるようになっているらしい。
以前はあんまり使えなかった神通棍も使えるし、拙いものの霊視も出来る。霊波砲はまだ試してない。ただ収縮系に特化しなくなった所為か、霊気収縮の精度が若干落ちたみたいだけどな。
「――――27番、427番! もういいから!!」
「え?」
その声に反応して周りを見ると、試験官が腰を引きながらマイクを使って俺に呼びかけていた。
他の試験者は台風の中にいるかのように髪を振り乱している。まるで台風が直撃したような様相になっていた。
ああっと、やばい。慌てて全開近くまで開いてしまっていた弁を、閉じるイメージを頭に浮かべる。
くくっていた髪が霊波で浮き上がっていたようで、ゆっくりと降りてくる。風が凪いだように、場に静けさが戻る。
「あの……ええっと、すんません」
「……427番、合格…………」
どっと疲れたように腰を落とす試験官。あちゃ、やりすぎたな。